1 / 1
第1話 帰還
しおりを挟む
ー20××年 東京 新宿ー
「勝つぞ……あたしは今日こそ勝つんだ……」
ネオンに照らされた夜の街で、私は一人呟いた。
歩みを進める先はもう決まっていた、 、金と欲望の世界だった。
狂っていた、この街も私も。
日本経済が崩壊したあの日から人々の心は絶望した。そんな時に、人々に救いの手を差し伸べるかの様に東京 新宿に現れた希望の光。それがカジノリゾートだった。
しかしそれは偽りの希望だった。日本を狂わせる歯車を加速させてるだけに過ぎなかった。
経済崩壊に伴い度々起こるデモや相次ぐ犯罪により荒廃してしまった日本の警察は、あまりにも無力で、海外から進出して来たマフィア達も蔓延り、新宿だけで無く、東京中、いや日本中が混沌と化した。
もはやギャンブルは日常当たり前。第2、第3のカジノが大量に出現し、完全に手に負えなくなり、新宿は日本一のカジノ街となったのだ。
そんな混沌亜細亜の街で、私は毎日ギャンブルに溺れ、狂喜乱舞していた。
ギャンブルに年齢は最早関係無くなった。たまたま私は羽織が良かったので、しこたま遊ぶ事が出来た。
しかし一ヶ月前に、たった一回のワンゲームでヘマをして大負けを食らった時から私の中の何かが狂った。
そこでギャンブルを辞めれば良かった。足を洗ってこの狂った世界で少しでも真っ当に生きようとすれば良かった。幾らでも踏みとどまる事が出来たはずだった。
しかし、私はこう考えた。
お金が無いなら 借りればいいじゃない
現世のマリーアントワネットは破滅の道を歩み始めてしまったのだ。
そこからは堕ちぶれるまで早かった。
借金は膨らみに膨らみ、1年余りで凡そ3000万。大の大人でも返すのは一苦労な金額なのに、19歳の少女がそれを返すなんて身体を売り飛ばすか、死んで逃げる位でしか無理だった。
「今日負けたら……私は……私の人生は……」
額の横にある傷跡を掻き毟りながら私は呟く。
一応、一発逆転の愚策は練ってあった。
勝つ算段は至って簡単。さっき闇金から借りて来た6000万をブラックジャックで倍にして借金もチャラで今まで溜まってきた利子も払って残ったお金でまたやり直す、という計算だ。
その時点で思考がバグり散らかしているのだが。この際そんな事はどうでもいい。むしろ成功する事しか考えてない。
私は巨大な城の様な施設の目の前でその歩みを止めた。
この新宿は沢山のカジノがある。その中でも一際目立った城の中にテーマパークかあるみたいなこの施設。
高級タワマン位はありそうな巨大なゲートは黄金色に輝きながらそびえ立っており、上の吊り下げられた大きな看板にMADLANDの文字が英語で刻まれていた。
そこはこれから私の幸せな天国となるのか、はたまた地獄となるのか。二つに一つ。
ゲートを抜けた先には高級車やらオープンカーやらがズラリと並び、傍には様々なBARや店が立ち並び、その通りの先には煌びやかなナイトプールやら観覧車やらがある始末だ。
直立不動でタクシーを呼び止めカジノの入口まで向かわせる。ここら辺は昔飲み屋街だったらしいが、リゾート化に伴い一旦全て更地にされたらしいので跡形もない、私が産まれる前の話だが。
流石は新宿で1番大きいカジノリゾートだなと関心しながら、外の景色を眺めていた。
通りゆく風景は走馬灯の様に、私の目に映った。カジノその物が生き物みたいに見えた。
感情のある世界だ。人々が、笑って、泣いて、怒って、一喜一憂しているこの世界は、本当に楽園みたいだった。
もしかしたら昔も、そんな喧騒のある街が広がってただけで、今も昔もそんな変わらないのかもしれない。
タクシーが着いたので金を払って車から降りると、目の前に扉があり、見るからに屈強な外国人の男が数十人もスーツを着てガードマンをしている。
監視カメラは軽く数百台は設置してある事だろう。どう考えても強盗なんて無理だろうと思った。
ガードマンの男にボディチェックをされて金属探知機にかけられた後で扉の中へと通される。
扉の中は、さっきまでの喧騒的な外の世界とは違い、幻想的で豪華絢爛な世界が広がっていた。
宝石の埋め込まれた壁やダイヤモンド輝く大理石は、目がチカチカする程眩しい。
首を見上げてしまうくらい高い天井から吊るされたシャンデリアは、夜の太陽としてホールを照らしていた。
奥には白く輝く階段がフロアの奥で、左右に半円を描く。ギリシャ神話でよくみる天国への階段かと錯覚する。
所々にある螺旋の階段は、各階にそれぞれ繋がっていて、各フロアによって装飾も特質も違っていた。
それぞれが別世界でマルチバースの様な王国は、私の人生を賭ける勝負にはうってつけの場所だった。
「……行くぞ」
私は、また額の横の傷跡を掻き毟りながら呟く。
金の入ったデカいケースを引っさげ、メインホールのブラックジャックのテーブルへスタスタと足を運ぶ。
「たのもーーーー!!!!!」
私は人で埋まっていたテーブルの真後ろで上を向き大声を出す。
周りにいた人々は一斉に私の方を振り向いた。
「なんだなんだ?どうした?」
「えー、何?女の子……?」
「ガキじゃねぇか……何なんだよ今日は……」
少しばかりざわめいた所で、テーブルの前の人混みをかき分け、テーブルの上にドカンとスーツケースを置き、そして中の金をディーラーに見せつける。
「この6000万、このワンゲームに全部賭ける!!」
「か……かしこまりました……」
さっきまで無表情だったディーラーが、鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔でアタフタしたす。
「え?6000万?ワンゲームに!?」
「おいおい、なんだあのガキ!?」
当然、ギャラリーも響めきだす。
「ただいまお金を数えチップに変えますので、少々お待ちを……」
「いくのか!?マジで6000万いくのか!?」
「えー!!どこのお嬢様なのあの子?」
「おい!!すげぇぞこっち!!6000万賭けるガキが居るってよ!!」
「マジかよ、ヤベェ、狂ってんな!!」
狂ってるのは1番私が分かっている。
一気に話がフロア全体に広がり、お祭り騒ぎになっていた。しかし私の耳には雑音など入らない。真っ直ぐディーラーの数えてるお金を見つめた。
「おい頑張れよ!!俺は応援してるぜ!!」
「勝てば1億2000万か、それ以上でしょ?頑張りなよ!!」
「いけクソガキ!!ぶちかませ!!」
ギャラリーがワイワイと私に声援を送り始める。五月蝿い。
「こちら、6000万円分のチップです。どうぞお受け取りください。」
「オールイン!!!!」
そう宣言すると、ギャラリーがわぁっと盛り上がり、ホールに熱気と歓声が充満する。
ブラックジャックのやり方は至って簡単だ。カードが2枚、目の前に配られる。
1枚目は裏向きでディーラーには見えない、私だけが分かるカードだ。そして2枚目は表向きでしっかり全員に見える。
この2枚の合計を計算してカードを追加するか決めるのだ。ディーラーにhitと言うとカードが1枚表向きで配られる。別に何枚でもヒットは出来るのだが、数が多ければ良いってもんじゃない。
カードの合計が21を超えたらダメ。
言わばこのゲームはチキンレースだ。
