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まさかの地球で激闘が
名家と同盟現代で
しおりを挟む「いや、『巫家』の事はそっちで話してくれよ、俺はそろそろ帰りたいんだけど」
試合に勝ったし、テルの件については、何もしてこないだろうから、俺にはもう用なんかないんだよな。
今後『巫家』と関わる予定もないし。
「いえ、ゼロ。貴方にも関係がある事ですので、是非聴いて頂きたいのです」
「ん?まぁ、少しくらいなら付き合ってもいいが」
「有難う御座います。では、本題に入りますが…」
どうせ、俺の正体を教えて欲しいとかだろうな。分家筆頭を倒した奴なんて、危険すぎて確認しておきたいと思うし。
まぁ、素直に教えてあげる気は無いが…
「私共、『巫家』はゼロ、貴方個人と同盟を結ぶことを提案させて頂きます」
「は?」
この当主いきなりなんてこと言いやがる…同盟?正気か?こんな変な格好した奴と同盟を結ぶ名家がどこにあるんだよ!!
「正気か?」
「ええ、正気です。『巫家』は、貴方をそれだけ評価させて頂いていますから」
ひよこと子猫と子供を連れた、狐面を被ったコスプレ男にそんな評価をするなんて。当主は危ない薬でもやってるんじゃないのか?
街中でそんなやつ見たら確実に職質コースまっしぐらだぞ。
「それは…まあ、思い切った決断をしたな。そんな事、当主が許しても、他に反対する奴が出てくるんじゃないのか?」
門番のアイツとか、絶対文句言うだろうな。
「私に勝ったんだ。誰にも文句は言わせない」
突如、戸が開き、そこから一人と一匹が入ってくる。
それは当然…
「あ、おっさん無事だったか!誰も助けてなかったから少し気になってたんだよな」
皇矢と焔姫だ。
魔力タンク扱いされて、太陽が落下しても放置。最後は誰にも触れられてなかったからな。
実際死んでるんじゃないかって思ってたし。
「なんとか…あの後、最後まで誰にも助けてもらえずに、一人で這いずりながら、武道場を出て行きました…」
「おっさん…元気出せよ」
このおっさん不憫だな。分家筆頭であるにも関わらず、こんな扱いなんて。
いつのまにか、紡は皇矢の事を気に入っていた。
「んんっ。それはいい。今は同盟の件ですよ。
貴方は分家筆頭である、私に勝ったのです。それだけでも、評価されるに値します」
「そうです。皇矢は陰陽師としても、上位の実力を有しています。それを一方的に倒したと言うのであれば、それは同盟相手として問題ないですよ」
このおっさんそんな凄かったのか。可哀想なだけじゃなかったんだな。
二人が、ゼロを褒め称える中、この場に一羽、それを認められない者がいた。
「皇矢はまだ負けてないわよ!私が負けてないんですもの。まだ決着がついてない時点で、あの勝負は無効よ!だからこんな奴と同盟を結ぶ必要なんてないわよ!!」
「えっと…。こんなこと言ってる奴もいるんだけど、そこんとこはどうなの?」
この鳥さん、戦いの時から俺の事嫌っている様だったし、当然同盟には反対の様だな。
「はぁ…焔姫。貴方は静かにしてなさい。折角順調に話が進んでいたのに」
可哀想に宗主様も大変だな。ヒステリックに叫ぶ焔姫を止める蒼華は、かなり疲労の色が浮かんでいた。
「で、でも…」
「でもではありません。この事は、当主として先程伝えておいたはずです。ゼロにはそれ程の実力があると。それは焔姫も分かっているのでしょう」
「っ…分かってるわよ…」
うわ、そこまで認めるのが嫌なのか。声がかなりちっちゃいなおい。
苦虫を噛み潰したような表情で小さく焔姫は返していた。
「邪魔が入り申し訳ありません。それで、『巫家』としては、同盟を希望したいのですが」
「同盟っていうのは、どんな内容で?」
「そうですね。
一、相互武力干渉の禁止。
二、相互臨時の際の救援。
三、相互情報共有。
四、相互技術共有。
と言ったところです。
二は、できる限りのサポートをする事。三と四は、強制ではなく、あくまでも自主的にということで。貴方にも、此方に伝えたくない事などが有るでしょうし」
成る程な、つまりは『巫家』へと、俺が武力干渉しないのが目的ってわけか。
「如何でしょうか。其方にも、損のない話かと思いますが」
