サポート好きの冒険者。ソロになったのでサポートする人を探す旅に出る

故郷 過去編

スキルについての認識

　突然大声を出した父に対して、何故にそうなったのか分からなかった僕は素直に聞くこととした。

「スキルレベル５ってそんなに凄い事なの、父さん？」

　僕はそう聞いた。剣術スキルレベル５の父に対して。

　ちなみに会話してても体術スキルの取得訓練は継続中だ。

「ああ。――そういや俺もスキルレベル５だったんだっけか？　言われてたのに忘れちまってたよ。武術系スキルのレベル５ともなれば、その正式な鑑定書を持っておけば街とかで道場の看板を掲げてても問題ないとされているな。……俺は、その、冒険者を辞める頃には教会に行ったりしてなかったから、自分のスキルレベルなんか知らなかったんだよ」

　説明の途中『父さんは？』というジト目を送ってみたら、そのような言い訳のようなセリフを吐き出していた。

　しかしそうだったのか。
　僕は冒険者ギルドの酒場で給仕のバイトをしていた件もあって、冒険者の人達に割と顔見知りの人達が多く居たのだ。そういったツテを使って、格安でスキル訓練をお願いしていたのだ。

　最初の頃はどの人も「覚えられたらな」と言って、僕の訓練という名目以上の自分達の保有するスキルを見せてくれていたのだが、僕がサポートスキルの『共感』や『完全補助フルアシスト』というサポートスキル内のパッシブ系スキルを使ってドンドンと覚えていくのを見て、アレもコレもと色々な事を教えて貰ったのだ。

　その中にはやはり体術スキルレベル５の人や、別のスキルでも高レベルの人なんかも多く居て、僕は少なくともあの冒険者ギルドに出入りしてた人のほとんどのスキルを覚えられたといっても嘘ではないくらいだ。

「そうかぁ、しかしこれで俺も『人に剣を教える』って事に自信をもっていいってことだな。――サボ、後で俺の鑑定書を作ってくれよ」
「え？　いや無理だけど？」

　僕の左右には手本役としてアサ達が並んでいる。人数が多いので僕の手本を見るのに角度をつけると横の人に当たってしまう可能性もあったので、アサ達に協力を依頼した格好だ。

「え？……金が必要なのか？」

　僕は父の方へ顔を向けながら、まったく的外れな事を言っている父へ告げた。

「まず僕は教会に認められた訳じゃないし、そもそも鑑定書が無いじゃない？」

　正式な鑑定書というのは神官の人がスキルで作るらしい。奴隷契約の用紙と同じだ。
　作るためには光魔法スキルが要るのだ。

　そもそも僕は鑑定書ってみた事無いから書き方が分からないんだよね。

「あ、そうか」

　僕の説明に納得する父。
　ヤレヤレ全く。

「きゃ！」

　その時ちょっと目を離した隙にこけてしまった女性が居た。

　先程自分でぶきっちょと言っていた女性だ。
　僕は小走りで駆け寄った。

「大丈夫ですか？」
「あはは、やっぱり私はどんくさいねぇ。あ！　いたたた！」

　自分で立ち上がろうとしたが腰を押さえて座り込んでしまった。
　どうやら腰を打ってしまったようだ。自分で腰を擦っている。

　腰か。水魔法スキルの回復魔法は濡れるんだよなぁ。

「ちょっと失礼して……。『ライトヒール』」
　僕の手の平から光が放たれる。

「あ、ポカポカしてきて気持ちいい」

「おいー！　それ光魔法スキルだろうが！」

　なんか大声をよく出すなぁ父さん。