夜は異世界で舞う

穂祥 舞

文字の大きさ
上 下
161 / 229
14 万彩

7

しおりを挟む
 晶にそう言われると、前に触られるのとは全然違うが、気持ちがいいような気もしてくる。やがて指先がゆっくりと入り口を押し広げてきて、晴也はびくりとなって目を開けた。自分の様子を観察していたらしい晶と、すぐに目が合う。

「あの、き……汚くないか、そんなこと……」
「吉岡にとってお嬢様は汚いところなど無いお方ですから」

 執事ごっこする場面じゃないだろ、と晴也は突っ込みたかったが、指が奥に入って来るので話す余裕が無かった。

「うん、上手ですよ、痛くないですか?」

 晶が優しく訊いてくる。痛くはないが、違和感が半端ない。

「……めちゃくちゃ変な感じ」
「そうだと思う、普段出すだけの場所に入れてるんだからね……ハルさん、痔はやったことない?」

 晶がのんびり訊いてきた内容が理解できず、晴也はえっ? と思わず言った。

「痔の検査するとき医者って触診するんだけど、今それくらい入ってると思う」
「あ……そう……」

 晶はずぶりと指を進める。思わず声が出てしまった。

「あっ、痛い?」
「痛くない、でも」
「まさか感じてる?」
「それはない……入れられて気持ちいいとか本当になるのか?」

 晴也は晶の肩に置いていた手に力が入っていたことに気づいて、突っ張っていた腕を緩めた。すると下でやんわりと指先が動き、その違和感に思わずひゃっ、と言って身体を反らせた。
 晶はどうも指先を入れたり抜いたりしているようである。

「ただ入れるだけで気持ち良くなるのはかなり上級者だと思う、えっと……」

 言葉が切れたかと思うと、心臓のすぐそばにいきなり熱いものがくっつき、そこをくすぐり始めた。背筋がぴりぴりして、晴也はこれまでと違う声を思わず洩らす。

「ちょ、こんなとこでやめ……っ!」

 舌の先で乳首をもてあそばれると気持ちがいいことを、晴也の身体は覚えていた。晶は晴也の腰に巻きつけている腕に力を入れて、逃がすまいとする。迂闊だった、こんな体勢じゃ触ってくれと言わんばかりだ。晴也はまた腕を突っ張ろうとするが、快感がじわじわと理性を蝕む。

「あっ、やめろ馬鹿、えっ……!」

 下の穴にずぶずぶと指が侵入してくるのを感じて、晴也は震えた。晶は今度は右側の突起に唇をつけ、軽く吸う。ぎゅっと股間に熱が集まるのがわかった。勝手に声が出て、腰が砕けそうになった。
 その時、晶の指が内側の壁をこすった気がした。すると電撃がびりっと背筋を駆け上がり、脳天で弾けた。一瞬目の前が白くなった晴也は叫び、身体をよじる。

「ハルさんのいいとこに触ったかな?」

 晶は嬉しげに言って、下の穴から指を抜いた。抜ける瞬間も何やらじわりと気持ち良くて、晴也の身体が勝手に折れた。バランスが保てなくなり、晶に抱きつく格好になってしまう。

「びっくりしたな、ごめんごめん……のぼせそうだね、上がるよ」

 晶は晴也の背中を抱いたままゆっくりと立ち上がる。晴也は何が起こったのかよくわからなかったが、勃起してしまった自覚があり、恥ずかしくて顔を上げられなかった。

「はいハルさん、お風呂出るよ、歩ける?」
「あの、ショウさん、……先に出て」

 晶はえっ? と言って晴也を覗き込む。そしてくすっと笑った。

「ああ、ちんこった? わかってる、そうなるようにしたんだから」
「へ?」
「勃った状態でないと尻の穴って良くならないから」

 晴也は意味がわからなくてあ然とする。とりあえず晶の肩から腕を解き、前を手で隠しながら浴室から出る。

「そんなに恥ずかしがらないで、余計に煽られる」

 晶は笑いながら言って、バスタオルを手渡してくれた。彼に背中を向けてそそくさと身体を拭く。肌が火照り、腕も脚もほんのり染まっていた。
 勃ったものが治まるまで、腰にバスタオルを巻きつけて肌の手入れをする。晶は晴也の倍の速さで身支度をして、ビールでも飲むかと訊いて来たが、晴也は断った。晶がにやにやする。

「早く続きがしたいよな、寝室に水は持って行っとくよ」
「そういう意味じゃないっ」

 晴也が答えると、晶はさも可笑しげに笑い声を立てて洗面室から出て行く。晶から借りた薄手のスウェットはやはり大きかったが、肌触りが心地良い。晴也は袖とズボンの裾を折り、ドライヤーを手に取った。
 びっくりした、あれは何だったのだろう。晴也は頭の中を白くしたものを反芻してみる。あれは紛れもなく「感じて」しまったというやつだ。
 晴也は髪を手櫛で整えながら、恐る恐る寝室を覗いた。晶はクローゼットを開け、明日の用意をしているようだったが、ベッドの上に一枚バスタオルが敷いてあるのをみて、どきっとした。晴也は時間稼ぎをすべく、こそっとリビングに戻り、鞄から水族館の紙袋を出す。そして再度寝室を覗いた。

「あっハルさん」

 晶は晴也の姿を見て、明らかにとろけた顔になった。彼は4歩で晴也のそばまで来ると、ぎゅっと抱きしめて来た。晴也は硬直してしまう。

「だぶだぶの自分の服を着る恋人とか、萌え過ぎる……知らなかった……」

 晶は耳許で嬉しそうに言い、晴也から腕を解くと、スマートフォンのカメラを向けて来る。

「待ち受けにしたい」
「えっ! こんなカッコ……」

 晴也が顔を隠す前に、シャッター音がした。晶は即保存する。

「一切流出させませんから」
「いやまあ裸じゃないからいいけど……」

 晴也は赤くなるのを自覚しながら、サイドテーブルに置かれた水に手を伸ばす。そして胸に抱いていた紙袋を、晶に差し出した。

「あげる、どっかに飾っとけ」

 晶はえ? と言ってから袋を受け取り、すぐに開けた。オレンジの縞模様の長細いぬいぐるみを見て、彼は笑う。

「あっ、ニシキアナゴ?」
「一生懸命見てただろ? この部屋シンプル過ぎるから、こんなもので彩るのはどうかなと」

 たぶんあまり良く見えてはいないのだろうが、晶はぬいぐるみの顔を見て目を細めた。

「ふふ、可愛い……これから一緒に寝るよ」
「ちなみにチンアナゴがうちにいるから」
「それはお揃いだってこと?」

 まあね、と晴也は答えて水を飲む。晶はぬいぐるみを触りながら、ベッドに腰を下ろした。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

年越しチン玉蕎麦!!

ミクリ21
BL
チン玉……もちろん、ナニのことです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

営業活動

むちむちボディ
BL
取引先の社長と秘密の関係になる話です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

処理中です...