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お節介な男たちの盆休み

13:30②

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「あ、気持ちい……」

 下半身の筋肉が緩んでいくのがわかる。おやじに成り果てる暁斗の横で、奏人は木の柱に貼られた温泉の成分表に目を向けていた。

「低アルカリ泉……疲労回復と肌を潤す効果あり、美肌の湯って感じかな」
「男湯にそれあまりキャッチーじゃないかも」

 暁斗は奏人や若い部下から勧められて、昔ひげ脱毛をしている。エステでその時、基礎的な肌の手入れを教えこまれたことと、人と顔を合わせる仕事柄、肌にはそこそこ気を遣っているつもりである。と言って、美肌を温浴の目的にするほどではない。

「そんなことないよ、今の若い人は僕の若い頃よりもずっと、肌の手入れに手間ひまかけてるから、美肌の湯に入りたいんじゃない?」

 そうなのか。暁斗にしてみれば、奏人はやはりかつての副業柄、出逢った頃も今も女子並みに手入れをしているように感じるが。
 ここは2階だから、岩の露天風呂も周りに植えられた木々も、人工物だ。温泉はどこかから引いているのだろうか。それでも、植え込みの葉を揺らす風が……きっとこの建物の外だと、生温く湿気の高い不快な風でしかないだろうに、そよそよと頬を撫でて心地良い。
 奏人は誰もいないのをいいことに、暁斗に身体を寄せて来て、肩に頭をもたせかけた。脚に置かれた手を、暁斗はそっと自分の手で包む。

「……暁斗さん成長したよね」

 奏人に言われ、暁斗は何が? と返した。

「初めて暁斗さんが僕を指名してくれた日、こうしただけでめちゃくちゃそわそわしたのに」
「いやいや、何年前の話だよ」

 暁斗は笑い混じりに言った。一生笑いのネタにされることを覚悟しているが、まだ自分が男が好きなのかどうかわからなかった暁斗は、奏人の色香に当てられて、ホテルの風呂で溺れかけたのである。
 初めて会った学生みたいな華奢な男子にどきどきする自分を、認めたくなかった。風俗を使った経験が無かった暁斗は、ただでさえ緊張していた上に、想定外の自分の反応に勝手に大混乱し、のぼせて意識を飛ばしてしまった。

「でもあの時……久しぶりに興奮したからなあ……」

 しみじみと言う暁斗に、奏人は笑った。

「そうだったね、浴槽から暁斗さんを引きずり出したらちょっとってたから、僕はおっ! てなったんだけど」

 暁斗は苦笑した。それは初耳だ。返す返すも恥ずかしい。

「何が『おっ』だった訳?」
「わーこの人ゲイだよ、よっしゃ好みだから一生懸命やろっ! て思った」

 話す奏人は思い出しながらやけに楽しそうである。それでテクニシャンの彼に一生懸命やられたら、風俗童貞の暁斗などひとたまりもない。
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