27 / 63
故郷 過去編
お宅訪問
しおりを挟む
「さて、お昼も過ぎたことだしドンガ村に帰ってきた理由の1つを片付けてくるかな」
全員が朝風呂(まあ入った時点で昼に近かったから、そう言うのは会っていないかもしれないが)から出た後、晴れているからと外で簡単な昼食(テーブルとイスは僕とマロン姉の土魔法スキルで作り出した。ちなみに7対3の割合だ)を食べ終わった後に、僕はそう言って席を立ちあがる。
「お? なんかするのか?」
「うん。ちょっとハーゲン爺のトコ行ってくる」
そう言って僕は踵を返――せずにガッシリと父に肩を押さえられた。
「殺しは不味い」
うん。僕をどう見ているのか2、3意見を聞きたい台詞だね。
「……誰が誰を殺すって?」
「違うのか? リックのやったことは、冒険者的によろしくない事だぞ? 普通の田舎から出てきた冒険者志願のヤツだったら怒り狂ったとしても分かる話だ」
父の言う事では、昨晩の話が途中で別の話に変わって詳しく言えていなかったが、いかに『オールラウンダー』としての実力がある冒険者だろうとも、低い評価をされてパーティーを追い出されたという噂が立ってしまった冒険者は、その評価を覆すのにかなりの労力を費やされるそうなのだ。
父としてはそんな冒険者を少なくない人数を知っている為、僕が原因の切っ掛けとなったリックの祖父であるハーゲン爺を一発殴りに行くのだと思ったそうだ。
「? もし仮に一発殴るとして、それがどうして『殺し』に繋がるの?」
理解出来なかったので父に聞いてみる。
「お前、あの嬢ちゃん達に教えたってことは、お前自身もそれなりの数の武術系スキルを使えるってことだろ? いや、言ってて俺自身でもどうかしてると思ってるんだが、お前がどれだけ武術系スキルを使えるのか知らないが、そんな『補正』が乗っかった若者が老人を殴った日には――」
ぶるりと体を震わせる父。
「――熟れたトマトを潰したみたいになる、と?」
「言うなよ! 頭ン中で想像しちまったじゃねぇか!」
頭を抱える父に、僕は「問題ない」と告げる。
「一応ハーゲン爺からの頼まれごと。『リックが冒険者に成るのに同行して見守ってほしい』ってのは冒険者の街に到着して、冒険者カードを作るところまでは達成してるからOKかなぁって。言わなかったが為に後でアレコレ言われるのも、僕としては不本意だからねぇ」
「あ、やっぱりサボ怒ってるな?」と父が呟くが、それほど怒ってはないんだよ?
今はまだ。
「まあ、ハーゲン爺がワケワカランコトを言い出したら知らないけど?」
「――待て、俺もついていこう」
結局、父と一緒に連れ立って村を歩く。
ドンガ村の住人は100人くらいだったはず。時刻も昼なので外に出ている村人に帰ってきたことを含めて挨拶しつつ、歩くこと数十分。
それほど大きな村ではないので、さほど時間が変わらずにその家へと到着した。
昔はその家が『変な形だなぁ』という感想しか出なかったものだが、村を出て見聞を広めた今の僕にはしっくりくる言葉があった。
「……畜産小屋?」
「言うな。ドンガ村の謎の一つだ。……理由は知っているが」
やけに横に長い平屋の家は人が住むなら必要ないだろうという高さがあり、その様子が僕の目には畜産小屋に壁を貼り付けたモノに見えたのだった。
「いや、改めて見ると隙間風とか凄くないかな?」
「だからリゲンとかは別の家に住んでるんだろ?」
父の言うリゲンとはリックの父親でありハーゲン爺の息子さんだ。
ちなみに見える範囲にリゲンさんの家は建っているが、ウチの実家とさして大きさは変わらないくらいだ。
あまり大っぴらにしていないので言えないが、ドンガ村で家の大きさ順に上げると僕の家、ハーゲン爺宅、その他ドングリの背比べって感じだ。
気持ち、僕の家を作る前のお試しだったエド兄さん宅が、ちょこっと村の平均よりも大きいかもしれないが。
まあそんなあばら家(もちろん声には出さないが)をお宅訪問することとした。
全員が朝風呂(まあ入った時点で昼に近かったから、そう言うのは会っていないかもしれないが)から出た後、晴れているからと外で簡単な昼食(テーブルとイスは僕とマロン姉の土魔法スキルで作り出した。ちなみに7対3の割合だ)を食べ終わった後に、僕はそう言って席を立ちあがる。
「お? なんかするのか?」
「うん。ちょっとハーゲン爺のトコ行ってくる」
そう言って僕は踵を返――せずにガッシリと父に肩を押さえられた。
「殺しは不味い」
うん。僕をどう見ているのか2、3意見を聞きたい台詞だね。
「……誰が誰を殺すって?」
「違うのか? リックのやったことは、冒険者的によろしくない事だぞ? 普通の田舎から出てきた冒険者志願のヤツだったら怒り狂ったとしても分かる話だ」