21を超えてしまうとBURSTとなる。バーストは基本勝てない。負けの烙印だ。
逆に21びったりだと、その名の通りBLACKJACKとなり、勝ちの烙印となる。
しかもブラックジャックだと賭け金が2倍になるので大儲け、仮に今ブラックジャックで勝ったら6000万が1億8000万になるので、その時は観覧車に乗りながら金をばら撒いて、その後ホストクラブで高い酒をしこたま頼んでも大金が残るだろう。
しかし問題なのが最初から合計が21に近い数だったらどうするかとなるのだが。無理矢理カードを引かされるルールは存在しない。
引きたくない時はstayと宣言すればいい。
ステイは引かないと言う意味と同時に勝負と言う意味でもあるので、1度ステイすると勝負しなければならない。
「いや、そもそも誰と勝負すんねん!!」
って話なのだが、このゲームは自分が
「21に近い数を出せたね!!やったぁ!!ハイ終わり!!お金あげる~♡」
なんて甘いゲームではない。ディーラーと勝負して勝たないとお金は貰えない。
最初にカードが私に2枚配られる時にディーラーにもカードが配られる。不公平な事に私は2枚目をディーラーに見せないといけないのに、ディーラーは最初の2枚を見せなくていい。
ディーラー視点は私のカードは1枚目以外全部見えるのに、私はディーラーのヒットしたカードしか見えないのだ。
ルールによってはディーラーが1枚目を見せてプレイヤーが2枚とも伏せる時もあるが、このカジノは違うらしい。困ったもんだ。
例えるなら剣と木の枝で戦わされる様なものだ。ディーラーは私のカードを見て合計を予想してヒットしなりステイしたりする特権があるのでそうそう負ける事はない。
本当に不公平な事である。
なんなら数が低い事がディーラーにバレればカードをヒットして貰えず、土俵にすら立てずに負ける事もある。
しかし、その穴を塞ぐための救済措置がブラックジャックには2つ存在する。
1つ目は私は バーストしていても申告しなくていいと言うルール。
バーストしていてもディーラーが気づかずに欲をかいてバーストすれば私の逆転勝ちとなる。
このカジノではプレイヤーもディーラーもバーストした場合プレイヤーの勝ちと言う処理だからだ。下調べをしといて正解だった。
このカジノではディーラーはブラックジャックで勝った場合プレイヤーの賭け金と追加で、プレイヤーの賭けていた額と同額を奪えると言う闇ルールなので、つまり負ければ倍マイナスになる。
ディーラーも人間なので欲をかく。欲をかくと言う事は私がバーストでも欲をかいて自分もバーストで負ける事があると言う事だ。
2つ目の救済措置はディーラーは16以下の合計の場合 強制でカードをヒットしないといけないと言うルール。
これでディーラーのバースト率はハネ上がる。
思考を巡らしているうちに、目の前にカードが配られた。
裏向きのカードを捲る前に、2枚目のハートのエースに目がいく。
「おいおい!!エースを引いたぞあのガキ」
「すごい!!ほんとに才能じゃん!!」
テンションは狂っと回って奇声を上げても恥ずかしくないぐらいにハイになってしまう。
何故かと言うとブラックジャックにおいてこのエースは奇跡のカードで、数え方が私の都合次第で1にも11にもなるカードだからだ。
前提として、絵札は10と数えるのだが、例えば10のカードが2枚最初に来ていてヒットしてエースならそのまま1として扱うのでブラックジャックだ。
10のカードとエースなら11として扱うのでブラックジャックだ。
悪くても引き分けだ。ワンチャンス狙える。
最初に7と10が来ていてヒットしてエースなら17+11と考えるならバーストだが、17+1として考えれば18で21に近い勝ちやすい数字となる。
そんな魔法のご都合主義の港区女子みたいなカードを6000万賭けてる大勝負の時に引いたのだ。
私のこの目の前のカードが緊張のあまり私が見てしまった幻覚とかでない限りは、この裏向きの2枚目が絵札ならブラックジャック。
私は神に祈りながら裏向きのカードをゆっくりと捲る。
しかし、私は2枚目のカードを見た瞬間、絶望した。
あろうことか奇跡のカードが2枚来てしまったのだ。宝の持ち腐れとはまさにこの事。
エースと絵札なら大歓迎だがエース2つは2か22にしかならない。
どっかの海賊漫画でもエースは1人しか居ないんだから、ブラックジャックでもエースは1枚でいい。
このスペードのエースを知ってるのは私だけ、ディーラーも周りの観客も知らない事実だ。
まだ救いがあるとするならはを、エースが2枚でてるので、ディーラーがエースを最初から引き当てる確率が低い事だろうか。
「くそっ!!ヒット!!」
救いが無いなら自分で勝ち取るしかない。3枚目のカードが姿を現す。ダイヤの3だ、低い、3枚ヒットして合計が5だ。
「おいおい……ヒットかよ……」
「うわぁ、こりゃ可哀想あの子……」
周りの野次馬のテンションが一気にさがる。
まあ無理もない、エースが来た時点でノールックでブラックジャックを想像したのに私が3枚目をヒットしたんだ。
ブラックジャックじゃないと分かり興醒めと言う物だ。
「hit or stay?」
ディーラーが問いかけてくる。
さて、そんな周りなんてもうどうだってよくて、問題は次のカードの数。なるべく大きめがいいが大きすぎても嫌だ。
仮に10か9なら15や14の合計となり中途半端な数となる。
ディーラーは16以下だとヒットしなくてはいけない救済ルール、裏を返せば私も16以下だとディーラーに喰われると言う事を意味していた。
救済ルールが私の首を締め付ける、しかし5なんて石ころ見たいな数で勝負する気は更々無い。
「もう1枚よこせ!!ヒット!!!!」
この時点でもう周りのギャラリーやディーラーは3枚ヒットしても4枚目をヒットするなら3~6の数なんだなと予想されてしまうのだから、不利な事この上ない。
そして来たカードはクラブの9。やってしまった、合計は14、最悪だ。
このゲームにおいて14や15の数字は最悪の数として怖がられている。
忌々しい数だ。
ヒットしても下手な数が出ればバースト、低い数でもそもそも勝負に勝てない。
煮ても焼いても食えない数。さて、どうする私。
思考を巡らす。
「……そうだ!!7だ!!7が来ればブラックジャックだ!!しかも5枚でブラックジャックを出して勝ったら賭け金は3倍だったよな!!?」
「たしかに、当店では5枚のブラックジャックで勝たれたお客様は賭け金の3倍のチップをお支払いしております。」
その言葉を聞いてギャラリーが一気に熱い声を上げる。
「おい!!このガキが2億4000万万出すってよ!!」
「はぁ!?冗談だろ、2億越え!?このカジノのブラックジャック歴代勝利金額を軽く超えてるじゃねーか!!」
「すごいよあんた!!いけっ!!いける!!あんたならやれるよ!!」
「ヒット!!ラッキーセブンよこい!!」
私の声に呼応してギャラリー全員が息を合わせる。
「セブン!!セブン!!セブン!!セブン!!」
運命のカードが運ばれて来る。
そっと閉じていた目を開けカードの数字を視界に入れる。
悪魔の数字 スペードの6だ。
「……なんで……だよ……」
「なんで!?なんでだよっ!!私の運はこんな所でも弱いのか!!いつもそうだ!!肝心な所でっ!!」
