3 / 234
地上編 第1章 ジュンスの恋~めぐり逢う魂
ジュンスの恋 第3話 サーシャ
しおりを挟む
サーシャはロシア革命で故国を追われたロシア貴族の末裔で、高貴な血筋の少年だった。しかし父親を早く亡くしていた。豊かとはいえない家庭の子弟だったのだ。
しかし成績は優秀で、学費免除の特別優待生だった。
ジュンスが留学した学校には、悪しき伝統があった。
上級性が下級生を助け特別指導すると云う名目で、生徒会の長が下級生の中から生徒を選び、自分の身の回りの世話をさせ、代わりに勉強を教え助けるというものだ。
しかし実情は、上級生が指導名目で無理難題を下級生に押しつけ、できなければ罰を与える残酷なものだった。
時にはいやがることを無理やり強いることもあった。
ジュンスが留学していた学校の生徒会の長は、そのとき親の権力と財力をかさにきて、人を人とも思わないような傲慢で横暴な少年がなっていた。
その生徒は、自分より優秀な生徒を許せなかった。
貧しい家庭出身の優秀な生徒は、退屈な学校生活でたまリ続ける彼の鬱憤を晴らすための生贄にされた。彼の光栄ある世話係に任命された生徒は、ひと月も満たないうちに自ら学校を辞めてゆくのが常だった。
人並み外れて美しく聡明だったサーシャは、入学してきたときから彼の眼にとまり、当然のごとく彼の世話係に任命された。ジュンスは何度かサーシャが泣きながら悪童のたまり場と化した生徒会の部屋から出てくる姿を見ていた。なんとなく気になっても、学年も違い、まだサーシャとの接点を何も持ち合わせていなかったジュンスは、ただ見ているしかできなかった。
ある朝、試験前の練習をすべく予約していたレッスン室へ行くと、サーシャがレッスン室でピアノの練習をしていた。ジュンスに気づいたサーシャは
「アッ、ごめんなさい。 今すぐ、出てゆきます」
と、謝った。
「いいよ、そのまま続けて・・・。僕は、構わないから。
良かったら、君のピアノを聞かせてもらいたいし・・・」
サーシャと話すうちに、ジュンスはサーシャの置かれている状況に同情した。上級生の世話にほとんどの時間を奪われ、練習する時間が無くて、今度の試験に落ちそうなのだと云う。
そして試験に落ちたら優待生ではなくなり、学校を辞めなければならなくなる、と云うのだ。
「落ちても、奨学金を出してくれるという人はいるのですが、代わりに要求されるであろうことを考えると、その申し出は受けたくないんです」
と少年は云った。
ジュンスは上級生だったし、ピアノの腕も学校では主席をとる生徒だった。可哀そうになって、サーシャにピアノの手ほどきを少しばかりした。
サーシャは試験で優秀な成績を残し、優待生として学校に残れるようになった。
それからときどき誰もいない朝のレッスン室で、ジュンスとサーシャは一緒に時間を過ごすようになった。
しかしそのことをこころよく思わない者もいた。
しかし成績は優秀で、学費免除の特別優待生だった。
ジュンスが留学した学校には、悪しき伝統があった。
上級性が下級生を助け特別指導すると云う名目で、生徒会の長が下級生の中から生徒を選び、自分の身の回りの世話をさせ、代わりに勉強を教え助けるというものだ。
しかし実情は、上級生が指導名目で無理難題を下級生に押しつけ、できなければ罰を与える残酷なものだった。
時にはいやがることを無理やり強いることもあった。
ジュンスが留学していた学校の生徒会の長は、そのとき親の権力と財力をかさにきて、人を人とも思わないような傲慢で横暴な少年がなっていた。
その生徒は、自分より優秀な生徒を許せなかった。
貧しい家庭出身の優秀な生徒は、退屈な学校生活でたまリ続ける彼の鬱憤を晴らすための生贄にされた。彼の光栄ある世話係に任命された生徒は、ひと月も満たないうちに自ら学校を辞めてゆくのが常だった。
人並み外れて美しく聡明だったサーシャは、入学してきたときから彼の眼にとまり、当然のごとく彼の世話係に任命された。ジュンスは何度かサーシャが泣きながら悪童のたまり場と化した生徒会の部屋から出てくる姿を見ていた。なんとなく気になっても、学年も違い、まだサーシャとの接点を何も持ち合わせていなかったジュンスは、ただ見ているしかできなかった。
ある朝、試験前の練習をすべく予約していたレッスン室へ行くと、サーシャがレッスン室でピアノの練習をしていた。ジュンスに気づいたサーシャは
「アッ、ごめんなさい。 今すぐ、出てゆきます」
と、謝った。
「いいよ、そのまま続けて・・・。僕は、構わないから。
良かったら、君のピアノを聞かせてもらいたいし・・・」
サーシャと話すうちに、ジュンスはサーシャの置かれている状況に同情した。上級生の世話にほとんどの時間を奪われ、練習する時間が無くて、今度の試験に落ちそうなのだと云う。
そして試験に落ちたら優待生ではなくなり、学校を辞めなければならなくなる、と云うのだ。
「落ちても、奨学金を出してくれるという人はいるのですが、代わりに要求されるであろうことを考えると、その申し出は受けたくないんです」
と少年は云った。
ジュンスは上級生だったし、ピアノの腕も学校では主席をとる生徒だった。可哀そうになって、サーシャにピアノの手ほどきを少しばかりした。
サーシャは試験で優秀な成績を残し、優待生として学校に残れるようになった。
それからときどき誰もいない朝のレッスン室で、ジュンスとサーシャは一緒に時間を過ごすようになった。
しかしそのことをこころよく思わない者もいた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

