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まさかの地球で激闘が
テルと見つけた襲撃者
しおりを挟むside テル
ここは毎日が暖かい。毎日が幸せです。
人間に殺されかけ、住んでいた森の全てを捨て逃げてきました。
今までずっと暮らしてきた、思い出がいっぱい詰まった大切な森。
でも、私が彼処に残っても森が破壊されるから。あの森のお友達が傷つくような事は嫌だったから。
森を守るため、少しでも遠くへと…
私はいきなり殺しにきた人間達を思い出しながら逃げていたです。
平気な顔で木々をなぎ倒し、森を破壊していくあの人間達は狂気を感じました。
ただ、流れ作業の様に、一切の感情もなく、私を只々普通に殺そうとしていた人間がとても怖かったです。
あの人間達にとって、私を殺す事は普通のことだと突きつけられた様でした。
何もしていないのに。唯、森の皆と仲良く過ごしていただけなのに…
傷ついた体で逃げる私は急に殺しにくる人間という生き物を恨んでいました。
体の痛みが増えるにつれどんどんと高まる恨み…
絶対に許さない…その言葉だけが頭に響き渡っていました。
でも、いくら恨んでも体の痛みは収まらず、痛む身体に限界がきたのか、私はいつのまにか倒れてしまいました。
眼が覚めると、そこには見たこともない屋敷が建っていて、そこの庭にある木の下に私は倒れてしまったみたいでした。
周りを見渡しても、ここが何処かも分からない。
たけど、ここは安心する。私は少しの間木の下で休む事にしました。
この判断が私の運命を変えるとも知らずに…
ずいぶん長く眠ってしまったのか、眼が覚めると知らないところにいました。
木の下でもなく、ふかふかの何かに包まれて寝ていた様です。
すると、急に近くから女の子の声が聞こえてきました。
その時、人間に追われていた事を思い出した私は、焦りながら声の方を見つめました。
そこに居たのは…
1匹の猫でした。
良かった…人間じゃなかった。見たところ、喋る猫さんだから私と同じ妖の者だと思いました。
猫さんに話を聞くと、この子はにゃん吉さんと言うらしく、紡さんという方と、一緒に私を助けてくれたらしいです。
初対面でも、にゃん吉さんはとても優しく、そのにゃん吉さんが紡さんも優しいと言っていました。
すると、タイミングよく、話していた紡さんが様子を見にきてくれたようでした。
どうやら、紡さんも本当に優しい人みたいです。
ガチャリという音と共に開いたドアから入ってきたのは…
私を殺しにきた者と同じ…人間でした。
私は森で見た人間達が浮かび、頭の中は恐怖に染まり上がり、体が動かなくなりました。
怖い…殺される…そんな言葉が頭を巡り、只々その人間の顔を見つめてしまいました。
こちらに近づいてくる人間。恐怖から、私は無意識に拒絶していました。
すると、驚く事に、その人間は遠くから自己紹介してきました。
にゃん吉さんの言っていた通り、この人は紡さんって言うようです。
紡さんは人間なのに、私が妖だとわかっても嫌な顔をせずに優しく語りかけてくれました。
それは、とても温かく、紡さんの優しさを感じて嬉しかったです。
そして、私の話を全て二人に話しました。
ここまで逃げてきた理由を。人間に襲われ、殺されかけ、死にかけながら逃げ、ここにいたと言う事を…
話し終わると、急に紡さんの雰囲気が変わりました。
それは、力強く、周囲を圧迫するような感じがしたです。
私を気遣ってか、にゃん吉さんが紡さんを怒鳴ります。
でも、なぜか私には、分かりました。紡さんは私の話を聞いて怒ってくれているんだって…
だから、紡さんを怒らないであげて欲しい。
その気持ちが嬉しかったから。
その後も紡さんはあの人間達とは違いました。
ここにいてもいいって言うんです。
命を狙われている私にここに居ていいって。
迷惑がかかるって言っても二人とも守るから大丈夫だって。
いつのまにか、私は泣いていました。
その言葉が、気持ちが嬉しくて。
ずっと殺されることだけを考えていた私は…
(私は生きていてもいいんだ…)
漸く、生きる事を考える事ができました。
「っ…はい…よろしくお願いするです…」
この一言から私はこの優しい人達の仲間になりました。
