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それも、賢者のおくりもの
12月13日 19:10
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奏人への大切なプレゼントが入った紙袋を手に、暁斗が浮かれながらマンションに戻ると、扉に小さなリースがぶら下がっていた。太い蔓に松ぼっくりと銀と赤のモールが巻きついて、可愛らしい。何でもできる奏人が作ったのかと思ったが、キッチンで味噌汁を作っていた彼は、笑顔で答えた。
「パートさんが作って持って来てくれたんだ、カルチャーセンターで教えてもらったんだって」
「クリスマスらしくていいな」
暁斗は小さい紙袋を鞄の後ろに隠しながら、リビングの隅のデスク(これがこの家における暁斗のプライベートゾーンである)に向かい、デスクトップパソコンの陰に紙袋を置いた。
奏人との初めてのクリスマスを思い出深いものにしたくてたまらない暁斗は、ミッションスクールである母校のクリスマス礼拝に参加しようと、大学のホームページを見てみた。暁斗の大学は、彼が現役の時代から、クリスマスには結構派手にいろいろなイベントをおこなっていて、24日の深夜12時から礼拝をしているのを思い出したからである。
しかしこのご時世なので、聖夜の礼拝は動画の配信でしか行わないとあった。
「どうしたの暁斗さん、帰るなりパソコン立ち上げるなんて珍しい‥‥‥ごはんもうちょっとでできるよ」
奏人はデニムのエプロン姿でリビングにやって来て、言った。暁斗は礼拝に参加できないことにがっかりしつつも、奏人の格好にちょっと萌えたので、気を取り直す。
「奏人さんの大学は……クリスマスに何かしないの?」
奏人はきょとんとしたが、するよ、と答えた。彼の出身大学もキリスト教系である。
「ただ……ちょうどこの間美術部の同期とメールしててそんな話が出たんだけど、今年も規模の縮小とか動画の配信ばっかりみたい」
「あ、やっぱりそうなのか……いや、俺の大学って24日の12時というか、25日の0時からチャペルで礼拝するから、奏人さんと行きたいと思ったんだけど、動画だけだって……」
奏人はついと傍にやって来た。暁斗は時計の入った紙袋をパソコンの裏にそっと押しやる。
「暁斗さん、これは?」
奏人はホームページに上がった項目のひとつを指さした。
「25日明けてからのミサ……あ、聖公会は礼拝だね、こんなのあるじゃん」
暁斗はその案内をクリックする。人数制限があり、満席になり次第締め切ると書かれていた。
「……奏人さんは休日の朝っぱらから池袋まで行く気ある?」
暁斗がその白い顔を覗き込むと、奏人はくすっと笑った。
「どちらかというと僕がそれを暁斗さんにお尋ねしたいのですが?」
「あ、頑張らせていただきますので……申し込もうかな」
うんうん、と奏人が楽し気に言ってくれたので、暁斗はマウスを動かして、早速申し込み手続きに入った。彼はその作業に集中したので、奏人がパソコンの裏に隠された紙袋に目を留めたことに気づかなかった。
「パートさんが作って持って来てくれたんだ、カルチャーセンターで教えてもらったんだって」
「クリスマスらしくていいな」
暁斗は小さい紙袋を鞄の後ろに隠しながら、リビングの隅のデスク(これがこの家における暁斗のプライベートゾーンである)に向かい、デスクトップパソコンの陰に紙袋を置いた。
奏人との初めてのクリスマスを思い出深いものにしたくてたまらない暁斗は、ミッションスクールである母校のクリスマス礼拝に参加しようと、大学のホームページを見てみた。暁斗の大学は、彼が現役の時代から、クリスマスには結構派手にいろいろなイベントをおこなっていて、24日の深夜12時から礼拝をしているのを思い出したからである。
しかしこのご時世なので、聖夜の礼拝は動画の配信でしか行わないとあった。
「どうしたの暁斗さん、帰るなりパソコン立ち上げるなんて珍しい‥‥‥ごはんもうちょっとでできるよ」
奏人はデニムのエプロン姿でリビングにやって来て、言った。暁斗は礼拝に参加できないことにがっかりしつつも、奏人の格好にちょっと萌えたので、気を取り直す。
「奏人さんの大学は……クリスマスに何かしないの?」
奏人はきょとんとしたが、するよ、と答えた。彼の出身大学もキリスト教系である。
「ただ……ちょうどこの間美術部の同期とメールしててそんな話が出たんだけど、今年も規模の縮小とか動画の配信ばっかりみたい」
「あ、やっぱりそうなのか……いや、俺の大学って24日の12時というか、25日の0時からチャペルで礼拝するから、奏人さんと行きたいと思ったんだけど、動画だけだって……」
奏人はついと傍にやって来た。暁斗は時計の入った紙袋をパソコンの裏にそっと押しやる。
「暁斗さん、これは?」
奏人はホームページに上がった項目のひとつを指さした。
「25日明けてからのミサ……あ、聖公会は礼拝だね、こんなのあるじゃん」
暁斗はその案内をクリックする。人数制限があり、満席になり次第締め切ると書かれていた。
「……奏人さんは休日の朝っぱらから池袋まで行く気ある?」
暁斗がその白い顔を覗き込むと、奏人はくすっと笑った。
「どちらかというと僕がそれを暁斗さんにお尋ねしたいのですが?」
「あ、頑張らせていただきますので……申し込もうかな」
うんうん、と奏人が楽し気に言ってくれたので、暁斗はマウスを動かして、早速申し込み手続きに入った。彼はその作業に集中したので、奏人がパソコンの裏に隠された紙袋に目を留めたことに気づかなかった。
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