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まさかの地球で激闘が
テルと再度の襲撃と
しおりを挟むside テル
「ここまで来たら…大丈夫です…」
ここはとある森の中、屋敷から出来るだけ離れるように、人間が居る所を避けて逃げて来たテルはこの森へとたどり着いた。
周囲からは何も聞こえない、静寂の森の中に一人きり。
切り株に座り、空を眺める。
騒がしい日常から、急に静かになったからか、テルは寂しげな顔をしていた。
「一人ぼっちになったです…」
寂しさを紛らわすために、テルは楽しかった日々のことを考えていた。
騒がしくも暖かい日々。屋敷での出来事を思い出す度に、胸が何故か痛くなっていった。
皆、今頃何をしてるのかな…
紡さんとお姉ちゃん、ピーさんに怒られる様なことしてないといいです…
あの二人は時々無茶するから不安です…
そう言えば、庭の修復、最後までやり切ることができなかったです…
もし、無事に会えたら、紡さんにあやまらなきゃいけないです…
皆のことを、一人思い出していたテルは不意に気づく。
いつからか、胸がとても苦しく、頬が湿っていることに。
テルはいつのまにか一人で泣いていた。
「お姉ちゃん…会いたいです…」
その呟きに答えるものは誰もいなかった。
少し経つと、涙も止まりテルは別の場所へと移るために移動しようと動き出す。
「次は…どっちに行こうかな…」
目的のない旅がまた始まろうと…
「おいおい、やっと見つけたぞ…こんなとこまで逃げやがって。
お前のせいで俺は家にも帰れずにこんなとこまで来る羽目になったんだぞ」
「っ!」
驚愕に染まるテル。
いつのまにか、近くまで人間が来ていた様だ。
「に…逃げなきゃ!」
見たところ、一人しかいないです…
もう一人が来る前に早く逃げるです…
皇牙しかいない事もあり、テルは逃走することを選ぶ。
「皆さん!助けてください!」
テルの叫びとともに周囲の木々の根が盛り上がる。
波打つ根が土を捲き上げながら、皇牙へと向かう。
「うおっ…いきなりじゃねぇか!」
かなりの質量とともに皇牙へと襲い来る。根の波を受け、かなりの距離を吹き飛んでいった。
「今のうちに…」
もうちょっと…ここの皆が頑張って止めてくれている間に…
今がチャンスと、テルは森の外に向かって逃走を図る。
だが…
「皇牙、何を遊んでいるのです?」
「きゃっ!!」
その道も閉ざされる。
テルへ向けて空から降り注いだ一撃。それがテルに直撃し元いた場所へと飛ばされていく。
「な…何です…」
焦りながらも、襲ってきた者を見つめる。
その先にいたのは優華であった。
「ちっ、遊んでねぇよ。今から殺ろうとしてたとこだ」
優華の問いに答えながら、皇牙も木々を破壊しながらやって来る。
二人に挟まれる形になってしまったテルは、窮地に陥っていた。
「な…なんで私を殺そうとするのです…!私は何も悪いことしてないです…!!」
ずっと命を狙われ続ける現状に、ついにテルも二人に問いかける。
場が静まり返り、少し悩んだ後、皇牙が口を開く。
それは…
「そんなのお前が妖だからに決まってるだろうが。
お前がどこで、どういう風に生きてきたか知らないが、俺たちは陰陽師だ。
妖を滅するために理由なんか俺たちにはねえよ」
「そうですわね。
私達はあなたを滅する様に指示されただけです。
貴方がどんな妖であろうとも、私達はただその指示を遂行するだけです。
残念ですが諦めて下さい」
絶望の一言だった。
ただ私は妖だからという理由だけでここまでずっと殺されかけ、私を殺すのはただ指示を受けただけ。
「そんなの…おかしいです…」
「いくら貴方が疑問に思おうと、私達はただ滅するだけ、ただそれだけです」
何を言っても、もう逃す気もないだろう。二人はジリジリと距離を詰めていく。
「俺も家に帰りたいし早く終わらせようぜ」
「そうですね、私も早く帰りたいので終わらせましょう」
二人は面倒くさそうな面持ちで語る。
「じゃあ、妖樹、死んでくれ」
