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15 昼に舞う蝶とダンサー
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気づけば晴也は、金曜か土曜のどちらかの夜に、晶や自分の家で彼と過ごすようになっている。
金曜の夜のルーチェのショーは、3月半ばから毎回満席状態が続いていて、晴也は少し遠慮している。すると明里が1人で新宿までやって来て、美智生と藤田と牧野と4人で鑑賞していたこともあった。舞台がはねてから晴也のマンションに来た晶から、それを聞かされた時には驚いた。明里は終演後にすぐ店を出て、浅草まで帰ったらしかった。
金曜に晴也の部屋に来ると、晶は大概すぐに寝る。晴也は晶のために枕カバーもシーツも換えて、風呂にすぐ入れるようにしておく。そして彼がぐっすり寝入ってから、彼の傍にもぐり込んで、寝顔を観察する。幸せなひとときである。
晶の部屋に晴也が行く場合は、晴也のためのエッチなレッスンの時間を持つことが多い。おかげで晴也の後ろの穴には、ローションを使って晶の指がスムーズに入るようになってきた。
晴也は晶におもちゃにされた挙げ句に前立腺をマッサージされ、大概ダウンしてしまう。申し訳ないので手で晶をいかせてやるが、彼の好きな具合が、少しずつわかるようになってきた。彼のものの先のほうを緩急つけつつ弄る上で、前触れなく首や耳に口づけすると、やたらに興奮する確率が高い。
その夜もそんな風にして晶を昇りつめさせてやり、手に何となくその感触が馴染んできた棒状のものを丁寧に拭いていると、晶はベッドの上で大の字になったまま、晴也に言った。
「俺がイギリスに出発する前に……ハルさんの破瓜の儀式に漕ぎつけたいなぁ」
晴也はくすっと笑ってしまう。
「破瓜はないだろ、女の子の処女膜を破るって意味だと思うんだけど」
尻の穴の奥に膜は無い。ただ、破瓜という言葉が何か痛みを想起させることを思えば、尻の穴でも破瓜、なのかもしれない。
晴也は比較の対象をあまり知らないが、少なくとも晶の分身は、晴也のそれより大きい。晶のほうが身体も大きいのだから、当たり前ではある。ただ、晴也の愛撫に目一杯立ち上がり硬くなったそれに触れていると、こいつを俺の尻の穴にお迎えするのは難しいぞと考えてしまう。
晶は後始末を終えた晴也が、自分の足許にちんまり座ったままでいるのを見て、言った。
「あ、不安になってる?」
「……ほんとに入るのか?」
晴也の問いに、晶はにっこり笑った。
「入ると思う、でも怖いなら無理にとは言わない」
少し上半身を起こした晶の手が、晴也の肘の辺りに触れた。
「こうして順番にいかせ合うのも俺は好きだ……でも一緒にいく、とか経験してみたくない?」
「一緒に……なんていけるのか? そんなの小説や映像の中だけの話だろ?」
晴也は首を傾げたが、晶は目を丸くして、そんなことないよ、と応じた。
「ショウさんと一緒にいきたいぃ、とか言いながらしがみついてくるハルさんが見てみたい……」
晴也は晶を薄闇の中で睨みつけた。こうしてお互い一糸纏わぬ状態で、ベッドにいるだけでは飽き足らず、いつもどれだけエロ妄想を展開しているのか……。晴也は呆れる。
「あのなぁ、常々思うんだけど、俺はおまえの性的なおもちゃじゃないぞ……俺を最終的にどうしたい訳?」
晴也の苦情に、晶はええっ? と、意味がわからないと言わんばかりの様子である。彼は身体を起こし、晴也と向かい合った。晴也の右側に投げ出された脚は、鍛え上げられ筋ばっている。
「だってハルさん、俺と抱き合うの好きだって言ってくれるじゃないか、俺だってそうだ……より深く味わいたいだけだ」
晶は大真面目である。
「乳首弄られるのも、ちんこ舐められるのも、後ろの穴に指入れられるのも好きだよな?」
言われて晴也は、顔に血が昇るのを自覚した。この部屋で晶にそんなことをされ、はしたなく喘いでいる自分が厭わしくなった。実のところ、何もかもどうでもよくなり、晶から与えられる快感に溺死してしまいたくなることさえある。そんな自分が情けない。
こういう時に黙りこむ晴也が何を考えているのか、晶は大体把握しているようだった。
「俺だってハルさんにちんこを可愛がって貰うのも、首や耳にチューして貰うのも大好きだ……膝を撫でて貰うのさえ気持ちいい」
晴也は晶に手を取られて、つい俯く。
「……自分がこれ以上馬鹿エロに開発されるのが怖い」
「開発というか、ハルさんはたぶん元々エロい」
晶の言葉に、晴也は顔を上げた。彼は続けたが、その声に笑いは混じっていなかった。
「俺にされるのでなかったらきっと気持ち良くないって言ってくれたじゃないか、すごく嬉しかった……俺とエッチなことを楽しむのは、罪でも恥でもないよ」
晴也は少しどきどきしながら、晶の柔らかい声を聞いていた。確かに罪でも恥でもないのだろう。しかし。
「……だってこんなことばかりして、ショウさんに気持ちいいことして貰わないと生きていけないような身体になったら嫌だ」
上手に言葉にできたと思った。晴也は晶の顔を見つめる。何とか言え、と思う。
「俺は晴也が俺無しで生きていけなくなると考えただけで、ちんこが本体ともども震えるぞ」
言った晶は蕩けた顔になった。それを見て、晴也は細い神経が1本切れたのを感じた。晶に預けていた手を咄嗟に引っ込める。
「真面目に言ってんだよ、俺はっ!」
「何をイライラしてるんだ、それに問題があると思えない」
晶の呑気さに晴也は溜め息をついた。
「……おまえこれから留守にするんじゃないか」
晴也の言葉に、あ、と晶は小さく言った。
「そうか、それが言いたかったのか」
「……だから開発するなら帰って来てからにしてくれ」
晴也はここのところ、晶が日本を離れる日が近づいていることが気になっていた。晶の後ろ髪を引くようなことは、彼が出発するまで口にしたくなかったが、やはりそちらに話が転んでしまう。晴也は自分の弱さと甘さを責めた。
晶はじりじりと寄ってきて、晴也を腕に抱こうとした。晴也は身体をこわばらせる。
「そんなことでごまかすな」
「ハルさん、晴也……機嫌を直して、ごまかすつもりなんかない……あなたに拒まれると俺ほんとにどうしようもなくなる」
晴也は結局、晶の長い腕に包まれてしまう。彼の身体は温かくて心地良かった。
金曜の夜のルーチェのショーは、3月半ばから毎回満席状態が続いていて、晴也は少し遠慮している。すると明里が1人で新宿までやって来て、美智生と藤田と牧野と4人で鑑賞していたこともあった。舞台がはねてから晴也のマンションに来た晶から、それを聞かされた時には驚いた。明里は終演後にすぐ店を出て、浅草まで帰ったらしかった。
金曜に晴也の部屋に来ると、晶は大概すぐに寝る。晴也は晶のために枕カバーもシーツも換えて、風呂にすぐ入れるようにしておく。そして彼がぐっすり寝入ってから、彼の傍にもぐり込んで、寝顔を観察する。幸せなひとときである。
晶の部屋に晴也が行く場合は、晴也のためのエッチなレッスンの時間を持つことが多い。おかげで晴也の後ろの穴には、ローションを使って晶の指がスムーズに入るようになってきた。
晴也は晶におもちゃにされた挙げ句に前立腺をマッサージされ、大概ダウンしてしまう。申し訳ないので手で晶をいかせてやるが、彼の好きな具合が、少しずつわかるようになってきた。彼のものの先のほうを緩急つけつつ弄る上で、前触れなく首や耳に口づけすると、やたらに興奮する確率が高い。
その夜もそんな風にして晶を昇りつめさせてやり、手に何となくその感触が馴染んできた棒状のものを丁寧に拭いていると、晶はベッドの上で大の字になったまま、晴也に言った。
「俺がイギリスに出発する前に……ハルさんの破瓜の儀式に漕ぎつけたいなぁ」
晴也はくすっと笑ってしまう。
「破瓜はないだろ、女の子の処女膜を破るって意味だと思うんだけど」
尻の穴の奥に膜は無い。ただ、破瓜という言葉が何か痛みを想起させることを思えば、尻の穴でも破瓜、なのかもしれない。
晴也は比較の対象をあまり知らないが、少なくとも晶の分身は、晴也のそれより大きい。晶のほうが身体も大きいのだから、当たり前ではある。ただ、晴也の愛撫に目一杯立ち上がり硬くなったそれに触れていると、こいつを俺の尻の穴にお迎えするのは難しいぞと考えてしまう。
