26 / 27
第1章
王女ルナの恋 ㉖ 暗殺部隊との死闘
しおりを挟む
ソヨンたちはふた手に分かれ、建物内をひたすら走った。
ニーナと家出少年部隊、そしてジェウクが、主治医リールイと“聖なる者”ニマの救出に向かい、ソヨンはひとりでジョンジュンの妹ルナの救出に向かった。
暗殺部隊はジョンジュン抹殺が第一目的だったので、全員、情報に基づき診療室に向かって銃撃を繰り返していた。おかげでソヨンは銃撃戦に巻き込まれることなく、ルナを救出できた。
しかしニーナたちは、暗殺部隊との死闘に巻き込まれてしまった。
家出少年部隊は、K国の精鋭である暗殺部隊の攻撃を受けて、為す術も無く、倒れていった。
しかしルークのボディーガードであるジェウクは、暗殺部隊と互角に闘いリールイを救出したし、重傷を負ったルークを背負い、時間までにヘリコプターが救出に来る場所へたどり着いていた。
建物は暗殺部隊が仕掛けた爆弾で、跡形もなく吹き飛んだのだが、最後までニマ捕獲にこだわったニーナは建物を離れようとせず、結局、建物と一緒に爆死した。
ルナはニマが建物と一緒に爆死したと思うと、涙が止まらなかった。
しかしリールイは確証はなかったが、ニマがどこかで生きていると感じていた。
中国政府は、民族紛争や人権問題で何かと引き合いに出されるニマの存在そのものを、最近は疎ましく思っていた。中国政府が認めたパンチェン・ラマ11世、ノルブはすでに十分、傀儡としての役目を果たしている。ニマはもはや、重荷でしかなかった。
今回の暗殺計画は、大尉が中国政府に働きかけ、実行に移されたものだった。
自分たちが手を下すのではなく、K国政府にニマをジョンジュンとして暗殺させ、殺すものだった。
妹もろとも殺せば、彼がジョンジュン本人であり、ジョンジュンは死んだことになる。たとえ本者のジョンジュンが生きていたとしても、その政治生命は断たれ、存在価値を失うはずだった。
しかしルナが、西側の秘密情報機関に救出され、生き延びたことを、中国政府はメディアのニュースによって知るのだった。
結局、その計画は失敗し、中国政府は研究所とニマを無駄に失ったことになった。
そして大尉も、研究所と一緒に、爆死したと思われていた。
男は車の外に立ち、遙か遠くの研究所のあった場所から爆音と共に紅蓮の炎が立ち上るのを黙って見ていた。
それから男は口笛を吹きながら、軍服から私服に着替えた。そして高級車の座席に軽やかな足取りですべりこみ、隣の座席を見た。青年はまだ眠っていた。青年は寝たまま座席に、シートベルトできつく縛り付けられていた。
まだしばらく青年は目覚めない。
しかしこれから二人の旅が始まるのだった。
「宗教は民衆のアヘンだ」
マルクスのことばが大尉の心をよぎった。
ニマはまさしくアヘンであり、禁断の果実だった。
その蜜は甘く、一度その味を知ってしまったならば、その蜜を追い求めずにはいられないのだった。
たとえそれが、破滅への道だとしても、止められないことを大尉は知っていた。
前世でもそうだった。
たぶん来世でも、同じだろう・・・
ニーナと家出少年部隊、そしてジェウクが、主治医リールイと“聖なる者”ニマの救出に向かい、ソヨンはひとりでジョンジュンの妹ルナの救出に向かった。
暗殺部隊はジョンジュン抹殺が第一目的だったので、全員、情報に基づき診療室に向かって銃撃を繰り返していた。おかげでソヨンは銃撃戦に巻き込まれることなく、ルナを救出できた。
しかしニーナたちは、暗殺部隊との死闘に巻き込まれてしまった。
家出少年部隊は、K国の精鋭である暗殺部隊の攻撃を受けて、為す術も無く、倒れていった。
しかしルークのボディーガードであるジェウクは、暗殺部隊と互角に闘いリールイを救出したし、重傷を負ったルークを背負い、時間までにヘリコプターが救出に来る場所へたどり着いていた。
建物は暗殺部隊が仕掛けた爆弾で、跡形もなく吹き飛んだのだが、最後までニマ捕獲にこだわったニーナは建物を離れようとせず、結局、建物と一緒に爆死した。
ルナはニマが建物と一緒に爆死したと思うと、涙が止まらなかった。
しかしリールイは確証はなかったが、ニマがどこかで生きていると感じていた。
中国政府は、民族紛争や人権問題で何かと引き合いに出されるニマの存在そのものを、最近は疎ましく思っていた。中国政府が認めたパンチェン・ラマ11世、ノルブはすでに十分、傀儡としての役目を果たしている。ニマはもはや、重荷でしかなかった。
今回の暗殺計画は、大尉が中国政府に働きかけ、実行に移されたものだった。
自分たちが手を下すのではなく、K国政府にニマをジョンジュンとして暗殺させ、殺すものだった。
妹もろとも殺せば、彼がジョンジュン本人であり、ジョンジュンは死んだことになる。たとえ本者のジョンジュンが生きていたとしても、その政治生命は断たれ、存在価値を失うはずだった。
しかしルナが、西側の秘密情報機関に救出され、生き延びたことを、中国政府はメディアのニュースによって知るのだった。
結局、その計画は失敗し、中国政府は研究所とニマを無駄に失ったことになった。
そして大尉も、研究所と一緒に、爆死したと思われていた。
男は車の外に立ち、遙か遠くの研究所のあった場所から爆音と共に紅蓮の炎が立ち上るのを黙って見ていた。
それから男は口笛を吹きながら、軍服から私服に着替えた。そして高級車の座席に軽やかな足取りですべりこみ、隣の座席を見た。青年はまだ眠っていた。青年は寝たまま座席に、シートベルトできつく縛り付けられていた。
まだしばらく青年は目覚めない。
しかしこれから二人の旅が始まるのだった。
「宗教は民衆のアヘンだ」
マルクスのことばが大尉の心をよぎった。
ニマはまさしくアヘンであり、禁断の果実だった。
その蜜は甘く、一度その味を知ってしまったならば、その蜜を追い求めずにはいられないのだった。
たとえそれが、破滅への道だとしても、止められないことを大尉は知っていた。
前世でもそうだった。
たぶん来世でも、同じだろう・・・
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
豁サ逕コ縲(死町)season3・4・5
霜月麗華
ミステリー
高校1年生の主人公松原鉄次は竹尾遥、弘田早苗、そして凛と共に金沢へ、そして金沢ではとある事件が起きていた。更に、鉄次達が居ないクラスでも呪いの事件は起きていた。そして、、、過去のトラウマ、、、
3つのストーリーで構成される『死町』、彼らは立ち向かう。
全てに
フェイタル・アトラクション~「長い旅の始まり」が意味するもの
夢織人
ミステリー
昨年、謎の死をとげた韓流スター、ソン・ジェリムに関する考察であり、ミステリー小説。そしてエッセイです。
私は彼の死を、メディアで報道されたり、噂されていたようなものではなく、命をかけた愛の告白だったと思っています。そして実在した人物なので、創作という形でしかその真実に迫ることは出来ないと思い、こうして書いています。
前途有望だった韓流スターは、なぜに自ら死を選ぶような決断をしたのか?
「ダビデの再臨」と謳われたモデル出身の美青年が、本当に恋して愛した心の恋人は、いったい誰だったのか?

マクデブルクの半球
ナコイトオル
ミステリー
ある夜、電話がかかってきた。ただそれだけの、はずだった。
高校時代、自分と折り合いの付かなかった優等生からの唐突な電話。それが全てのはじまりだった。
電話をかけたのとほぼ同時刻、何者かに突き落とされ意識不明となった青年コウと、そんな彼と昔折り合いを付けることが出来なかった、容疑者となった女、ユキ。どうしてこうなったのかを調べていく内に、コウを突き落とした容疑者はどんどんと増えてきてしまう───
「犯人を探そう。出来れば、彼が目を覚ますまでに」
自他共に認める在宅ストーカーを相棒に、誰かのために進む、犯人探し。
ミノタウロスの森とアリアドネの嘘
鬼霧宗作
ミステリー
過去の記録、過去の記憶、過去の事実。
新聞社で働く彼女の元に、ある時8ミリのビデオテープが届いた。再生してみると、それは地元で有名なミノタウロスの森と呼ばれる場所で撮影されたものらしく――それは次第に、スプラッター映画顔負けの惨殺映像へと変貌を遂げる。
現在と過去をつなぐのは8ミリのビデオテープのみ。
過去の謎を、現代でなぞりながらたどり着く答えとは――。
――アリアドネは嘘をつく。
(過去に別サイトにて掲載していた【拝啓、15年前より】という作品を、時代背景や登場人物などを一新してフルリメイクしました)

【完結】共生
ひなこ
ミステリー
高校生の少女・三崎有紗(みさき・ありさ)はアナウンサーである母・優子(ゆうこ)が若い頃に歌手だったことを封印し、また歌うことも嫌うのを不審に思っていた。
ある日有紗の歌声のせいで、優子に異変が起こる。
隠された母の過去が、二十年の時を経て明らかになる?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる