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故郷 過去編
僕の家
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「いや~、てっきり嫁を貰ったから、冒険者を止めて帰ってきたのかと思ったんだよなぁ」
「あらまあ。早とちりさんねぇ」
僕は実家の前に揃った夫婦に調子を狂わされていた。僕の両親である。
「しかし、また随分と大所帯だな? 歓迎しようにも全員を家には招け無さそうだぞ」
僕の後ろに居た女性陣を見て、それから実家を振り返りつつ言う父。
そりゃそうだ。昔は僕を含めて5人は住んでいた家でも、さすがに30人越えの人数を受け入れられるわけもない。
だから僕は両親に聞いた。
「ねぇ? 僕の家って、まだ誰も使ってない?」
その質問に父はポンと手を打って納得したようだ。
「ああ、誰も使ってないぞ。……つうか、こうなることを見越して作ってたんじゃないだろうな、サボ?」
「……誰もこんなことを想定しているとは思わないよ」
「それもそうか! 一応、たまには風通しだけはしておいたぞ」
「わっはっは」と笑う父にげんなりとしながらも感謝しつつ、僕は僕の家にこのまま向かうと告げる。
さすがに旅の疲れもある女性陣に、このまま会話に突き合わせるのは申し訳ないと思ったからだ。
実家を横切り、その奥の家の前も横切る――
「お? サボか?」
「ただいまエド兄さん。ちゃんとした挨拶はまた後で――」
奥の家は僕が村を出る前に、僕が建てた僕の兄が住む家なのだ。当然兄が住んでいるのは分かっていたが。
「あらサボ君おかえり~」
その家からお腹の大きくなっている女性が出てくれば、さすがに僕も言葉が詰まる。というかそちらも見知った顔だ。
「マロン姉?……食いすぎ?」
僕の言葉にビキリと音が聞こえる。
「……サボ君? めっ!」
口調は軽いが、「めっ!」という言葉と同時に指先程の石つぶてが、僕に向けて放たれた。凄まじく速いつぶては僕の額に綺麗にクリーンヒットする。
「この子はエドガーとの子だよ? 君にとっても家族に当たるんだから、ね」
視線で兄に『マジ?』と投げかければ、どこか達観したような目で頷く兄。
マロン姉さんと呼んでいたミカの姉は、どうやら本当に僕の姉になったようだ。
「あ~、とりあえずただいまマロン姉。僕達はちょっと旅疲れがあるから、僕の家に向かうね」
「あらあら、それもそうね~。後でお義母さまと一緒に伺うわ」
何故だろう。兄の首に紐が巻き付いている幻覚を見てしまった。
とりあえず兄夫婦にも軽く挨拶をしてから更に奥、森へ向かう。
「え? サボ兄さん森に入る、の?」
アサが心配した様な声を上げるが、僕の進む先の森に細いながらも道があることに気づいた様だ。
全員を連れてゾロゾロと森に入っていくこと数分。
「わぁ!」
「え? 何ここ?」
「ひろ~い!」
「「「というかお屋敷?」」」
森がぽっかりと無くなった広い空間に建てられた大型の家。
「ようこそ僕の家へ!」
僕はそう言いながら振り返ると、女性陣全員が口をあんぐりと開けていた。
「あらまあ。早とちりさんねぇ」
僕は実家の前に揃った夫婦に調子を狂わされていた。僕の両親である。
「しかし、また随分と大所帯だな? 歓迎しようにも全員を家には招け無さそうだぞ」
僕の後ろに居た女性陣を見て、それから実家を振り返りつつ言う父。
そりゃそうだ。昔は僕を含めて5人は住んでいた家でも、さすがに30人越えの人数を受け入れられるわけもない。
だから僕は両親に聞いた。
「ねぇ? 僕の家って、まだ誰も使ってない?」
その質問に父はポンと手を打って納得したようだ。
「ああ、誰も使ってないぞ。……つうか、こうなることを見越して作ってたんじゃないだろうな、サボ?」
「……誰もこんなことを想定しているとは思わないよ」
「それもそうか! 一応、たまには風通しだけはしておいたぞ」
「わっはっは」と笑う父にげんなりとしながらも感謝しつつ、僕は僕の家にこのまま向かうと告げる。
さすがに旅の疲れもある女性陣に、このまま会話に突き合わせるのは申し訳ないと思ったからだ。
実家を横切り、その奥の家の前も横切る――
「お? サボか?」
「ただいまエド兄さん。ちゃんとした挨拶はまた後で――」
奥の家は僕が村を出る前に、僕が建てた僕の兄が住む家なのだ。当然兄が住んでいるのは分かっていたが。
「あらサボ君おかえり~」
その家からお腹の大きくなっている女性が出てくれば、さすがに僕も言葉が詰まる。というかそちらも見知った顔だ。
「マロン姉?……食いすぎ?」
僕の言葉にビキリと音が聞こえる。
「……サボ君? めっ!」
口調は軽いが、「めっ!」という言葉と同時に指先程の石つぶてが、僕に向けて放たれた。凄まじく速いつぶては僕の額に綺麗にクリーンヒットする。
「この子はエドガーとの子だよ? 君にとっても家族に当たるんだから、ね」
視線で兄に『マジ?』と投げかければ、どこか達観したような目で頷く兄。
マロン姉さんと呼んでいたミカの姉は、どうやら本当に僕の姉になったようだ。
「あ~、とりあえずただいまマロン姉。僕達はちょっと旅疲れがあるから、僕の家に向かうね」
「あらあら、それもそうね~。後でお義母さまと一緒に伺うわ」
何故だろう。兄の首に紐が巻き付いている幻覚を見てしまった。
とりあえず兄夫婦にも軽く挨拶をしてから更に奥、森へ向かう。
「え? サボ兄さん森に入る、の?」
アサが心配した様な声を上げるが、僕の進む先の森に細いながらも道があることに気づいた様だ。
全員を連れてゾロゾロと森に入っていくこと数分。
「わぁ!」
「え? 何ここ?」
「ひろ~い!」
「「「というかお屋敷?」」」
森がぽっかりと無くなった広い空間に建てられた大型の家。
「ようこそ僕の家へ!」
僕はそう言いながら振り返ると、女性陣全員が口をあんぐりと開けていた。
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