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ふたたび12月 4
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日本橋のデパートの食料品売り場は、年始のごちそうの買い出しの客でごったがえしていて、外の寒さを忘れさせた。奏人は暁斗にぴったり寄り添って、楽しげに刺身や焼き鯛を眺めている。
「おせち料理は母が用意してくれる、今夜と明日食べるものだけでいいよ」
実家の母の熱いコールに抗えず、年明けに奏人を立川に連れて行く約束をしてしまった。抜かりない乃里子は、暁斗に連絡すると同時にメールで奏人を誘っていた。
「嬉しいな、暁斗さんの家でお正月らしく過ごせるなんて」
「おせち料理はたぶん買ってきたやつだ、過剰に期待しないで」
料理上手な奏人も、流石におせち料理は作らないだけに、期待値が高いようである。
「手ぶらで行く訳にはいかないね、何を持っていこうかな……」
古風な家に育った奏人は、金箔入りの酒の一升瓶や毛蟹、一盛り数万円の果物セットを物色する。暁斗は仰天した。
「そんなのいい、高級過ぎて口に合わないよ、お菓子か何かで……」
「お父様もお菓子でいいの?」
「多少は飲むけど……」
奏人は店員に勧められた日本酒の限定飲み比べセットと、有名店の高級果物ゼリーを買った。普段の買い物は極めて庶民的な彼だが、人に贈るものの値段をあまり気にしないのは、育ちだけではなく、水商売の人の感覚なのかも知れなかった。
年越しそばと切り餅、野菜や肉も少し手に入れて、デパートの中の喫茶店に落ち着く。
「実はにしんそばを食べないかって誘われたんだけどね」
奏人は昨夜、ディレット・マルティールの最終出勤を終えた。得意客の梨園の男性は、京都の南座の初芝居のために旅立つ前に、奏人を指名した。その時にそんな声をかけられたらしかった。
「海老天でよかったから丁重にお断りした」
「俺にしんそば食べてみたいな」
複雑な気持ちをごまかす暁斗の言葉に、奏人はくすっと笑った。
「関西はだしが違うもんね、いつか食べに行こうよ」
奏人はいい顔をしていた。少し疲れが目許に浮かんでいるものの、憑き物が落ちたようなすっきりした表情である。卒業を発表してから昨日までに、ほぼ全ての得意客に挨拶を済ませた。年が明けたら、同僚たちがお疲れ様パーティを開いてくれるのだという。
「僕もこれまで沢山のスタッフを見送ったけど、遂に自分が見送られるんだなあって」
「そうか……やっぱり年末や3月に辞める人が多いの?」
「うん、年が明けたら2月に1人……隆史と、3月に1人の卒業が決まってる」
隆史の退職は、山中から聞いて知っていた。卒業式の前から、就職する会社の研修が始まるらしかった。
「新しい子は採用しないのかな」
「考えてないんだって……あの事件が綾乃さんや母団体にかなりこたえたみたいで、少し規模を縮小して、今いるメンバーで信用を取り戻す気なんじゃないかな」
新人の研修まで手伝っていた奏人の卒業は、痛手だろう。それにこの間神崎は、ディレット・マルティールと母団体の関係を勘ぐられていると言った。売り上げがNPOに流れていると言われでもしたら、結構なスキャンダルになる。それも警戒しているのかもしれない。
ゆっくりコーヒーを飲み、相談室のメンバーでの忘年会や、営業課の忘年会の話をしてから、暁斗は時計を確認して奏人を促した。彼の持っていた、着替えの入ったバッグを持つ。華奢な彼が両手をいっぱいにしているのが、少し痛々しかったからだ。彼は初め遠慮したが、すぐはにかんだ笑顔になり、俯き加減で礼を言った。
年越しは楽しいイベントだった。奏人は暁斗の家に今日から2泊して、立川に来てくれる予定である。実家に泊まることは、奏人は固辞した。2月にアメリカに発つのでなければ、お正月にお邪魔するだけでも図々しいよ、と彼は笑った。
