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12月
10-⑥
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部屋の中は爆笑に包まれ、やんややんやの大騒ぎになった。晃嗣はファストな衣料店の紙袋を開き、中に入っているスウェットの上下を取り出した。モスグリーンはやや地味だが、サイズは合いそうなので、寝間着に良さそうである。
朔は大小の2枚のタオルを広げていた。何の変哲もないタオルは嬉しくないだろうと晃嗣は思ったが、意外にも彼は目を輝かせた。
「おーっ、今治タオルって初めて、何この気持ちいい厚み……」
朔は頬にタオルを当てて目を細めた。気に入って貰えて良かったと、晃嗣が密かに喜んでいると、彼は晃嗣が手にしているスウェットを見て、ああっ! と叫び立ち上がった。
「ちょっと皆さん聞いてっ! 俺のプレゼントを柴田さんが選んでくれてるよ! これが愛の力でなくて何なの?」
笑いと拍手が起きて、既に酔いが醒めている晃嗣は、本当に逃げ出したかった。朔は調子に乗って続ける。
「ちなみに俺は生まれて初めて今治タオルを貰いました、ありがとうございます」
えーっいいなぁ、と子供用のバドミントンセットを振りながら、男子社員が言った。朔は両腕を広げる。
「めちゃ嬉しくてハグしたいので、贈り主さんに申し出て貰えたらなーと思います」
「はーい虚偽申告しまーす」
手を挙げた女子社員に、笑いとともに総突っ込みが入る。
「プレゼント交換の贈り主をバラすのはコンプライアンス違反だ、さっくん!」
「こういう不埒な女が出るからやめなさい!」
場がカオスになりつつあった。とても事実を言い出せない晃嗣は、朔の傍で笑うしかない。
何とかその場が収まると、今度は課長補の花谷が締めの挨拶をして、パーティはお開きとなった。料理はきれいに食べ尽くされ、酒の残りを処理する者と、片づけを始める者に何となく役割が分かれている。朔がうつらうつらし始めたので椅子に放置して、晃嗣は片づけを手伝うことにした。
想定外の話題を提供した晃嗣は、営業課の連中から面白い人認定されてしまったらしく、やたらと話しかけられた。基本的に営業をしている者は社交的で当たりが良い。晃嗣はこんな雰囲気が、やはり懐かしい。営業畑に戻りたいとは思わないけれど、好きだったのは確かだった。
テーブルと椅子を会議モードに並べ直し、21時に片づけが終わった。この短時間で、缶や瓶のゴミ袋が、食べ物に使った紙のゴミの3倍出ているのが恐ろしい。
「ゴミは外に出して……じゃあみんな気をつけて帰って、潰れてるのを連れて帰る段取りはできたか?」
桂山は部下を見送りながら言う。数名の酔い潰れた社員を、帰る方向が一緒の者が送る段取りになっているらしい。朔は要見送りメンバーに入っているが、イベントの事務系処理の担当らしい平岡が報告した。
「課長、さっくんが柴田さんでないと嫌だってわがまま言ってまーす」
壁に凭れて半分寝ている朔と平岡を見て、桂山がマジか、と呆れたように言う。
「柴田さん、ご自宅どこですか?」
「日暮里です」
晃嗣が桂山に答えると、彼は苦笑した。
「さっくんは阿佐ヶ谷です、反対じゃないですか……わがまま禁止だ、中央線乗る人誰か頼む」
そう言う桂山は、泣き上戸の新入社員に抱きつかれていた。彼は大井町が自宅らしく、大森に住む桂山が送るようだ。
嫌な訳ではないので、晃嗣は自分が朔を阿佐ヶ谷まで送ると申し出た。大っぴらにはできないが、朔のマンションには一度行っている。
「いいですよ、まだ時間早いですから」
「ああ……お世話かけて本当にすみません、じゃあよろしくお願いします」
