上 下
18 / 63
帰郷 農業者編

少女達の願い

しおりを挟む
 僕の提案を聞き、それを聞き入れた男達がおっさんを捕まえて、全員でゾロゾロと街道を歩いていく姿が見える。

「……ぷはぁぁぁぁぁ!」

 僕は男達の姿がだいぶ離れた事を確認すると、胸に貯めていたモノを吐き出すように盛大に溜め息を吐いた。

「大丈夫ですかサボ兄さん? まさか! あのスキルってすごく疲れるモノなの!?」

 そんな僕の心配をしたのかアサ達女の子が寄ってくる。
 僕は皆に落ち着くように軽く両手を上げて答えた。

「いや~、ここだけの話にしてほしいんだけどもね? 僕がを使えることは黙っていてほしいんだ」

 そういうと全員「?」という顔をした。

 ある程度は話さなきゃダメかー。

「えーっとね? 執行官って知ってるかな?」

「知ってるー」
「悪いことすると来るんでしょー?」
「サボにーも来る?」

「来ない来ない。んじゃ、説明するけど執行スキルってのは、執行官じゃなきゃ使なんだ」
「え? でもサボ兄さんは使えるんでしょ?」

 アサの言葉に頷くしかない。
 
「まあ、執行スキルを誰だって使える、ハズ?――普通はあり得ないけど――ともかく使えないっていうのは闇魔法スキルと同じように、使えないって意味だね」

 そう、本来執行スキルというのは神官の人達の中でも専門の訓練を受けた人達が、というスキルをレベルアップさせて覚えるものなのだ。
 スキルのレベルアップで覚えるスキルを派生スキルという。

 例えば剣術スキルをレベル3まで鍛えた人が、それまで使っていた剣の種類によって長剣、大剣、小剣、曲剣など細分化やより上位スキルとなるのが派生スキルだ。

 僕のサポートスキルはをすっ飛ばして、相手のスキルを見たり体験した僕にそのスキルを覚えさせる、なのだ。

 そう、ここで問題が発生する。

 つまりはあの夜、親切にもやばい爆弾を投下してきた執行官の言葉ではないが、本来国で管理するようなスキルもなんら一切の容赦もなく、僕は事が出来てしまうのだ。

「んー? つまりサボ兄さんは『執行官』じゃないってこと?」
「アレ? 僕、最初に君達とあった頃、『冒険者』だって名乗らなかったっけ?」
「あー、あの頃はまだそんな余裕なかったし……」

 皆覚えていないのか、そっと目を逸らされた。
 大丈夫。実は僕もちょっと自信なくなってきたから。

「――あ、だからお父さん達に、あのおじさんを『街』まで連れて行くように頼んだんだね? サボ兄さんがスキルを使ったとバレないように!」

 ――正解。

 あの時提案したことは、
『皆さんも一歩間違えれば罪を犯していたでしょう。その罪滅ぼしと言うわけでは無いですが、皆さんで責任をもってこの人を街まで運ぶ。今度は道を間違えないように。それでどうでしょうか?』
 という事だ。

 内心バクバクいっていた。

『それなら執行官様もついてきてくださいよ』と言われたらどうしよう? とか考えていたが、アサのお父さん達も含めてみんなが『罪滅ぼしか……、確かに』と言った瞬間、内心でガッツポーズを決めたほどだ。

 一応、食事に掛かるであろう路銀はいくらか渡してあるし、最悪、あのモグリの奴隷商が逃げたってかまわない。

 何せ執行スキル『断罪』は別の執行官に合わない限り、そのスキル効果が無くならないらしいからだ。

 あれだけの男達に囲まれて、それでも無事に逃げられたとしても、待っているのは人里から離れて生活するしかない選択肢。
 それに僕の言葉を嘘だと思って街に入ろうとすれば、直ぐに衛兵や兵士の御用となる身分だ。

「とりあえずなるようになるさ」
 まあ人の人生にそこまで関わる気も起きないしね。

 今はこの子達の面倒を見て、実家の農業を手伝い――
「あのサボ兄さん。ちょっとお願いがあるんだけど」
「うん? どうかしたの?」


 思えばここで聞き返さず、真っすぐドンガ村に向かえばよかったと思う。後の祭りだけども。


「私達の村に寄ってもいい? 割と近くだし」

 言われて僕は考える。
 確かにそろそろ追加の食料を買ってもいいかもしれない。

「分かった。案内出来る?」
 僕の問いかけに「昔見たことのある場所みたいだから大丈夫」と言われて、僕はアサ達の案内でアサの居た村へと寄ることにした。


 結果、アサの母親達を含めて同行者が増えた。

 ……なんで?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

陛下から一年以内に世継ぎが生まれなければ王子と離縁するように言い渡されました

夢見 歩
恋愛
「そなたが1年以内に懐妊しない場合、 そなたとサミュエルは離縁をし サミュエルは新しい妃を迎えて 世継ぎを作ることとする。」 陛下が夫に出すという条件を 事前に聞かされた事により わたくしの心は粉々に砕けました。 わたくしを愛していないあなたに対して わたくしが出来ることは〇〇だけです…

処理中です...