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塔からの脱出
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ダンとルフが緊張感のないやり取りをしている間に、塔の崩壊は誰の目にも分かるほど進んでいた。
天井を支える形のアーチもその姿を保てなくなってきたのか、小さな破片を落としながら大きなパーツが今にも抜け落ちそうなほど不安定な状態に見える。
「これは想像以上に早く崩壊しそうですね」
そう言うとダンは武器ポーチから鞘を抜いて下段へと構えた。
「何やってるんですかダンさん! 早く逃げましょうよ!」
仲間の焦った悲鳴に、しかしダンは落ち着いた声で答えた。
「全体像が見えていませんから確実ではありませんが、塔全体が同時に崩壊を始めていたら、その崩壊がある程度進んだタイミングで上から石材の山が降ってくることでしょう。僕は大丈夫かもしれませんが、皆さんは耐えきれるかどうか……。ならば少しでも軽くしてみようかな? と」
そう言ったダンは頭上を見上げて両足を踏ん張ると、鞘の状態のまま闘気を纏わせ始めた。
そして鞘全体を覆い、さらに外まで溢れそうなくらいに闘気を貯めてアーツを放とうとするダン。
「模倣『グレート・オーラウェー――」
アーツとしての『グレート・オーラウェーブ』は横向きに放つものだったので、上空へと向けて放つアレンジ版で模倣アーツとして放とうとしたダンは、飛び上がろうと床を蹴りつけジャンプしようとして――足を伸ばした瞬間に床が抜けてその姿が下へと落下していった。
「ちょ、ダンさん!?」
床に空いた穴に駆けつけ、仲間が穴の上から下へと落ちたダンに呼びかける。
「――あー、びっくりした~。危うく4階から上をぶっ飛ばすところでしたよ」
そこには振り切る手前で鞘を止め、貯めていた闘気を何もせずに霧散させるダンの姿があった。どうやらアーツの発動をさせて上階を破壊しようとしていたようだ。
普通なら一笑に付すところだが、ダンが言う以上はほぼ可能だと捉えて問題ないだろう。
つまり4階に居たメンバーは九死に一生を得たらしい。
「「「ダンさん、今後その作戦は中止!! 走って脱出しますから!」」」
ダンに釘を刺した仲間が穴の向こうから姿を消すのが見えたダンはしぶしぶと武器ポーチに鞘をしまうと、自らの闘気を操作して自身や武器ポーチの重量を軽減させる。
今までは塔がダンジョン化していたので構造物の耐久力など気にもしていなかったが、ここに至ってダンジョン化が解け塔の崩壊が始まったとなれば足元へも気を使わねばなるまい。
ぶっちゃけた話をすれば先程ダンが下へと落ちたのは、足元の床を気にせずに思いっきり床を蹴ってジャンプしようとしたことが原因だと分かっている。
過去にダンが外回りの任務中に翼竜と遭遇した際、それを討伐するために地面を思いっきり蹴って飛び上がり、翼竜を叩き落すことに成功はしたが、その代償として地面に大きな凹みを作ってしまった記憶があるからだ。
同僚からも小言を言われ、仕方なく埋め戻した記憶は何があっても忘れることはないだろう。
今回も同じ失敗をしたわけだが。
ともかく塔を破壊する案が却下されたとなれば、後は足をひたすら動かして脱出するしかない。そうと決まればとダンはマジックバッグを取り出した。
『むむむ。部屋などは同じように再現されていたが、あまり小物の類は再現されていなかったな? ダンジョンを構成する際に取り込んだ情報が関係しているのか……?』
ルフが先程入った自室の様子を思い返しながら思考に没頭しようとする。
「ほらほら、考えるのは後々! 王様も早く足の方を動かして脱出してくれよな」
『うぬう? 私の扱いが大雑把しすぎではないか?』
『さあ王様。考えるのなんて後でも出来るのですから、今は脱出することだけを考えて行動してください』
そんなルフを急かすのはファーニとエミリーだ。追い立てる様にルフを押して階下へと走らせていく。
そして様々な実験や研究資材の倉庫を作っている3階へと降りてきた。ダンが下りてきた階のはずだがその姿はどこにも見当たらなかった。おそらく既に先行して階下へと降りているのだろう。しかし――
『ここも部屋の形を残してはいるが何も無いな。それなりに珍しいゴーレムや素材も収集していたんだがなぁ』
悲し気な口調で言うルフにエミリーが『また集めればいいじゃないですか』と励ましている中、ダンの仲間達は誰しもが無言で階下へと走り続けていた。
「あ~、それは私達――もが」
『ん?』
「どうかしましたか?」
リルが何かを口走ろうとしたのを咄嗟にウェンディとキョーコが口を押えた上で、リンが背後にリルを隠すように自然と隊列を入れ替えて、何か聞こえたアレックスに「何かありました?」という顔で聞き返す。
アレックスは崩壊する塔の音による空耳かと頭を振ってルフの後を追った。
そこで全員が内心で安堵する。
「ここに来るまで、我々であらかた回収させてもらいました!」とは言い難かったからだ。
しかも仲間達は把握できていないが、現在進行形でダンが残った物を残さず全て拾い集めているので、仲間達が最後に記憶していたよりも更に物が残っていない状態になっているのだ。さすがにそういった違いまで気づけるほど落ち着いていられる状況ではないので、誰一人気づくことはなかったが。
一方、先行して塔を降りていくダン。
数体のゴーストを見かけるもののダンの敵になるような相手ではないので、足元の床を壊すことが無いように片手へ闘気を集中させて相手に接触し、消し飛ばすように退治していく。
「さて、皆さんはちゃんとついて来れているのかな?」
ダンは既に1階へと到着し、各使用人達の部屋を回って調度品なども全て回収してきた。既に複数持ち歩いているマジックバッグも3つ目を使用し始めている。
とは言え、ここが最後の階だ。
ダンは回収し終えたマジックバッグを背中側へと回して、塔の正門入り口である大きな造りの門まで到着した。
だが押してもなぜか開く気配がない。
「あれ? ん~?……面倒!」
ダンは何度か押してみるも、ギシギシと音を立てるだけで開かない門に段々とイライラし始めて、最終的に門へ前蹴りを食らわせることにした。既に1階なので足元の床下は地面だと思っているため、ダンは思いっきり軸足を踏み込んだ蹴りを放った。
バゴンッ!
大きな音を立てて外側にはじけ飛ぶ門。
ちなみにダンは忘れているが、この門は内開きである。
何か門と一緒にいくつかの骨も散らばった気もするが、とりあえずこれで退路は確保できたとダンは満足気な顔をした。
落下しながら。
「えええ~!?」
驚きの声を上げながら下へと落ちるダン。
今度は先程よりも短い時間で足が着いたので驚きはすぐに引っ込んだが。
そこは半地下というくらいの階高のフロアであった。ダンも少しは腰を屈める必要がありそうな高さの地下に何があるのかと目を凝らす。
「おや? コレは――」
ダンに送れること数十分。いよいよ大きな石も崩落を始めた塔の中で、無事に1階まで降りてこられた一同。
そして塔の門へ向かって走っていくと、その門の手前に大きな穴がポッカリと開いているのが目に留まった。
「こんなの入って来る時あったか?」
「いえ、見た覚えがありませんね?」
『そもそも門の内側にここまで大きな落とし穴を掘った時点で、住居として使うには向いていないものになりますからね。――しかし地下などこの塔内に存在していたでしょうか?』
突入時に見た覚えがないか確認しあうファーニやマロンといったダンの仲間達。
エミリーは塔の1階よりも下などあっただろうか? という思案顔でその穴を覗き込んでいる。
そこに穴の中からヒョイッ! と出てくる一つの影。
咄嗟のことにファーニの双剣による斬撃と、エミリーのダガーによる刺突がその影へと走る。
その影はわずかに身じろぎしたかと思えば、ファーニとエミリーの攻撃を受け止めて言う。
「――なんで僕、攻撃されたんでしょうか?」
双剣を両手で掴み取り、ダガーを残った足で絡めとったダンは不満の声を上げていた。
「ええ!? ダンさん何やってるんだよ?」