その日には、他の皆に紹介されて、新しいお友達がたくさん増えました。
皆優しく、温かく迎え入れられた事がとても嬉しかったです。
そして、紡さんのお陰で、私に『テル』って言う大切な名前ができました。
妖樹として生きてきた私が、一人の者として認められたようでとても誇らしかったです。
そして、この怒涛の1日の中で私が一番嬉しかった事…
この日、この時に、私にお姉ちゃんが出来ました。
私のお姉ちゃんはとても可愛らしく、とても優しい、私の大好きなお姉ちゃんです。
ここはとある町のとある屋敷。
私が迷い込んだ屋敷には、どこにも負けない幸せと優しさがたくさん詰まっていました。
――――――――――――――――
「よいしょ…これでいいです…」
昼下がり、陽が燦々と降り注ぎ、夏の暑さが蝕むように気温を上げる時間帯。一人の女の子が、樹木を前に、作業していた。
テルは、屋敷に過ごすようになり、少しでも恩返しができればと、屋敷の木々の管理をしていた。
妖樹ということもあり、木々は見事に管理されており、紡も感謝していた。
「この樹木さんは…ちょっと元気がないみたいです…」
今まで放置していたために、木々は荒れ果てていたようでテルが修復のために必死に作業を行なっていく。
お兄ちゃんが言ってた通り、皆荒れちゃってるです。
これは修復も中々大変そうです。
いくら妖樹でも、木々の修復は大変のようで、毎日欠かさず見に来ていた。
いつもこの時間帯に作業を行なっているためか、毎日一緒にいるにゃん吉は暑さによりダウンしており、この時は一人だけの時間だった。
粗方見回りが終わり、最後は入り口付近にある木々達だけとなる。
ここは、一段と荒れ果て、悲しいことにすでに死んでいる木もあった。
「私が必ず綺麗にしてあげるです…!」
大好きなこの屋敷の皆のために、ここに戻って来た時に入り口を見て喜んでもらえるように。
ただそのためだけに作業をしていく。
時間がかかる大変な作業を小さな手で行なっていく。
1時間後…
大体の木々の管理が終わり、最後の一本。入り口に最も近い木の管理を行っていた。
入り口に近いこともあり、人が何人か通っているのが見える。
数日前までは人間を見るだけで恐怖に震えていたテルだったが紡のお陰か、今では見るだけなら大丈夫なまでに回復していた。
「あ…お姉ちゃんです…」
入り口近くで毛づくろいをする猫を見ながら呟く。
にゃん吉が聞いたら確実に怒るだろう。
やっぱりお姉ちゃんの方が可愛いのです!
そんなことを考えながら、その猫を見つめていると、ふと道路にいる二人組が目に入る。
「い…いやっ!」
『ドクンっ!』と心臓が強く脈打つ。
体は震えだし、顔は恐怖に歪む。
あ…あの人間達です…
そこに居たのは巫 優華と更科 皇牙。テルを襲撃した二人であった。
死、それがテルの頭を駆け巡る。
だが、死の恐怖に震えながらも、テルが思ったことは、ここの家の皆、お姉ちゃんに迷惑をかけたくないということであった。
幸せを、優しさを与えてくれた皆を危険にさらす訳にはいかないです。
そして…ここは私の大切な場所です。壊されないためにも、ここを出ていくです…
以前居た森を壊されたためか、この場所を守るため、テルは出ていく事を決めた。
振り返り、屋敷に向かってテルは語る。
「お世話になったです…私はここの皆さんが大好きです。
私に名前をくれ、居場所をくれたこの場所が大好きです。
だからこそ、出ていくです。
私の大好きなものを守るために…
またここに戻ってくるです。だから、また…来た時も…私と…仲良くして…欲し…いです…」
途中からボロボロと泣きながら、屋敷に向かってそう語るテルは笑顔だった。
自分の大切なものを守るために。
今まで只々逃げていたのとは違う、守るための戦い。
それは、テルに覚悟と自信を与えていた。
お姉ちゃん怒りそうです…
そんな事を考えながら移動を始める。
優華と皇牙には見つからないように。
出ていく最後の一歩、その時にテルが呟く。
「皆さん…さよならです」
それは夏の青々と広がる空に溶けるように消えていった。
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