14 / 41
第3話 異世界四重奏 〜イセカイカルテット〜
14「スクール水着」
しおりを挟む
スク水というのは至高である。
ほぼ裸に近いものの、本当に裸な訳ではなく、大事なところはしっかり隠されていて、妄想が捗るものだ。
そして裸でないにも関わらず、胸の膨らみ具合から太ももの肉付き、果ては腰のくびれまで、身体のラインはしっかりと映し出されている。
そして女子の綺麗な白い肌と、濃い紺色とのコントラストもまたエロを主張しているのだ。
先刻ニーハイスカートの間の絶対領域について語ったが、スク水もまた同様に最高のオカズである。
──もちろん、俺が着ていなければ、の話であるが。
「すっごい! ミラちゃんもうそんなに作れるの!?」
同じくスク水に身を包んだシルヴィアが、俺が《アクアボール》で作った十数個の水球を見ながら興奮気味に叫んでいる。
どうしてお風呂場でスク水を着て魔法の練習なんてするハメになったのだろうか。俺は力を抜き、支えを失って落ちる水を全身に浴びながら、つい1時間前のことを思い出した。
◇
朝食を食べ終えた俺は、5日目にしてようやく何の用事もない朝を過ごせることになり、何をするかと悩んだ挙句、貰って以来あまり読み進められていない魔法書に目を通していた。
これを理解して実践することが出来れば、俺は憧れた魔法を使いこなせるようになる。
そんなことを無意識のうちに考えて興奮してしまい、その昂りが募るほどに、早く練習したいという気持ちが増幅していった。
しかし、俺の財布は一昨日の服の買い出しによって、あまり余裕はなくなってしまっていた。そもそも次の収入がいつになるのか不明な時点であまり無駄に散財できない。
ミストに頼めばきっとお金はくれることだろうが、あまりそれをアテにしたくはない。
本当に節約して、それでもダメだった時の最後の手段として以外では、その手は使いたくないのだ。
となると、必然的に魔法修練場を使う時間というのは限られてくる。D級魔法はどこか他の場所で使いたいものだ。
しかし、水魔法を繰り返し使うとなると、どうしても無駄に水浸しにしてしまう。それが出来る穴場スポットなんぞ知っているはずもない。
……ふと、家の中にもある、どんなに床を水浸しにしても構わない場所を閃いた。
そう、風呂場である。
あそこならどんなに水を出しても下水道に流れていくだけだし、床が濡れたところで何の問題もない。なんなら浴槽の水を使ってあれこれできるかもしれない。
己の会心のアイデアに思わずほくそ笑んでは、急いで魔法書のD級魔法のページを頭の中に叩き込む。そして早速実行に移すべく一人お風呂場に向かった。
目的地に着くや否や、誰も利用していないことを確認してから水のD級補佐魔法《アクアボール》で5つほどの水球を浮かべ、力を抜いて落としてみた。
突如支えの力を失って、重力に逆らえず落ちた水球は、地面に着くなりその衝撃で四散するが、大きな塊は排水口に流れ、小さな塊は表面張力の力だろう、地面や壁についた。
やはり思った通りだ。
所詮D級の魔法くらいでは排水口の処理能力を超えることはない。万が一超えてしまったとしても、浴槽に落とすだけでまたキャパシティは爆増する。
やはり自らの完璧な思いつきに改めて自惚れながら、水球の数を増やしつつ発動時間の短縮の練習を始めた。
そして少し経った頃のことだ。
「うわっ! アクアボールだ! もうそんなに作れるの!? すっごい! というかミラちゃん水属性魔法の使い手だったんだ! いいなあー! 今どこまで出来る!? 《リキッドブレード》とか使えたりする!? 水の剣ってかっこいいよね! あれ私一回見てみたくって! あ、でもあれB級魔法だからここじゃ使えないか!」
いつの間にか背後にやってきていたシルヴィアに、今まで見たこともないくらいの早口でまくし立てられては、驚きに頭を支配さてしまい、つい制御を失って十個の水球を頭からかぶってしまう。
そんなうっかり行為から着ていたスウェットごとずぶ濡れにしてしまうが、そんな俺を見たシルヴィアは少し慌てたようにするも、興奮は未だ残っている様子で。
「あ、あれっ! 驚かしちゃった!? ごめんね、ついつい興奮しちゃって! 風邪引いちゃうよね! 待ってて、着替え取ってくるから!」
何も言えずにドタバタと嵐が去っていくのを見たあと、ようやく落ち着きを取り戻した頭が一つの嫌な予感を告げた。
シルヴィアに替えの服を任せるのはヤバくないか、と。
彼女の恐ろしさは、2日前のショッピングで嫌という程思い知らされている。
まあまず俺の欲しい服は持ってこないだろう。せめて少しでもマシなものを持ってきてくれることを祈るしかないようだ。
◇
数分の後、戻ってきたシルヴィアが持っていたのが、今俺の着ているスク水であった。
「まだ練習するんでしょ? なら濡れても大丈夫なものがいいかな、って思って!」
というのがシルヴィアの言い分である。いちおう理には適っているのだが……。
何度も言うが、俺は服を持つシルヴィアの前では着せ替え人形と化してしまうので、拒否することなんてできずに今こうしてスク水姿で練習しているのだ。
いやもちろん学校が存在しない時点でこれがスクール水着でないことは分かっているのだが、見た目がどう見てもスク水なので便宜上そう呼んでいるだけでである。
多分俺が『これスク水?』とか聞いたら『なにそれ?』と帰ってくるパターンだろう。
ちなみにシルヴィアが同じ格好をしているのは、「私もミラちゃんの魔法を近くで見たいから!」だそうです。