塔の崩壊はもはや時間の問題だというのに塔からまだ出ていなかったダンへ、ファーニは自分が攻撃したことは棚に上げて問いただした。
「いえね? 門を開いた時に足元が崩れて落下したんですが、この下に薬草と魔石が大量にあったんで回収をしてきました」
『ああ、薬草畑か。そういえばそんなものも作っていたなぁ』
どうやらまたルフが内緒で実験場所を作っていた様だ。
ちなみに下を探検したダンは本来の入り口となる階段を見つけていた。馬役の使用人が居た部屋へと繋がる階段であった。おそらく畑の世話も馬役に任されていたのではとダンは予想していた。
そんな思考をしていると目の前に石のブロックが落ちてくる。
「やばい。さっさと塔から脱出だ!」
ダンが出てきた穴を飛び越えて外へと脱出する仲間達。
『ささ! 王様もしみじみとしていませんと、早く塔から出ましょう?』
エミリーに促され、アレックスに誘導されてルフも塔の外へと脱出する。
誰も手を貸してくれないのかぁと、やや肩を落としながらもダンは穴から出ようと縁に手を掛けて脱出しようとする。
その時、ダンの視界を濃い影が覆いかぶさってきた。
「ふぃぃー……、とりあえずみんな居るかぁ!?」
塔から無事に脱出したファーニが後ろを振り返って言った。
ズズズと低い音を立てながら背が縮んでいく塔。
間一髪というところであった。それよりも更に離れないと行き場を無くした石のブロックがこちらまで飛んでくるかもしれないな。と仲間に移動を促そうとした時――
「……あれ? ダンさんどこ?」
そんな声が聞こえてきた。
慌てて自分の目でも仲間の姿を確認していく。
「――居ない?」
ケロリとした表情でいつもそこに居た人物だけが姿を見せていなかった。
ドッドッドッと脈打つ心臓が不安な気持ちを高まらせていく。
まさか? という思いで塔を見た。
「――『グレート・オーラウェーブ』!!」
そして爆発的な闘気の塔が立ち上がり、崩壊する塔を粉々に粉砕する光景がそこにあった。
ひょっこりと元塔があった場所から帰還してくるダンを見て、その場に居る全員が思った。
『『『やっぱりあの時、止めて正解だった』』』と。
天井を支える形のアーチもその姿を保てなくなってきたのか、小さな破片を落としながら大きなパーツが今にも抜け落ちそうなほど不安定な状態に見える。
「これは想像以上に早く崩壊しそうですね」
そう言うとダンは武器ポーチから鞘を抜いて下段へと構えた。
「何やってるんですかダンさん! 早く逃げましょうよ!」
仲間の焦った悲鳴に、しかしダンは落ち着いた声で答えた。
「全体像が見えていませんから確実ではありませんが、塔全体が同時に崩壊を始めていたら、その崩壊がある程度進んだタイミングで上から石材の山が降ってくることでしょう。僕は大丈夫かもしれませんが、皆さんは耐えきれるかどうか……。ならば少しでも軽くしてみようかな? と」
そう言ったダンは頭上を見上げて両足を踏ん張ると、鞘の状態のまま闘気を纏わせ始めた。
そして鞘全体を覆い、さらに外まで溢れそうなくらいに闘気を貯めてアーツを放とうとするダン。
「模倣『グレート・オーラウェー――」
アーツとしての『グレート・オーラウェーブ』は横向きに放つものだったので、上空へと向けて放つアレンジ版で模倣アーツとして放とうとしたダンは、飛び上がろうと床を蹴りつけジャンプしようとして――足を伸ばした瞬間に床が抜けてその姿が下へと落下していった。
「ちょ、ダンさん!?」
床に空いた穴に駆けつけ、仲間が穴の上から下へと落ちたダンに呼びかける。
「――あー、びっくりした~。危うく4階から上をぶっ飛ばすところでしたよ」
そこには振り切る手前で鞘を止め、貯めていた闘気を何もせずに霧散させるダンの姿があった。どうやらアーツの発動をさせて上階を破壊しようとしていたようだ。
普通なら一笑に付すところだが、ダンが言う以上はほぼ可能だと捉えて問題ないだろう。
つまり4階に居たメンバーは九死に一生を得たらしい。
「「「ダンさん、今後その作戦は中止!! 走って脱出しますから!」」」
ダンに釘を刺した仲間が穴の向こうから姿を消すのが見えたダンはしぶしぶと武器ポーチに鞘をしまうと、自らの闘気を操作して自身や武器ポーチの重量を軽減させる。
今までは塔がダンジョン化していたので構造物の耐久力など気にもしていなかったが、ここに至ってダンジョン化が解け塔の崩壊が始まったとなれば足元へも気を使わねばなるまい。
ぶっちゃけた話をすれば先程ダンが下へと落ちたのは、足元の床を気にせずに思いっきり床を蹴ってジャンプしようとしたことが原因だと分かっている。
過去にダンが外回りの任務中に翼竜と遭遇した際、それを討伐するために地面を思いっきり蹴って飛び上がり、翼竜を叩き落すことに成功はしたが、その代償として地面に大きな凹みを作ってしまった記憶があるからだ。
同僚からも小言を言われ、仕方なく埋め戻した記憶は何があっても忘れることはないだろう。
今回も同じ失敗をしたわけだが。
ともかく塔を破壊する案が却下されたとなれば、後は足をひたすら動かして脱出するしかない。そうと決まればとダンはマジックバッグを取り出した。
『むむむ。部屋などは同じように再現されていたが、あまり小物の類は再現されていなかったな? ダンジョンを構成する際に取り込んだ情報が関係しているのか……?』
ルフが先程入った自室の様子を思い返しながら思考に没頭しようとする。
「ほらほら、考えるのは後々! 王様も早く足の方を動かして脱出してくれよな」
『うぬう? 私の扱いが大雑把しすぎではないか?』
『さあ王様。考えるのなんて後でも出来るのですから、今は脱出することだけを考えて行動してください』
そんなルフを急かすのはファーニとエミリーだ。追い立てる様にルフを押して階下へと走らせていく。
そして様々な実験や研究資材の倉庫を作っている3階へと降りてきた。ダンが下りてきた階のはずだがその姿はどこにも見当たらなかった。おそらく既に先行して階下へと降りているのだろう。しかし――
『ここも部屋の形を残してはいるが何も無いな。それなりに珍しいゴーレムや素材も収集していたんだがなぁ』
悲し気な口調で言うルフにエミリーが『また集めればいいじゃないですか』と励ましている中、ダンの仲間達は誰しもが無言で階下へと走り続けていた。
「あ~、それは私達――もが」
『ん?』
「どうかしましたか?」
リルが何かを口走ろうとしたのを咄嗟にウェンディとキョーコが口を押えた上で、リンが背後にリルを隠すように自然と隊列を入れ替えて、何か聞こえたアレックスに「何かありました?」という顔で聞き返す。
アレックスは崩壊する塔の音による空耳かと頭を振ってルフの後を追った。
そこで全員が内心で安堵する。
「ここに来るまで、我々であらかた回収させてもらいました!」とは言い難かったからだ。
しかも仲間達は把握できていないが、現在進行形でダンが残った物を残さず全て拾い集めているので、仲間達が最後に記憶していたよりも更に物が残っていない状態になっているのだ。さすがにそういった違いまで気づけるほど落ち着いていられる状況ではないので、誰一人気づくことはなかったが。
一方、先行して塔を降りていくダン。
数体のゴーストを見かけるもののダンの敵になるような相手ではないので、足元の床を壊すことが無いように片手へ闘気を集中させて相手に接触し、消し飛ばすように退治していく。
「さて、皆さんはちゃんとついて来れているのかな?」
ダンは既に1階へと到着し、各使用人達の部屋を回って調度品なども全て回収してきた。既に複数持ち歩いているマジックバッグも3つ目を使用し始めている。
とは言え、ここが最後の階だ。
ダンは回収し終えたマジックバッグを背中側へと回して、塔の正門入り口である大きな造りの門まで到着した。
だが押してもなぜか開く気配がない。
「あれ? ん~?……面倒!」
ダンは何度か押してみるも、ギシギシと音を立てるだけで開かない門に段々とイライラし始めて、最終的に門へ前蹴りを食らわせることにした。既に1階なので足元の床下は地面だと思っているため、ダンは思いっきり軸足を踏み込んだ蹴りを放った。
バゴンッ!
