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まさかの地球で激闘が
遂に交わる話し合い
しおりを挟む「はぁ…着きました…此処になります」
とても嫌そうにしている、優華と皇牙から連れられ、紡達はある屋敷の前まで訪れていた。
「此処が『巫家』か…」
流石、陰陽師の名家。ただの家だけでも驚くほど広いな。
紡の目の前には巨大な屋敷が聳え建っていた。
門番が複数見張っている場所が家とか…流石にかなり金を持ってるみたいだな。
「よし、行くとするか」
紡は勝手に屋敷へと進んで行く。
だが、そんな事をすれば…
「そこのお前!止まれ!!」
当然のように門番に止められる。
それはそうだろう、今の紡はラフな格好の上に狐面を付けている。
門番達から見れば確実に不審者であった。
「どうした?なんか用か?」
急に呼び止めてきて何の用だよ…
「お前は何者だ?ここは『巫家』お前みたいな不審者を入れるわけにはいかないんだが」
おいおい、初対面で不審者なんて失礼な…
「不審者とか、傷つくなぁ…なぁ、お前ら。どうにかしてくれよ…」
こういう時こそこの二人がどうにかしてくれなきゃな。
紡は皇牙と優華へと呼びかける。
「秋夜さん!この人達は当主様への客人ですので通して大丈夫です!!」
お、この門番と次期当主様は知り合いだったか。
「お、お嬢様…かしこまりました。申し訳ありませんお客人通って大丈夫です」
問題が起こらずに済み、隣で皇牙はため息を吐く。
「そうか、んじゃ、通らせてもらうわ」
すれ違うように隣を通って行く。
だが、ここで問題が発生する。
「っ!お嬢様、離れてください!そこに妖がいます!!」
急に叫び出した秋夜が見つめる先。そこに居たのは、テルであった。
「滅せよ妖!『呪符、風刃』」
テルに向かい風の刃が迫って行く。
だが、そんな攻撃をお姉ちゃんが許すはずもなく…
「邪魔にゃ」
にゃん吉の蹴りとともに刃は消え失せて行く。
急な攻撃に対し、誰も怪我をせずに済んだ、最善な結果。
だが現場は最悪な状況へと包まれる。
「おい、今テルに攻撃したな?」
此奴、うちの子に手を出しやがったな…
当然のように紡はキレる。
「ご主人、待つにゃ。此奴を狩るのはにゃーの仕事にゃ」
同調するようににゃん吉もキレる。
「っ!申し訳ありません!きちんと報告が行き渡って無かったようで、この者には後に、こちらできちんと処罰を与えますのでここは収めていただけませんか!!」
「も、申し訳ない!おい、秋夜も頭を早く下げろ!!」
紡達の凶悪性を知っている優華と皇牙はダラダラと冷や汗を流しながら必死に言い繕う。
ここで紡達に暴れられた場合、『巫家』の総力戦となるだろう。そして、最悪の場合は…
((『巫家』が消滅する…それだけは防がなければ…))
家を潰すわけにはいかない。二人は全力で止めにかかる。
だが、それも叶わない…
どんな名家にも、バカは居るのであろう。
必死に謝る二人の後ろから…
「お嬢様と皇牙!何をやっているんですか。その程度の妖早く殺しましょう」
バカが声をかける。それはこの場で最も最悪の一言であった。
「なるほどな、テルを殺すって言ってるのか。
俺たちの前で、大切なテルのことを殺すと。
ならば、お前が殺されても文句はないな」
「ダメにゃ。あれはにゃーの獲物。ご主人は手を出しちゃダメにゃ」
最悪の二人が動き出す。
「なんだよお前ら!俺は『巫家』の分家、如月の者だぞ!お前ら『巫家』に喧嘩を売る気か!!」
喧嘩か、そうだな。お前らがやると言うのであればやってやるよ。それどころか…
「お前らがテルを殺すというのであれば、俺達は『巫家』を潰してやるよ」
「当然にゃ。塵も残さずに消しとばしてやるにゃ」
迷いすらなく、紡とにゃん吉は断言する。
「っ!?」
まさか、名家である『巫家』へと平然と喧嘩を売るどころか、潰す宣言をする者がいるとは…秋夜はまさかの返答に固まる。
そんな現場のなか、顔を真っ青にしている優華と皇牙。
二人は、ここで言われたことがただの妄言ではないと知っている。
やろうとしたら、この者達は迷いもなく『巫家』を潰すであろう、と。
「秋夜!貴方は黙りなさい!申し訳ありません!!」
「申し訳ない!ここは引いてもらいたい!!」
深々と紡達へ、時代の当主と皇牙が頭を下げる。
次期当主のそんな姿にやはりバカが声を上げて止めにかかり…
「お嬢様!そんな者に頭を下げては「『呪符、焔弾』」ぶふっ!」
皇牙に焔弾を打ち込まれ吹き飛んで行く。
「これ以上秋夜が喋るとやばくなるからな…」
「皇牙、良くやったわ」
いきなりぶちかました皇牙を優華は褒めていた。
「ちっ…これは貸しだ。にゃん吉、もうぶっ飛んだから諦めろよ」
しょうがない、このままじゃ屋敷に行けないし今回は引いてやるか。
「…わかったにゃ。だけど、次にあんな奴が居たら、この屋敷をぶち壊すにゃよ」