晶は後始末を終えた晴也が、自分の足許にちんまり座ったままでいるのを見て、言った。
「あ、不安になってる?」
「……ほんとに入るのか?」
晴也の問いに、晶はにっこり笑った。
「入ると思う、でも怖いなら無理にとは言わない」
少し上半身を起こした晶の手が、晴也の肘の辺りに触れた。
「こうして順番にいかせ合うのも俺は好きだ……でも一緒にいく、とか経験してみたくない?」
「一緒に……なんていけるのか? そんなの小説や映像の中だけの話だろ?」
晴也は首を傾げたが、晶は目を丸くして、そんなことないよ、と応じた。
「ショウさんと一緒にいきたいぃ、とか言いながらしがみついてくるハルさんが見てみたい……」
晴也は晶を薄闇の中で睨みつけた。こうしてお互い一糸纏わぬ状態で、ベッドにいるだけでは飽き足らず、いつもどれだけエロ妄想を展開しているのか……。晴也は呆れる。
「あのなぁ、常々思うんだけど、俺はおまえの性的なおもちゃじゃないぞ……俺を最終的にどうしたい訳?」
晴也の苦情に、晶はええっ? と、意味がわからないと言わんばかりの様子である。彼は身体を起こし、晴也と向かい合った。晴也の右側に投げ出された脚は、鍛え上げられ筋ばっている。
「だってハルさん、俺と抱き合うの好きだって言ってくれるじゃないか、俺だってそうだ……より深く味わいたいだけだ」
晶は大真面目である。
「乳首弄られるのも、ちんこ舐められるのも、後ろの穴に指入れられるのも好きだよな?」
言われて晴也は、顔に血が昇るのを自覚した。この部屋で晶にそんなことをされ、はしたなく喘いでいる自分が厭わしくなった。実のところ、何もかもどうでもよくなり、晶から与えられる快感に溺死してしまいたくなることさえある。そんな自分が情けない。
こういう時に黙りこむ晴也が何を考えているのか、晶は大体把握しているようだった。
「俺だってハルさんにちんこを可愛がって貰うのも、首や耳にチューして貰うのも大好きだ……膝を撫でて貰うのさえ気持ちいい」
晴也は晶に手を取られて、つい俯く。
「……自分がこれ以上馬鹿エロに開発されるのが怖い」
「開発というか、ハルさんはたぶん元々エロい」
晶の言葉に、晴也は顔を上げた。彼は続けたが、その声に笑いは混じっていなかった。
「俺にされるのでなかったらきっと気持ち良くないって言ってくれたじゃないか、すごく嬉しかった……俺とエッチなことを楽しむのは、罪でも恥でもないよ」
晴也は少しどきどきしながら、晶の柔らかい声を聞いていた。確かに罪でも恥でもないのだろう。しかし。
「……だってこんなことばかりして、ショウさんに気持ちいいことして貰わないと生きていけないような身体になったら嫌だ」
上手に言葉にできたと思った。晴也は晶の顔を見つめる。何とか言え、と思う。
「俺は晴也が俺無しで生きていけなくなると考えただけで、ちんこが本体ともども震えるぞ」
言った晶は蕩けた顔になった。それを見て、晴也は細い神経が1本切れたのを感じた。晶に預けていた手を咄嗟に引っ込める。
「真面目に言ってんだよ、俺はっ!」
「何をイライラしてるんだ、それに問題があると思えない」
晶の呑気さに晴也は溜め息をついた。
「……おまえこれから留守にするんじゃないか」
晴也の言葉に、あ、と晶は小さく言った。
「そうか、それが言いたかったのか」
「……だから開発するなら帰って来てからにしてくれ」
晴也はここのところ、晶が日本を離れる日が近づいていることが気になっていた。晶の後ろ髪を引くようなことは、彼が出発するまで口にしたくなかったが、やはりそちらに話が転んでしまう。晴也は自分の弱さと甘さを責めた。
晶はじりじりと寄ってきて、晴也を腕に抱こうとした。晴也は身体をこわばらせる。
「そんなことでごまかすな」
「ハルさん、晴也……機嫌を直して、ごまかすつもりなんかない……あなたに拒まれると俺ほんとにどうしようもなくなる」
晴也は結局、晶の長い腕に包まれてしまう。彼の身体は温かくて心地良かった。
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