御伽噺に導かれ異世界へ

ペンギン一号

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死んだ先が異世界で

ギルドに登録異世界で

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冒険者ギルドの入り口を潜るとまず目に入るのは広々としたカウンター。
そこでは3人の女性が対応しており、慣れた手つきで冒険者らしき人々を相手している。

近くには眼を見張るほどの大きな木製のボードがあり、色々な紙が所狭しと張っている。
あれは、依頼書だろうか。
ボードの前には、数人の男女が指をさしながら、選ぶような仕草を繰り返す。

反対側は酒場となっており、そこから香る濃い酒の香り。17時ほどにも関わらず何人かは酒を呑んだくれている。


んー…あそこに行けばいいのかな?
俺は唯一空いていたカウンターへと向かった。

そこに居たのは、年は紡と変わらないくらいの女性。ここの制服と思われる服を着た、流れるようなブロンドの髪の美人であった。

「こんにちは、冒険者ギルドウェルド支部へようこそ。本日のご予定は?」

「これを売りたいんだが」

ボブゴブリンの魔石を差し出す。

「畏まりました。ギルドカードはお持ちでしょうか?」

「いや、持ってない」

「売却でしたらカードの提示が必要ですので初回作成は無料ですので作成しても構わないでしょうか」

おお、初回は無料なのか。有難いな。

「作成はいいがギルドの詳しい説明を聞いてもいいか?」

「畏まりました」


受付嬢による、ギルドの説明が始まった。

「等ギルドはモンスターの討伐から始まり、採取系依頼やテイムモンスターの捕縛、民間人の悩みの解決まで幅広い依頼を承っております。

依頼は常駐依頼や通常依頼、指名依頼や緊急依頼などあり、その冒険者のランクに見合った依頼を私たち受付嬢が選択し、冒険者へと提示いたします。
もちろん依頼に関しては緊急依頼以外は断られても構いません。
依頼を受けられますと依頼達成の責任が課せられますので、失敗に終わると違約金が発生いたします。

また、ランクは最高をSSSとしSSSからFまでの9段階で構成されております。ある一定の依頼をこなされますと昇格試験を受ける権利が与えられ、その試験で問題がなければ昇格すると行った流れとなります。

但し、依頼中の怪我、死亡等はギルドでは責任を負いかねますのでご了承ください。

説明は以上ですが何かご質問は御座いますか?」

成る程、つまりギルドは依頼の紹介業者というわけか。
依頼中の事故も自己責任。ギルドは何も保証しないと。
うん、下手に責任が発生するのも嫌だし、あまり依頼を受けない方がいいな。


「その断れない緊急依頼ってのは?」

「緊急依頼に関してはBランク以上の方のみですので貴方には大丈夫かと思います」

ん、俺はそこまで行けないみたいな言い方だな。
まぁ、いいか。どうせ責任が増えるようなランクなんて上げる気もないし。
もう既に、紡は売却以外でギルドを利用する気が無くなっていた。

「そうか、なら登録をよろしく。ついでに買取も一緒に頼む」

「畏まりました。それではこちらにご記入を。それと、魔石をお預かりします」

受付嬢に魔石を渡すとそれを受け取り裏へと消える。

その間紡は渡された書類目を通していく。


んと、名前はツムグ オトギ。年齢は16歳。レベルは19。次は武器か、木刀しかないし刀ってことにしとくか。それと魔法は無しか。あー、いつか使えるようになりたいな。
最後にスキルか。えっと、回避と刀術。あと鑑定っと。
オリジナルスキルに関しては書かないほうがいいだろうな。面倒な予感しかしないし…

記入をし終わると受付嬢が戻ってきた。
俺は記入した紙を差し出す。


「有難うございます。確認させて頂きます。ツムグ オトギ様、年齢は16歳。レベルは19、初めてにしては高いですね。武器は刀ですか。魔法は無し、そうですか近接戦闘専門のようですね。

最後にスキルなんですが貴方のような初心者が鑑定なんて希少スキル持たれてるはずがないじゃないですか。今回はここで消しておきますが今後虚偽の報告はやめてください」

まじか…鑑定って結構なレアスキルなのか。にゃん吉とピーも持ってたから勘違いしてたな。

「すまなかったな」

「今後やめていただければ大丈夫です」


ん?でもそれなら皆はステータスどこで確認してるんだ?

「わかった。そういえば、久々にステータスを確認したいんだが、どこに行けばいい?」

受付嬢は何を言っているんだという怪訝な顔で答える。

「ステータスならどこの街の教会でも確認できますよ」

「あぁ、そうだったな悪い」

成る程な一般的にステータスは教会で確認するのか。

「最後にこちらの検査の魔道具に触れてください」

お、検問所と同じやつか。
俺が触れると結果は検問所と変わらず、問題無しだった。

「ではギルドカードを発行します。それと、先ほどの魔石なのですが、査定の結果銀貨1枚になりますがよろしいでしょうか」

「ああ、構わない」

少し待つとカードとお金が運ばれてくる。
銀色に光るコインが一枚。
隣に並ぶカードは無色透明であり、登録内容が黒い文字で浮かび上がっていた。

「それでは銀貨一枚とギルドカードになります。カードには最後に登録のため血を一滴つけてください」

受付嬢は小さな針を差し出してくる。
血がいるのか。注射は苦手なんだがな。
指に刺し出てきた血をギルドカードに付ける。ギルドカードは少し淡く光り、認証したのかすぐに元に戻った。

「これで登録完了となります。以降、再発行される際は銀貨5枚が必要となりますので無くさないようお願いします」

「そうかわかった」

この受付嬢、妙に態度悪いし早く出るか。
ギルドカードと金を受け取ると早々とギルドをあとにした。





―――――――――――――――





それじゃ、次は宿探しかな。
取り敢えず街中をブラブラしてみるか。なんか面白いもんがあるかも知れないしな。

それから30分ほど街中をうろつく。
ある程度歩き回り、宿屋を探しながらウロウロしていると後ろから声がかかる。

「お兄ちゃん、宿屋探してるの?」

振り向くとそこには可愛らしい女の子がいた。

「俺のことか?」

「うん!変な服のお兄ちゃん!」


少しショックだった…


「あ…あぁ、この街には初めてだからな。宿屋の場所もよくわからなくてな」

「私の家宿屋してるからうちに来たらいいよー」

「そうか、なら案内してくれるか?」

「うん!」

道端で出会った少女の案内で宿屋へと向かっていく。道中少女と色々と雑談しながら。

「私、メリーっていうの。お兄ちゃんは?」

「俺はツムグ オトギ。ツムグって呼んでくれ」

「ツムグお兄ちゃんだね。よろしくー」

「うんメリーちゃんもよろしくね。メリーちゃんはいつも俺みたいにお客さんを呼んだりしてるの?」

「うん!パパがね、最近お客さんが減ってるからマリーがお手伝いしてるの!」

マリーちゃんめっちゃええ子やん…

異世界の勤労少女は元気ないい子であった。



宿屋に着くとそこは、2階建のなかなか大きい宿だった。

「ただいまー!お客さん連れて来たよー」

マリーちゃんの元気な声とともに中に入ると一階には食堂が完備された広々とした空間だった。

「おう!おかえりマリーありがとな」

奥から男性がやってくる。

「ぶふっ、ぐっ…」

やって来たそれは、どこからどうみてもゴリラだった。彫りの深い顔に広い鼻、ふさふさのゴリラヘアー。
ゴリラを無理に擬人化したような生物がそこに居た。
初対面のゴリラ顔は中々の殺傷能力だ。
一人、心の中で笑いを我慢できた俺を全力で褒め讃えた。