桂山と話が纏まると、平岡と花谷が朔を揺すり起こした。さっくんよかったねぇ、柴田さんお持ち帰りしていいらしいよぉ、などと下世話な声かけをしている。お持ち帰りされるつもりはないぞと、晃嗣は胸の中で突っ込んだ。
朔は大小の2枚のタオルを広げていた。何の変哲もないタオルは嬉しくないだろうと晃嗣は思ったが、意外にも彼は目を輝かせた。
「おーっ、今治タオルって初めて、何この気持ちいい厚み……」
朔は頬にタオルを当てて目を細めた。気に入って貰えて良かったと、晃嗣が密かに喜んでいると、彼は晃嗣が手にしているスウェットを見て、ああっ! と叫び立ち上がった。
「ちょっと皆さん聞いてっ! 俺のプレゼントを柴田さんが選んでくれてるよ! これが愛の力でなくて何なの?」
笑いと拍手が起きて、既に酔いが醒めている晃嗣は、本当に逃げ出したかった。朔は調子に乗って続ける。
「ちなみに俺は生まれて初めて今治タオルを貰いました、ありがとうございます」
えーっいいなぁ、と子供用のバドミントンセットを振りながら、男子社員が言った。朔は両腕を広げる。
「めちゃ嬉しくてハグしたいので、贈り主さんに申し出て貰えたらなーと思います」
「はーい虚偽申告しまーす」
手を挙げた女子社員に、笑いとともに総突っ込みが入る。
「プレゼント交換の贈り主をバラすのはコンプライアンス違反だ、さっくん!」
「こういう不埒な女が出るからやめなさい!」
場がカオスになりつつあった。とても事実を言い出せない晃嗣は、朔の傍で笑うしかない。
何とかその場が収まると、今度は課長補の花谷が締めの挨拶をして、パーティはお開きとなった。料理はきれいに食べ尽くされ、酒の残りを処理する者と、片づけを始める者に何となく役割が分かれている。朔がうつらうつらし始めたので椅子に放置して、晃嗣は片づけを手伝うことにした。
想定外の話題を提供した晃嗣は、営業課の連中から面白い人認定されてしまったらしく、やたらと話しかけられた。基本的に営業をしている者は社交的で当たりが良い。晃嗣はこんな雰囲気が、やはり懐かしい。営業畑に戻りたいとは思わないけれど、好きだったのは確かだった。
テーブルと椅子を会議モードに並べ直し、21時に片づけが終わった。この短時間で、缶や瓶のゴミ袋が、食べ物に使った紙のゴミの3倍出ているのが恐ろしい。
「ゴミは外に出して……じゃあみんな気をつけて帰って、潰れてるのを連れて帰る段取りはできたか?」
桂山は部下を見送りながら言う。数名の酔い潰れた社員を、帰る方向が一緒の者が送る段取りになっているらしい。朔は要見送りメンバーに入っているが、イベントの事務系処理の担当らしい平岡が報告した。
「課長、さっくんが柴田さんでないと嫌だってわがまま言ってまーす」
壁に凭れて半分寝ている朔と平岡を見て、桂山がマジか、と呆れたように言う。
「柴田さん、ご自宅どこですか?」
「日暮里です」
晃嗣が桂山に答えると、彼は苦笑した。
「さっくんは阿佐ヶ谷です、反対じゃないですか……わがまま禁止だ、中央線乗る人誰か頼む」
そう言う桂山は、泣き上戸の新入社員に抱きつかれていた。彼は大井町が自宅らしく、大森に住む桂山が送るようだ。
嫌な訳ではないので、晃嗣は自分が朔を阿佐ヶ谷まで送ると申し出た。大っぴらにはできないが、朔のマンションには一度行っている。
「いいですよ、まだ時間早いですから」
「ああ……お世話かけて本当にすみません、じゃあよろしくお願いします」
桂山と話が纏まると、平岡と花谷が朔を揺すり起こした。さっくんよかったねぇ、柴田さんお持ち帰りしていいらしいよぉ、などと下世話な声かけをしている。お持ち帰りされるつもりはないぞと、晃嗣は胸の中で突っ込んだ。
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