聖なる者~王女ルナの恋

夢織人

文字の大きさ
上 下
22 / 27
第1章

王女ルナの恋 ㉒ ルナはやっとニマに再会できた。

しおりを挟む
「ニマ、やっと君をここから出してあげることが出来そうなんだ」
 リールイは嬉しそうにニマにそう言った。

 逃げるためには、ニマが正気であることが必要だった。
 リールイは先週から、記憶の埋め込みは中止していた。

 すでにニマは、本来の記憶を取り戻し、聖なる者の輝きに包まれていた。
 脱出計画実行までは、ニマの記憶が戻ったことを誰にも気づかれてはならなかった。 
 ニマは体調を崩し静養が必要であるとして、リールイはニマを誰にも会わせなかった。

 ルナがニマのことを心配して見舞いに訪れても、リールイは決して会わせなかった。しかしどんなに用心しても、隙は出来るもので、その隙をついて、ルナはニマに再び会った。

 それは大尉が、長い間、顔を見せないニマの病状を気にして、リールイを呼び出したときだった。
 ルナは、やっと再会できたニマの顔を見たとき、なぜだか涙が溢れて止まらなかった。そして、そのようなルナの様子を見たとき、ニマは不思議な感情に襲われた。
 今まで経験したことのない感情だった。
 ニマはいつしかその腕を伸ばし、泣きじゃくるルナをその胸に抱きしめていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

フェイタル・アトラクション~「長い旅の始まり」が意味するもの

夢織人
ミステリー
昨年、謎の死をとげた韓流スター、ソン・ジェリムに関する考察であり、ミステリー小説。そしてエッセイです。 私は彼の死を、メディアで報道されたり、噂されていたようなものではなく、命をかけた愛の告白だったと思っています。そして実在した人物なので、創作という形でしかその真実に迫ることは出来ないと思い、こうして書いています。 前途有望だった韓流スターは、なぜに自ら死を選ぶような決断をしたのか? 「ダビデの再臨」と謳われたモデル出身の美青年が、本当に恋して愛した心の恋人は、いったい誰だったのか?

【完結】Amnesia(アムネシア)~カフェ「時遊館」に現れた美しい青年は記憶を失っていた~

紫紺
ミステリー
郊外の人気カフェ、『時游館』のマスター航留は、ある日美しい青年と出会う。彼は自分が誰かも全て忘れてしまう記憶喪失を患っていた。 行きがかり上、面倒を見ることになったのが……。 ※「Amnesia」は医学用語で、一般的には「記憶喪失」のことを指します。

夜の動物園の異変 ~見えない来園者~

メイナ
ミステリー
夜の動物園で起こる不可解な事件。 飼育員・えまは「動物の声を聞く力」を持っていた。 ある夜、動物たちが一斉に怯え、こう囁いた—— 「そこに、"何か"がいる……。」 科学者・水原透子と共に、"見えざる来園者"の正体を探る。 これは幽霊なのか、それとも——?

ハイブリッド・ブレイン

青木ぬかり
ミステリー
「人とアリ、命の永さは同じだよ。……たぶん」  14歳女子の死、その理由に迫る物語です。

【キャラ文芸大賞 奨励賞】変彩宝石堂の研磨日誌

蒼衣ユイ/広瀬由衣
ミステリー
矢野硝子(しょうこ)の弟が病気で死んだ。 それからほどなくして、硝子の身体から黒い石が溢れ出すようになっていた。 そんなある日、硝子はアレキサンドライトの瞳をした男に出会う。 アレキサンドライトの瞳をした男は言った。 「待っていたよ、アレキサンドライトの姫」 表紙イラスト くりゅうあくあ様

マクデブルクの半球

ナコイトオル
ミステリー
ある夜、電話がかかってきた。ただそれだけの、はずだった。 高校時代、自分と折り合いの付かなかった優等生からの唐突な電話。それが全てのはじまりだった。 電話をかけたのとほぼ同時刻、何者かに突き落とされ意識不明となった青年コウと、そんな彼と昔折り合いを付けることが出来なかった、容疑者となった女、ユキ。どうしてこうなったのかを調べていく内に、コウを突き落とした容疑者はどんどんと増えてきてしまう─── 「犯人を探そう。出来れば、彼が目を覚ますまでに」 自他共に認める在宅ストーカーを相棒に、誰かのために進む、犯人探し。

カフェ・シュガーパインの事件簿

山いい奈
ミステリー
大阪長居の住宅街に佇むカフェ・シュガーパイン。 個性豊かな兄姉弟が営むこのカフェには穏やかな時間が流れる。 だが兄姉弟それぞれの持ち前の好奇心やちょっとした特殊能力が、巻き込まれる事件を解決に導くのだった。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

処理中です...