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13 破壊、そして
ショウの日曜日②
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しかしあの衝撃的なひと幕は、何故か晶に異様な興奮をもたらした。あの後ルーチェのステージ上で振り切れてしまいそうになった上、晴也の激怒の表情と頬の痛みが、自慰のおかずのメニューに加わってしまった。そんな話をもししたら、晴也は形の良い眉の間に小さな皺を作り、この変態野郎と低く自分を罵るだろう。それを想像しただけで勃起しそうだ。言われなくとも、俺は変態だ。
ともあれ、晴也との和解に成功した晶は、穏やかな幸福を噛みしめている。新聞にざっと目を通して、ベランダに射す光がオレンジ色になっていることに気づき、晴也に再開通したLINEを送ってみようと思いつく。
「こんにちは、今何してる?」
意外と早く既読がついた。
「洗濯取りこんでる」
「毎日洗濯するの?」
「今日はシーツだけ」
なるほど、晴也の家のベランダは広くないので、大きなものは別の日に分けないと干せないのだろう。
やり取りが止まる。彼が興味を持ってくれそうなネタは何か無いか。
「俺の持ってるダンスクラスのレッスン見に来ない? 来月末の発表会も見てやって」
「仕事の後に取手まで来いってか?」
「夕飯実家でご馳走するよ、何なら泊まってくれてもいい」
晴也は既読をつけてしばし沈黙する。
「ショウさんのご家族に会うのは微妙」
晶は微妙という言葉に受けて一人で笑う。晴也はいつもやたらに人目を気にする。晶の実家には今両親だけが暮らしているが、息子がゲイだと知っているし、彼氏と紹介されるのが嫌なら、友達で済ませておけばいいことだ。まあ何かと鋭い母にはバレるだろうが。
「じゃあレッスンが済んだらとっとと都会に帰る?」
晴也はOK、という文字を背負った可愛らしいペンギンのスタンプを送ってきた。新しいスタンプのようだ。
「明日でなくていいけどショウさんとこの犬が見たい」
意外な申し出だった。大歓迎だが、実家のラブラドールレトリバーは、原則スタジオには出入りさせない。毛が抜け落ちるからである。アレルギーを持つ生徒への配慮だ。
少し早く来てくれるなら、レッスンが始まる前に会わせてやろう。晶は考えながら、返事を晴也に送る。
「家のほうにいるので、家族に遭遇してもいいなら」
「挨拶くらいならいい、ありがとう」
動物が好きなのだなと思った。水族館でも、水中の生きものの説明板を熱心に読み、目を輝かせて水槽を見つめていた。終始楽しそうだったし、仲直り直後のデートコースに選んで良かったと晶は思っている。
そういえば、ショウさんの子どもは産めないなんて晴也はいきなり口にしたけれど、あれはどういう意味だったのだろうか。……女性と結婚して子を儲けるなどということは、ほぼ考えたことが無いのに、晴也からあんな風に言われると、変に意識してしまう。
2人で暮らすようになったら、ペットを飼おう。とても良い考えのような気がした。晶はまた少し、幸せ増しになった。晴也の周辺はまだ騒がしいので、彼がほっとして楽しくなるような時間を提供しよう。晶はひとつ伸びをして、自分も干している洗濯物を取り込むべく、立ち上がりベランダに出る窓を開けた。
ともあれ、晴也との和解に成功した晶は、穏やかな幸福を噛みしめている。新聞にざっと目を通して、ベランダに射す光がオレンジ色になっていることに気づき、晴也に再開通したLINEを送ってみようと思いつく。
「こんにちは、今何してる?」
意外と早く既読がついた。
「洗濯取りこんでる」
「毎日洗濯するの?」
「今日はシーツだけ」
なるほど、晴也の家のベランダは広くないので、大きなものは別の日に分けないと干せないのだろう。
やり取りが止まる。彼が興味を持ってくれそうなネタは何か無いか。
「俺の持ってるダンスクラスのレッスン見に来ない? 来月末の発表会も見てやって」
「仕事の後に取手まで来いってか?」
「夕飯実家でご馳走するよ、何なら泊まってくれてもいい」
晴也は既読をつけてしばし沈黙する。
「ショウさんのご家族に会うのは微妙」
晶は微妙という言葉に受けて一人で笑う。晴也はいつもやたらに人目を気にする。晶の実家には今両親だけが暮らしているが、息子がゲイだと知っているし、彼氏と紹介されるのが嫌なら、友達で済ませておけばいいことだ。まあ何かと鋭い母にはバレるだろうが。
「じゃあレッスンが済んだらとっとと都会に帰る?」
晴也はOK、という文字を背負った可愛らしいペンギンのスタンプを送ってきた。新しいスタンプのようだ。
「明日でなくていいけどショウさんとこの犬が見たい」
意外な申し出だった。大歓迎だが、実家のラブラドールレトリバーは、原則スタジオには出入りさせない。毛が抜け落ちるからである。アレルギーを持つ生徒への配慮だ。
少し早く来てくれるなら、レッスンが始まる前に会わせてやろう。晶は考えながら、返事を晴也に送る。
「家のほうにいるので、家族に遭遇してもいいなら」
「挨拶くらいならいい、ありがとう」
動物が好きなのだなと思った。水族館でも、水中の生きものの説明板を熱心に読み、目を輝かせて水槽を見つめていた。終始楽しそうだったし、仲直り直後のデートコースに選んで良かったと晶は思っている。
そういえば、ショウさんの子どもは産めないなんて晴也はいきなり口にしたけれど、あれはどういう意味だったのだろうか。……女性と結婚して子を儲けるなどということは、ほぼ考えたことが無いのに、晴也からあんな風に言われると、変に意識してしまう。
2人で暮らすようになったら、ペットを飼おう。とても良い考えのような気がした。晶はまた少し、幸せ増しになった。晴也の周辺はまだ騒がしいので、彼がほっとして楽しくなるような時間を提供しよう。晶はひとつ伸びをして、自分も干している洗濯物を取り込むべく、立ち上がりベランダに出る窓を開けた。
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