電車は、里帰りをする人で混雑していた。と言ってもほとんどが、これから東京を離れる様子だった。荷物が多いので、大森に着くと、一度マンションに戻ることにした。
「お酒は後で買おう」
「何年か後も同じようなことになるのかな」
奏人は笑いながら言った。彼がアメリカから帰国した時は、暁斗の許に戻ってくるのだ。きっとその時は、大きなスーツケースを転がしているのだろう。
「いや、もっと大変なんじゃないかな」
暁斗が鍵穴に鍵を入れながら言うと、奏人はそうだよね、と笑った。玄関で靴を脱ぎながら、この部屋では奏人を迎えるには狭いなと思う。しかし奏人が戻ってきてから、暮らす場所を彼と決めたい気がする。
「わ、台所ぴかぴか……暁斗さんすごい」
奏人は部屋に入るなり言った。昨日一昨日と、2日かけて大掃除をした。ここで暮らし始めて、最も年末の掃除を丁寧にやった。
「気合い入れて掃除したんだ……ゆっくりしてて、お酒買ってくる」
「僕も行くよ」
奏人は勝手知った冷蔵庫に食料を入れる。そんな姿を見ているだけで、暁斗は幸せである。つい彼を抱きしめに行ってしまう。
「……もうこれからいちゃいちゃし放題だね」
腕の中の奏人は耳元で囁いた。どきっとした。
「我ながら頑張って我慢したなと思って」
軽く口づけされて、部屋が寒いにもかかわらず暁斗の顔が熱くなる。奏人の黒い瞳に、暁斗をからかう光が浮かんだ。
「そんな顔されたら、年越しそばを食べる前に一度いかせたくなるよ」
言われて暁斗は、そうしてくれてもちっとも構わないと思いつつ、理性を立て直した。
「……その前にお酒買いに行こう」
奏人は素直にうん、と言って暁斗の腕からするりと逃れたが、すぐにその左手で暁斗の右手を握った。子どものお使いのように、手を繋いだまま玄関を出ると、早い夕暮れの光が辺りを包み、一瞬知らない場所に来たような気がした。……いちゃいちゃし放題。本当にそんな日が訪れて、暁斗はそのための心構えが全くできていない自分に気づく。
天ぷらそばだけでは足りないだろうと、きのこや山菜の入った炊き込みご飯を作り、2人で食卓を囲んだ。マンション内でも里帰りをする人が多いので、出入りの音も少なく、静かである。それだけに暁斗にとって、部屋で奏人と2人でいるという事実が、いつになく胸に沁みる。
「蓉子さんと新婚さんの頃も、そんなそわそわしてたの?」
奏人は急須で茶を湯呑みに注ぎながら、笑い混じりに訊いてきた。その所作が美しくて見惚れた。
「そわそわしてるように見えるかな、……昔もしていたのかも知れない」
嘘ではなかった。結婚した時、暁斗は実家を出て暮らすのが初めてだった。蓉子と一緒に生活を始めて、家に戻ると彼女が出迎えてくれることや、朝目覚めると彼女が傍にいることにときめいた。でも今の気持ちとは少し違う気もする。
「あの頃が嬉しかった、だとしたら……今はめちゃくちゃ嬉しいって感じ」
我ながら上手く表現できたと暁斗は思ったが、奏人は小さく笑った。
「暁斗さん可愛い」
言われて暁斗は、微妙な気分になる。
「奏人さんは嬉しくないの?」
「……むしろ戸惑ってる感じ」
「何に?」
暁斗は先月鎌倉へ行った時、奏人が自分のことを話したい気持ちを抑制しようとすることに気づいた。だからそんな時は、彼が話しやすいようにしようと思っている。必要以上に言葉を募らなくてもいいとは思うが、好きな人には自分のことを話したいものだ。奏人に自覚があるかはわからないのだが、自分をその対象にしてくれているらしいことが嬉しい。
「……遂に暁斗さんだけのものになる環境が整ったこと……」
「不安?」
奏人は目を見開き、小さく首を横に振った。
「嬉しいんだよ、ただ気持ちの整理がつかないまんま、ほんとにこんな日が来たから」
「まず環境に慣れることから入ればいいよ、転職したと思って」
「これは転職なの?」
暁斗の言葉に笑ってから、奏人はいつものように、いただきます、と両手を合わせて言った。暁斗も笑い、それに倣った。少し値が張っただけに、コシの強いそばは美味しかった。大きな海老天の衣も、さくさくしている。
「美味しい」
暁斗が思わず言うと、奏人は少し箸を止めて微笑んだ。
「暁斗さんってよく食べてよく寝て……あっちは淡白だけどいつも幸せそうだから、何だか人の営みの尊さを感じさせてくれるよね」
暁斗は返事に困り、大げさだなぁと応じた。
「奏人さんはどちらかと言うと左脳を使ってる人だから、俺みたいなのはそれこそ犬といるみたいで面白いだろ?」
「自虐的だね、確かに面白いし癒される」
「……じゃあ俺が奏人さんに癒しを感じてるのは何なのかな」
奏人はうーん、と首を捻った。そして箸をテーブルに置き、胸の前で両手の人差し指と親指でハートの形を作り、言った。
「愛?」
暁斗は箸を持ったまま吹き出した。その仕草が可愛らしくて悶絶しそうだった。
「どうして笑うの?」
「いや……」
唇を尖らせる奏人には申し訳なかったが、想定外の返答が新鮮過ぎたし、受けを狙っている訳でもないところが愛おしかった。
「そうだな、そういうことなのかな」
「たぶんそうだよ」
何となく可笑しみのある空気の中、そばと香ばしいご飯を食べる。ただ一緒に食事をすることの幸福を、暁斗は噛みしめた。
暁斗は営業の話題のために、テレビのチャンネルをたまに替えながら紅白歌合戦を観ていたが、奏人はそんな落ち着きのない暁斗の行動を気にする様子もなく、缶ビールに口をつけながら本を読んでいた。奏人は余程興味をそそられる内容でなければ、ニュース以外はテレビを観ないらしかった。一緒に暮らすにあたり、大きなテレビは要らないなと暁斗は考える。
「佐々木さんに記事を使わせてもらう許可を得たよ、直して欲しいところも伝えて、たぶん年明けには出してくれそう」
民放でCMが始まると、奏人は言った。西澤遥一の追悼本の話であることは、すぐにわかった。
「編集をしている人たちは反対しなかったのか」
「うん、多少疑問の声も出たけれど、そのほうが面白いっていう意見が勝ったよ」
西澤の弟子たちは、師匠の洒落っ気を皆良く理解しているらしかった。暁斗は蓉子に頼んで、西澤が監修したツアーを企画した人と繋いでもらった。担当者は初め、そんなところに書くなんてと尻込みしていたようだが、奏人が校正の責任を持つと言って説き伏せた。
「先生が通っていた教会の神父さんの文章が面白くて、先生方が驚いてて……当たり前なのにね、カトリックの神父って神学院とかでめちゃ勉強してるし、説教だけでなくしょっちゅう文章を求められるのに」
「そうなんだ」
「そうだよ、中世から聖職者は知的存在の頂上にいるんだよ……お母様風に言えば、それによって民衆を洗脳するのが彼らの仕事だからね」
乃里子の発した洗脳という表現を、奏人は気に入っている様子だった。
「僕が出発するまでに校正が終わりそうだから、安心して行ける」
奏人は穏やかに言うが、本の完成に最後まで携われないし、自分の誕生日の前日に行われるであろう、西澤の逝去1周年のミサにも出られない。やむを得ないことなのだろうが、奏人にしては非情な決断をしたのだなという思いが、暁斗にはあった。
「暁斗さんの相談室のニューズレターも送って」
「2月号からデータ化しようと決まったんだ、メールに添付できるよ」
「うん、ありがとう」
奏人はふわりと笑う。出会った頃から、暁斗の好きな表情である。2人のビールが空くと、暁斗は柿の種と新しい缶を出すべく、ダイニングに向かった。奏人は西澤の追悼本に何を書いたのだろう? 暁斗の胸に、やや複雑な色合いの興味が湧く。
奏人は3本目のビールが空く頃に、本を閉じてあくびを噛み殺した。暁斗はその表情が可愛らしくて、つい笑う。
「あくびくらい思い切りしたらいい」
「……退屈なんじゃないよ、寛ぎ過ぎちゃって」
「わかってる、もう少ししたらお風呂を溜めよう」
暁斗はすぐ傍に奏人がいることを確認したくて、その細い肩に手を置いた。奏人はきれいな形の眉のすそを下げ、申し訳なさそうな顔になった。これまでならこの時間は、客と別れて自宅に戻り、夕食を済ませたくらいなのだろうが、今夜は夕飯も飲み始めたのも早かった。大晦日だからと言って夜更かししなくてはならない訳ではない。奏人は3日間勉強から離れると言ったが、毎日睡眠時間を削っているに違いなかった。立川に行けばそれなりに気を遣って疲れるだろうから、今夜と明日一日は奏人をのんびりさせてやりたかった。
奏人が湯を使う間にベッドを整えて、飲み食いしたものを片づけた。暁斗は自分も風呂の用意をしながら、何となくそわそわする自分を可笑しく思う。自分のスマートフォンにも、会社のものにもメールが来ていないことを確認すると、奏人がドライヤーを使う音がしてきた。髪を乾かしたままにした彼は、服を抱えて洗面室から出てきて、お先でしたと折り目正しく暁斗に言う。
「洗濯物はかごに入れておいて、明日も天気がいいみたいだから洗濯機回すよ」
はい、と奏人は丁寧に答える。彼が泊まりに来て、こうして先に湯を使って出てくるのを見るのは初めてではないのに、何となく暁斗はどぎまぎする。
「眠いだろ、先に休んで」
「ありがとう」
歯を磨いた暁斗が浴室に入ってすぐに気づいたのは、奏人が夜の仕事の日に纏ってくる甘い香りだった。暁斗は髪を洗いながら、奏人と出逢って1年になるのかと改めて思う。平均して月に1度だけ会い、一緒に暮らそうと決めるなんて、早過ぎるのではないのか。今更暁斗は考えていた。後悔したり、不安に思ったりはしていない。ただ、不思議で仕方がなかった。
暁斗はどちらかと言うと、仕事で追い込まれた時は別だが、何でもすぐには決められない。蓉子との交際も長かったし、お互いを十分に理解してから結婚して良かったと思っていた。奏人は一緒に暮らそうと言った時に喜んでくれたが、戸惑いを口にする辺り、彼にも似た思いがあるのかも知れない。
長めに湯に浸かり浴室から出ると、寝室に入ったらしく、奏人の姿は無かった。テレビをつけると、紅白歌合戦がちょうど終わろうとしていて、出演者が蛍の光を合唱していた。リビングの明かりとエアコンを消し、寝室を覗くと、明かりをつけたまま奏人がベッドに横になっている。枕元の棚のコンセントには、奏人もスマートフォンを充電できるように二股ソケットをつけたが、その片方からコードが伸びていた。それを見て一緒に暮らしている気になる自分が可笑しい。
「あ、暁斗さん……」
「いいよ、寝ていて」
奏人は暁斗がベッドに上がると、目を覚ました。スマートフォンを充電し、部屋の明かりを落とす。毛布と布団を持ち上げると、奏人の温もりが伝わってきて、甘い匂いが暁斗の鼻腔をくすぐる。それに埋もれるべく、布団に潜り込んだ。
「寒くない?」
「大丈夫……」
奏人は身体を暁斗に寄せた。柔らかくて良い香りのする髪を持つ、不思議な生き物。暁斗はその腕に触れる。
「……ほんとに2人だね」
奏人に言われて、暁斗はうん、と応じた。
「暁斗さんと出会って……1年と4日」
「たったの1年なんだね」
「うん、いろいろあったから……もっと長く付き合ってる感じがする」
暁斗は奏人の頬に唇を寄せた。今そうするのが当たり前のように思えた。柔らかく、温かい。奏人は少し肩を竦めてじっとしていたが、すぐに唇を重ねてきた。優しい口づけだった。
「……1年どうもありがとう」
奏人は小さく言った。愛おしさが暁斗の胸に溢れる。奏人は少し間を置いて、あ、と顔を上げた。
「鐘の音が聴こえる」
「え?」
暁斗も耳を済ませた。すると、微かに低い音が、余韻をたなびかせながら耳に届いた。
「お寺があるんだね」
「ごめん、今までほんとに知らなかった」
「この辺りならあってもおかしくないかな」
鐘の音は、規則正しく間隔を置いて聴こえてくる。二人してその音に聴き入った。奏人はそっと暁斗の脇の下に腕を入れ、背中に手を回してきた。暁斗も華奢な背中を優しく抱き、肌の温もりを楽しんだ。互いに何も言わずに、ただ鐘の音に耳を済ませる。
「……終わった?」
音が止まったようだった。奏人を見ると、その長い睫毛から覗く瞳に笑いが浮かんだのが、薄暗い中でもわかった。
「あけましておめでとう」
奏人は小さく、しかしはっきり言った。暁斗も頬が緩むのを自覚しながら、あけましておめでとう、と返した。次の瞬間、唇がそっと塞がれた。暁斗はすぐに夢見心地になり、奏人の唇の感触を堪能する。暖かいもので、胸がいっぱいになった。
「今年も……これからもよろしくお願いします」
唇が離れると、奏人は囁いた。暁斗は腕に力をこめて、細い身体を抱きしめる。奏人への愛情が熱く込み上げ、思いが上手く言葉に出来なかった。
「こちらこそ……ずっと、長いこと、よろしく」
うん、ずっとだよ、大好き。奏人のくぐもった、しかし喜びに溢れた静かな声がした。天使の約束の声だった。
一年前、暁斗はこれから自分がどうなってしまうのか、不安で仕方なかった。今は違う。きっとこれから奏人と歩く日々は、予想もしないことが次々に起こるのだろうが、むしろ楽しみなくらいだ。
奏人と過ごす時間は、もうすぐ一度途切れてしまう。でも彼は自分の許に戻ってきてくれるのだから、嘆くことはないのだ。
見つけたのだから。決めたのだから。一番大切なものを、能う限り守り支えて生きて行くと。――暁斗の新しい毎日が、今から始まる。愛するひとの姿が傍にあることを、五感の全てで感じる日々が。
「おせち料理は母が用意してくれる、今夜と明日食べるものだけでいいよ」
実家の母の熱いコールに抗えず、年明けに奏人を立川に連れて行く約束をしてしまった。抜かりない乃里子は、暁斗に連絡すると同時にメールで奏人を誘っていた。
「嬉しいな、暁斗さんの家でお正月らしく過ごせるなんて」
「おせち料理はたぶん買ってきたやつだ、過剰に期待しないで」
料理上手な奏人も、流石におせち料理は作らないだけに、期待値が高いようである。
「手ぶらで行く訳にはいかないね、何を持っていこうかな……」
古風な家に育った奏人は、金箔入りの酒の一升瓶や毛蟹、一盛り数万円の果物セットを物色する。暁斗は仰天した。
「そんなのいい、高級過ぎて口に合わないよ、お菓子か何かで……」
「お父様もお菓子でいいの?」
「多少は飲むけど……」
奏人は店員に勧められた日本酒の限定飲み比べセットと、有名店の高級果物ゼリーを買った。普段の買い物は極めて庶民的な彼だが、人に贈るものの値段をあまり気にしないのは、育ちだけではなく、水商売の人の感覚なのかも知れなかった。
年越しそばと切り餅、野菜や肉も少し手に入れて、デパートの中の喫茶店に落ち着く。
「実はにしんそばを食べないかって誘われたんだけどね」
奏人は昨夜、ディレット・マルティールの最終出勤を終えた。得意客の梨園の男性は、京都の南座の初芝居のために旅立つ前に、奏人を指名した。その時にそんな声をかけられたらしかった。
「海老天でよかったから丁重にお断りした」
「俺にしんそば食べてみたいな」
複雑な気持ちをごまかす暁斗の言葉に、奏人はくすっと笑った。
「関西はだしが違うもんね、いつか食べに行こうよ」
奏人はいい顔をしていた。少し疲れが目許に浮かんでいるものの、憑き物が落ちたようなすっきりした表情である。卒業を発表してから昨日までに、ほぼ全ての得意客に挨拶を済ませた。年が明けたら、同僚たちがお疲れ様パーティを開いてくれるのだという。
「僕もこれまで沢山のスタッフを見送ったけど、遂に自分が見送られるんだなあって」
「そうか……やっぱり年末や3月に辞める人が多いの?」
「うん、年が明けたら2月に1人……隆史と、3月に1人の卒業が決まってる」
隆史の退職は、山中から聞いて知っていた。卒業式の前から、就職する会社の研修が始まるらしかった。
「新しい子は採用しないのかな」
「考えてないんだって……あの事件が綾乃さんや母団体にかなりこたえたみたいで、少し規模を縮小して、今いるメンバーで信用を取り戻す気なんじゃないかな」
新人の研修まで手伝っていた奏人の卒業は、痛手だろう。それにこの間神崎は、ディレット・マルティールと母団体の関係を勘ぐられていると言った。売り上げがNPOに流れていると言われでもしたら、結構なスキャンダルになる。それも警戒しているのかもしれない。
ゆっくりコーヒーを飲み、相談室のメンバーでの忘年会や、営業課の忘年会の話をしてから、暁斗は時計を確認して奏人を促した。彼の持っていた、着替えの入ったバッグを持つ。華奢な彼が両手をいっぱいにしているのが、少し痛々しかったからだ。彼は初め遠慮したが、すぐはにかんだ笑顔になり、俯き加減で礼を言った。
年越しは楽しいイベントだった。奏人は暁斗の家に今日から2泊して、立川に来てくれる予定である。実家に泊まることは、奏人は固辞した。2月にアメリカに発つのでなければ、お正月にお邪魔するだけでも図々しいよ、と彼は笑った。
電車は、里帰りをする人で混雑していた。と言ってもほとんどが、これから東京を離れる様子だった。荷物が多いので、大森に着くと、一度マンションに戻ることにした。
「お酒は後で買おう」
「何年か後も同じようなことになるのかな」
奏人は笑いながら言った。彼がアメリカから帰国した時は、暁斗の許に戻ってくるのだ。きっとその時は、大きなスーツケースを転がしているのだろう。
「いや、もっと大変なんじゃないかな」
暁斗が鍵穴に鍵を入れながら言うと、奏人はそうだよね、と笑った。玄関で靴を脱ぎながら、この部屋では奏人を迎えるには狭いなと思う。しかし奏人が戻ってきてから、暮らす場所を彼と決めたい気がする。
「わ、台所ぴかぴか……暁斗さんすごい」
奏人は部屋に入るなり言った。昨日一昨日と、2日かけて大掃除をした。ここで暮らし始めて、最も年末の掃除を丁寧にやった。
「気合い入れて掃除したんだ……ゆっくりしてて、お酒買ってくる」
「僕も行くよ」
奏人は勝手知った冷蔵庫に食料を入れる。そんな姿を見ているだけで、暁斗は幸せである。つい彼を抱きしめに行ってしまう。
「……もうこれからいちゃいちゃし放題だね」
腕の中の奏人は耳元で囁いた。どきっとした。
「我ながら頑張って我慢したなと思って」
軽く口づけされて、部屋が寒いにもかかわらず暁斗の顔が熱くなる。奏人の黒い瞳に、暁斗をからかう光が浮かんだ。
「そんな顔されたら、年越しそばを食べる前に一度いかせたくなるよ」
言われて暁斗は、そうしてくれてもちっとも構わないと思いつつ、理性を立て直した。
「……その前にお酒買いに行こう」
奏人は素直にうん、と言って暁斗の腕からするりと逃れたが、すぐにその左手で暁斗の右手を握った。子どものお使いのように、手を繋いだまま玄関を出ると、早い夕暮れの光が辺りを包み、一瞬知らない場所に来たような気がした。……いちゃいちゃし放題。本当にそんな日が訪れて、暁斗はそのための心構えが全くできていない自分に気づく。
天ぷらそばだけでは足りないだろうと、きのこや山菜の入った炊き込みご飯を作り、2人で食卓を囲んだ。マンション内でも里帰りをする人が多いので、出入りの音も少なく、静かである。それだけに暁斗にとって、部屋で奏人と2人でいるという事実が、いつになく胸に沁みる。
「蓉子さんと新婚さんの頃も、そんなそわそわしてたの?」
奏人は急須で茶を湯呑みに注ぎながら、笑い混じりに訊いてきた。その所作が美しくて見惚れた。