皇牙の呟き、その一言にテルは動く。
周囲の木々を操り優華と皇牙を巻き込みながら周囲を吹き飛ばす。
視界を遮る様に砂煙が舞い散る。
少し経つと、だんだんと砂煙が収まり、視界が明瞭になっていく。
そこには…森の王女が立っていた。
気のツタと根をドレスの様に身に纏い、頭には冠の様な花が咲き誇る。
圧倒する様な雰囲気を醸し出し、手には一本の槍を持っていた。
周囲にはまるで王女を守る様に木々の根が囲む。
それは騎士の様に、二人へと根の先を向けていた。
「ふうん、本気ってことか。それじゃあ滅してやるよ妖樹!」
今ここに、命を賭けた一人の妖と二人の陰陽師の
戦いが幕を開ける。
――――――――――――――――――――
side 紡
フォルに上空から見てもらい自分は地上から探す。
出て行ったテルを探し、紡は街中を走り回っていく。
居場所の検討もつかない中、出来るだけ広範囲をと、走り続けていた。
「くそっ…何処にいるんだよ」
全然みつからねぇじゃないか。もう何処か遠くに行ってしまったとかかも…
そんな不安が紡の頭を巡り、足も止まる。
このまま見つからないのではないか…もう別のとこに移ったのではないか…
紡は次々と浮かぶ不安を頭を振って消し去る。
「ダメだ、絶対に見つけるんだ」
俺がこんなとこで諦めてどうするんだ。テルが命を狙われてるかもしれないんなら、どんなに居なくとも、見つけるしかないだろ!
自分へと気合を入れてまた捜索へと戻っていく。
すると…
「ご主人!北の森のほうから砂煙が上がっているのが見えました!」
上空から見ていたフォルから報告が入ってくる。
きた、多分そこだ。
「フォル、すぐに案内してくれ!」
「ええ、こちらですわ!」
(頼む…テルであってくれよ…)
その願いを胸に、ようやく見つけた希望を目指し、二人はかけて行く。
side にゃん吉
屋敷から一人で飛び出したにゃん吉は今、とある空き地へと訪れて居た。
遊具などもないただの空き地であり、人のほとんどいない何も無い場所であった。
その空き地の真ん中で一言…
「緊急集合にゃー!!」
空き地の隅まで響く叫び声。その声に反応する様に空き地に居た猫達が集まってくる。
その中のかなり大きな一匹の猫。ボスらしき雰囲気を纏う雄猫がにゃん吉へと問いかける。
「にゃん?」(姉さん、一体どうされたんで?)
「緊急事態にゃ!皆の力を借りたいにゃ!」
それを聞いたボス猫が真剣な顔へと変わる。
「にゃ?」(何をすれば?)
「テルが迷子になったにゃ…それを探し出して欲しいにゃ…」
そう語る、悲しそうなにゃん吉。それを見た猫達の行動は早かった。
「にゃにゃー!!」(お前ら!テルちゃんが迷子だとの事だ!姉さんのためにも絶対に探し出せ!!)
姉さんを悲しませるわけにはいかないと、気持ちを込めて語る雄猫。
猫達の前に堂々と立ち、悠然とそう語る雄猫は猫ながらに威圧を放っていた。
「「「「「にゃ!」」」」」(了解です!)
軽く一言だけ返答し、街中に散らばって行く猫達。
今ここに、テル捜索の為の猫包囲網が発令される。
広場には雄猫と、にゃん吉だけが取り残される。
「迷惑かけるにゃー…」
「にゃにゃーん」(何を仰いますか、姉さんは俺たちの恩人なんですから、姉さんの為ならこのくらい軽いですよ。
テルちゃんは俺たちが必ず見つけ出しますので姉さんは笑っていて下さい。
姉さんに悲しい顔は似合わないですから)
そう語る雄猫は先ほどとは打って変わって、優しく微笑む。
「んにゃ、ありがとにゃ」
不安からか、少し歪ながらもここに来て漸く、にゃん吉も笑うことが出来た。
「それじゃあ、にゃーも捜索に戻るにゃ!」
「にゃ!」(お気を付けて!)
それだけを交わし、にゃん吉は空き地から駆け出して行った。
その姿は力強く、かなりのスピードで走っていく。『絶対に大好きな妹を見つけ出す』と、真剣な顔で駆けていくにゃん吉の背中はそう物語っていた。
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