金色猫と三珠沙華（きんいろねことさんじゅしゃげ）

☆全年齢版☆

第零話『番との朝』

　早く、早く起きるのだ。
　我が愛しい番よ。
　菖よ。

　短く切りそろえられても柔らかな小豆色の髪。
　昔と変わらぬ、あいらしい丸い顔。
　健康的に焼けた肌。
　閉じた瞼の下には琥珀色の透き通った瞳が隠れている。
　寝具に横たわっている我が愛おしい番。
　菖。

　早く起きるのだ。
　菖よ。
　餅のような肌を舌で舐ると、菖が鈴の鳴るような声をあげる。
　くすぐったいと笑って、琥珀色の瞳が瞼の下から姿を覗かせる。
　飴のように甘やかな光を宿すそれが扇のように弧を描いて細められる。
　慈悲に溢れた日差しのような笑顔。
　ずっと見つめていたいが、朝の散歩をサボらせると、母君に菖が起こられてしまう。

　さあ、早く支度を整えて、散歩に行くぞ。

「おはよう、ピカリ」

　我に朝の挨拶をしてきた菖に頬を舐めて、唇に接吻をすることで応える。
　我のニオイもつけているから菖に下手虫も寄って来なくなるので、一石二鳥だ。
　最近はなにやらこの町は騒がしいからな。
　少し気を付けなければならなるまい。
　まあ、何かあっても、我が菖を守るが。
　我が菖を見上げると、それに気づいた菖はまた微笑んだ。