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お節介な男たちの盆休み

13:30

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 下着の替えを抱えてエレベーターで2階に降り、マッサージコーナーなどの前を通り過ぎて廊下を突き当たると、男女に分かれた大浴場の入り口が待っていた。紺色の暖簾をくぐれば、そこにはロッカーがずらりと並んでいたが、人気ひとけが無い。貸し切りかな、と奏人は少し嬉しげに言った。
 男性のグループ客が少ないのだから、当然だった。カップルで来ても大浴場は一緒に使えないし、温泉好きでない限り、男子はとっとと上がるに違いない。
 フェイスタオルとバスタオルを取って、リストバンドの番号のロッカーの扉を開ける。

「絶対同性カップルのほうが、温泉は楽しめるよね」

 奏人は作務衣を脱ぎながら言う。こんな昼間から一緒に風呂に入ることなど普段は無いので、彼の白い肌がやけに眩しい。
 暁斗は照れのごまかし半分に奏人に応じる。

「露天付きとか部屋代が高いからなぁ、それに広々とした風呂だからこそ一緒に使いたいような……」
「個室露天のちっちゃな湯船に暁斗さんとみちっと入るのも悪くないけど?」
「そんなの家でいくらでもしてるじゃないか」

 暁斗の話に奏人は苦笑した。

「家とは違うじゃん……」
「あ、そう?」

 誰もいないのにお互い前を隠して、浴場の引き戸を開ける。広い浴槽の横に、ジャグジーや寝湯が並び、ガラス張りの向こうには露天風呂も見えていた。
 洗い場に落ち着いて暁斗が髪を洗い終えると、タイミングを見計らっていたらしい奏人が、頭と腰にタオルを巻いてこちらにやって来た。

「背中流すよ」

 デリヘルで鍛えられた奏人の特技である。暁斗は客としても何度も、こうして強くもなく弱くもない絶妙な力加減で身体を洗って貰ったが、今はもうこの元ナンバーワンスタッフは、耳のそばで思わせぶりに話すようなことはしない。

「暁斗さん、肩凝ってる?」

 奏人はタオルを置いて、暁斗の首から肩を石鹸まみれの手で揉んだ。

「あー、休み前にみんなの人事考課表を作ったからかな……」
「課長さんは大変だ」

 気持ち良くて、暁斗の頭の中まで、湯けむりに巻かれてしまいそうだった。
 暁斗の部下の数は多い。元々3つあった営業課が統合されて以降、「まとめ課長」だからだ。課長補が2人いるが、人事考課は彼らの業務ではない。

「部屋に戻ったら背中も揉んであげる」
「ありがとう……」
「おちんちんもね」

 それは……家に帰ってからでいい気がしたが、あまりに強く拒絶するのも、この奉仕好きのパートナーに申し訳なくて、曖昧にうん、と答えておいた。
 暁斗も奏人の背中を流してやり(何故か奏人はそうされるのが好きである)、早速露天風呂に向かった。湯は少し熱い目だった。岩の肌に背中を預けて、足を伸ばす。
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