少し取り乱して額の横の傷跡を掻き毟り下を向いた。
ギャラリーの1人の男が私の肩をポンっと叩いた。
「諦めるのは、まだ早いんじゃないかにゃあ?」
私は振り向く、不思議な男だった。
細身で背は高く、紫色に染めた髪を揺らしていた。
「知ってるかもしれないけど、6枚でブラックジャックを出せたなら4倍だにゃあ♡つまり6000万は3億に早変わりするのにゃあ。エースにゃ、あと1回ヒットしてエースを引けば……」
パシン
私は感情に身を任せてその男の頬を平手打ちする。
「ふざっけんな!!エースはもう2枚出てるんだ!!残り2枚しかないんだぞ!!ディーラーの2枚の中にあったら残り1枚か0かもしれない!!そんな代物がこのタイミングでレアモンスター確定ガチャみたいにご都合よく出るわけないだろ!!」
「頭がお花畑なのか!?そんなんでエースが出て勝てたら誰も苦労しないんだよっ!!」
そう騒いだ私のアゴを猫みたいな喋り方の男がクイッと持ち上げ見下ろす形で、目を覗き込んで笑いながら言った。
「お前、意外とよく喋るんだにゃあ」
「相変わらず面白い女にゃあ♡」
「……はあ?」
私は一瞬時が止まり、2人きりになった感覚にらなるが、顔を変な男がから逸らしステイしようとする。
「ディーラー、もういいよ。ステ……」
「逃げるのかにゃあ?」
猫男が私の声を遮る。
「………………なんなんだよお前は!!」
「たしかに、その20で勝てば1億2000万貰えるにゃあ。でもこれから先人生でカジノと言う単語を聞くだけで思い出すにゃあ。このカジノの周り、いや新宿、いや東京、いや日本に住んでるだけで考えてしまうかもしれないにゃあ」
「あの時ヒットしてれば4倍勝ちだったんじゃないか、って」
「そういう思考に陥ると、残ったお金でまたカジノでお金を稼ごうとするにゃあ、お前みたいなギャンブル狂の女の考える事なんて、今も昔も一緒にゃあ」
「………………」
私は押し黙る。
「それにお前、どーせこの金闇金から借りて来た金じゃないかにゃあ?」
「……!!」
私は動揺する。
訳が分からない、こんな初対面の意味のわからない語尾の男に見透かされてる気がするのだ。
「ほーら、やっぱりにゃあ。お前みたいなガキンチョが6000万用意するなんて闇金位しか無理にゃあ。」
「借りる前にギャンブルで大負けして、泥沼にハマってそっから借金地獄。利子も含めて返済する為にここで大勝負キメ込んだって話だろうにゃあ」
「……うるさい」
「……どーせ私は負け組だ」
「今ならまだ勝てるにゃあ♡どーせ1億2000万で勝っても利子と返済で殆ど残らないんだし、一生分としてはちと苦しいにゃあ」
「hit or stay」
「ギャンブルは言わば夢にゃあ。先が見えない物を追いかけるから価値があるのであって。最初から保身に走るためにギャンブルする奴なんて、負けるために金を払ってるのと一緒だにゃあ」
「おい、ガキンチョ♡お前はここでまた保身に走ったところで、また儲けた金はギャンブルに消える。今消えても、後で消えても一緒だにゃあ。」
「てかこんなギャンブルしてる時点で保身もクソもないのに保身に走ろうとしてるのが本末転倒なんだにゃあ♡」
私はイラッとしてテーブルを叩く。
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!五月蝿い!!五月蝿い!!お前は何がが言いたいんだよ!!」
猫が、完全に取り乱す私の頬を優しく撫でて微笑む。
「覚えておくといいにゃあ」
「Giving up is evil, success is not always justice.」
「って事だにゃあ」
「…………分かったよ……ヒット……」
「本当に面白い女だにゃあ♡」
「お前!!これで負けたら責任取れよ!!」
「責任取るなんて一言も言ってないにゃあ」
「ふざっけんな!!泣いても笑っても取ってもらうからな!!」
プイッと私は猫男から顔を背け、6枚目のカードを見る、心臓が破裂しそうだ。
顔を覗かせたのは 残酷な女王だった。
合計は30とんでもないバースト、やってはいけない破滅行為、しかもギャラリーみんなでセブンとか騒いでたので、バーストの自己申告をしてるようなものだ。
よってディーラーの自滅もない、事実上の負け確定だ。
「……どーすんだよ……これ」
私は猫男に泣きつく。
「にゃはは、やっちゃったにゃあ」
「笑ってる場合か!!もう!!」
猫がヘラヘラと笑っているが大惨事だ。
「……ステイで」
私は絶望しながらディーラーとの勝負を宣言する。
しかしその実負けかは分からなかったりもする。
ディーラーの最初の数字が14や15等の16以下の数字なら1枚強制ヒットで絵札とかが出ればバーストでまだ私の勝ちかもしれないからだ。
しかしディーラーはカードを引かなかった。
黒い絶望が更に黒より濃い黒で塗り重ねられる。
「勝負ですよ、プレイヤーさん」
「……はい」
死刑執行の時間だ。
私はディーラーのカードを見て目を疑った。
スペードのキングとダイヤのエースのブラックジャック。
どうやら王様と女王が手を組んで絶望の王国を作ったらしい。
不幸な最初の住人は私というわけだ。
「お客様、ブラックジャックでの敗北ですので、現在の賭け金の6000万から、さらに追加で6000万お支払い頂きます。」
「……あ……ああ……」
「さぁ、今すぐお支払いを!!」
ディーラーがニコニコ顔で地獄の門に引き込んでくる。勿論、逃げ場は無い。
ギャラリーは結果が分かり解散ムードだ。
「……ないです……お金……その6000万しか……」
「あっ、そうですか。じゃあ」
黒服の男達数人に囲まれる。
「裏へ来て頂きましょう」
「……い……嫌……辞めてください……お願いします……」
鼻水と涙が出てきた。恐怖で失禁すらしそうだ。
「おい、クソガキ」
ディーラーが豹変しドス黒い声で私の髪を掴み顔を近づけて睨みつける。
「てめぇは負けたんだよ!!この奴隷行きのガキンチョがよぉ!!本当に馬鹿だなテメーは!!そもそも最初から努力もせずにこんなゲームで金稼ごうって考えがある時点で終わってんだよおおおおおおおお!!」
「なーに大金張ってんだ、遊びとしてやる事なんだよギャンブルは!!人生賭けちゃった時点でテメーの負けなの!!わかる?まだ若いんだからきちんと頭使うべきでちたねー!!もう遅いでちゅけどねー!!」
「……うっ……うぅ……えぐっ……ひっく……」
私は全身を男達にガッシリとつかまれ身動きが取れなくなる。
ディーラーがニタニタと私の手に顔を近づけてくる。
「それにしても可愛い顔してるなあおい……高値がつくんじゃねーか……負け組さんよぉ!!」
「せいぜい小汚ねぇおっさんに可愛がってもら……」
「え゛っ゛っ゛……ごほっ!!」
ディーラーの顔面が横に大きく吹っ飛んだ、そして入れ替わるように、間の前にディーラーに飛び蹴りを食らわせた猫男が飛んできた。
「……負け組なんかじゃないにゃあ」
「おい……こんな事してタダで済むと思う……ガハッ!!」
猫がディーラーに回し蹴りの強制追加注文をオーダーする。周りの男達もあまりの光景に呆気に取られている。
「この子はね、逃げて勝つより、最初の最後まで真実の勝ちを目指したのにゃあ。」