んー。急な話だしなぁ…実際、もう『巫家』と関わる気なんて無いし、同盟なんてどうでもいいんだけど。
「ちょっと待っててくれ」
考える時間を作るために、紡は一言断りを入れ、
「お前らこっちに来い」
部屋で遊ぶ三人を呼ぶ。
紡の視線の先。先程から、静かに過ごしていた三人はそこで…
人生ゲームをしていた。
なんでアイツらこんなとこで人生ゲームしてるんだよ…皇牙の部屋から黙って持ってきやがったな。
「ご主人よく呼んでくれたにゃ!」
「お姉ちゃん…ずるいです…」
「にゃん吉、呼ばれても借金は無くならないわよ」
どうやら、にゃん吉が借金まみれでボコボコにされている様だな。
「にゃん吉、借金してるのか?」
「借金じゃないにゃ。ただ、給料を数ヶ月先まで前借りしてるだけにゃ!」
それをこの世では借金というんだよ。
「それはいいとして、なんで私達は呼ばれたのかしら」
「私…難しい話…分からないです…」
「大丈夫だ、そこまで難しくないから。
なんかな、其処の人達が、俺達と同盟を組みたいらしいんだけど、どうしよっかなって思ってな」
実際俺はどうでもいいし、にゃん吉達に決めてもらうとしよう。
「同盟って、私達と?そんな個人と組む同盟なんてあるんですの?」
「ああ、なんか俺達の事を、それ程評価してるんだとよ」
あまり、そこんとこきかれても、俺もよく分かってないんだけどな。
「私が言うのもなんですけど、こんな集団を評価するなんて、ここの人達は正気ですの?」
フォル…やめてあげて。俺もそう思うけど、後ろで聞いてる当主様の顔が引きつってるから。
「そこは、気にしないでおいてくれ。まぁ、俺は今後『巫家』と関わる気が無いし、こんな同盟どっちでも良いんだよ。だから、お前らが好きな方にして良いぞ」
ゼロのこの発言に、当主は溜息を吐きながら頭を抱え、皇矢は固まり動かなくなる。
「にゃーは反対にゃ!テルに何するか分からないこんな家は消し飛ばすに一票にゃよ!ついでに借金も消しとばすにゃ!」
まず、にゃん吉は反対と。
「私も反対ですわ。この家の者がそれを守るとも思えないですわよ。即刻潰すべきですわね。借金は潰させませんけど」
フォルも反対か。
もう決定したけど、最後にテルの意見も聞いとくか。ここに来た理由の当事者だしな。
「テルはどう思う?」
「同盟っていうのが…よくわからないです…」
まぁ、そうだろうな。そう難しく考えずに、直感とかでいいんだけど。
「でも…私は皆仲良くが…嬉しいです…」
そうか…テルはやはり良い子だな。
優しく頭を撫でると、目を細めながらテルは喜んでいた。
なんか適当に決めようとしていた俺が汚く見えるな。
でも、残念だ。もう、人数的に反対の方が多いから…
「同盟に賛成にゃよ」
「いいですわね同盟。全面的にテルに賛成いたしますわ」
こいつらは…テルの事好きすぎだろう。
意見がテルによりコロコロ変わる二匹に紡は呆れていた。
「はぁ…じゃあ、三人とも同盟に賛成ってことでいいか?」
「仲良くが…一番です…」
「んにゃ、当然にゃ」
「そうですわ、仲良しが一番ですわよ」
「そうか、分かった。もう、人生ゲームに戻っていいぞ」
にゃん吉達は戻って、また人生ゲームを始めていく。
『これはまた…凄いわね』
『お姉ちゃん…可哀想です…』
『にゃー!?冤罪により、職を失うって、今後借金をどうしたらいいにゃー!!』
頑張れにゃん吉。いつか返せる日が来るはずだ。
「一応話し合いの結果、同盟に賛成することにした」
「はぁ…此方としては同盟を結んだら、是非友好関係を築きたいのですけど」
そんな面倒な事をするわけ無いだろ。俺の中にはそんな優しさなどすでに無い。
「悪いな、陰陽師自体、あまり好きじゃないから」
『巫家』は関係ないけど、どうにも陰陽師って聞くと、彼奴らの事を思い出すから。
「そうですか…では、できる限り信頼を築けるように頑張ります」
そんないい笑顔で言われてもなぁ…
「そっちで頑張ってくれ。で、俺達はもう帰ってもいいのか?」
「出来れば、貴方の素性とか知りたいけれど、今は聞けなさそうですので諦めます。
一応今から、同盟の正式な書面を用意いたしますので少し此処でお待ちになっておいてください。」
「了解。できるだけ早く宜しくな」
蒼華は皇矢を連れて、室内から出て行こうと…
―――ドバァァアンッッッ!!!
