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12月

12-②

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 朔はゆっくりと腕を解いて、エアコンのスイッチを入れた。晃嗣は朔の温もりが逃げてしまうのが嫌だったが、仕方なく自分も彼の身体から手を離した。
 薄闇の中で朔は晃嗣を見つめているようだった。相手の顔がよく見えないというのは、恥ずかしさが軽減されるのはいいが、ちょっと寂しくもある。
 朔が顔を近づけてきた気配がして、ゆっくりと温かい唇が晃嗣のそれに重なった。朔とキスするのが気持ちいいことは知っていたが、建前や条件抜きだと、気持ちの高まりが違った。晃嗣は初心な高校生みたいにどきどきして、思わず朔の服の袖を掴んでしまう。
 唇がそっと離れて、晃嗣は静かに深呼吸した。

「晃嗣さんの嫌なことはしないつもりだけど、恥ずかしいとかはちょっと取っ払ってくれたら嬉しいな」

 朔の良い声で名を呼ばれると、半ばふざけてこうちゃんと言われる時には無いたかぶりが起こる。
 あの、と晃嗣は勇気を出して、しかし遠慮がちに答えた。

「俺はれられる以外なら大丈夫だ、今まで朔さんからされて嫌だったことはひとつも無かった……から」

 朔のふふっという笑いは、嬉しげだった。

「確かにお尻の穴は全く未開発みたいだから、これからゆっくり解そう……でもこの間少し触った時気持ち良くなかった?」
「あ、まあ……いやその、何が何でも俺に挿れたいのか」

 晃嗣の問いに、朔はそうだよ、と当然のように答える。

「だって晃嗣さんネコだもん、俺これまでネコのお客様に沢山接してきたからわかる」

 複雑な気持ちになるが、やはり晃嗣が朔を抱くというのもしっくり来ない。晃嗣の軽い煩悶を察したのか、朔はもう一度軽く口づけしてきた。

「怖がらないで、あくまでも俺の希望だし、一緒に気持ち良くなるやり方はいくらでもあるから」

 優しい子だと思う。胸がきゅっとなり、晃嗣は自分から朔に口づけた。温かく柔らかい唇の感触を堪能していると、晃嗣の背を抱いていた手が後頭部を押さえつけ、口をこじ開けられた。あっ、と思った瞬間に熱いものが押し込まれ、晃嗣の舌を絡め取る。舌が押し潰されそうな圧力が何故か気持ち良くて、背筋がぞくぞくした。
 晃嗣は朔の為すがままに、口腔内を舌で蹂躙され、吸われ、唇を甘噛みされる。絶え間ない水音と高まる快感に脳内が痺れてきて、顎に力が入らなくなってきた。混ざった唾液が口の端から零れたのを感じたが、朔が舌で舐め取り、ぢゅっと音を立てて吸ってくれた。

「気持ちいいのかな、そんなに押しつけてきてくれるなんて」

 朔は言って、左の耳たぶに歯を当てた。それだけなのに、勝手に声帯が震える。無意識に腰を朔に押しつけていたことも恥ずかしい。股間は異様に熱くなり、これまで朔から与えられた刺激を思い出して求めていた。

「朔さん、ごめん、俺何かもう……おかしくなってる……」

 最後の矜持を振り絞って、晃嗣は言い訳をする。朔は晃嗣の首に唇を這わせるのを、一度止めた。

「うん、だっておかしくなるように全力でやってるし」
「でも……あっ」

 朔の下にくるりと組み敷かれ、いきなり脇腹をじかに撫でられて、晃嗣は思わず身構えた。

「怖くも恥ずかしくもないよ、晃嗣さん」

 また唇を重ねられ、貪られる。晃嗣も夢中で舌を絡めた。脇腹から這い上がってきた朔の指先が、左の突起に触れ、押すように撫でた。身体が勝手にびくりと震え、晃嗣は唇を塞がれたまま、うんうんと声を上げてしまう。
 本当に、身体の輪郭が崩れて溶けてしまいそうだ。晃嗣は乳首を弄ばれながら、危機感さえ覚える。

「朔さん、待っ……ああっ」

 唇を解放して貰ったと思ったら、服を捲り上げられ、もう片方の突起に吸い付かれる。指と舌の両方で責め立てられて、晃嗣は声を上げ続けた。

「ああっ、あっ、だめ……っ、あっ」

 腰から下に火を孕んだものがどんどん集まる。気を緩めるとこのままいってしまいそうだった。

「朔さんほんとにだめだ、いきそう……」

 自分でも情けなくなるような懇願の声が出て、朔はやっと晃嗣の右の乳首を舌先でつつくのを止めてくれた。

「今日は俺がお金を払ってるんじゃないんだ、俺ばっかり気持ち良くなったら……あっ」

 晃嗣が必死で言うと、朔は左の乳首をきゅっと摘みながら笑う。

「ここ感じるんだよな、いくまで可愛がるよ」
「だっ、だから、それだと俺ばっかり、それは対等じゃないと思う」

 朔はあはは、と声を出して笑った。何が可笑しいと言いたくなったが、その前に唇が熱いものに押し包まれた。だからもう、キスも気持ち良過ぎるから駄目だ。

「ほんとはエッチなこといっぱいしてほしいくせに、俺に気を遣うこうちゃんが好き……」
「俺はそんなにエッチじゃないし、こうちゃんはやめろ」

 晃嗣が抵抗すればするほど、朔は可笑しくて仕方ない様子である。

「もう、こうちゃんは素直じゃないことばかり言うから、黙らせます」

 朔は乳首をいじっていた手を,いきなりズボンの中に入れてきた。下着にするりと指先が入ってきて、晃嗣が腰を引く間も無く、勃起したものの先をぎゅっと握られてしまった。

「えっ……あああっ!」

 脳天まで電気が突き抜けて、晃嗣は叫んだ。その間に腰回りを剥き出しにされて、根っこから先までを大きく扱しごかれた。

「ひあっ、あっ、あ……っ、やめて」
「気持ちいい声は好きなだけあげて」

 温かい朔の手が晃嗣の先走りのせいで湿り気を帯び、優しく動かされる度に生まれる強い快感のせいで、軽く気が遠くなる。

「めっちゃ気持ち良さそうでエロ過ぎ、5階で黙って座ってる柴田さんから想像できない顔してる」

 口を半開きにして喘いでいた晃嗣は、言われて羞恥に我を忘れた。朔の肩に右手で掴みかかったが、敢えなく手首を捕らえられた。

「やめろっ! ああっもうっ、あっ……んっ」
「まだいっちゃ駄目だ、晃嗣さんの気遣いを俺だって無駄にしたくないからね」

 朔は手を止めて晃嗣の手首を離す。そして手を握り直し、晃嗣の熱くなった頬に唇をつけた。恋人として扱われているのを感じて、泣けてきそうになる。
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