引いてくれたことは有難いが、それにより二人に出来た借り。二人はこんな存在に作った借りに不安を抱く。
「皇牙、先に行って人払いを。これ以上問題が起こったら、私達の身が持ちません」
「ああ、わかった。気をつけて連れて来いよ。武運を祈る」
それだけを残し、皇牙は屋敷へと走り去って行く。
そんなやり取りを見て紡は感じる。
(俺たち、危険物みたいな扱いされているよな…そんなに危険じゃないのになぁ)
それに、紡は納得できていないが、優華達にとっては、それも当然の扱いであった。
――――――――――――――――――――
優華に連れられて、中に入り込んで行く。
皇牙の手配か、見える範囲には一人も人がいない。
そんな中、優華の後ろをついて行く。
「流石『巫家』の屋敷。外もなかなかだったが中も凄い綺麗なんだな」
これは凄い。老舗の和風旅館の様に綺麗だな。
ここに置いてあるツボなんてとても高価そうだし。
金持ちの家って、俺からしてみればやっぱり異世界の様だな。
「着きました。此処になります」
優華は襖の前へと立ち、こちらへとそう告げる。
「当主様。連絡を入れておいた者達を連れてきました」
「入りなさい」
襖の奥から女性の声が聞こえる。
へえ、『巫家』の当主って女性なのか。
紡がそんな事を考えていると、ゆっくりと優華により襖が開かれる。
中へと入って行くと…広々とした広間の上座に、一人の女性が座っていた。
「こちらへ」
優華に先導され、その女性の前に座る。
紡の隣にテルがにゃん吉を抱えて座り、フォルは紡の頭へと着地した。
「それでは、失礼します」
静かに優華は広場から去って行く。その顔は安堵に染まり、漸く任せられた重圧から解放された為か生き生きしていた。
取り残された物達が見つめ合うだけの静寂に包まれた広場。そんな中、『巫家』の当主が口を開く。
「さて、私に話があると言う事ですが」
「ああ、そうなんだが、先ずは自己紹介しようか。俺は…そうだな、ゼロとでも呼んでくれ」
俺には、陰陽師としての力が全くないからな。無能力者のゼロ。あながち間違いではないだろう。
「ゼロですか。分かりました。
私は、『巫家』の当主、巫 蒼華と申します。呼び方はお好きな様にしていただければ良いかと」
そう、じゃあ、当主様でいいか。めんどくさいし。
「んじゃ、当主様で。先ずは話の前に、一つ聞きたいことがあるんだが」
さっきから、テル以外は皆気づいていることがあった。
「何でしょうか?」
「此処にいるのは当主様、あんただけで間違いないか?」
「ええ、そうですよ。あなた達のために人払いの方はさせて頂きました」
ふーん、そっか。だったら…
「んじゃ、そこの襖の裏にいる奴はこっちで好きにしていいんだな?」
その一言に蒼華の顔が一瞬ピクリと歪む。
あーあ、そんなに顔に出しちゃバレバレだぞ。
当主様なんだからそれくらい出来ないとダメじゃないのか?
まぁ、気配から俺達は、テル以外全員わかっていたけどな。
「で、返答がなけりゃ殺らせてもらうが?」
その一言に、蒼華は諦めた顔をして、深いため息を吐く。
「はぁー…やめていただきたいですね。皇矢、こちらに入って来なさい」
先程から感じていた気配の正体が室内に入ってくる。
おお、これはまた。なかなかの渋いおっさんが入ってきたな。
「申し訳ありません。これでも、私は当主ですので、もしもの時の為に控えてもらっていました」
「あー、それはまあいいが次回はきちんと隣に控えておいた方が良いぞ。下手すりゃ攻撃してたし」
そう言いながら、紡はこっそり展開していたお菓子魔法を解いていく。
「っ…そうですね、次回はそう致します」
目の前の狐面が、何かをしようとしていたと感じ取った蒼華は、顔を引きつらせながら答える。
「んで、そのおっさんは何者なんだ?」
紡の問いかけに皇矢は蒼華へと向き、蒼華が頷いたのを確認すると答える。
「お客人、先程は申し訳ない。私は、『巫家』の分家で筆頭をさせて頂いております、『更科家』当主、更科 皇矢と申します」
ふぅん、『巫家』のお偉いさんって事か。
まぁ、当主の護衛役ならばそんなのも出てくるか。
「そっか、よろしくな皇矢さん。俺のことはゼロって呼んでくれ」
「はい、よろしくお願い致します。ゼロ様」
それじゃ自己紹介も終わったし、本題に入るとしようかな。
「じゃあ、話に戻るとしようか。今回俺達がここに来たのは『巫家』へと話があったからなんだが」
「ええ、優華からは大体の話は聞いています。
優華は重要な話だから聞いてあげて欲しいとの事を言っていたのでこの場を用意させて頂きました」
なんだ、大体の話は聞いているのか。だとしたら俺としても言いやすくてありがたいな。
「そっか、だったら話は早い…」
ここまで来て、紡達がしたかった事。
それは…
「『巫家』は俺達に敵対するつもりなのか?」
巫家へと全力で喧嘩を売っていた。
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