その時、屋敷全てに行き渡るほどの爆音が轟く。
手榴弾が爆発したようなその音は、屋敷にいた全ての者達が心臓に衝撃を感じたほど強く、皆が蟻の巣を突いたようにあたふたとざわめいている。
「皇矢、確認を!」
「はっ、行って参ります!」
当主として、迅速に指示を出し、自体の確認を急ぐ。
蒼華としても予想外の事態。整然と指示を出しながらも、額には冷や汗が見え隠れしている。
「申し訳ありません。確認しますので少しお待ちください」
「あー、うん。頑張ってくれ」
蒼華はそそくさと、部屋を後にしていく。事態の収拾に当主自ら乗り出して行った。
いきなり爆撃されるなんて、俺達と同盟を結んでる場合じゃないだろ…
なに?どっかと戦争でもしてるのか?
此処は日本だぞ。そういうのは紛争地域でしてくれよ…
はぁ…一般人には困る話だな。
未だざわめく屋敷内を呆れながら紡は見つめていた。
「お!にゃん吉、あと2でゴールだぞ」
「これは、いきそうですわね」
「お姉ちゃん…頑張ってです…」
あれから一向に戻ってくる気配もなく、暇を潰すため、三人の人生ゲームを見て過ごす。
既に、テルとフォルはゴールしており、順位も確定済み。
最下位が確定したにゃん吉をせめてゴールまで行けるように応援を続けていた。
にゃん吉は悪運に悪運を重ね、現在資金ゼロ、家も無く、職もない。あるのは大量の負債だけ。
誰から見ても、ボロボロの人生を着実に歩んでいた。
この人生を早く終わらせてあげて。虚ろな目でルーレットを回し続けるにゃん吉に、ただそれだけを願い、見守り続けていた。
そして、訪れた絶好のチャンス。
10分の1で、ゴールへとたどり着くことができる位置にようやくたどり着く。
「後はゴールだけだ。確率90%、もう決まったようなものだろ」
「まかせるにゃ!此処で引かないでいつ引くにゃよ!!」
にゃん吉が渾身の力を込め、ルーレットを掴む。
「これで、終わりにゃぁぁああ!!」
―――カラカラカラ…
勢いよくルーレットが回り出し、にゃん吉の運命が巡っていく。
さぁ、もうこれで終わりだ。もう十分傷ついた。これ以上にゃん吉を虐めないであげてくれ!
―――カラカラ…カラ…
静かにルーレットが止まる。にゃん吉の運命が決まった。
皆が注目して結果を見つめる。そこに示された数字は…
『1』
それは、現状で最も残酷な出目。幸運の女神に全く振り向いてもらえないにゃん吉の人生は、最後まで振り向かない。
「えっと、1は。スタートに戻るですわね」
もう一回遊べるドン。
その結果を見つめながら、にゃん吉は、その毛色と同じく真っ白な灰になった。
「盛り上がっているところ申し訳ないんですけど、少し良いかしら」
俺達がいたたまれない空気に包まれる中、部屋に戻ってきた蒼華。その背後には二人の人物を連れていた。
「ん?もう戦争は良いのか?てか、その背後の二人は…」
「さっきの爆発音は、この子達が原因だったみたいで、話をよく聞いてみると、『お兄ちゃんを出せ!』って言って聞かないから、確認で連れてきたのよ」
お兄ちゃん…何だろう、すごい嫌な予感が…
うちに、俺をそう呼ぶ二人の子供がいたと思うんだが。まさかな…
蒼華が横にずれ、後ろに控えるその二人が目に入る。
それは、間違いない。俺たちの家族で、俺の契約者で、お菓子魔法を使える、可愛らしい双子の…
「「(お)兄ちゃん!!!」」
コアとチコがそこに居た。
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