妹の身代わりの花嫁は公爵様に溺愛される。
光子
恋愛
お母様が亡くなってからの私、《セルフィ=ローズリカ》の人生は、最低なものだった。
お父様も、後妻としてやってきたお義母様も義妹も、私を家族として扱わず、家族の邪魔者だと邪険に扱った。
本邸から離れた場所に建てられた陳腐な小さな小屋、一日一食だけ運ばれる質素な食事、使用人すらも着ないようなつぎはぎだらけのボロボロの服。
ローズリカ子爵家の娘とは思えない扱い。
「お義姉様って、誰からも愛されないのね、可哀想」
義妹である《リシャル》の言葉は、正しかった。
「冷酷非情、血の公爵様――――お義姉様にピッタリの婚約者様ね」
家同士が決めた、愛のない結婚。
貴族令嬢として産まれた以上、愛のない結婚をすることも覚悟はしていた。どんな相手が婚約者でも構わない、どうせ、ここにいても、嫁いでも、酷い扱いをされるのは変わらない。
だけど、私はもう、貴女達を家族とは思えなくなった。
「お前の存在価値など、可愛い妹の身代わりの花嫁になるくらいしか無いだろう! そのために家族の邪魔者であるお前を、この家に置いてやっているんだ!」
お父様の娘はリシャルだけなの? 私は? 私も、お父様の娘では無いの? 私はただリシャルの身代わりの花嫁として、お父様の娘でいたの?
そんなの嫌、それなら私ももう、貴方達を家族と思わない、家族をやめる!
リシャルの身代わりの花嫁になるなんて、嫌! 死んでも嫌!
私はこのまま、お父様達の望み通り義妹の身代わりの花嫁になって、不幸になるしかない。そう思うと、絶望だった。
「――俺の婚約者に随分、酷い扱いをしているようだな、ローズリカ子爵」
でも何故か、冷酷非情、血の公爵と呼ばれる《アクト=インテレクト》様、今まで一度も顔も見に来たことがない婚約者様は、私を救いに来てくれた。
「どうぞ、俺の婚約者である立場を有効活用して下さい。セルフィは俺の、未来のインテレクト公爵夫人なのですから」
この日から、私の立場は全く違うものになった。
私は、アクト様の婚約者――――妹の身代わりの花嫁は、婚約者様に溺愛される。
不定期更新。
この作品は私の考えた世界の話です。魔法あり。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
ローズマリーは今日も優雅に紅茶を嗜む(声劇台本用)
ソウル
ミステリー
ローズマリー家は王家の依頼や命令を遂行する名門家
ローズマリー家には奇妙で不気味な事件が舞い降りる
これは、ローズマリー家が華麗に事件を解決する物語

ヤクザと捨て子
幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子
ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。
ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。

劇場型彼女
崎田毅駿
ミステリー
僕の名前は島田浩一。自分で認めるほどの草食男子なんだけど、高校一年のとき、クラスで一、二を争う美人の杉原さんと、ひょんなことをきっかけに、期限を設けて付き合う成り行きになった。それから三年。大学一年になった今でも、彼女との関係は続いている。
杉原さんは何かの役になりきるのが好きらしく、のめり込むあまり“役柄が憑依”したような状態になることが時々あった。
つまり、今も彼女が僕と付き合い続けているのは、“憑依”のせいかもしれない?
【なろう430万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ
海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。
衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。
絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。
ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。
大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。
はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?
小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。
カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。

怪奇事件捜査File2 ドッペルゲンガーと謎の電話編
揚惇命
ミステリー
首なしライダー事件を解決して3ヶ月経った夏の暑さの厳しい中、出雲美和の新たな事件が幕を開ける。今度の怪異はドッペルゲンガー、それにえっメリーさん。浮かび上がる死のメッセージの数々、突然出られなくなる温泉宿。外との連絡も途絶え。首なしライダー事件で世話になった鈴宮楓と山南宇宙、閉鎖された温泉宿に取り残された人達と共にこの温泉宿から無事に脱出することはできるのか。怪異ドッペルゲンガーの正体とは。怪異メリーさんとの関係は。謎が謎を呼ぶ。迫り来る死の恐怖の数々に出雲美和は立ち向かうことができるのか。
※小説家になろう様・カクヨム様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる