夜は異世界で舞う

穂祥 舞

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9 結花

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「……俺のを手コキするってこと?」
「手じゃ物足りないって言うなら口でしようか?」
「……っっ! わああっ、手でいいっ!」

 よし決まり、と言いながら晶は晴也のズボンを下着ごと一気に下ろしてしまった。下半身が頼りなくすかすかして、晴也は羞恥のあまりぎゃあっと叫ぶ。

「ハルさんはちんこまできれいで可愛いなぁ、感激」
「何言ってるんだこの変態! じろじろ見るなっ」

 風呂場以外で腰から膝までを他人に晒し、触らせようとしているなんて、恥ずかしくて死にそうだった。こんなことを異性相手であろうが同性相手であろうが、好き好んでやる人たちの気が知れない。

「ハルさん、恥ずかしいなら俺にしがみついて目を閉じていたらいい」

 晶は言って、晴也の両手を取り、自分の脇の下に通させる。晶の肩甲骨に触れ、鎖骨辺りに頬をつける姿勢になって、言われた通り目を閉じた。

「いきそうになったらひと声かけて、俺たぶんわかるけど」

 晴也は晶の服から匂う香りを鼻の中に入れながら、心臓が口から飛び出しそうなのを堪えた。温かい晶の左手が腰を優しく抱き、右手は硬く張りつめたものを包む。それだけで声が出てしまった。

「あ……っ」

 晶の手がゆっくり動く。微かに湿った音がして、所謂いわゆる先触れまで漏らしていたとわかり、晴也の顔に血が昇る。ああでも、ほんとに気持ちいい。手で擦られる度に、じわじわと身体の奥に快感が届き、晴也の体温を上げていく。

「ハルさん、オナニーどれくらいするの?」

 晶に耳許で囁かれて、気持ち良さが増幅した気がした。

「あ……しない……っ、あっ」
「しないってどういう意味?」

 晶は手を休めずに訊いて来た。そのままだ。最後に自慰をしたのは、大学3回生の時だったと思う。

「だってしたいと思わないから……っ」
「淡白過ぎないか?」

 晶が手に少し力を入れたので、思わず腰を折る。きゅっと握られて、逆にのけ反った。

「うあっ! は……あっ……」

 自分のものとは思えないいやらしい声が出て、晴也は恥ずかしくて晶にしがみついてしまう。

「じゃあこんなになるのはめちゃくちゃ久しぶりなんだ?」

 耳に唇で触れながら晶がからかうように問う。びりびりと快感が突き上げて来て、たがが外れてしまいそうだ。勝手に息が上がる。晶は緩急をつけ始めて、たまに先のほうを指でくいくい押して来た。

「ひゃっ! やめて、ああっ、出るから……っ!」
「これが好きなのかな、可愛い」

 晶の指の動きに脚の先まで痺れて、ひっ、と息を吸って止めた。くちゅくちゅと小さな音がして、晶の笑い声がそこに混じる。もう駄目だ、いかされてしまう。気持ち良過ぎて失神しそうだ。こいつは悪魔か。

「気持ちいい?」

 気持ちいい、と晴也は呆けたように答えてしまった。もう恥ずかしいなどと理性的に考えられない。身体が際限なく熱くなり、頭の中が白くなって来た。呼吸する度に勝手に声帯が音を出す。晴也は自分の喘ぐ声を、他人事のように聞いていた。

「ああ、あ……あっ、いくっ、で……るっ」
「いいよ、いつでもいってしまえ、ほんとに可愛いな」

 晴也の腕から力が抜けて、のけ反りそうになり、強い力で腰を抱き寄せられる。晶が切れ長の目に笑いを湛えて見つめてくる。ああ、この顔マジで好き。晴也は右手をゆるゆると上げてその頬に触れた。晴也の指先は熱を帯びていた筈だったが、晶の頬は熱かった。晴也はぱくぱくと唇を動かす。彼の名を呼んだつもりだったが、ああ、という喘ぎしか出なかった。

「……晴也」

 低い囁きが聴覚を揺らした瞬間、全身の毛穴から炎が吹き出したような気がした。我慢し切れず放尿してしまうのに似た強い快感に、腕に鳥肌が立つ。晴也は小さく叫んで、身体をびくびく震わせた。

「ああっ、おしっこ漏らしたっ……」

 強く抱きしめられて、背中を撫でられる。

「はい、上手にいけました、沢山出たけどおしっこじゃないよ」
「あ……う」
「じっとしてて、拭くから」

 いつの間に用意したのか、晶はティッシュで晴也のものを優しく包み、後始末をしてくれる。なされるままになりながら、晴也は脱力し呼吸を整えようとした。まだ何も考えられず、ただ手際の良い晶の行動を見つめるだけである。
 着ているものまできちんと整えられて、晴也は晶の腕の中に収まる。まるでそうするのが当然のようだった。

「あー……ハルさん可愛過ぎる」

 晴也はくすぐったい思いでその言葉を聞いていたが、自分の脚に硬いものが当たっていることに気づく。ちらっと下を見ると、晶が真面目な口調で言った。

「おかげ様でガチでちんこがちました」
「あ、すごい」

 しかしこれはどう始末をつけるのだろうか? 晶は晴也から腕を解いて、布団を持ち上げた。

「ちょっと抜いてくる」

 温もりが逃げるのが寂しい。咄嗟に晴也は彼の服の裾を掴んだ。子どもに言うように、彼は訊いてきた。

「……どしたの?」
「手伝う」

 晶は少し静止してから布団の中に再度身を横たえた。晴也はまずいことを言ったとやや後悔したが、自分だけ気持ちよくなってとっとと昇りつめたのが申し訳ないので、つい言葉が出たのだった。
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