二人の女の子が水着を着て身体を濡らしているという絶好のエロシチュエーションにも関わらず、俺の心は排水口へ流れゆく水のように冷たく虚しものとなっていた。
そうしてまたひとつ、俺の定番のオカズが水に流され消え失せてしまった。
ほぼ裸に近いものの、本当に裸な訳ではなく、大事なところはしっかり隠されていて、妄想が捗るものだ。
そして裸でないにも関わらず、胸の膨らみ具合から太ももの肉付き、果ては腰のくびれまで、身体のラインはしっかりと映し出されている。
そして女子の綺麗な白い肌と、濃い紺色とのコントラストもまたエロを主張しているのだ。
先刻ニーハイスカートの間の絶対領域について語ったが、スク水もまた同様に最高のオカズである。
──もちろん、俺が着ていなければ、の話であるが。
「すっごい! ミラちゃんもうそんなに作れるの!?」
同じくスク水に身を包んだシルヴィアが、俺が《アクアボール》で作った十数個の水球を見ながら興奮気味に叫んでいる。
どうしてお風呂場でスク水を着て魔法の練習なんてするハメになったのだろうか。俺は力を抜き、支えを失って落ちる水を全身に浴びながら、つい1時間前のことを思い出した。
◇
朝食を食べ終えた俺は、5日目にしてようやく何の用事もない朝を過ごせることになり、何をするかと悩んだ挙句、貰って以来あまり読み進められていない魔法書に目を通していた。
これを理解して実践することが出来れば、俺は憧れた魔法を使いこなせるようになる。
そんなことを無意識のうちに考えて興奮してしまい、その昂りが募るほどに、早く練習したいという気持ちが増幅していった。
しかし、俺の財布は一昨日の服の買い出しによって、あまり余裕はなくなってしまっていた。そもそも次の収入がいつになるのか不明な時点であまり無駄に散財できない。
ミストに頼めばきっとお金はくれることだろうが、あまりそれをアテにしたくはない。
本当に節約して、それでもダメだった時の最後の手段として以外では、その手は使いたくないのだ。
となると、必然的に魔法修練場を使う時間というのは限られてくる。D級魔法はどこか他の場所で使いたいものだ。
しかし、水魔法を繰り返し使うとなると、どうしても無駄に水浸しにしてしまう。それが出来る穴場スポットなんぞ知っているはずもない。
……ふと、家の中にもある、どんなに床を水浸しにしても構わない場所を閃いた。
そう、風呂場である。
あそこならどんなに水を出しても下水道に流れていくだけだし、床が濡れたところで何の問題もない。なんなら浴槽の水を使ってあれこれできるかもしれない。
己の会心のアイデアに思わずほくそ笑んでは、急いで魔法書のD級魔法のページを頭の中に叩き込む。そして早速実行に移すべく一人お風呂場に向かった。
目的地に着くや否や、誰も利用していないことを確認してから水のD級補佐魔法《アクアボール》で5つほどの水球を浮かべ、力を抜いて落としてみた。
突如支えの力を失って、重力に逆らえず落ちた水球は、地面に着くなりその衝撃で四散するが、大きな塊は排水口に流れ、小さな塊は表面張力の力だろう、地面や壁についた。
やはり思った通りだ。
所詮D級の魔法くらいでは排水口の処理能力を超えることはない。万が一超えてしまったとしても、浴槽に落とすだけでまたキャパシティは爆増する。
やはり自らの完璧な思いつきに改めて自惚れながら、水球の数を増やしつつ発動時間の短縮の練習を始めた。
そして少し経った頃のことだ。
「うわっ! アクアボールだ! もうそんなに作れるの!? すっごい! というかミラちゃん水属性魔法の使い手だったんだ! いいなあー! 今どこまで出来る!? 《リキッドブレード》とか使えたりする!? 水の剣ってかっこいいよね! あれ私一回見てみたくって! あ、でもあれB級魔法だからここじゃ使えないか!」
いつの間にか背後にやってきていたシルヴィアに、今まで見たこともないくらいの早口でまくし立てられては、驚きに頭を支配さてしまい、つい制御を失って十個の水球を頭からかぶってしまう。
そんなうっかり行為から着ていたスウェットごとずぶ濡れにしてしまうが、そんな俺を見たシルヴィアは少し慌てたようにするも、興奮は未だ残っている様子で。
「あ、あれっ! 驚かしちゃった!? ごめんね、ついつい興奮しちゃって! 風邪引いちゃうよね! 待ってて、着替え取ってくるから!」
何も言えずにドタバタと嵐が去っていくのを見たあと、ようやく落ち着きを取り戻した頭が一つの嫌な予感を告げた。
シルヴィアに替えの服を任せるのはヤバくないか、と。
彼女の恐ろしさは、2日前のショッピングで嫌という程思い知らされている。
まあまず俺の欲しい服は持ってこないだろう。せめて少しでもマシなものを持ってきてくれることを祈るしかないようだ。
◇
数分の後、戻ってきたシルヴィアが持っていたのが、今俺の着ているスク水であった。
「まだ練習するんでしょ? なら濡れても大丈夫なものがいいかな、って思って!」
というのがシルヴィアの言い分である。いちおう理には適っているのだが……。
何度も言うが、俺は服を持つシルヴィアの前では着せ替え人形と化してしまうので、拒否することなんてできずに今こうしてスク水姿で練習しているのだ。
いやもちろん学校が存在しない時点でこれがスクール水着でないことは分かっているのだが、見た目がどう見てもスク水なので便宜上そう呼んでいるだけでである。
多分俺が『これスク水?』とか聞いたら『なにそれ?』と帰ってくるパターンだろう。