「最初から偽りの勝利だったお前なんかよりよっぽど強いよ。」
「勝負では負けたかもしれないけど、気持ちでは勝ってんだよ」
「彼女はこの楽園で誰よりも人生を刹那に賭けた主人公なんだにゃあ♡」
猫が口笛を吹く、ギャラリーの中のフードに身を包んだ少女が男達を1人づつぶっ飛ばし始める。
「僕の仲間の御登場にゃあ♡」
「おい!!なにやってんだ!!小娘1人だぞ!!?」
ディーラーがヘタリ込みながら倒れていく黒服達を眺めている。
「恥ずかしい演説見せちゃったにゃあ」
「さぁ、逃げよう、アリス♡」
「……うん!!」
フード娘が黒服にパンチを入れながら叫ぶ。
「はよ逃げんかいアホ猫!!何のために大暴れしとる思っとんねん!!」
「あははっ、ごめんにゃあ三月ウサギ♡」
ディーラーが呆然としながら呟く。
「なんでだ……!!どうして新宿一番のカジノで乱闘騒ぎなのに増援1人来ないんだ!!外のガードマン共はどうした!!」
「知らないにゃあ、優秀なハッカーが出入口のロックでもかけたんじゃないかにゃあ?」
「ふざけんなぁぁぁぁぁぁ!!」
「うっさいわアホンダルァ!!」
ディーラーはフード娘に蹴りを食らって気絶してしまった。
「お、窓開けてくれたっぽいやん、はよ行けや!!」
「ありがとにゃん~♡」
チェシャ猫は私に背中を向け顔と左手だけこちらへ向ける。
「行くよ、アリス」
「ようこそ、僕らの歪なお茶会へ」
「招待するにゃあ!!」
「……歪な……お茶会……?」
「チェシャ猫、なにそれ?」
私はチェシャ猫の意味のわからない発言に混乱していた、そしていつの間にかこの男をチェシャ猫と呼んだ自分にも混乱していた。
「詳しい話は後!!」
「そんな事より」
「お帰りなさい」
「…………???」
私は首を傾げた。
~ 時刻 午後23時 場所???~
「チェシャ猫、ここは、何処?」
私がチェシャ猫に連れてこられたのは、町外れの古びた教会だった。なんでこんな所に来たのかも分からないまま、ホコリをはらって椅子に腰掛ける。
「アリス、単刀直入に言うのにゃあ」
「歪なお茶会のメンバーに入るのにゃあ♡」
「だからなんなの、その歪なお茶会って」
「かっこいいでしょ♡僕らカジノ破りのチーム名にゃあ」
「カジノ破り?なにそれ?どうしてそんなチームが存在するの?」
「そもそも、どうしてそんな事をしてるの?」
私はチェシャ猫に問う。
「いい質問にゃあ♡」
「じゃあちょっと昔話でもしようかにゃあ」
「……意味がわからないわ」
「……そのうち分かるよ、僕らのアリス」
そう呟いて、チェシャ猫は話し始めた。
昔々、世界が出来て間もない頃の話
世界に幼い少女が迷い込んで来ましたとさ
その少女はその世界で沢山の仲間を作り
やがて世界の女王になった
ある時女王は1人の男に恋をしましたとさ
その男は不思議な男だった
女王がいくら金を授けても
いくら宝物を授けても
全く振り向いてくれなかった
「……それはなぜ?」
私がチェシャ猫の話を遮る。
何故なら男は金が欲しかったわけでも
珍しい宝物が欲しかった訳でもない
女王の心が欲しかったから
だから男は女王がその事に気づくまで
振り向く事はありませんでした
そして女王は本当に気がついたのです
真実の愛に
女王は男にこう言いました
「例え記憶が無くなったとしても、お前を愛そう」と
「…………」
私は無言になる……。
女王の側近に、ある別の少女がいましたとさ
その少女も女王と同じ男が好きでした
その少女は自分の欲しいものは絶対に手に入れないと気が済まない性格でした
女王はそんな事はいざ知らず
男と結婚式を挙げました
彼と出会った思い出の教会で
女王は少女の気持ちも分からずに
少女を結婚式に呼びました
少女は結婚式に足を運びました
嫉妬で固めた拳銃を片手に
女王の仲間達は2人を祝福していました
たった1人の少女を除いて
女王と男は誓のキスをしようとした次の瞬間
少女の拳銃が女王の頭を撃ち抜きました
女王はその場で頭から血を流し倒れどこかへ運ばれていきました
少女はその場で宣言します
「今日から私が新しい女王だ」と
その少女の仲間達が女王の仲間達を追いやり
その少女が新たな女王になり
新たな楽園が造られていきました
かつての女王のいない
偽りの楽園が
残された男は心の底から悲しみました
そして拳銃を打った少女を心の底から憎みました
そして男はこう思ったのです
偽りの楽園を何もかも壊してやろうと
かつての仲間達を集め偽りの楽園を壊そうとしました
そんな最中男にある知らせが届きます
かつての女王が生きていると
例え記憶が無くなったとしても、お前を愛そう
男は淡い希望を抱き女王を探し続けました
世界のどこを探しても見つかりません
かつての女王は宝物を持ち出しどこかへ消えてしまったようです
また男は深い悲しみに暮れました
しかし男は諦めませんでした
絶対に女王アリスを探し出すと心に誓い
偽りの女王に復讐し偽りの楽園を壊し尽くすと心に誓ったのでした
めでたしめでたし
「…………何も覚えてないんだね」
「…………アリス」
チェシャ猫はアリスの額の横の傷跡をなぞる
「チェシャ猫……貴方は……」
教会の鐘が鳴る、12時を告げる鐘の音が。
「集合時間ピッタリに来たで~、遅刻魔脱出やなぁ!!」
先程のフードの少女がそう言って教会の扉を開く。少女の他にも何人か人がいる。
「さぁさぁ皆さん!!今夜もお茶会の時間ですよ~」
派手な帽子を被った男が手を叩きながら入ってくる。
「うーん、まだ眠いよぉ。カジノの扉ハッキングするので体力使い果たしちゃった」
小柄な少年がPCを抱えながら椅子に座る。
「ふん、くだらん、さっさと作戦会議に移るぞ」
白いスーツの男が少年の背中を叩く。
「みんな!!帰ってきたよ!!僕らのアリスが」
みんなが私に拍手をする、知らないはずの人達が
チェシャ猫が私の手を取る
「いこうアリス」
「壊しに行くんだ、僕らの楽園を」
私はチェシャ猫の背中を追いかけて夜の街へ駆け出した。
to be continued
「勝つぞ……あたしは今日こそ勝つんだ……」
ネオンに照らされた夜の街で、私は一人呟いた。
歩みを進める先はもう決まっていた、 、金と欲望の世界だった。
狂っていた、この街も私も。
日本経済が崩壊したあの日から人々の心は絶望した。そんな時に、人々に救いの手を差し伸べるかの様に東京 新宿に現れた希望の光。それがカジノリゾートだった。
しかしそれは偽りの希望だった。日本を狂わせる歯車を加速させてるだけに過ぎなかった。
経済崩壊に伴い度々起こるデモや相次ぐ犯罪により荒廃してしまった日本の警察は、あまりにも無力で、海外から進出して来たマフィア達も蔓延り、新宿だけで無く、東京中、いや日本中が混沌と化した。
もはやギャンブルは日常当たり前。第2、第3のカジノが大量に出現し、完全に手に負えなくなり、新宿は日本一のカジノ街となったのだ。
そんな混沌亜細亜の街で、私は毎日ギャンブルに溺れ、狂喜乱舞していた。
ギャンブルに年齢は最早関係無くなった。たまたま私は羽織が良かったので、しこたま遊ぶ事が出来た。
しかし一ヶ月前に、たった一回のワンゲームでヘマをして大負けを食らった時から私の中の何かが狂った。
