聖なる者~王女ルナの恋

夢織人

文字の大きさ
上 下
7 / 27
第1章

王女ルナの恋 ⑦ ロシア富豪の娘ニーナと秘密捜査官ソヨンは学生時代から続く恋のライバルだった。

しおりを挟む
「ダメです。事前予約無しでは、社長には会えません」
 
 外で秘書と誰かが揉めているようだった。
 しかしこの鉄壁の警備を誇る人材派遣会社に、
『どうやって事前予約無しに入ってこれたのか?』
と、ニーナは訝かしんだ。


「何事なの?」
とニーナは秘書に内線で問いかけた。

「私よ、ニーナ。大学で同期だったソヨン」
と、秘書とは違う人物が答えた。

「ソヨン?」

「そう、ソヨン。あなた私にヘッドハンティングのオファーをしたことを忘れたの?」

「それにしても、あなたの実力は認めるけれど、派手にやってくれたわね」
 今頃になって、賊が侵入したと連絡が入ってきたところだった。

「あなたの人材派遣会社、表向きはITセキュウリティーの派遣会社だけれど、本当は紛争地に傭兵を派遣しているのよね。それにしては、お粗末だわ」

「仕方がないでしょ。私の家族はプーチンとはまるで関係無いのに、ウクライナ侵攻のおかげで、関係のない私達まで、資産凍結の憂き目にあったのだから・・・」

「それでみんな、めぼしい人材は、逃げて行ってしまった・・・ってことなのね。
 それで私に、白羽の矢・・・ってこと?」
とソヨンは、ロシア富豪の娘であり、留学時代の天敵ニーナにあきれたように言った。

「今度のプロジェクトは、仕事とは関係の無い、個人的なプロジェクトなの。
 でもリールイに関係のあるプロジェクトだから、あなたは断れない。
 あなたは未だに独身。リールイのことを、れられずにいる。そうなんでしょ?」

 ニーナとソヨンは、学生時代、リールイの愛を巡って熾烈な恋のバトルを繰り広げた。結局、この闘いに勝者は無く、そのままリールイは母国へ戻り、消息を絶ったのだった。ソヨンが秘密捜査機関の情報分析官に応募したのは、リールイの消息を知るためでもあった。

「あなたがリールイの情報を秘かに探っていたのは、知っていたわ」
とニーナは冷ややかな笑みを浮かべながら、ソヨンに言った。

「私も知っていたわ。あなたが秘かにリールイの情報を集めていることを・・・」
と、ソヨンも負けずに言い返した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

霊山の裁き

聖岳郎
ミステリー
製薬会社のMRを辞め、探偵となった空木健介。登山と下山後の一杯をこよなく愛する探偵が、初の探偵仕事で事件に巻き込まれる。初仕事は不倫調査の尾行だったが、その男は滋賀県と岐阜県の県境に位置する霊仙山の廃屋で死体で見つかった。死体は一体誰?さらに、空木の元に、女性からの手紙が届き、山形県の霊山、月山に来るように依頼される。その月山の山中でも、死体が発見される。転落死した会社員は事故だったのか? とある製薬会社の仙台支店に渦巻く、保身とエゴが空木健介によって暴かれていく山岳推理小説。

【完結】少女探偵・小林声と13の物理トリック

暗闇坂九死郞
ミステリー
私立探偵の鏑木俊はある事件をきっかけに、小学生男児のような外見の女子高生・小林声を助手に迎える。二人が遭遇する13の謎とトリック。 鏑木 俊 【かぶらき しゅん】……殺人事件が嫌いな私立探偵。 小林 声 【こばやし こえ】……探偵助手にして名探偵の少女。事件解決の為なら手段は選ばない。

空の船 〜奈緒の事件帳〜

たまご
ミステリー
4年前、事故で彼氏の裕人(ヒロト)を失った奈緒(ナオ)は、彼の姉である千奈津(チナツ)と未だ交流を続けていた。あくる日のこと、千奈津が「知人宅へ一緒に行って欲しい」と頼み込んだことで、奈緒は、千奈津に同行するが、知人宅を訪れると、知人の夫が倒れているのを発見してしまい…。

隠蔽(T大法医学教室シリーズ・ミステリー)

桜坂詠恋
ミステリー
若き法医学者、月見里流星の元に、一人の弁護士がやって来た。 自殺とされた少年の死の真実を、再解剖にて調べて欲しいと言う。 しかし、解剖には鑑定処分許可状が必要であるが、警察には再捜査しないと言い渡されていた。 葬儀は翌日──。 遺体が火葬されてしまっては、真実は闇の中だ。 たまたま同席していた月見里の親友、警視庁・特殊事件対策室の刑事、高瀬と共に、3人は事件を調べていく中で、いくつもの事実が判明する。 果たして3人は鑑定処分許可状を手に入れ、少年の死の真実を暴くことが出来るのか。

うつし世はゆめ

ねむていぞう
ミステリー
「うつし世はゆめ、よるの夢こそまこと」これは江戸川乱歩が好んで使っていた有名な言葉です。その背景には「この世の現実は、私には単なる幻としか感じられない……」というエドガ-・アラン・ポ-の言葉があります。言うまでもなく、この二人は幻想的な小説を世に残した偉人です。現実の中に潜む幻とはいったいどんなものなのか、そんな世界を想像しながら幾つかの掌編を試みてみました。

聖なる者~コードネームはモナリザ

夢織人
ミステリー
「21世紀のタジオ」と呼ばれた美少年スターが、兵役で任命された仕事は「モナリザ」というコードネームで呼ばれる秘密諜報機関の諜報員だった。 ★秘密諜報部員「モナリザ」のプロフィール 美少年スターとして一世を風靡したが、遺伝性の病気を発症し、治療中。 兵役で政府秘密機関の諜報員に抜擢される。    ★モナリザの特技紹介 得意技:ハニートラップで敵を味方に寝返らせる 必殺兵器:死の接吻→無理強いするともれなく死が訪れます 秘密兵器:スターとの恋→絶対絶命jのときのみ正体を明かし逃亡を手伝わせる

隣人

日越拳智
ミステリー
僕は気になっていた。隣人のことが。いつからか。 気にしなければ良かったと、後悔するにはもう遅いだろう。

儚く遠く、近いところから

くるっ🐤ぽ
ミステリー
「誰か蘇ったか」……幽霊か妖怪か、あるいは、別の何かかよく分からない、銀髪の青年がそう言った。疲れたような、低いしゃがれ声で。深澄が家に帰ると、そこには「母」を名乗る和服の女性が、いつも待っていた。優しく、柔らかく、深澄を受け止めるように……「母」は、蘇った「ナニカ」なのだろうか。あるいは……

処理中です...