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しおりを挟む剣の実力や魔術の乗せ方が上手いのはさすがとしか言えず、驚き固まっているティアルティナをロナルドが手招く。
「ほら、おいで」
しゃがんだロナルドの隣にティアルティナも並ぶ。
息絶えた魔物が姿を消す。魔物は普通の生き物とは違い、魔素に侵された時点で自然界の理から外れる。切ったとしても血は流れず、その代わりのように体内に溜まった魔素が溢れ、臓器の代わりに魔石が出現する。
「凄い、報告通りね......」
一連の流れを眺め、ティアルティナは感嘆する。文字や画像や写真として、魔術による記録媒体は沢山見てきたけれど、やはり直に自分の目で見ることが出来るのは嬉しいし、経験を積んでいると実感できる。
「魔素は放っておくと再び空気に溶け込んでしまうから、溶け込む前に魔石にしまうのが定石かな。魔石は魔力を蓄えられるだけあって、魔素も置いておける容量が大きいから」
ロナルドは手馴れた様子で魔石を拾い上げ、空気中に漂う視認できるほど高濃度の魔素に翳す。ロナルドの魔力に反応した魔石が魔素を取り込んでゆく。空気のような見た目だが異なる靄のような物質が取り込まれ、消えてゆき、やがて全てがおさまる。
ロナルドが立ち上がり、ティアルティナに手を差し伸べ立つのを手助けしてくれる。
「これが魔物狩りだよ」
「とても興味深いわ!」
ティアルティナは渡された魔石を握りしめながら、観察する。
ティアルティナは自分で光を魔術で生み出し、魔石を翳して中身を見てみる。一見すると宝石のような輝きを持つ石といったところ。しかし、中央部分は魔素が蝋燭の炎のように揺らめいている。
(これが採れたばかりの魔素と魔石)
ティアルティナは魔石を目にすることも多いし、魔素も必要とする事が多く様々な場面で見たことはある。しかし、狩りを行うことはなく、出来たばかりのものの鮮やかな魔石は初めてだった。ティアルティナの手に届くのは安全を確認され、時間が経過したものばかり。
身分や立場からそれが当たり前だと思うし、当然の処遇だと思う。
(でも、ここまで来たなら......望んでもいいのかしら)
王女としては駄目だとわかる。でも、魔術を愛し、理解する魔術師たる自分は魔物を狩ってみたいと叫んでいる。
この機会を逃せば、次は無いかもしれない。
ティアルティナは眺めていた魔石を握りしめ、ロナルドに向き合う。
「ロナルド殿下!」
「どうしたの?魔石に何かあった?」
突然名前を呼ばれたロナルドが不思議そうにしながら、ティアルティナに近寄る。
「魔石は何もないの。そうじゃなくて、お願いがあって」
「お願い?」
「私も魔物を狩ってみたいのだけど......」
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