そこでギャンブルを辞めれば良かった。足を洗ってこの狂った世界で少しでも真っ当に生きようとすれば良かった。幾らでも踏みとどまる事が出来たはずだった。
しかし、私はこう考えた。
お金が無いなら 借りればいいじゃない
現世のマリーアントワネットは破滅の道を歩み始めてしまったのだ。
そこからは堕ちぶれるまで早かった。
借金は膨らみに膨らみ、1年余りで凡そ3000万。大の大人でも返すのは一苦労な金額なのに、19歳の少女がそれを返すなんて身体を売り飛ばすか、死んで逃げる位でしか無理だった。
「今日負けたら……私は……私の人生は……」
額の横にある傷跡を掻き毟りながら私は呟く。
一応、一発逆転の愚策は練ってあった。
勝つ算段は至って簡単。さっき闇金から借りて来た6000万をブラックジャックで倍にして借金もチャラで今まで溜まってきた利子も払って残ったお金でまたやり直す、という計算だ。
その時点で思考がバグり散らかしているのだが。この際そんな事はどうでもいい。むしろ成功する事しか考えてない。
私は巨大な城の様な施設の目の前でその歩みを止めた。
この新宿は沢山のカジノがある。その中でも一際目立った城の中にテーマパークかあるみたいなこの施設。
高級タワマン位はありそうな巨大なゲートは黄金色に輝きながらそびえ立っており、上の吊り下げられた大きな看板にMADLANDの文字が英語で刻まれていた。
そこはこれから私の幸せな天国となるのか、はたまた地獄となるのか。二つに一つ。
ゲートを抜けた先には高級車やらオープンカーやらがズラリと並び、傍には様々なBARや店が立ち並び、その通りの先には煌びやかなナイトプールやら観覧車やらがある始末だ。
直立不動でタクシーを呼び止めカジノの入口まで向かわせる。ここら辺は昔飲み屋街だったらしいが、リゾート化に伴い一旦全て更地にされたらしいので跡形もない、私が産まれる前の話だが。
流石は新宿で1番大きいカジノリゾートだなと関心しながら、外の景色を眺めていた。
通りゆく風景は走馬灯の様に、私の目に映った。カジノその物が生き物みたいに見えた。
感情のある世界だ。人々が、笑って、泣いて、怒って、一喜一憂しているこの世界は、本当に楽園みたいだった。
もしかしたら昔も、そんな喧騒のある街が広がってただけで、今も昔もそんな変わらないのかもしれない。
タクシーが着いたので金を払って車から降りると、目の前に扉があり、見るからに屈強な外国人の男が数十人もスーツを着てガードマンをしている。
監視カメラは軽く数百台は設置してある事だろう。どう考えても強盗なんて無理だろうと思った。
ガードマンの男にボディチェックをされて金属探知機にかけられた後で扉の中へと通される。
扉の中は、さっきまでの喧騒的な外の世界とは違い、幻想的で豪華絢爛な世界が広がっていた。
宝石の埋め込まれた壁やダイヤモンド輝く大理石は、目がチカチカする程眩しい。
首を見上げてしまうくらい高い天井から吊るされたシャンデリアは、夜の太陽としてホールを照らしていた。
奥には白く輝く階段がフロアの奥で、左右に半円を描く。ギリシャ神話でよくみる天国への階段かと錯覚する。
所々にある螺旋の階段は、各階にそれぞれ繋がっていて、各フロアによって装飾も特質も違っていた。
それぞれが別世界でマルチバースの様な王国は、私の人生を賭ける勝負にはうってつけの場所だった。
「……行くぞ」
私は、また額の横の傷跡を掻き毟りながら呟く。
金の入ったデカいケースを引っさげ、メインホールのブラックジャックのテーブルへスタスタと足を運ぶ。
「たのもーーーー!!!!!」
私は人で埋まっていたテーブルの真後ろで上を向き大声を出す。
周りにいた人々は一斉に私の方を振り向いた。
「なんだなんだ?どうした?」
「えー、何?女の子……?」
「ガキじゃねぇか……何なんだよ今日は……」
少しばかりざわめいた所で、テーブルの前の人混みをかき分け、テーブルの上にドカンとスーツケースを置き、そして中の金をディーラーに見せつける。
「この6000万、このワンゲームに全部賭ける!!」
「か……かしこまりました……」
さっきまで無表情だったディーラーが、鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔でアタフタしたす。
「え?6000万?ワンゲームに!?」
「おいおい、なんだあのガキ!?」
当然、ギャラリーも響めきだす。
「ただいまお金を数えチップに変えますので、少々お待ちを……」
「いくのか!?マジで6000万いくのか!?」
「えー!!どこのお嬢様なのあの子?」
「おい!!すげぇぞこっち!!6000万賭けるガキが居るってよ!!」
「マジかよ、ヤベェ、狂ってんな!!」
狂ってるのは1番私が分かっている。
一気に話がフロア全体に広がり、お祭り騒ぎになっていた。しかし私の耳には雑音など入らない。真っ直ぐディーラーの数えてるお金を見つめた。
「おい頑張れよ!!俺は応援してるぜ!!」
「勝てば1億2000万か、それ以上でしょ?頑張りなよ!!」
「いけクソガキ!!ぶちかませ!!」
ギャラリーがワイワイと私に声援を送り始める。五月蝿い。
「こちら、6000万円分のチップです。どうぞお受け取りください。」
「オールイン!!!!」
そう宣言すると、ギャラリーがわぁっと盛り上がり、ホールに熱気と歓声が充満する。
ブラックジャックのやり方は至って簡単だ。カードが2枚、目の前に配られる。
1枚目は裏向きでディーラーには見えない、私だけが分かるカードだ。そして2枚目は表向きでしっかり全員に見える。
この2枚の合計を計算してカードを追加するか決めるのだ。ディーラーにhitと言うとカードが1枚表向きで配られる。別に何枚でもヒットは出来るのだが、数が多ければ良いってもんじゃない。
カードの合計が21を超えたらダメ。
言わばこのゲームはチキンレースだ。
21を超えてしまうとBURSTとなる。バーストは基本勝てない。負けの烙印だ。
逆に21びったりだと、その名の通りBLACKJACKとなり、勝ちの烙印となる。
しかもブラックジャックだと賭け金が2倍になるので大儲け、仮に今ブラックジャックで勝ったら6000万が1億8000万になるので、その時は観覧車に乗りながら金をばら撒いて、その後ホストクラブで高い酒をしこたま頼んでも大金が残るだろう。
しかし問題なのが最初から合計が21に近い数だったらどうするかとなるのだが。無理矢理カードを引かされるルールは存在しない。
引きたくない時はstayと宣言すればいい。
ステイは引かないと言う意味と同時に勝負と言う意味でもあるので、1度ステイすると勝負しなければならない。
「いや、そもそも誰と勝負すんねん!!」
って話なのだが、このゲームは自分が
「21に近い数を出せたね!!やったぁ!!ハイ終わり!!お金あげる~♡」
なんて甘いゲームではない。ディーラーと勝負して勝たないとお金は貰えない。
最初にカードが私に2枚配られる時にディーラーにもカードが配られる。不公平な事に私は2枚目をディーラーに見せないといけないのに、ディーラーは最初の2枚を見せなくていい。
