御伽噺に導かれ異世界へ

ペンギン一号

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死んだ先が異世界で

激闘 成長 異世界で

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さて、そろそろ出発するか。
夜までにはその町とやらに着きたいしな。


「よし、そろそろ出発するぞ」

「わかったにゃ」

二人は入り口へと向かって行く。

「気をつけて行ってくるのですぞ」

「おう。帰り着くのは明日になると思うから向こうの屋敷に戻ってても良いぞ」

「了解ですぞ」

よし、じゃあ行くか!
紡は未知なる異世界の街並みに期待を膨らませ、家から出て行った。




それにしても、もうレベル10か…にゃん吉が14だったからもう少しかかると思っていたんだが。
これなら、もう俺一人で戦ってもいいだろうな。
さらなるレベルアップの為に、紡は次のステージへ進もうと決めていた。

「なぁ、次敵が出てきたら俺が一人で倒してみてもいいか?」

「…少し不安だけどやってみるにゃ」

「ありがと、もし危なくなったら任せるな」

「んにゃ、任せとくにゃ!」

よし、初めての一人戦闘か。これまでにゃん吉に任せきりだったからな、やってやる。
湧き上がる高揚感に体を任せ、紡は敵を探すべく見渡していく。

少し進んで行くと敵を見つける。それはまたもや1匹のゴブリンであった。
1匹だけだしあれなんて良さそうだな。

紡はレベルアップで強化された体へと力を込め、全力でゴブリンへと飛び出していく。
にゃん吉とは違いスピードが遅かったのか先制を狙った木刀振り下ろしは、あっさりとゴブリンに対応される。

ちっ…対応されたか。いけると思ったんだがな。
するとゴブリンは振り下ろしを受け止めるとすぐさま紡に棍棒を振り返す。
今までよりも確実に鋭いゴブリンの一撃。
「あぶねっ!」
思いもよらない反撃にすぐさま距離をとる。

「なんだこいつ今までのやつより強くないか?」

にゃん吉が背後から呆れながらも答える。

「はぁ…上位種だから強いに決まってるにゃ」

「上位種?なんだそれ」

「鑑定してみたらいいにゃ」

やばっ…テンション上がり過ぎて忘れてた。
ダメだな、一旦落ち着こう。
俺は頭を切り替え、ゴブリンに向け鑑定をする。





【名前】 ボブゴブリン
【種族】 小鬼種
【レベル】6
【体力】132/132
【魔力】31/31
【攻撃】42
【防御】21
【俊敏】28
【運】2
【スキル】 棍棒LV2
【種族スキル】 絶倫





今までとは違いなかなか強い。
これは先に鑑定しなかった俺のミスだな。そりゃにゃん吉も呆れるわ。


「にゃん吉、悪いな」

「しょうがないにゃ。それで、あれはにゃーが倒していいのかにゃ?」

「いや、俺にやらせてくれ」

「んにゃ?わかったにゃ」


これは俺の獲物だ。落ちこぼれとして生きてきた俺が強くなるには、生半可な敵じゃ意味はない。強いやつを倒してこそ、強くなれるはずだ。
それに…俺はこいつと戦いたい。
紡は心に芽生えた気持ちを肯定するように、ニヤリと笑みを深める。



「ぐぎゃぁぁあ!」


ボブゴブリンの叫びが合図だった。
紡は飛び出し狙い澄ましたように、ゴブリンの首を狙い、それをボブゴブリンは軽々棍棒で受け止める。
それに対しボブゴブリンの一撃を喰らえばひとたまりもない俺は全力で避ける。
当たればひとたまりもない。紡はそんな一心で戦い続ける。
何度も打ち合った後、それは唐突に訪れた。

あれ?攻撃が避けやすくなった気がする。
木刀もなんか扱いやすいし…調子いいな。

ボブゴブリンが棍棒を振り上げ飛びかかってくる。
それを眺めながら自身の変化を感じた俺は確信する。
これならいける。
振り下ろされた棍棒に木刀を添えるように合わせる。そのまま流れるように木刀を受け流した。


「よっしゃ!」

ボブゴブリンは今までしていなかった急な受け流しに体勢を崩している。
決定的なチャンス。決めるならここしかない。

「ここだっ!」

全力で体制の崩れたボブゴブリンの眉間へと木刀を突き刺す。

「ぐ…が…」

貫かれた顔面。最後の断末魔をあげながらボブゴブリンは倒れた。

「ふぅ…強かったな」

「お疲れ様にゃ」

ようやく終わった戦いに俺は腰を下ろし溜息を吐いた。
ボブゴブリン、なかなかの強さだった。これはかなりレベルアップできてるんじゃないか?




【名前】 御伽 紡
【種族】 人間種
【職業】童話契約師
【性別】男
【年齢】16歳
【レベル】19
【体力】284/284
【魔力】1432/1432
【攻撃】62
【防御】40
【俊敏】65
【運】256
【スキル】 鑑定 刀術LV2 回避LV3
【オリジナルスキル】 童話契約 絵本の世界 スキルコピー(契)LV1
【称号】異世界を行き来するもの 捨てられしもの
魔導書契約者
【契約】にゃん吉



すごい上がったな。スキルもなんか増えてるし。やっぱあいつ強かったんだな…
でも、これが命懸けの戦いか。さらに強くなるためにも、もっと強い奴と戦いたいな。
激戦の疲れと打ち倒した達成感に満たされながら、一人で空を見上げそんなことを考えていた。





―――――――――――――――――





「それじゃ、先に行くにゃ」

「そうだな行くか」

少し休憩した俺たちはようやく街に向かい歩き出す。

「そういえばさっき、倒したボブゴブリンに近づいて何してたんだ?」

「ピーから上位種になると時々魔石を持つと聞いてたから取ってたにゃ」

にゃん吉の手には小石くらいの石が握られていた。それは無色透明で普通の小石にしか見えない。

「魔石か。これがさっきのあいつの中に?」

「見つかってラッキーだったにゃ、ピーが言うには街で売れるらしいにゃよ」

「ふぅん…こいつがね」

こいつが俺の初めての戦利品か。
俺は魔石を持ち上げ、頭上へと掲げる。それは太陽の光を反射させキラキラと輝いていた。



それからは順調で道中出てくる敵をにゃん吉と俺で殲滅しながら進んでいく。
途中、10匹ほどの集団と出会ったりもあったが上昇したステータスに物をいわせるように殲滅しながらどんどんと街に向かって進んでいった。

「漸く着いたみたいだな」

視界へと移る、道の先に5メートルほどの巨大な石造りの壁が見え始める。日本では決してみることのできないその風景。日本では見ることもできないその姿に、異世界情緒を感じながら、壁を目指して進んで行く。


すると壁の下の方に検問所が見える。検問所では若い兵士と30代くらいの兵士の二人が立っている。

あそこを通らないといけないみたいだな。
それにしても、検問か。俺はなんとかできるけど問題はにゃん吉だな。二足歩行する喋る子猫なんて連れてったら多分叩き出されるだろうな。
どうしたもんかな…
悩みながら紡はにゃん吉を見つめる。

「どうしたにゃ?」

「んー…にゃん吉、魔導書に入ってくれない?」

「わかったにゃ。でも、魔導書内は独りで寂しいから早めに呼び出してほしいにゃ…」

「おう。任せとけ」

俺はにゃん吉を魔導書に仕舞う。意識するとにゃん吉はさっと消え、残った光が魔導書に入って行く。
ほう、こんな感じで消えるのか。楽でいいな。それじゃ、にゃん吉のためにも早く向かうか。
俺はこの世界で初めて、一人きりで検問所へと向かっていった。




――――――――――――――





「止まれ」

若い兵士が俺のことを止める。
鎧を身につけ、紡の通行を遮るように前に立つ。
へぇ、鉄製の鎧なんて地球じゃなかなかお目にかかれないだろうな。

「みたこともない格好をしているな。身分証はあるか?」

「無い。これでも一応旅人だ、後ろの森にある家からここまで歩いて来た」

下手に嘘をついても意味がないと思い正直に答える。

「家だと?身分証もないし怪しいな。それにあんな森の中に家なんて立ってなかったはずだ!お前嘘ついてやがるな!」

何故かいきなり、若い兵士が喧嘩を売って来た。
なんだこいつ、面倒くせぇ…俺は素直に答えてんじゃねぇか。


俺がイライラを募らせていると隣で聞いていたもう一人の兵士が話に入る。

「おい、お前少し黙ってろ。にいちゃん、お前あの森から来たってのは間違いないか?」

「ああ、本当だ」

「そうか…うむ、こっちに来い」

俺はついて行く。そこには少し大きめの水晶が置いてあった。

「ここに手を当てろ」

「なんだこれは?」

「これは検査の水晶、触った対象の名前と犯罪歴を確認できる魔道具だ」

「成る程な」

紡はそっと水晶に触れる。すると水晶に文字が浮かび上がる。


【ツムグ オトギ 犯罪歴:無し】


ほう…これは便利だな。

浮かび上がった文字を確認すると、兵士が「そうか…」とつぶやきうなづいている。

「問題ないか?」

「ああ、問題ない。悪いな手間を取らせて。証明書がないから通行料が銅貨5枚だ」

兵士は素直に謝ってくれた。

「先輩!こんな怪しいやつ入れて良いんですか!?」

「もう良いから黙ってろ!」

もう一人は色々文句を言っているが

「悪いな、金はないからこの魔石を売ることはできないか?」

「ああ、これなら銀貨1枚はするだろう。入ってまっすぐ進んで行った先に、冒険者ギルドがあるからそこで売ればいいぞ。
うむそれでは一応、通行証発行しておくから後で払いに来い。支払いはどこの門に来てもいいからな」

「わかった」

もう、用はないな、それじゃあ入るか。

「それじゃ行かせてもらう」

「おう。…あ、ちょっと待て」

俺は、止められたことに面倒くささを感じながら振り向くと、兵士は此方をまっすぐ見つめ、笑顔で語る。

「言ってなかったな、ようこそダンジョンの街ウェルドへ。俺はラークだ。よろしくな」

ふうん、ここはウェルドと言うのか。

「そうか、俺は紡だよろしく」

そう言うとすぐに振り返り、俺は街へと入って行った。


―――――――――――――――



異世界の街並みは木製と石製の家々が立ち並ぶ。あたりでは屋台などの店が活気の良い声が上がる、なかなかに熱気のある街並みだった。
あたりでは防具をつけた冒険者のような格好の集団が屋台の串焼きを頬張っており、絵本に出てくるような異世界の街並みに感動が押し寄せる。

よし、まずは金策だな。金が無ければどうしようもないし。
確か、さっき手に入れた魔石は冒険者ギルドで売れるって言っていたな。
教えられた方向へと、ある程度進むと紡の目の前には大きく剣の看板が掲げられた建物が見えてきた。

「ここか。デカイな」

それはひときわ大きな建物であった。周りの木製建築とは違い分厚い石造りで出来ており、とても広いその建物は力強い装いをしている。
中から数人の冒険者らしき人物が出入りしており、ここが冒険者ギルドだと表していた。

少し気圧されながらも紡は冒険者ギルドへと向かって行く。

よし、せっかくの異世界だ。全力で楽しもう。

そんなことを思いながら冒険者ギルドのドアをくぐって行った。





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