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第二章

第29話 結ばれる時 ※

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 ゼムベルトは自分の指を舌で濡らす。
 たっぷりと唾液をまとった指は、僕の後ろにある窄みに触れてくる。
 誰にも触れられたことがない場所だ。得体の知れない不慣れな感覚に僕の身体は反射的にぶるりと震える。

 ちゅくっと粘液の音を立てて、二本の指が窄みの中へ入ってゆく。
 唾液が潤滑になっているのか、思った程の抵抗はなく僕はゼムベルトの指を根元まで受け入れていた。
 
「ジュノの中……蕩けるような感触だ」
「あ……ゼムベルト……まだ動かさないで」
「ゼムベルトじゃなくて、ゼムと呼んでくれ。私もジュノと呼んでいる」
「ゼム……」
「良い子だ」

 また、甘い声で囁かれる。耳朶にゼムベルトの唇が少し触れただけで、僕の身体は電流が流れたような反応を示す。
 僕はゼムベルトの目を見詰め、まだ動かさないで欲しいと訴えるけど、その願いは叶わない。

「言葉とは裏腹に気持ち良さそうな顔をしているぞ? 本当はこうして欲しいんじゃないのか」

 くちゅくちゅと音を立てて、ゼムベルトの指が後孔の中を解すように小刻みに動く。内壁を擦り上げ、入り口を押し広げる。
 僕は思わず顎を仰け反らせ、声にはならない声を上げる。
 今まで味わったことがない気持ち良さは、僕から抵抗の言葉を奪う。代わりに口から漏れるのは、指が動く度に漏れる甘声。
 やがて指は二本から三本の侵入を許した。
 今度は入り口を丹念に押し広げるように、わざと浅い出し入れを繰り返す。
 それは僕の中である種のもどかしさを生む。
 もっと奥まで来て欲しい。
 僕の最奥は弄られるのを待っているのに。

 不意にゼムベルトの指がお尻から離れた。
 もっと奥に来るどころか、愛撫すら失った入り口はどうしようもなくヒクつく。
 僕は哀願するようにゼムベルトの顔を見上げる。
 すると彼はニヤリと少し意地が悪い笑みを浮かべた。そして今まで優しかった眼差しに、獣を思わせるギラつきが宿る。

 勇者も、そんな目をするのか? 

 僕は息を飲む。
 本能を露わにした勇者は予想以上に雄の色香を漂わせていた。
  抱擁が解かれ、僕は仰向けに寝かされる。鏡氷の天井には僕とゼムベルトの姿がうつっている。

 あ……ちょっと待って。これって。
 
 ゼムベルトが僕の膝裏を捕らえ、ぐいっと脚を広げる。
 僕は思わず目を見張る。
 鏡氷に映る自分の雄茎……それはゼムベルトに触れられたことで嬉々として直立していた。先端からは透明な液が漏れたせいか、異様な照りをみせていた。
 僕はあまりの恥ずかしさに目を閉じる。
 こんなあられもない自分を見るのが耐えられなくて。
 解れた後孔に、ゼムベルトの雄が押し当てられる。
 少し触れただけでも熱い。
 こんなのが中に入ったら……。

「――――」

 想像する間もなく、僕の身体は熱を帯びた雄茎によって一気に貫かれた。
 出来るだけ優しくするって言っていたのに。
 容赦なく、ずんっと突かれたので、驚きに閉ざされた目を思わず開く。

「すまない……抑えがきかないっっ……」

 ゼムベルトが切なそうに目を潤ませ、僕に謝ってくる。
 くっっ……そんな可愛い顔しても騙されないぞ。この嘘つき勇者!
 僕はゼムベルトを睨もうとするけれど、次の瞬間言葉が出なくなる。
 否応なく目に入ってきた天井の光景に僕は息を飲んだ。
 天井の鏡氷には、ゼムベルトによって開かれた僕の脚。そしてあられもない姿の僕の雄茎、そして、僕よりも太い雄が根元までお尻に埋まっているところも。

 僕は……なんて姿に……

 恥ずかしさと同時に得体の知れない胸の高鳴りを感じる。
 前世魔王だった僕は、今世勇者の生まれ変わりである男に抱かれてしまっている。
 背徳的なその光景は罪悪感以上に、ある種の興奮をもたらした。
 昂ぶる僕の気持ちをさらに煽るように、ゼムは忙しなく腰を動かし始めた。


「あ……っっ、あああ……ゼム……いいっっ……」
「ふふふ、ジュノ。初めてなのに気持ち良さそうにして。いけない子だ」
「ぜ、ゼムのせいだ……僕は……淫乱じゃないのに」
「君に自覚がなかっただけだ。私は大いに歓迎だよ。いやらしい子は大好きだからね」

 静かな寝台がきしむ音、身体と身体がぶつかり合う音、体液が絡みつく音が異様なまでに響く。
 少し上体を浮かすと正面の鏡氷が見える。そこにはゼムベルトの尻が映っていた。
 しっかりと鍛え抜かれた形のいい臀部、右上の部分にある翼の形をした聖痕がある。
 ゼムベルトが腰を動かすたびに翼が動いているように見え、ちょっと可愛い、と思ってしまった。


「ジュノ……可愛い……好きだ。大好きだ」
「ゼム……僕も」

 飾らないその言葉が、ストレートに僕の心に響く。
 ゼムの逞しい胸が僕の胸に密着する。
 そしてもう一度ディープなキスを繰り返す。
 濡れた舌と舌が絡み合うたびに、身体の中心の疼きが増し、体温が上昇した。

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