ちなみにシルヴィアが同じ格好をしているのは、「私もミラちゃんの魔法を近くで見たいから!」だそうです。
二人の女の子が水着を着て身体を濡らしているという絶好のエロシチュエーションにも関わらず、俺の心は排水口へ流れゆく水のように冷たく虚しものとなっていた。
そうしてまたひとつ、俺の定番のオカズが水に流され消え失せてしまった。
0
お気に入りに追加
107
あなたにおすすめの小説
知らない異世界を生き抜く方法
明日葉
ファンタジー
異世界転生、とか、異世界召喚、とか。そんなジャンルの小説や漫画は好きで読んでいたけれど。よく元ネタになるようなゲームはやったことがない。
なんの情報もない異世界で、当然自分の立ち位置もわからなければ立ち回りもわからない。
そんな状況で生き抜く方法は?
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
剣と魔法の世界で俺だけロボット
神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎町に住んでいたロボット好きの宮本荒人は、交通事故に巻き込まれたことにより異世界に転生する。
転生した先は、古代魔法文明の遺跡を探索する探索者の集団……クランに所属する夫婦の子供、アラン。
ただし、アランには武器や魔法の才能はほとんどなく、努力に努力を重ねてもどうにか平均に届くかどうかといった程度でしかなかった。
だがそんな中、古代魔法文明の遺跡に潜った時に強制的に転移させられた先にあったのは、心核。
使用者の根源とも言うべきものをその身に纏うマジックアイテム。
この世界においては稀少で、同時に極めて強力な武器の一つとして知られているそれを、アランは生き延びるために使う。……だが、何故か身に纏ったのはファンタジー世界なのにロボット!?
剣と魔法のファンタジー世界において、何故か全高十八メートルもある人型機動兵器を手に入れた主人公。
当然そのような特別な存在が放っておかれるはずもなく……?
小説家になろう、カクヨムでも公開しています。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
僕の従魔は恐ろしく強いようです。
緋沙下
ファンタジー
僕は生まれつき体が弱かった。物心ついた頃から僕の世界は病院の中の一室だった。
僕は治ることなく亡くなってしまった。
心配だったのは、いつも明るく無理をして笑うお母さん達の事だった。
そんな僕に、弟と妹を授ける代わりに別の世界に行って見ないか?という提案がもたらされた。
そこで勇者になるわけでもなく、強いステータスも持たない僕が出会った従魔の女の子
処女作なのでご迷惑かける場面が多数存在するかもしれません。気になる点はご報告いただければ幸いです。
---------------------------------------------------------------------------------------
プロローグと小説の内容を一部変更いたしました。
気がついたら異世界に転生していた。
みみっく
ファンタジー
社畜として会社に愛されこき使われ日々のストレスとムリが原因で深夜の休憩中に死んでしまい。
気がついたら異世界に転生していた。
普通に愛情を受けて育てられ、普通に育ち屋敷を抜け出して子供達が集まる広場へ遊びに行くと自分の異常な身体能力に気が付き始めた・・・
冒険がメインでは無く、冒険とほのぼのとした感じの日常と恋愛を書いていけたらと思って書いています。
戦闘もありますが少しだけです。
収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~
SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。
物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。
4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。
そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。
現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。
異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。
けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて……
お読みいただきありがとうございます。
のんびり不定期更新です。
あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活
mio
ファンタジー
なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。
こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。
なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。
自分の中に眠る力とは何なのか。
その答えを知った時少女は、ある決断をする。
長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる