102 / 229
11 風雪
9-2
しおりを挟む
「福原、軽く食って帰らないか?」
終業時間になって、営業課の部屋にいる人々が皆帰り支度を始める中、早川が晴也に声をかけてきた。晴也はいささか驚きつつ、常識的に答えた。
「今日みたいな日でなくていいでしょ、店も早じまいするんじゃないですか」
早川は返事に詰まったが、続ける。
「ちょっと話がしたい」
「……俺が吉岡さんとデキてる件ですか?」
晴也は嫌味で返す。コミュ障の福原が取引先のホモらしい担当に迫られていて、そこそこ嬉しがっているという噂は、じわりと、しかし確実に拡散していた。今日も総務に用があって行くと、天河にそっと声をかけられた。
「吉岡さんが福原さんに迫ってるようには見えなかったけど、取引先の人だからって我慢しなくていいのよ……迷惑なら崎岡課長と人事に相談したら? 私も口添えするから」
晴也は晶の名誉のためにも、嫌なことは一切されていない(まあやや変態気味だが)し、彼とはどちらかというと話して楽しいと思っているから、と答えた。天河は心配そうな顔をしていたが、彼女の背後でにやにやしながらこちらを見る数人の顔が目に入ったのだった。
早川は晴也の目に攻撃的なものを見て、やや怯んだようだった。
「……それもある、おまえのためだ」
こいつは本当に要らぬお節介をする。晴也は忌々しく感じるのだが、それがいつも自分のための行動だということは理解しているので、強く言えないのだった。
「とにかく今日はゲームのイベントもあるから無理です」
「何時から?」
「10時半ですけど、いろいろ用意もあるんで」
晴也はパソコンをシャットダウンして、手早く帰る用意をした。早川に取りつく島も見せずに部屋を出て、足早にエレベーターに向かった。
終業時間になって、営業課の部屋にいる人々が皆帰り支度を始める中、早川が晴也に声をかけてきた。晴也はいささか驚きつつ、常識的に答えた。
「今日みたいな日でなくていいでしょ、店も早じまいするんじゃないですか」
早川は返事に詰まったが、続ける。
「ちょっと話がしたい」
「……俺が吉岡さんとデキてる件ですか?」
晴也は嫌味で返す。コミュ障の福原が取引先のホモらしい担当に迫られていて、そこそこ嬉しがっているという噂は、じわりと、しかし確実に拡散していた。今日も総務に用があって行くと、天河にそっと声をかけられた。
「吉岡さんが福原さんに迫ってるようには見えなかったけど、取引先の人だからって我慢しなくていいのよ……迷惑なら崎岡課長と人事に相談したら? 私も口添えするから」
晴也は晶の名誉のためにも、嫌なことは一切されていない(まあやや変態気味だが)し、彼とはどちらかというと話して楽しいと思っているから、と答えた。天河は心配そうな顔をしていたが、彼女の背後でにやにやしながらこちらを見る数人の顔が目に入ったのだった。
早川は晴也の目に攻撃的なものを見て、やや怯んだようだった。
「……それもある、おまえのためだ」
こいつは本当に要らぬお節介をする。晴也は忌々しく感じるのだが、それがいつも自分のための行動だということは理解しているので、強く言えないのだった。
「とにかく今日はゲームのイベントもあるから無理です」
「何時から?」
「10時半ですけど、いろいろ用意もあるんで」
晴也はパソコンをシャットダウンして、手早く帰る用意をした。早川に取りつく島も見せずに部屋を出て、足早にエレベーターに向かった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
87
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる