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死んだ先が異世界で

魔法で成長異世界で

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その日の晩…
フォルとにゃん吉を連れ『守護者の休息』の裏手へと来ていた。
人もおらず岩が乱雑に転がり、存在感をアピールしているだけの空き地。
勿論、今日調べた魔法についてを試してみるためだ。


「早速始めるか」

確か、魔法を使うにはまず、体内の魔素を把握するだったな。
紡は体内へと意識を向ける。
ん?もしかしてこれか?なんか体の中に粘っこいものが入ってるみたいだな。
例えるなら、スライムのような…
その存在を意識すると急に紡からドロドロが吹き出す

「うおっ!いきなりだな」

焦りながらも、次はその魔力を全身へと纏わせる。その際には明確なイメージが重要っと…
いいな、イメージなら得意だ。
イメージをしながら全身から吹き出す魔力を練り上げる。それを形を徐々に変えながら全身に着込むように纏う。

「これが、魔力か」

掌を見つめ、固まる紡。
魔力の影響か?なんか力がみなぎっているようだ。

「ドゴッ…!」
その状態で裏にあった岩の塊を蹴り飛ばす。
「成る程、これが身体強化か。中々の威力だな」
惨状を眺めながら分析していく。
紡が見つめる先、そこにあった岩は、真っ二つに割れていた。

もっと早く調べとけば良かった。この力はまだ応用が効く。もっと強くなれる。
一人、岩の残骸を見つめニヤリと笑う。

紡が強くなっていく中で…
「にゃー…またご主人の病気にゃよ…」
「そうですわね…あの笑顔中々怖いですわ…」
仲間の精神耐性も着実に上がっていた。



【名前】 御伽 紡
【種族】 人間種
【職業】童話契約師
【性別】男
【年齢】16歳
【レベル】60
【体力】1090/1090
【魔力】7110/7110
【攻撃】527
【防御】290
【俊敏】670
【運】1030
【スキル】 鑑定 飛行 刀術LV7 回避LV7 体術LV5
魔力感知LV2 魔力操作LV3 身体強化LV2 威圧LV4
【オリジナルスキル】 童話契約 絵本の世界 スキルコピー(契)LV2
【称号】異世界を行き来する者 捨てられし者
魔導書契約者 バトルジャンキー 幸運 戦いに魅入られし者
【契約】にゃん吉 フォル




【名前】 にゃん吉
【種族】 幻獣種
【職業】猫騎士
【性別】女
【年齢】6歳
【レベル】58
【体力】1430/1430
【魔力】1020/1020
【攻撃】460
【防御】810
【俊敏】528
【運】220
【スキル】 鑑定 魔力感知LV3 魔力操作LV3 身体強化LV2 雷魔法LV5 剣術LV7 精神耐性LV5
【特殊スキル】 騎士の誓い
【称号】 ゆるキャラ 苦労猫




【名前】 フォル
【種族】 幼鳥種
【職業】魔法師
【性別】女
【年齢】21歳
【レベル】47
【体力】710/710
【魔力】3120/3120
【攻撃】262
【防御】105
【俊敏】610
【運】2500
【スキル】 鑑定 飛行 無詠唱 魔力操作LV6 魔力感知LV2 身体強化LV2 風魔法LV5 精神耐性LV2
【特殊スキル】幸運操作
【称号】幸運


(今後は魔法も毎日練習しなきゃな…)
今後の強化プランを考えながら宿屋の部屋へと戻っていった。


―――――――――――――――



Side ???



冒険者ギルドの酒場、其処で一人の男が呑んだくれていた。

「クソが、なんで俺が降格なんだよ!」
かなり酔っ払っているらしく若い冒険者に対しイライラぶつけ当たり散らしている。

「……あいつか?…みたいだな。……Fランクに負け……。マジか……あんな大見得切って……」
酒場の喧騒の中噂話が渦巻いていた。
それが男にも届いたのか、より一層当たり散らす。
「おう、そこいらでやめときな」
見過ごせなくなったのか周りも止め始める。
当然だ、ギルドでの喧嘩は基本禁止。暴れているこの男がおかしい。
「あぁ?お前には関係ないだろ!ぶっ殺すぞ!」
冷静な判断もできず目につく相手にケンカを売る。
其処からは周りを含めての殴り合いが始まり、酔っ払っていた事もあり、ボコボコにされギルドの裏に叩き出される。

夜中という事もあり裏道には誰もおらず、騒がしい大通りから刺す光を眺めながら…

(俺がこんな風になったのも俺を切り捨てた冒険者ギルドと、原因を作ったあのガキのせいだ…)

検討違いな事を考える。
完全なる責任転嫁。常人ではあり得ない。
だが、この男はそんな妄言をなぜか信じていた。
精神的に追い詰められているのか繰り返し、「絶対にぶっ殺してやる…」と路地裏の暗闇に向け呟く。
その姿は正しく哀れ。

「ほう?そんなに殺したい人がいるのか?」
そんな男に声が掛けられる。
其処には、真っ赤なローブに黒い仮面。男か女かもわからない人物が其処にいた。
「てめぇには関係ねぇ!」
男は拒絶する。すると…
「ほう…せっかくここで出会えたんだ。君にとっていい話を持ってきてあげたんだがね」

剣も無くし、地位も無くした男は、その言葉に、光に集まる蛾のように吸い寄せられて行く。
「あ?なんだよいい話ってのは」
「話を聞く限り君には殺したい人が居るらしいからね。もし僕の手伝いをしてくれたら君に其れを成す為の力を差し上げよう」
「…その手伝いってのはなんだ?」
「簡単な話だよ。これを魔の森の中に埋めてきて欲しいんだよ。それ以外は何も求めないさ」
コートの中から黒い煙を内包する球体の物体を取り出しながら答える。
それは、一見すると、ただの黒い水晶のような物。