ディーラー視点は私のカードは1枚目以外全部見えるのに、私はディーラーのヒットしたカードしか見えないのだ。
ルールによってはディーラーが1枚目を見せてプレイヤーが2枚とも伏せる時もあるが、このカジノは違うらしい。困ったもんだ。
例えるなら剣と木の枝で戦わされる様なものだ。ディーラーは私のカードを見て合計を予想してヒットしなりステイしたりする特権があるのでそうそう負ける事はない。
本当に不公平な事である。
なんなら数が低い事がディーラーにバレればカードをヒットして貰えず、土俵にすら立てずに負ける事もある。
しかし、その穴を塞ぐための救済措置がブラックジャックには2つ存在する。
1つ目は私は バーストしていても申告しなくていいと言うルール。
バーストしていてもディーラーが気づかずに欲をかいてバーストすれば私の逆転勝ちとなる。
このカジノではプレイヤーもディーラーもバーストした場合プレイヤーの勝ちと言う処理だからだ。下調べをしといて正解だった。
このカジノではディーラーはブラックジャックで勝った場合プレイヤーの賭け金と追加で、プレイヤーの賭けていた額と同額を奪えると言う闇ルールなので、つまり負ければ倍マイナスになる。
ディーラーも人間なので欲をかく。欲をかくと言う事は私がバーストでも欲をかいて自分もバーストで負ける事があると言う事だ。
2つ目の救済措置はディーラーは16以下の合計の場合 強制でカードをヒットしないといけないと言うルール。
これでディーラーのバースト率はハネ上がる。
思考を巡らしているうちに、目の前にカードが配られた。
裏向きのカードを捲る前に、2枚目のハートのエースに目がいく。
「おいおい!!エースを引いたぞあのガキ」
「すごい!!ほんとに才能じゃん!!」
テンションは狂っと回って奇声を上げても恥ずかしくないぐらいにハイになってしまう。
何故かと言うとブラックジャックにおいてこのエースは奇跡のカードで、数え方が私の都合次第で1にも11にもなるカードだからだ。
前提として、絵札は10と数えるのだが、例えば10のカードが2枚最初に来ていてヒットしてエースならそのまま1として扱うのでブラックジャックだ。
10のカードとエースなら11として扱うのでブラックジャックだ。
悪くても引き分けだ。ワンチャンス狙える。
最初に7と10が来ていてヒットしてエースなら17+11と考えるならバーストだが、17+1として考えれば18で21に近い勝ちやすい数字となる。
そんな魔法のご都合主義の港区女子みたいなカードを6000万賭けてる大勝負の時に引いたのだ。
私のこの目の前のカードが緊張のあまり私が見てしまった幻覚とかでない限りは、この裏向きの2枚目が絵札ならブラックジャック。
私は神に祈りながら裏向きのカードをゆっくりと捲る。
しかし、私は2枚目のカードを見た瞬間、絶望した。
あろうことか奇跡のカードが2枚来てしまったのだ。宝の持ち腐れとはまさにこの事。
エースと絵札なら大歓迎だがエース2つは2か22にしかならない。
どっかの海賊漫画でもエースは1人しか居ないんだから、ブラックジャックでもエースは1枚でいい。
このスペードのエースを知ってるのは私だけ、ディーラーも周りの観客も知らない事実だ。
まだ救いがあるとするならはを、エースが2枚でてるので、ディーラーがエースを最初から引き当てる確率が低い事だろうか。
「くそっ!!ヒット!!」
救いが無いなら自分で勝ち取るしかない。3枚目のカードが姿を現す。ダイヤの3だ、低い、3枚ヒットして合計が5だ。
「おいおい……ヒットかよ……」
「うわぁ、こりゃ可哀想あの子……」
周りの野次馬のテンションが一気にさがる。
まあ無理もない、エースが来た時点でノールックでブラックジャックを想像したのに私が3枚目をヒットしたんだ。
ブラックジャックじゃないと分かり興醒めと言う物だ。
「hit or stay?」
ディーラーが問いかけてくる。
さて、そんな周りなんてもうどうだってよくて、問題は次のカードの数。なるべく大きめがいいが大きすぎても嫌だ。
仮に10か9なら15や14の合計となり中途半端な数となる。
ディーラーは16以下だとヒットしなくてはいけない救済ルール、裏を返せば私も16以下だとディーラーに喰われると言う事を意味していた。
救済ルールが私の首を締め付ける、しかし5なんて石ころ見たいな数で勝負する気は更々無い。
「もう1枚よこせ!!ヒット!!!!」
この時点でもう周りのギャラリーやディーラーは3枚ヒットしても4枚目をヒットするなら3~6の数なんだなと予想されてしまうのだから、不利な事この上ない。
そして来たカードはクラブの9。やってしまった、合計は14、最悪だ。
このゲームにおいて14や15の数字は最悪の数として怖がられている。
忌々しい数だ。
ヒットしても下手な数が出ればバースト、低い数でもそもそも勝負に勝てない。
煮ても焼いても食えない数。さて、どうする私。
思考を巡らす。
「……そうだ!!7だ!!7が来ればブラックジャックだ!!しかも5枚でブラックジャックを出して勝ったら賭け金は3倍だったよな!!?」
「たしかに、当店では5枚のブラックジャックで勝たれたお客様は賭け金の3倍のチップをお支払いしております。」
その言葉を聞いてギャラリーが一気に熱い声を上げる。
「おい!!このガキが2億4000万万出すってよ!!」
「はぁ!?冗談だろ、2億越え!?このカジノのブラックジャック歴代勝利金額を軽く超えてるじゃねーか!!」
「すごいよあんた!!いけっ!!いける!!あんたならやれるよ!!」
「ヒット!!ラッキーセブンよこい!!」
私の声に呼応してギャラリー全員が息を合わせる。
「セブン!!セブン!!セブン!!セブン!!」
運命のカードが運ばれて来る。
そっと閉じていた目を開けカードの数字を視界に入れる。
悪魔の数字 スペードの6だ。
「……なんで……だよ……」
「なんで!?なんでだよっ!!私の運はこんな所でも弱いのか!!いつもそうだ!!肝心な所でっ!!」
少し取り乱して額の横の傷跡を掻き毟り下を向いた。
ギャラリーの1人の男が私の肩をポンっと叩いた。
「諦めるのは、まだ早いんじゃないかにゃあ?」
私は振り向く、不思議な男だった。
細身で背は高く、紫色に染めた髪を揺らしていた。
「知ってるかもしれないけど、6枚でブラックジャックを出せたなら4倍だにゃあ♡つまり6000万は3億に早変わりするのにゃあ。エースにゃ、あと1回ヒットしてエースを引けば……」
パシン
私は感情に身を任せてその男の頬を平手打ちする。
「ふざっけんな!!エースはもう2枚出てるんだ!!残り2枚しかないんだぞ!!ディーラーの2枚の中にあったら残り1枚か0かもしれない!!そんな代物がこのタイミングでレアモンスター確定ガチャみたいにご都合よく出るわけないだろ!!」
「頭がお花畑なのか!?そんなんでエースが出て勝てたら誰も苦労しないんだよっ!!」
そう騒いだ私のアゴを猫みたいな喋り方の男がクイッと持ち上げ見下ろす形で、目を覗き込んで笑いながら言った。
「お前、意外とよく喋るんだにゃあ」
「相変わらず面白い女にゃあ♡」
「……はあ?」
