緑の風、金の笛

7 えんそうかい

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　翌日も朝から絵を描いたり本を読んだりしている間に時計の針が回り、ピアノの練習を止めた伯母がサンドウィッチを作ってくれた。

「1時になったら伯父さんを迎えに行くんだけど、駅まで一緒に来る？」
「えーっと……」

　伯母に訊かれ、奏人は迷う。帯広と全く違う風景の中をドライブするのは楽しい。でもピアノの練習をするか、絵を描くかしたい気もする。

「留守番してるよ」
「わかった、じゃあかなちゃんがいるから好きな時に来てって奏大くんに言ってもいいかしら？」

　うん、と奏人は頷く。伯母が伯父に会うのも久しぶりだから、積もる話にお邪魔したくないと思ったのもあった。

「奏大くん以外誰も来ないと思うけど、インターフォンが鳴ったら誰か確認してから開けてね……知らない人なら放っておいていいわよ」

　小さい子じゃないのにと思いつつ、奏人は伯母の言葉にもう一度うん、と答えた。こういうところは子供扱いされるんだなと思うと、少し可笑しい。
　伯母は自動車を出して穂高駅に行った。奏大のアルバイトは今日13時半に終わるらしく、そのままここに来れば、買い物をする伯母より早いことになる。奏大と何をしようかと考えると、奏人は大切な本番を前にしているにもかかわらず、うきうきするのだった。
　フルートを手にする奏大の後ろ姿は、昨日楽器に触らせてもらったおかげで、会心の出来になった。伯母にもまだ見せていないので、奏大と伯父が揃ったところで公開しようと思う。
　フォーレの演奏は、緊張で食欲が無くなったり、お腹が膨れて良い演奏が出来なかったり（特に吹奏楽器の奏大が）しては良くないので、夕食の前にすることになっている。
　何か僕だけいろいろ忙しいなぁ、と奏人は首を傾げ、とりあえず漫画を片づけた。