「そして、もしきちんと手伝ってくれたのならばこれを差し上げよう」
次に取り出されたのは一本の剣だった。
血で作られたかと思われるほど赤く硬質的な見た目をしており、かなりの力を内包しているのが見てわかった。

男はそっと剣を掴む。
「こいつはいい…」
掴んだ瞬間に全身を駆け巡る高揚感。かなり気に入っていた。

「本当にこいつを貰っていいんだな?」
「きちんと手伝ってくれるんならあげよう」
埋めるだけでこの剣が貰えるんならと、男は了承する。
「わかった、やってやる」
「そうか、それは良かったよではこれを渡しておくね」

球体を数個受け取り喜びながら男は街中を歩いていく。
それが何なのかも考えずに。

その後ろ姿を見つめる仮面から…
「さあ、僕を楽しませてくれ」
という呟きだけが聞こえていた。



―――――――――――――――――




翌日の朝…
『守護者の休息』から出て街中を歩く。

よし、今回も早めに拠点に帰ってレベル上げをしよう。
初めての魔力を使った戦闘を考えながらニヤつく

「ご主人がまた戦闘を考えてるにゃー…」
「多分魔力を使った戦闘が楽しみなんでしょうね」
「どこまで戦闘大好きなのかにゃー…」
「こんなのだから私達から馬鹿呼ばわりされてるんですのに」

俺には何も聞こえない。そんなバカな奴がいるわけ無いだろ。
二匹は頭を抑え首を振りながらやれやれといった顔をしている。

子猫とヒヨコに呆れられる日が来るとは…
気恥ずかしくなってきた俺は二匹を本に戻し先を急いだ。


ある程度歩いていくと検問所へとたどり着く。
残念ながらこちらを睨みつける若い兵士しか居らず、関わり合いになりたくなかった為、身分証を見せ素早く出て行った。

ここら辺でいいかな?
門からある程度離れ、人目につかない場所へといくと、周囲を見渡し確認後二匹を召喚した。

「それじゃ飛んで帰るか」
「「分かりましたわ(にゃー)」」

にゃん吉を頭の上に設置する。
安定したのを確認し俺とフォルがフワリと浮かび上がる。
頭の上で片方の前足を真っ直ぐ伸ばしながら叫ぶ。
「いくにゃー!」

スーパーマンのように前足を突き出すにゃん吉の合図とともに、晴天の空の中、拠点へと空を駆けていく。




道中、モンスターを殲滅しながら、漸く拠点近くまで戻ってきた。

「おかえりですぞ」
今回も拠点でピーが待っていてくれた。
待ってくれてる人がいるのって結構嬉しいもんだな…


「おう、ただいま」
「ただいまにゃー」「ただいまですわ」

一人ピーの優しさに喜んでいると声がかかる
「一応ご飯用意しておきましたが食べるかね?」
「「「食べる(にゃ)!!」」」
ピーに胃袋を掴まれてる俺たちには選択肢は無かった。

「今日も美味かったな」
「ですわね」「うにゃぁあ…食べ過ぎたにゃ…」

食後のまったりとした時間を過ごす。
今日の昼食は魚フライだった。
「お魚パラダイスにゃー!」とにゃん吉が突貫して行き今に至る。

小さな体で誰よりも食べてたもんなぁ。
「にゃん吉ー、レベル上げ行くから早く復活してくれよー」
「うにゃあ…もうちょっと待つにゃあ…」
しゃーないなぁ…もうちょい待つか。
そんなやりとりをしながら暖かい時間を過ごしていった。


―――――――――――――――――



「よし、モンスターを狩りに行くぞ」
笑顔で先を進む俺にめんどくさそうな顔で後ろから二匹がついて行く。

さて、試して見ますか。
俺は魔力感知を展開する。するとうっすらと周囲にいる魔物の存在を察知する。
(便利だなこれ)
すぐさま、全身へと魔力を纏い身体強化を行った紡は察知した気配へと猛スピードで近づいて行く。
あれは…
其処にいたのは、鼻息で敵を吹き飛ばすブラストブルが居た。
シュッ!ドゴッ…ブヒィッ!!
一瞬にして首をへし折る。
おお!身体強化凄いわ。スピードと攻撃両方上昇しているようだな。

倒したブラストブルを魔導書内へとしまい込む。
一通り魔法を使った戦闘を行って、紡は気づいた。
「これは、狩の効率が上げられるな」
其処からは一人、敵を索敵しては斬りふせるを繰り返して行く。休憩も取らず、一息つくまでずっと。凶悪な笑みを携えて。


「また始まったにゃー…」
「ですわね…」
「はぁ…暴走しないように見張りながらにゃーたちもレベル上げするにゃ」
「はぁ…ええ、分かりましたわ…頑張りましょう」
そこでは疲れた雰囲気の二匹がため息をついて居た。



狩も落ち着き屋敷へと帰り着いた俺は、今日の疲れを取る為一人風呂へと浸かっている。

魔力か、結構色々と応用ができそうだな。
今日の戦闘中紡は色々なことを試しながら戦っていた。
試していくにつれ部分強化や武器強化など、出来ることの幅が広がっていく。そこに紡は魔力の可能性を感じていた。


風呂から上がり直ぐに寝室へと向かう。
布団に入ると、思っていたよりも疲れていたのか、紡は直ぐに眠りについた。
明日への英気を養い、より多くのモンスターを刈り取りレベルを上げる為に。
その顔は狂った戦闘狂の面影もなく、子供らしい寝顔をしていた。


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