私は一瞬時が止まり、2人きりになった感覚にらなるが、顔を変な男がから逸らしステイしようとする。
「ディーラー、もういいよ。ステ……」
「逃げるのかにゃあ?」
猫男が私の声を遮る。
「………………なんなんだよお前は!!」
「たしかに、その20で勝てば1億2000万貰えるにゃあ。でもこれから先人生でカジノと言う単語を聞くだけで思い出すにゃあ。このカジノの周り、いや新宿、いや東京、いや日本に住んでるだけで考えてしまうかもしれないにゃあ」
「あの時ヒットしてれば4倍勝ちだったんじゃないか、って」
「そういう思考に陥ると、残ったお金でまたカジノでお金を稼ごうとするにゃあ、お前みたいなギャンブル狂の女の考える事なんて、今も昔も一緒にゃあ」
「………………」
私は押し黙る。
「それにお前、どーせこの金闇金から借りて来た金じゃないかにゃあ?」
「……!!」
私は動揺する。
訳が分からない、こんな初対面の意味のわからない語尾の男に見透かされてる気がするのだ。
「ほーら、やっぱりにゃあ。お前みたいなガキンチョが6000万用意するなんて闇金位しか無理にゃあ。」
「借りる前にギャンブルで大負けして、泥沼にハマってそっから借金地獄。利子も含めて返済する為にここで大勝負キメ込んだって話だろうにゃあ」
「……うるさい」
「……どーせ私は負け組だ」
「今ならまだ勝てるにゃあ♡どーせ1億2000万で勝っても利子と返済で殆ど残らないんだし、一生分としてはちと苦しいにゃあ」
「hit or stay」
「ギャンブルは言わば夢にゃあ。先が見えない物を追いかけるから価値があるのであって。最初から保身に走るためにギャンブルする奴なんて、負けるために金を払ってるのと一緒だにゃあ」
「おい、ガキンチョ♡お前はここでまた保身に走ったところで、また儲けた金はギャンブルに消える。今消えても、後で消えても一緒だにゃあ。」
「てかこんなギャンブルしてる時点で保身もクソもないのに保身に走ろうとしてるのが本末転倒なんだにゃあ♡」
私はイラッとしてテーブルを叩く。
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!五月蝿い!!五月蝿い!!お前は何がが言いたいんだよ!!」
猫が、完全に取り乱す私の頬を優しく撫でて微笑む。
「覚えておくといいにゃあ」
「Giving up is evil, success is not always justice.」
「って事だにゃあ」
「…………分かったよ……ヒット……」
「本当に面白い女だにゃあ♡」
「お前!!これで負けたら責任取れよ!!」
「責任取るなんて一言も言ってないにゃあ」
「ふざっけんな!!泣いても笑っても取ってもらうからな!!」
プイッと私は猫男から顔を背け、6枚目のカードを見る、心臓が破裂しそうだ。
顔を覗かせたのは 残酷な女王だった。
合計は30とんでもないバースト、やってはいけない破滅行為、しかもギャラリーみんなでセブンとか騒いでたので、バーストの自己申告をしてるようなものだ。
よってディーラーの自滅もない、事実上の負け確定だ。
「……どーすんだよ……これ」
私は猫男に泣きつく。
「にゃはは、やっちゃったにゃあ」
「笑ってる場合か!!もう!!」
猫がヘラヘラと笑っているが大惨事だ。
「……ステイで」
私は絶望しながらディーラーとの勝負を宣言する。
しかしその実負けかは分からなかったりもする。
ディーラーの最初の数字が14や15等の16以下の数字なら1枚強制ヒットで絵札とかが出ればバーストでまだ私の勝ちかもしれないからだ。
しかしディーラーはカードを引かなかった。
黒い絶望が更に黒より濃い黒で塗り重ねられる。
「勝負ですよ、プレイヤーさん」
「……はい」
死刑執行の時間だ。
私はディーラーのカードを見て目を疑った。
スペードのキングとダイヤのエースのブラックジャック。
どうやら王様と女王が手を組んで絶望の王国を作ったらしい。
不幸な最初の住人は私というわけだ。
「お客様、ブラックジャックでの敗北ですので、現在の賭け金の6000万から、さらに追加で6000万お支払い頂きます。」
「……あ……ああ……」
「さぁ、今すぐお支払いを!!」
ディーラーがニコニコ顔で地獄の門に引き込んでくる。勿論、逃げ場は無い。
ギャラリーは結果が分かり解散ムードだ。
「……ないです……お金……その6000万しか……」
「あっ、そうですか。じゃあ」
黒服の男達数人に囲まれる。
「裏へ来て頂きましょう」
「……い……嫌……辞めてください……お願いします……」
鼻水と涙が出てきた。恐怖で失禁すらしそうだ。
「おい、クソガキ」
ディーラーが豹変しドス黒い声で私の髪を掴み顔を近づけて睨みつける。
「てめぇは負けたんだよ!!この奴隷行きのガキンチョがよぉ!!本当に馬鹿だなテメーは!!そもそも最初から努力もせずにこんなゲームで金稼ごうって考えがある時点で終わってんだよおおおおおおおお!!」
「なーに大金張ってんだ、遊びとしてやる事なんだよギャンブルは!!人生賭けちゃった時点でテメーの負けなの!!わかる?まだ若いんだからきちんと頭使うべきでちたねー!!もう遅いでちゅけどねー!!」
「……うっ……うぅ……えぐっ……ひっく……」
私は全身を男達にガッシリとつかまれ身動きが取れなくなる。
ディーラーがニタニタと私の手に顔を近づけてくる。
「それにしても可愛い顔してるなあおい……高値がつくんじゃねーか……負け組さんよぉ!!」
「せいぜい小汚ねぇおっさんに可愛がってもら……」
「え゛っ゛っ゛……ごほっ!!」
ディーラーの顔面が横に大きく吹っ飛んだ、そして入れ替わるように、間の前にディーラーに飛び蹴りを食らわせた猫男が飛んできた。
「……負け組なんかじゃないにゃあ」
「おい……こんな事してタダで済むと思う……ガハッ!!」
猫がディーラーに回し蹴りの強制追加注文をオーダーする。周りの男達もあまりの光景に呆気に取られている。
「この子はね、逃げて勝つより、最初の最後まで真実の勝ちを目指したのにゃあ。」
「最初から偽りの勝利だったお前なんかよりよっぽど強いよ。」
「勝負では負けたかもしれないけど、気持ちでは勝ってんだよ」
「彼女はこの楽園で誰よりも人生を刹那に賭けた主人公なんだにゃあ♡」
猫が口笛を吹く、ギャラリーの中のフードに身を包んだ少女が男達を1人づつぶっ飛ばし始める。
「僕の仲間の御登場にゃあ♡」
「おい!!なにやってんだ!!小娘1人だぞ!!?」
ディーラーがヘタリ込みながら倒れていく黒服達を眺めている。
「恥ずかしい演説見せちゃったにゃあ」
「さぁ、逃げよう、アリス♡」
「……うん!!」
フード娘が黒服にパンチを入れながら叫ぶ。
「はよ逃げんかいアホ猫!!何のために大暴れしとる思っとんねん!!」
「あははっ、ごめんにゃあ三月ウサギ♡」
ディーラーが呆然としながら呟く。
「なんでだ……!!どうして新宿一番のカジノで乱闘騒ぎなのに増援1人来ないんだ!!外のガードマン共はどうした!!」
「知らないにゃあ、優秀なハッカーが出入口のロックでもかけたんじゃないかにゃあ?」
「ふざけんなぁぁぁぁぁぁ!!」
「うっさいわアホンダルァ!!」
ディーラーはフード娘に蹴りを食らって気絶してしまった。
