御伽噺に導かれ異世界へ

ペンギン一号

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死んだ先が異世界で

皆と揃って地球へと

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森の空、ただひたすらにご飯を目指し紡は拠点へと飛んで行く。
いつもより早く飛ぶ紡にフォルは必至について行っていた。


ようやく着いたか。早く飯を食べなければ!
そんな紡に待ったがかかる。
「ご主人、待ちなさい」
それは背筋の凍るような怒気を含んでいた。
「ど…どうした?」
見るからに怒ってるよな…俺何か怒らせるようなことをしたか?

「ご主人、あなたは私のことを何だと思っているのかしら」
当然、大切な仲間であり守りたい存在だ。
「大事な仲間だな」
「そうですか、ではその大事な仲間が後ろから必至について行く中、さらにスピードを上げて虐めていたというわけですわね」
あ…やばい、つい飯が食いたいあまり見るの忘れてた。

「それは、「さらに!!私はこう見えて女性ですわよ!それをあのような仕打ち!!」っ…」
やばっ…ブチ切れてる。どうにか納めないと。

「ごめん「正座」えっ…」

「正座しなさい」

「でも、ここ外だし…」
外で正座なんて俺のプライドが許さな…

「いいから正座しなさい!!」
プライド?なにそれ。美味しいの?

紡はすぐさま正座をする。それは一切の無駄がなくとても素早い正座であった。




「ねー、なんでお兄ちゃんすわってるのー?」
「変なのー、兄ちゃんお外で座ってるー!」
フォルの説教が終わり反省を込めてその場待機を命じられた俺は、双子にいじられていた。
子供に弄られるのはなかなか来るものがある。

「なんだにゃ?またご主人がバカをしたのかにゃ?」
「ええ、今回は度を超えた行為のために外で反省させてますわ」
近くでは呆れた二人の声が聞こえてくる。

「皆さま、おかえりですぞ」
拠点からピーが姿を現した。

「わー!可愛いー!ペンギンさんだー!!」
ピーの事が一目で気に入ったのかチコが素早く抱きつく。

「ふむ、お二人は新しい仲間ですかな?」
「うん!僕はコアって言うんだー!」「私はチコです!よろしくねペンギンさん!」
よほど嬉しいのか。いつもよりチコも大声で挨拶している。

「これはこれは、私はミスターP、お二人は愛称を込めてピーと呼んでいただければ嬉しいですぞ」
「「よろしくねーピー!」」
うむ、実に可愛らしい挨拶だな。双子の可愛さが如実に現れてとても良い!
だが、チコよ…そのペンギンは危険なんだもうそろそろ離れたほうがいいぞ。
一人正座をしながらそんなことを考える紡は完全にアホの子であった。


「それでは、せっかくなので歓迎会として皆でご飯を食べるとしますぞ」
「ごはんにゃー!」「そうですわね!」
胃袋を掴まれた二人は賛同する。
だが、さすがだピーよ!そのままご飯のため俺の正座を解くように言うんだ!!



「では、行きますぞ。紡はそのまま正座のままでいるのですぞ」

えっ…!?
驚いた俺の顔を見つめながらピーは続ける。
「説教が聞こえていたのですぞ。今回は紡が悪いのでまだ立つことは禁止とするのである」
「えっ…まじで?」
「まじである」
「さあ、行きますわよ二人とも」
呆然とする俺を置いたまま全員が拠点へと帰って行く。
誰も止めずに楽しそうな顔で部屋に入って行った。

そうか…俺よりも飯が大切なのか…
ああ…泣くもんか。
夏の陽の下、拠点入り口に正座で取り残される俺。


その頬は何故か湿っていた。





「あー、旨かった」
飯を食べ終わった俺は今でだらけて過ごしていた。

「チコとコアに感謝することね」
「ああ、二人ともありがとな」
二人の頭を撫でながら伝える。
それにしても助かった。どうやら俺以外で屋敷に戻った後、歓迎会を始めたらしいのだが、コアとチコが「お兄ちゃんも一緒がいい」と言ってくれたため、無事に参加する事ができた。

「二人のおかげだな」
「「えへへー」」
うんうん、可愛いな。
この二人も、ペンギンに染まらずにいて欲しいな。



「よし、それじゃ地球へと戻るか」
このままここにいてもめんどくさいことになりそうだしな。
「コアとチコは初めてだしきちんとみんなの言うことを聞くようにな」
「「はーい!」」
いい返事だな。
「お前らも二人のサポートをしてあげてくれよな」
初めて連れて行くから俺だけじゃ不安だしな。
「任せるにゃ!」「ええ大丈夫ですわ」
「この子達はいい子達だから大丈夫ですぞ。もし、何かあれば私がきちんと注意するのである」

そうか、有難いが、
だが、ピーよ。ドヤ顔で言っているがチコに後ろから抱かれながらだと説得力が全くないぞ。

そんなやり取りをしながらも紡達は地球へと戻って行く。
異世界へと多大な混乱を残して行きながら。



―――――――――――――――――


side ???



日本のとある森の中。何時もは木々が騒めき、差し込む日差しが心地よい場所である。

「オラァ!! ドゴッ!」

季節で沢山の収穫物も取れる森であり、今も所々に夏の野草が見つかる。

「そっちに言ったぞ!早く殺せ!」

危険な動物などもなく、小動物が集い、静かに過ごすとても安全な森…のはずが…

「死になさい!!」

木々を破壊しながらの戦闘がそこに繰り広げられていた。
森林破壊をしているのは2人の人間。
一人は、片手に薙刀を持ち着物を身につけた女性。
見た目はとても幼い容姿をしている。12歳と言われても納得するほどに…
長い髪を一つにまとめ、着物を着ているその姿は大和撫子のようである。

もう一人は、刀を脇に刺し、サンダルにジーパンとアロハシャツを着た少年。歳は17程であり、染めているのか髪は金髪である。かなりの場違いなその装いに森の中でかなり浮いている。

「あーあ…逃しちゃったよオイ」
「皇牙あなたが手を抜いているためですよ」

急に静まり返る森。どうやら戦いに区切りがついたようだ。
二人は静かになった森の中、言い合いをしている。

「それは優華、お前も本気じゃなかっただろ?」
「…まぁ、そうですけど」

標的を逃したためか優華は苦々しい表情で悔しがっているようだ。
見てられずに気を使ってか、皇牙が慰める。

「そんな気にすんなよ」
「あなたとは違って、私はお母様の期待に応えなければならないのですわ!あれくらいの妖なぞ軽く屠れなくてどうするというのです!!」

八つ当たりか、皇牙へと当たるその姿は見た目同様、子供の姿に見える。

「はいはい、でも逃げちまったもんはしょうがないだろ。
このまま探しに行くわけにもいかないし一旦帰るとしようぜ」
「そうですね。引き上げましょう」

二人は去って行く。その場にはボロボロになった木々と荒れた地面だけが残されていた。






それを見送る一つの物体。
女の子のような容姿に頭からは小さな花が咲いている。
普通ではありえないその子供は震えながら二人が去って行くのを陰に隠れて見ていた。

「あの人間…怖かったです…」
小さな声で呟くその子の目は、恐怖に染まっている。

「此処は危険です…早く逃げるです…」
女の子は動き出す。傷ついているのか、体を抑えながらも、危険な人間が居ない、遠くの安全な場所へと。
さっきの人間とは逆に向かって。

なんの因果か…その女の子が向かう先、そこには一軒の幽霊屋敷が建っている。



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