大きな音を立てて外側にはじけ飛ぶ門。
ちなみにダンは忘れているが、この門は内開きである。
何か門と一緒にいくつかの骨も散らばった気もするが、とりあえずこれで退路は確保できたとダンは満足気な顔をした。
落下しながら。
「えええ~!?」
驚きの声を上げながら下へと落ちるダン。
今度は先程よりも短い時間で足が着いたので驚きはすぐに引っ込んだが。
そこは半地下というくらいの階高のフロアであった。ダンも少しは腰を屈める必要がありそうな高さの地下に何があるのかと目を凝らす。
「おや? コレは――」
ダンに送れること数十分。いよいよ大きな石も崩落を始めた塔の中で、無事に1階まで降りてこられた一同。
そして塔の門へ向かって走っていくと、その門の手前に大きな穴がポッカリと開いているのが目に留まった。
「こんなの入って来る時あったか?」
「いえ、見た覚えがありませんね?」
『そもそも門の内側にここまで大きな落とし穴を掘った時点で、住居として使うには向いていないものになりますからね。――しかし地下などこの塔内に存在していたでしょうか?』
突入時に見た覚えがないか確認しあうファーニやマロンといったダンの仲間達。
エミリーは塔の1階よりも下などあっただろうか? という思案顔でその穴を覗き込んでいる。
そこに穴の中からヒョイッ! と出てくる一つの影。
咄嗟のことにファーニの双剣による斬撃と、エミリーのダガーによる刺突がその影へと走る。
その影はわずかに身じろぎしたかと思えば、ファーニとエミリーの攻撃を受け止めて言う。
「――なんで僕、攻撃されたんでしょうか?」
双剣を両手で掴み取り、ダガーを残った足で絡めとったダンは不満の声を上げていた。
「ええ!? ダンさん何やってるんだよ?」
塔の崩壊はもはや時間の問題だというのに塔からまだ出ていなかったダンへ、ファーニは自分が攻撃したことは棚に上げて問いただした。
「いえね? 門を開いた時に足元が崩れて落下したんですが、この下に薬草と魔石が大量にあったんで回収をしてきました」
『ああ、薬草畑か。そういえばそんなものも作っていたなぁ』
どうやらまたルフが内緒で実験場所を作っていた様だ。
ちなみに下を探検したダンは本来の入り口となる階段を見つけていた。馬役の使用人が居た部屋へと繋がる階段であった。おそらく畑の世話も馬役に任されていたのではとダンは予想していた。
そんな思考をしていると目の前に石のブロックが落ちてくる。
「やばい。さっさと塔から脱出だ!」
ダンが出てきた穴を飛び越えて外へと脱出する仲間達。
『ささ! 王様もしみじみとしていませんと、早く塔から出ましょう?』
エミリーに促され、アレックスに誘導されてルフも塔の外へと脱出する。
誰も手を貸してくれないのかぁと、やや肩を落としながらもダンは穴から出ようと縁に手を掛けて脱出しようとする。
その時、ダンの視界を濃い影が覆いかぶさってきた。
「ふぃぃー……、とりあえずみんな居るかぁ!?」
塔から無事に脱出したファーニが後ろを振り返って言った。
ズズズと低い音を立てながら背が縮んでいく塔。
間一髪というところであった。それよりも更に離れないと行き場を無くした石のブロックがこちらまで飛んでくるかもしれないな。と仲間に移動を促そうとした時――
「……あれ? ダンさんどこ?」
そんな声が聞こえてきた。
慌てて自分の目でも仲間の姿を確認していく。
「――居ない?」
ケロリとした表情でいつもそこに居た人物だけが姿を見せていなかった。
ドッドッドッと脈打つ心臓が不安な気持ちを高まらせていく。
まさか? という思いで塔を見た。
「――『グレート・オーラウェーブ』!!」
そして爆発的な闘気の塔が立ち上がり、崩壊する塔を粉々に粉砕する光景がそこにあった。
ひょっこりと元塔があった場所から帰還してくるダンを見て、その場に居る全員が思った。
『『『やっぱりあの時、止めて正解だった』』』と。
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