「おう。いらっしゃい。兄ちゃん今日は泊まりか?」

「ああ、1日泊まりで頼む」

「泊まりだと飯付きで銅貨5枚だがそれでいいか?」

「大丈夫だ」

俺は銀貨を差し出す。すると、店主から銅貨5枚が帰ってきた。

「よし、了解した。俺の名前はディーン、マリーの父親だ、よろしくな」

「ツムグ オトギだ。よろしく頼む」

「オトギか…そうか…。それで部屋は201を使ってくれ。鍵はこれだ。飯の方は後でマリーが部屋まで運んでいく」

「そうかわかった」

俺は鍵を受け取り2階の部屋まで階段を上がって言った。
部屋につき中に入る。そこはベットが置いてあり机と椅子が置いてある簡易な作りの部屋だった。

ふぅ…やっと部屋についたか。よし、にゃん吉を呼んでやるかな。
魔導書を掲げ呼び出す。
意識すると魔導書から黄色い光が飛び出し床に触れるとそこににゃん吉が現れる。


「にゃー!遅いにゃー!」

寂しかったのだろう。にゃん吉が胸に飛びかかってきた。

「悪かったな。ギルドで色々聞いていて遅れてしまった」

「しょうがないにゃー。一緒に寝てくれたら許してやるにゃー」

「わかったよ」

しょうがないなぁ。そんなおねだりしやがって。
可愛い要求ににやけつつ、にゃん吉とじゃれ合いながら過ごした。

「コンコンッ。お兄ちゃんご飯持ってきたよー」

あーもうそんな時間か。俺は再度にゃん吉を魔導書にしまい、ドアを開ける。

「あれー?お兄ちゃん話し声してたけど、ひとりなのー?」

「ずっとひとりだけど気のせいじゃないか?」

あぶない、じゃれ合いが聞こえてたようだ。

「そっか!はいご飯。食べ終わったら持ってきてね!」

「分かった持っていくよ」

「うん。それじゃーね!」

マリーは元気よく帰っていった。

にゃん吉を再度呼び出し、二人でご飯を食べる。
昼に中華を山ほど食べていたため一人分で事足りた。
食後の休憩をとりながら、にゃん吉とじゃれつく、まったりとした時間を過ごしてゆく。
あ、忘れてたがそろそろ食器を返しに行かないとな。
少し経ってから紡は食器を返す為に下へと降りてゆく。

そこでは、ディーンが一人の女性に説教されていた。

「なんでそんな事したのよ!」

「いや、俺も知らなかったんだ…」

その女性はマリーを成長させたような美人で、幼い顔立ちながらも大人の雰囲気を醸し出す美女である。

「食器を返しにきたんだが…」

俺は気まずい中声をかける。

「あらごめんなさい。貴方は新しいお客様ね。見苦しいところをお見せして申し訳ないわ」

「いえ大丈夫ですが…貴方は?」

「私はローサ。このディーンの妻でマリーの母親よ。丁度来た時はは買い出しに出てて会えなかったみたい。よろしくね」

どうやら異世界初の宿屋は美女とゴリラが経営していたみたいだ。
こんな美人とゴリラが結婚してるとは、これが異世界か。

「俺はツムグ オトギだ。ツムグでいい。よろしく頼む」

「あら、貴方が…」

ん?まあいいか。

「それじゃあ、ここに食器置いとくぞ」

「ええ、ありがとね」


俺は説教に関わりたくないこともありすぐさま上へと戻っていった。
戻ると昨日と同じくベッドの上ではにゃん吉が陣取っており、女の子とは思えない仰向けで大の字の格好をして爆睡している。
ふふっ…しょうがないなぁ。布団かぶらないと風邪ひくぞ。
その可愛らしさに少し笑いながら布団を掛けてあげながら一緒の布団へと入る。

暖かいな。柔らかいし、抱き枕にさせてもらうか。
隣で寝ている子猫の温もりを感じながら初めての異世界での夜を過ごす。本日の成長を実感しながら。
これからもいろんな奴と戦って出来る限り強くなってやる。大切なものを守れるように。

一人、布団の中で考えていると…


「にゃーもご主人といっしょにゃー…」

寝言が聞こえて来た。

「そうだな、一緒に強くなろうな」

そう言ってにゃん吉を優しく撫でると俺も眠りにつく。隣の子猫を抱きしめながら。




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