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6 逡巡
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晶は律儀にも、スマートフォンの充電の許可を晴也に乞うて来たが、朝から彼のそれはぶんぶんとひっきりなしに着信を告げていた。電話ではないようだったが、晶は何故か確認せず放置していた。
晴也は踏み台の上に掛けて、晶と朝食を摂っている自分を、納得いかないながらもふわふわした気分で受け止めていた。晶は晴也より先にベッドから出て身支度をし、もたもたしている晴也をよそに朝食の用意を始めた。冷蔵庫の中身を好きに使っていいと告げると、彼はトーストと紅茶の他に、ベーコンエッグと、キャベツとミニトマトのサラダを小さな食卓に並べてくれた。
晴也もようやく自分のスマートフォンに着信があることに気づいた。動物会議のグループLINEに、ユウヤからの告知があった。
「おはようございます! 本日のルーチェの舞台はショウのバースデイパーティを兼ねておりますが、めぎつねのおふたりはお越しになりますか?」
「先ほど店から予約満席の連絡が来たので、来てくださるなら2席ねじこみまーす」
晴也はハムスターが語る二つの吹き出しを見て、えっ! と叫んだ。
「ショウさん、誕生日なのか?」
マーガリンを塗ったトーストを食べていた晶は、うん、と何でもないように頷いた。
「今日?」
「うん」
その時、美智生からメッセージが来た。
「おはようございます、マジですか、でも今日は強制参加の忘年会があるので残念ですが休みをいただきます。ショウハピバ」
ショーパブに通うのを休むと表現する辺り、如何に美智生が通い詰めているのかが察せられ、笑えた。晶は自分が話題になっていることも知らずに、問う。
「何の連絡?」
「ユウヤさんがミチルさんと俺に今日来るのかって……ショウさんのバースデイパーティだから」
晶はマグカップを手に首を傾げた。
「ダンスはそんな内容じゃないけど」
「じゃあ終わった後に何かあるんだろ?」
そうかな、と晶は他人事のように言った。晴也は冷めた晶の態度がよくわからなかった。誕生日とは祝うものだし、祝ってもらうと嬉しいものではないのか?
「言ってくれたら何か用意できたのに」
晶は晴也の言葉にやけに嬉しげな、蕩け目の顔になった。晴也は彼のこの表情に弱いとようやく悟る。
「いや……いつも図々しい態度取るくせに、そこは違うんだなと」
「え、図々しい態度なんか取ってるかな……俺的にはこの歳で誕生日アピールのほうが、余程図々しくて痛いと思うんだけど」
今度は晴也が首を傾げた。こいつはどうも、一般人と感覚がズレている。
「でもハルさんと一夜を過ごせた上にそんな風に言ってもらえて、ここ数年で最高の誕生日だ」
「……一夜を過ごしたとか言うな、一緒に寝ただけだろ」
晴也は赤くなりそうな顔を見られないように、目玉焼きに箸を入れて俯いた。黄身がとろりとはみ出して、美味しそうだ。
「ちょっとハルさんの希望をすっ飛ばしてしまったけど、順調な交際だと思わない?」
「思うか、てか交際じゃない、これは事故」
晶の明るい口調に冷や水を浴びせておく。卵を口に入れると、晶が眼鏡越しにじっとりと見つめてきた。
「じゃあ今からユウさんと美智生さんに、今俺がハルさんの部屋に居るって報告してみようか?」
晴也は思わずやめろ、と小さく叫んだ。
「誤解されるだろうがっ!」
「誤解じゃないだろ、触れ合ったり抱き合ったりしたのは俺のエロい夢だったのかなぁ?」
ああもう。晴也は箸を置いて、両手で顔を覆った。何でこんなことになったんだろう?
晴也は踏み台の上に掛けて、晶と朝食を摂っている自分を、納得いかないながらもふわふわした気分で受け止めていた。晶は晴也より先にベッドから出て身支度をし、もたもたしている晴也をよそに朝食の用意を始めた。冷蔵庫の中身を好きに使っていいと告げると、彼はトーストと紅茶の他に、ベーコンエッグと、キャベツとミニトマトのサラダを小さな食卓に並べてくれた。
晴也もようやく自分のスマートフォンに着信があることに気づいた。動物会議のグループLINEに、ユウヤからの告知があった。
「おはようございます! 本日のルーチェの舞台はショウのバースデイパーティを兼ねておりますが、めぎつねのおふたりはお越しになりますか?」
「先ほど店から予約満席の連絡が来たので、来てくださるなら2席ねじこみまーす」
晴也はハムスターが語る二つの吹き出しを見て、えっ! と叫んだ。
「ショウさん、誕生日なのか?」
マーガリンを塗ったトーストを食べていた晶は、うん、と何でもないように頷いた。
「今日?」
「うん」
その時、美智生からメッセージが来た。
「おはようございます、マジですか、でも今日は強制参加の忘年会があるので残念ですが休みをいただきます。ショウハピバ」
ショーパブに通うのを休むと表現する辺り、如何に美智生が通い詰めているのかが察せられ、笑えた。晶は自分が話題になっていることも知らずに、問う。
「何の連絡?」
「ユウヤさんがミチルさんと俺に今日来るのかって……ショウさんのバースデイパーティだから」
晶はマグカップを手に首を傾げた。
「ダンスはそんな内容じゃないけど」
「じゃあ終わった後に何かあるんだろ?」
そうかな、と晶は他人事のように言った。晴也は冷めた晶の態度がよくわからなかった。誕生日とは祝うものだし、祝ってもらうと嬉しいものではないのか?
「言ってくれたら何か用意できたのに」
晶は晴也の言葉にやけに嬉しげな、蕩け目の顔になった。晴也は彼のこの表情に弱いとようやく悟る。
「いや……いつも図々しい態度取るくせに、そこは違うんだなと」
「え、図々しい態度なんか取ってるかな……俺的にはこの歳で誕生日アピールのほうが、余程図々しくて痛いと思うんだけど」
今度は晴也が首を傾げた。こいつはどうも、一般人と感覚がズレている。
「でもハルさんと一夜を過ごせた上にそんな風に言ってもらえて、ここ数年で最高の誕生日だ」
「……一夜を過ごしたとか言うな、一緒に寝ただけだろ」
晴也は赤くなりそうな顔を見られないように、目玉焼きに箸を入れて俯いた。黄身がとろりとはみ出して、美味しそうだ。
「ちょっとハルさんの希望をすっ飛ばしてしまったけど、順調な交際だと思わない?」
「思うか、てか交際じゃない、これは事故」
晶の明るい口調に冷や水を浴びせておく。卵を口に入れると、晶が眼鏡越しにじっとりと見つめてきた。
「じゃあ今からユウさんと美智生さんに、今俺がハルさんの部屋に居るって報告してみようか?」
晴也は思わずやめろ、と小さく叫んだ。
「誤解されるだろうがっ!」
「誤解じゃないだろ、触れ合ったり抱き合ったりしたのは俺のエロい夢だったのかなぁ?」
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