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第1章
王女ルナの恋 ㉖ 暗殺部隊との死闘
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ソヨンたちはふた手に分かれ、建物内をひたすら走った。
ニーナと家出少年部隊、そしてジェウクが、主治医リールイと“聖なる者”ニマの救出に向かい、ソヨンはひとりでジョンジュンの妹ルナの救出に向かった。
暗殺部隊はジョンジュン抹殺が第一目的だったので、全員、情報に基づき診療室に向かって銃撃を繰り返していた。おかげでソヨンは銃撃戦に巻き込まれることなく、ルナを救出できた。
しかしニーナたちは、暗殺部隊との死闘に巻き込まれてしまった。
家出少年部隊は、K国の精鋭である暗殺部隊の攻撃を受けて、為す術も無く、倒れていった。
しかしルークのボディーガードであるジェウクは、暗殺部隊と互角に闘いリールイを救出したし、重傷を負ったルークを背負い、時間までにヘリコプターが救出に来る場所へたどり着いていた。
建物は暗殺部隊が仕掛けた爆弾で、跡形もなく吹き飛んだのだが、最後までニマ捕獲にこだわったニーナは建物を離れようとせず、結局、建物と一緒に爆死した。
ルナはニマが建物と一緒に爆死したと思うと、涙が止まらなかった。
しかしリールイは確証はなかったが、ニマがどこかで生きていると感じていた。
中国政府は、民族紛争や人権問題で何かと引き合いに出されるニマの存在そのものを、最近は疎ましく思っていた。中国政府が認めたパンチェン・ラマ11世、ノルブはすでに十分、傀儡としての役目を果たしている。ニマはもはや、重荷でしかなかった。
今回の暗殺計画は、大尉が中国政府に働きかけ、実行に移されたものだった。
自分たちが手を下すのではなく、K国政府にニマをジョンジュンとして暗殺させ、殺すものだった。
妹もろとも殺せば、彼がジョンジュン本人であり、ジョンジュンは死んだことになる。たとえ本者のジョンジュンが生きていたとしても、その政治生命は断たれ、存在価値を失うはずだった。
しかしルナが、西側の秘密情報機関に救出され、生き延びたことを、中国政府はメディアのニュースによって知るのだった。
結局、その計画は失敗し、中国政府は研究所とニマを無駄に失ったことになった。
そして大尉も、研究所と一緒に、爆死したと思われていた。
男は車の外に立ち、遙か遠くの研究所のあった場所から爆音と共に紅蓮の炎が立ち上るのを黙って見ていた。
それから男は口笛を吹きながら、軍服から私服に着替えた。そして高級車の座席に軽やかな足取りですべりこみ、隣の座席を見た。青年はまだ眠っていた。青年は寝たまま座席に、シートベルトできつく縛り付けられていた。
まだしばらく青年は目覚めない。
しかしこれから二人の旅が始まるのだった。
「宗教は民衆のアヘンだ」
マルクスのことばが大尉の心をよぎった。
ニマはまさしくアヘンであり、禁断の果実だった。
その蜜は甘く、一度その味を知ってしまったならば、その蜜を追い求めずにはいられないのだった。
たとえそれが、破滅への道だとしても、止められないことを大尉は知っていた。
前世でもそうだった。
たぶん来世でも、同じだろう・・・
ニーナと家出少年部隊、そしてジェウクが、主治医リールイと“聖なる者”ニマの救出に向かい、ソヨンはひとりでジョンジュンの妹ルナの救出に向かった。
暗殺部隊はジョンジュン抹殺が第一目的だったので、全員、情報に基づき診療室に向かって銃撃を繰り返していた。おかげでソヨンは銃撃戦に巻き込まれることなく、ルナを救出できた。
しかしニーナたちは、暗殺部隊との死闘に巻き込まれてしまった。
家出少年部隊は、K国の精鋭である暗殺部隊の攻撃を受けて、為す術も無く、倒れていった。
しかしルークのボディーガードであるジェウクは、暗殺部隊と互角に闘いリールイを救出したし、重傷を負ったルークを背負い、時間までにヘリコプターが救出に来る場所へたどり着いていた。
建物は暗殺部隊が仕掛けた爆弾で、跡形もなく吹き飛んだのだが、最後までニマ捕獲にこだわったニーナは建物を離れようとせず、結局、建物と一緒に爆死した。
ルナはニマが建物と一緒に爆死したと思うと、涙が止まらなかった。
しかしリールイは確証はなかったが、ニマがどこかで生きていると感じていた。
中国政府は、民族紛争や人権問題で何かと引き合いに出されるニマの存在そのものを、最近は疎ましく思っていた。中国政府が認めたパンチェン・ラマ11世、ノルブはすでに十分、傀儡としての役目を果たしている。ニマはもはや、重荷でしかなかった。
今回の暗殺計画は、大尉が中国政府に働きかけ、実行に移されたものだった。
自分たちが手を下すのではなく、K国政府にニマをジョンジュンとして暗殺させ、殺すものだった。
妹もろとも殺せば、彼がジョンジュン本人であり、ジョンジュンは死んだことになる。たとえ本者のジョンジュンが生きていたとしても、その政治生命は断たれ、存在価値を失うはずだった。
しかしルナが、西側の秘密情報機関に救出され、生き延びたことを、中国政府はメディアのニュースによって知るのだった。
結局、その計画は失敗し、中国政府は研究所とニマを無駄に失ったことになった。
そして大尉も、研究所と一緒に、爆死したと思われていた。
男は車の外に立ち、遙か遠くの研究所のあった場所から爆音と共に紅蓮の炎が立ち上るのを黙って見ていた。
それから男は口笛を吹きながら、軍服から私服に着替えた。そして高級車の座席に軽やかな足取りですべりこみ、隣の座席を見た。青年はまだ眠っていた。青年は寝たまま座席に、シートベルトできつく縛り付けられていた。
まだしばらく青年は目覚めない。
しかしこれから二人の旅が始まるのだった。
「宗教は民衆のアヘンだ」
マルクスのことばが大尉の心をよぎった。
ニマはまさしくアヘンであり、禁断の果実だった。
その蜜は甘く、一度その味を知ってしまったならば、その蜜を追い求めずにはいられないのだった。
たとえそれが、破滅への道だとしても、止められないことを大尉は知っていた。
前世でもそうだった。
たぶん来世でも、同じだろう・・・
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