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3 7月下旬
深夜二時のメッセージ②
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泰生はどきどきしながら、2つのメッセージを続けて送った。するとすぐに既読がついたが、旭陽は沈黙する。泰生は2時を過ぎたスマートフォンの時計を見て、ふと友樹の寝ているほうに光が向いてはいけないと思い、ベッドの上で身体の向きを変えた。
何分か過ぎると、新しい吹き出しが、旭陽のメッセージを載せて次々と現れた。
「こんな時間にほんとにごめん。まさか起きてると思ってなくて、めちゃくちゃびっくりした(笑)」
「実はあの時、長谷川も俺と同じ気持ちでいてくれてると勝手に思い込んでて(ごめん)、その分ショックで、友達としてなら交際できるって何やねんって腹立ったし、もしかしたら言いふらされて周りにゲイバレするかもしれんと思って、怖くなった」
「長谷川が言いふらしたりするわけないのにな。そんで、長谷川の退部願を4回生が受け取ったって聞いて、もうどうしたらいいかわからんくなった」
「友達でいいからって言おうとしたけど、もう遅すぎた。こんなしょうもない俺を許してくれとは言わん。自己満足や。でも、ほんまにごめん」
堰を切ったような旭陽の告白は、泰生の胸を抉った。やっぱり俺が、井上の手を振り払ってしもた。俺がもう少し、冷静にあいつの話を聞いてたら。
泰生の視界が、軽い絶望でじわりと滲んだ。もう遅過ぎるのかもしれない。でもこうして、正直な思いと謝罪をぶつけてくる旭陽に、自分も謝ることだけはしておきたかった。泰生は迷いながら、指を動かす。
「ありがとう。俺のほうこそごめん。たぶん引きとめられた日に、もっとちゃんと話をするべきでした。俺は今でも井上と友達でいたいと思ってる。でも、それは井上を苦しめることかとも思います。だから、どうしたら一番いいのかよくわかりません」
泰生はひとつ深呼吸してから、舞台の上で最初の音を出すとき以上の緊張感をもって、送信ボタンを押した。
泰生が送った大きな吹き出しの下に、既読の文字がすぐに現れた。3分ほど経って、ぴょこんと新しいメッセージがやってきた。
「ありがとう。何か嬉しくて涙止まらんし、言葉にならへんからまた明日でいいやろか」
泰生はすぐに、OKの文字を掲げるうさぎのスタンプを送った。すると今度はすぐに、吹き出しが現れる。
「長谷川いっつも気遣いのひとで優しいから好き。ごめん。おやすみ」
よく考えると、こんな時間にメッセージを送りつけてきて、自分からおやすみはないだろうという感じなのだが、今の泰生には許すことができた。おやすみ、と返すと、身体から力が抜けた。
スマートフォンをコンセントに繋ぎ直した泰生は、ベッドの上に大の字になり、ひと息ついて目を閉じた。右の目尻から温かい水がこぼれて、頬を伝った。
旭陽の取った冷たい態度が、吹奏楽部を辞める決心につながったことは、今後誰にも言わない。吹奏楽部に所属することと、旭陽と友達でいることとは、別の話だから。今やっと、そう言うことができる自分を見出した泰生だった。
何分か過ぎると、新しい吹き出しが、旭陽のメッセージを載せて次々と現れた。
「こんな時間にほんとにごめん。まさか起きてると思ってなくて、めちゃくちゃびっくりした(笑)」
「実はあの時、長谷川も俺と同じ気持ちでいてくれてると勝手に思い込んでて(ごめん)、その分ショックで、友達としてなら交際できるって何やねんって腹立ったし、もしかしたら言いふらされて周りにゲイバレするかもしれんと思って、怖くなった」
「長谷川が言いふらしたりするわけないのにな。そんで、長谷川の退部願を4回生が受け取ったって聞いて、もうどうしたらいいかわからんくなった」
「友達でいいからって言おうとしたけど、もう遅すぎた。こんなしょうもない俺を許してくれとは言わん。自己満足や。でも、ほんまにごめん」
堰を切ったような旭陽の告白は、泰生の胸を抉った。やっぱり俺が、井上の手を振り払ってしもた。俺がもう少し、冷静にあいつの話を聞いてたら。
泰生の視界が、軽い絶望でじわりと滲んだ。もう遅過ぎるのかもしれない。でもこうして、正直な思いと謝罪をぶつけてくる旭陽に、自分も謝ることだけはしておきたかった。泰生は迷いながら、指を動かす。
「ありがとう。俺のほうこそごめん。たぶん引きとめられた日に、もっとちゃんと話をするべきでした。俺は今でも井上と友達でいたいと思ってる。でも、それは井上を苦しめることかとも思います。だから、どうしたら一番いいのかよくわかりません」
泰生はひとつ深呼吸してから、舞台の上で最初の音を出すとき以上の緊張感をもって、送信ボタンを押した。
泰生が送った大きな吹き出しの下に、既読の文字がすぐに現れた。3分ほど経って、ぴょこんと新しいメッセージがやってきた。
「ありがとう。何か嬉しくて涙止まらんし、言葉にならへんからまた明日でいいやろか」
泰生はすぐに、OKの文字を掲げるうさぎのスタンプを送った。すると今度はすぐに、吹き出しが現れる。
「長谷川いっつも気遣いのひとで優しいから好き。ごめん。おやすみ」
よく考えると、こんな時間にメッセージを送りつけてきて、自分からおやすみはないだろうという感じなのだが、今の泰生には許すことができた。おやすみ、と返すと、身体から力が抜けた。
スマートフォンをコンセントに繋ぎ直した泰生は、ベッドの上に大の字になり、ひと息ついて目を閉じた。右の目尻から温かい水がこぼれて、頬を伝った。
旭陽の取った冷たい態度が、吹奏楽部を辞める決心につながったことは、今後誰にも言わない。吹奏楽部に所属することと、旭陽と友達でいることとは、別の話だから。今やっと、そう言うことができる自分を見出した泰生だった。
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