「お、窓開けてくれたっぽいやん、はよ行けや!!」
「ありがとにゃん~♡」
チェシャ猫は私に背中を向け顔と左手だけこちらへ向ける。
「行くよ、アリス」
「ようこそ、僕らの歪なお茶会へ」
「招待するにゃあ!!」
「……歪な……お茶会……?」
「チェシャ猫、なにそれ?」
私はチェシャ猫の意味のわからない発言に混乱していた、そしていつの間にかこの男をチェシャ猫と呼んだ自分にも混乱していた。
「詳しい話は後!!」
「そんな事より」
「お帰りなさい」
「…………???」
私は首を傾げた。
~ 時刻 午後23時 場所???~
「チェシャ猫、ここは、何処?」
私がチェシャ猫に連れてこられたのは、町外れの古びた教会だった。なんでこんな所に来たのかも分からないまま、ホコリをはらって椅子に腰掛ける。
「アリス、単刀直入に言うのにゃあ」
「歪なお茶会のメンバーに入るのにゃあ♡」
「だからなんなの、その歪なお茶会って」
「かっこいいでしょ♡僕らカジノ破りのチーム名にゃあ」
「カジノ破り?なにそれ?どうしてそんなチームが存在するの?」
「そもそも、どうしてそんな事をしてるの?」
私はチェシャ猫に問う。
「いい質問にゃあ♡」
「じゃあちょっと昔話でもしようかにゃあ」
「……意味がわからないわ」
「……そのうち分かるよ、僕らのアリス」
そう呟いて、チェシャ猫は話し始めた。
昔々、世界が出来て間もない頃の話
世界に幼い少女が迷い込んで来ましたとさ
その少女はその世界で沢山の仲間を作り
やがて世界の女王になった
ある時女王は1人の男に恋をしましたとさ
その男は不思議な男だった
女王がいくら金を授けても
いくら宝物を授けても
全く振り向いてくれなかった
「……それはなぜ?」
私がチェシャ猫の話を遮る。
何故なら男は金が欲しかったわけでも
珍しい宝物が欲しかった訳でもない
女王の心が欲しかったから
だから男は女王がその事に気づくまで
振り向く事はありませんでした
そして女王は本当に気がついたのです
真実の愛に
女王は男にこう言いました
「例え記憶が無くなったとしても、お前を愛そう」と
「…………」
私は無言になる……。
女王の側近に、ある別の少女がいましたとさ
その少女も女王と同じ男が好きでした
その少女は自分の欲しいものは絶対に手に入れないと気が済まない性格でした
女王はそんな事はいざ知らず
男と結婚式を挙げました
彼と出会った思い出の教会で
女王は少女の気持ちも分からずに
少女を結婚式に呼びました
少女は結婚式に足を運びました
嫉妬で固めた拳銃を片手に
女王の仲間達は2人を祝福していました
たった1人の少女を除いて
女王と男は誓のキスをしようとした次の瞬間
少女の拳銃が女王の頭を撃ち抜きました
女王はその場で頭から血を流し倒れどこかへ運ばれていきました
少女はその場で宣言します
「今日から私が新しい女王だ」と
その少女の仲間達が女王の仲間達を追いやり
その少女が新たな女王になり
新たな楽園が造られていきました
かつての女王のいない
偽りの楽園が
残された男は心の底から悲しみました
そして拳銃を打った少女を心の底から憎みました
そして男はこう思ったのです
偽りの楽園を何もかも壊してやろうと
かつての仲間達を集め偽りの楽園を壊そうとしました
そんな最中男にある知らせが届きます
かつての女王が生きていると
例え記憶が無くなったとしても、お前を愛そう
男は淡い希望を抱き女王を探し続けました
世界のどこを探しても見つかりません
かつての女王は宝物を持ち出しどこかへ消えてしまったようです
また男は深い悲しみに暮れました
しかし男は諦めませんでした
絶対に女王アリスを探し出すと心に誓い
偽りの女王に復讐し偽りの楽園を壊し尽くすと心に誓ったのでした
めでたしめでたし
「…………何も覚えてないんだね」
「…………アリス」
チェシャ猫はアリスの額の横の傷跡をなぞる
「チェシャ猫……貴方は……」
教会の鐘が鳴る、12時を告げる鐘の音が。
「集合時間ピッタリに来たで~、遅刻魔脱出やなぁ!!」
先程のフードの少女がそう言って教会の扉を開く。少女の他にも何人か人がいる。
「さぁさぁ皆さん!!今夜もお茶会の時間ですよ~」
派手な帽子を被った男が手を叩きながら入ってくる。
「うーん、まだ眠いよぉ。カジノの扉ハッキングするので体力使い果たしちゃった」
小柄な少年がPCを抱えながら椅子に座る。
「ふん、くだらん、さっさと作戦会議に移るぞ」
白いスーツの男が少年の背中を叩く。
「みんな!!帰ってきたよ!!僕らのアリスが」
みんなが私に拍手をする、知らないはずの人達が
チェシャ猫が私の手を取る
「いこうアリス」
「壊しに行くんだ、僕らの楽園を」
私はチェシャ猫の背中を追いかけて夜の街へ駆け出した。
to be continued
0
お気に入りに追加
1
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(4件)
あなたにおすすめの小説
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
萌えキャラらしきやつが何回も発狂してて草、最初現実的なカネでやってんのに後々ギャグかと思う金額でギャンブルするからこの作者は感覚バグったヤバい奴なんだと思いました。ギャンブルしない僕は感覚がわかんない金額ですがこの作者は高けりゃ高いほど血が沸騰する病気なんだとおもいました。この作者は大敗してからが本番やみたいな感覚があるのかな?ヤバい奴なのかな?たまにパチンコ三万まけたー!とか家で発狂してる奴なのかなと心配になりました、あとこのクソアプリ感想反映されなかったりするのであーもう愚痴しか湧いてこないのでこの辺にしときまちゅ♡ネットって普段口にしない事平気で言うから怖いよね笑
萌えキャラらしきやつが何回も発狂してて草、最初現実的なカネでやってんのに後々ギャグかと思う金額でギャンブルするからこの作者は感覚バグったヤバい奴なんだと思いました。ギャンブルしない僕は感覚がわかんない金額ですがこの作者は高けりゃ高いほど血が沸騰する病気なんだとおもいました。この作者は大敗してからが本番やみたいな感覚があるのかな?ヤバい奴なのかな?たまにパチンコ三万まけたー!とか家で発狂してる奴なのかなと心配になりました、あとこのクソアプリ感想反映されなかったりするのであーもう愚痴しか湧いてこないのでこの辺にしときまちゅ♡ネットって普段口にしない事平気で言うから怖いよね笑
萌えキャラらしきやつが何回も発狂してて草、最初現実的なカネでやってんのに後々ギャグかと思う金額でギャンブルするからこの作者は感覚バグったヤバい奴なんだと思いました。ギャンブルしない僕は感覚がわかんない金額ですがこの作者は高けりゃ高いほど血が沸騰する病気なんだとおもいました。この作者は大敗してからが本番やみたいな感覚があるのかな?ヤバい奴なのかな?たまにパチンコ三万まけたー!とか家で発狂してる奴なのかなと心配になりました、あとこのクソアプリ感想反映されなかったりするのであーもう愚痴しか湧いてこないのでこの辺にしときまちゅ♡ネットって普段口にしない事平気で言うから怖いよね笑