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探求 学者編

ケース3 ある学院教授達の場合

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 『学院』の中に設けられた客間サロン

 普段は外部から来る商人などをもてなす部屋は、しかし、今この時は『学院』関係者だけが使用している部屋となっていた。
 その場に居る男達は皆好き好きに酒を飲み交わしていた。

 その中の一人が口に含んだ酒を飲み干してから口を開く。

「ふむ。今年の研究成果発表はかな?」

 一人の男が手にしたグラスをテーブルに置きながら答えた。

ですと、キシロ教授が主席を取られるのではなかったかな?」
「おお。ということは、はキシロ教授が大捜索隊を発足すると?」
「ウチはに頑張ったからなぁ。が来るまでにはを回復させたいものだ」

 そう言った男達の体は特に鍛えられている訳でもない。
 男達のは頭を使うことであって、身体を動かす事ではないからだ。

 男達が口にする『体力』とは、自身で動かせる『財力』の事を指していた。

 遺跡の発掘は冒険者に任せる。つまり依頼を出す為の資金をどれだけ出すか?
 男達が言う「例年通り」や「順番」というのは、今まで『学院』が行ってきたに基づき算出されたによって導かれた、言わば『定石』。それに基づいての行動する順番の事であった。
 
 その男達の中の一人が、ふと思い出したように口に出す。
「そういえば、あのエルフの小娘が居ましたな? アレは予想に入っていませんが……」

 その男に一人の恰幅の良い男が答える。

「ふん! よもやあのような娘に教授の籍が与えられるとはな……。だが私の情報網によれば、あの小娘、随分とで冒険者を雇おうとしているらしい! まったく、これだから前例を顧みない者は困る。幾度となく試行し、成功と失敗を重ねた経験を軽んじる者に先などあるものか!」
「さすがキシロ教授。やはり何年も『学院』にて教授を務める人は違いますな」

 キシロ教授と呼ばれた男は、周りの男達からもヨイショされて上機嫌に手にした酒を飲み干して言った。

「今回の大捜索隊は例年の規模よりも拡大した! いつものペースよりも早く広範囲に調べれば、新たな『未探索区域』も発見できると儂は思っている!」

 キシロ教授の言葉に、周りの男達からは「おお~」と関心の声が上がった。

 遺跡内の『未探索区域』

 今現在探索されている範囲よりも当然外側の事であるが、このレダの街の下にある遺跡には『区域』という区切りがある。
 例えるなら、ある一つの壁を越えた先には、今まで発見されていた遺跡の物とは種類の違う遺物が見つかったりする場合があるのだ。

 もちろんどの壁を一つ越えれば、その先に必ずしも新たな『区域』があるわけではない。
 しかし遺跡の中で材質やら特徴などが違う壁があった場合、その先にはまだ見ぬ『未探索区域』が存在しているかもしれないのだ。

 そして過去『学院』においても、そういった『未探索区域』を発見した教授は、その発見の功績と栄誉を賜ることが出来るのだ。

 あと『学院』の後ろ盾スポンサーを得ることが出来る。

 それゆえ、キシロ教授の言葉に男達は沸いたのだ。


 そうして上機嫌になった客間にいる教授陣は皆酒をカパカパと空けていくのだった。

 一度は話題に上がったエルフの女教授の事など忘れ去るように。
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