父の言う事では、昨晩の話が途中で別の話に変わって詳しく言えていなかったが、いかに『オールラウンダー』としての実力がある冒険者だろうとも、低い評価をされてパーティーを追い出されたという噂が立ってしまった冒険者は、その評価を覆すのにかなりの労力を費やされるそうなのだ。
父としてはそんな冒険者を少なくない人数を知っている為、僕が原因の切っ掛けとなったリックの祖父であるハーゲン爺を一発殴りに行くのだと思ったそうだ。
「? もし仮に一発殴るとして、それがどうして『殺し』に繋がるの?」
理解出来なかったので父に聞いてみる。
「お前、あの嬢ちゃん達に教えたってことは、お前自身もそれなりの数の武術系スキルを使えるってことだろ? いや、言ってて俺自身でもどうかしてると思ってるんだが、お前がどれだけ武術系スキルを使えるのか知らないが、そんな『補正』が乗っかった若者が老人を殴った日には――」
ぶるりと体を震わせる父。
「――熟れたトマトを潰したみたいになる、と?」
「言うなよ! 頭ン中で想像しちまったじゃねぇか!」
頭を抱える父に、僕は「問題ない」と告げる。
「一応ハーゲン爺からの頼まれごと。『リックが冒険者に成るのに同行して見守ってほしい』ってのは冒険者の街に到着して、冒険者カードを作るところまでは達成してるからOKかなぁって。言わなかったが為に後でアレコレ言われるのも、僕としては不本意だからねぇ」
「あ、やっぱりサボ怒ってるな?」と父が呟くが、それほど怒ってはないんだよ?
今はまだ。
「まあ、ハーゲン爺がワケワカランコトを言い出したら知らないけど?」
「――待て、俺もついていこう」
結局、父と一緒に連れ立って村を歩く。
ドンガ村の住人は100人くらいだったはず。時刻も昼なので外に出ている村人に帰ってきたことを含めて挨拶しつつ、歩くこと数十分。
それほど大きな村ではないので、さほど時間が変わらずにその家へと到着した。
昔はその家が『変な形だなぁ』という感想しか出なかったものだが、村を出て見聞を広めた今の僕にはしっくりくる言葉があった。
「……畜産小屋?」
「言うな。ドンガ村の謎の一つだ。……理由は知っているが」
やけに横に長い平屋の家は人が住むなら必要ないだろうという高さがあり、その様子が僕の目には畜産小屋に壁を貼り付けたモノに見えたのだった。
「いや、改めて見ると隙間風とか凄くないかな?」
「だからリゲンとかは別の家に住んでるんだろ?」
父の言うリゲンとはリックの父親でありハーゲン爺の息子さんだ。
ちなみに見える範囲にリゲンさんの家は建っているが、ウチの実家とさして大きさは変わらないくらいだ。
あまり大っぴらにしていないので言えないが、ドンガ村で家の大きさ順に上げると僕の家、ハーゲン爺宅、その他ドングリの背比べって感じだ。
気持ち、僕の家を作る前のお試しだったエド兄さん宅が、ちょこっと村の平均よりも大きいかもしれないが。
まあそんなあばら家(もちろん声には出さないが)をお宅訪問することとした。
0
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
性奴隷を飼ったのに
お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。
異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。
異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。
自分の領地では奴隷は禁止していた。
奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。
そして1人の奴隷少女と出会った。
彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。
彼女は幼いエルフだった。
それに魔力が使えないように処理されていた。
そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。
でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。
俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。
孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。
エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。
※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。
※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる