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同窓会に行こう!
11月12日 12:30①
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模擬挙式を見て、フラワーシャワーまで体験させてもらい、奏人はすっかり楽しい気分になっていた。3月に同僚の結婚式に出席した時も楽しかったが、岡島が自分を式に呼んでくれるつもりでいるようなので、うきうきしてしまう。
岡島はプランナーの森末の説明を聞くのに必死なので(たぶん男は女ほど、結婚式や披露宴にイメージを持てないのだろうと奏人は思う)、奏人は片山と手分けして、周りの写真を撮っておいてやる。するとチャペルの入口にいたカメラマンが、2人で撮ろうかと言ってきた。
「お帰りの際にお渡ししますよ、スマホでも撮りますし」
奏人は片山と顔を見合わせた。これは、自分たちがカップルだと勘違いされているのかもしれない。
しかしノリの良い片山は、お願いします、と自分のスマートフォンをカメラマンに手渡した。そして祭壇が背後に入るよう、カメラマンの指示に従って2人で並ぶ。はいチーズ、という合図と共に、互いのほうに首を傾けてみる。
何やってんの、と岡島の呆れたような声が飛んできた。カメラマンは岡島にも入るよう言って、バージンロードで謎の同窓会写真が撮影された。
片山はスマートフォンに収まった、ツーショットの写真をすぐに奏人に送ってくれた。3人でそれを見て爆笑する。岡島が手を叩いた。
「この人たち何なんだよ」
「面白過ぎるからインスタに上げよう」
片山は笑いながら言った。奏人と片山の絶妙な距離感は、友人にも恋人同士にも取れるが、バックに写り込む、花びらの散るバージンロードと祭壇が意味深過ぎる。奏人も指を動かした。
「暁斗さんに送っちゃえ」
「それが弄ってるって言うんだよ」
森末が呼びに来たので、笑いながらバンケットホールに向かう。岡島が楽しみにしていた、料理の試食会だ。丸テーブルに、3人でゆったり座る。
「当ホテルはフレンチがお勧めではありますけれど、和食との折衷コースもご提案できます……もちろんアレルギーをお持ちの方には、個別対応いたします」
レストランのシェフの説明とともに運ばれてきたのは、色とりどりの野菜で飾られた前菜と、小さなテーブルロールだった。料理自慢のホテルらしく、凝った盛りつけが見た目にも楽しい。
少し離れた場所に座るカップルのテーブルに、肉料理らしきものが運ばれているのを見て、奏人は思わず岡島に小声で話しかける。
「何品出してくれるの? あまりタダ飯食いになりたくないんだけど、そう思わせるのがホテルの手口?」
岡島は真面目な顔になり、重々しく答えた。
「気にせずとも良いのだ、結婚式の予約がひとつ入れば、きっとこの程度は元が取れるに違いないのだから」
それを聞いて片山はくすっと笑い、だろうな、と言った。
「利用を検討してるのは岡島だから、少なくとも高崎が気にしなくてもいいと思う」
あまり納得できなかったが、奏人ははあ、と応じて、オレンジ色のジュレをフォークで掬った。にんじんの風味がしたが、癖のある臭みが無い。
「美味しい」
「うん、マイルドにんじんだ」
話し合う奏人と片山を見て、岡島は何となく不満気な表情になる。奏人はそれに気づき、どうしたの? と声をかける。
「にんじん掬えないんだけど」
「えっ?」
岡島は長方形のジュレを、フォークで潰してしまっていた。スプーンで食べることを、奏人は提案する。
岡島はプランナーの森末の説明を聞くのに必死なので(たぶん男は女ほど、結婚式や披露宴にイメージを持てないのだろうと奏人は思う)、奏人は片山と手分けして、周りの写真を撮っておいてやる。するとチャペルの入口にいたカメラマンが、2人で撮ろうかと言ってきた。
「お帰りの際にお渡ししますよ、スマホでも撮りますし」
奏人は片山と顔を見合わせた。これは、自分たちがカップルだと勘違いされているのかもしれない。
しかしノリの良い片山は、お願いします、と自分のスマートフォンをカメラマンに手渡した。そして祭壇が背後に入るよう、カメラマンの指示に従って2人で並ぶ。はいチーズ、という合図と共に、互いのほうに首を傾けてみる。
何やってんの、と岡島の呆れたような声が飛んできた。カメラマンは岡島にも入るよう言って、バージンロードで謎の同窓会写真が撮影された。
片山はスマートフォンに収まった、ツーショットの写真をすぐに奏人に送ってくれた。3人でそれを見て爆笑する。岡島が手を叩いた。
「この人たち何なんだよ」
「面白過ぎるからインスタに上げよう」
片山は笑いながら言った。奏人と片山の絶妙な距離感は、友人にも恋人同士にも取れるが、バックに写り込む、花びらの散るバージンロードと祭壇が意味深過ぎる。奏人も指を動かした。
「暁斗さんに送っちゃえ」
「それが弄ってるって言うんだよ」
森末が呼びに来たので、笑いながらバンケットホールに向かう。岡島が楽しみにしていた、料理の試食会だ。丸テーブルに、3人でゆったり座る。
「当ホテルはフレンチがお勧めではありますけれど、和食との折衷コースもご提案できます……もちろんアレルギーをお持ちの方には、個別対応いたします」
レストランのシェフの説明とともに運ばれてきたのは、色とりどりの野菜で飾られた前菜と、小さなテーブルロールだった。料理自慢のホテルらしく、凝った盛りつけが見た目にも楽しい。
少し離れた場所に座るカップルのテーブルに、肉料理らしきものが運ばれているのを見て、奏人は思わず岡島に小声で話しかける。
「何品出してくれるの? あまりタダ飯食いになりたくないんだけど、そう思わせるのがホテルの手口?」
岡島は真面目な顔になり、重々しく答えた。
「気にせずとも良いのだ、結婚式の予約がひとつ入れば、きっとこの程度は元が取れるに違いないのだから」
それを聞いて片山はくすっと笑い、だろうな、と言った。
「利用を検討してるのは岡島だから、少なくとも高崎が気にしなくてもいいと思う」
あまり納得できなかったが、奏人ははあ、と応じて、オレンジ色のジュレをフォークで掬った。にんじんの風味がしたが、癖のある臭みが無い。
「美味しい」
「うん、マイルドにんじんだ」
話し合う奏人と片山を見て、岡島は何となく不満気な表情になる。奏人はそれに気づき、どうしたの? と声をかける。
「にんじん掬えないんだけど」
「えっ?」
岡島は長方形のジュレを、フォークで潰してしまっていた。スプーンで食べることを、奏人は提案する。
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