「そわそわしてるように見えるかな、……昔もしていたのかも知れない」
嘘ではなかった。結婚した時、暁斗は実家を出て暮らすのが初めてだった。蓉子と一緒に生活を始めて、家に戻ると彼女が出迎えてくれることや、朝目覚めると彼女が傍にいることにときめいた。でも今の気持ちとは少し違う気もする。
「あの頃が嬉しかった、だとしたら……今はめちゃくちゃ嬉しいって感じ」
我ながら上手く表現できたと暁斗は思ったが、奏人は小さく笑った。
「暁斗さん可愛い」
言われて暁斗は、微妙な気分になる。
「奏人さんは嬉しくないの?」
「……むしろ戸惑ってる感じ」
「何に?」
暁斗は先月鎌倉へ行った時、奏人が自分のことを話したい気持ちを抑制しようとすることに気づいた。だからそんな時は、彼が話しやすいようにしようと思っている。必要以上に言葉を募らなくてもいいとは思うが、好きな人には自分のことを話したいものだ。奏人に自覚があるかはわからないのだが、自分をその対象にしてくれているらしいことが嬉しい。
「……遂に暁斗さんだけのものになる環境が整ったこと……」
「不安?」
奏人は目を見開き、小さく首を横に振った。
「嬉しいんだよ、ただ気持ちの整理がつかないまんま、ほんとにこんな日が来たから」
「まず環境に慣れることから入ればいいよ、転職したと思って」
「これは転職なの?」
暁斗の言葉に笑ってから、奏人はいつものように、いただきます、と両手を合わせて言った。暁斗も笑い、それに倣った。少し値が張っただけに、コシの強いそばは美味しかった。大きな海老天の衣も、さくさくしている。
「美味しい」
暁斗が思わず言うと、奏人は少し箸を止めて微笑んだ。
「暁斗さんってよく食べてよく寝て……あっちは淡白だけどいつも幸せそうだから、何だか人の営みの尊さを感じさせてくれるよね」
暁斗は返事に困り、大げさだなぁと応じた。
「奏人さんはどちらかと言うと左脳を使ってる人だから、俺みたいなのはそれこそ犬といるみたいで面白いだろ?」
「自虐的だね、確かに面白いし癒される」
「……じゃあ俺が奏人さんに癒しを感じてるのは何なのかな」
奏人はうーん、と首を捻った。そして箸をテーブルに置き、胸の前で両手の人差し指と親指でハートの形を作り、言った。
「愛?」
暁斗は箸を持ったまま吹き出した。その仕草が可愛らしくて悶絶しそうだった。
「どうして笑うの?」
「いや……」
唇を尖らせる奏人には申し訳なかったが、想定外の返答が新鮮過ぎたし、受けを狙っている訳でもないところが愛おしかった。
「そうだな、そういうことなのかな」
「たぶんそうだよ」
何となく可笑しみのある空気の中、そばと香ばしいご飯を食べる。ただ一緒に食事をすることの幸福を、暁斗は噛みしめた。
暁斗は営業の話題のために、テレビのチャンネルをたまに替えながら紅白歌合戦を観ていたが、奏人はそんな落ち着きのない暁斗の行動を気にする様子もなく、缶ビールに口をつけながら本を読んでいた。奏人は余程興味をそそられる内容でなければ、ニュース以外はテレビを観ないらしかった。一緒に暮らすにあたり、大きなテレビは要らないなと暁斗は考える。
「佐々木さんに記事を使わせてもらう許可を得たよ、直して欲しいところも伝えて、たぶん年明けには出してくれそう」
民放でCMが始まると、奏人は言った。西澤遥一の追悼本の話であることは、すぐにわかった。
「編集をしている人たちは反対しなかったのか」
「うん、多少疑問の声も出たけれど、そのほうが面白いっていう意見が勝ったよ」
西澤の弟子たちは、師匠の洒落っ気を皆良く理解しているらしかった。暁斗は蓉子に頼んで、西澤が監修したツアーを企画した人と繋いでもらった。担当者は初め、そんなところに書くなんてと尻込みしていたようだが、奏人が校正の責任を持つと言って説き伏せた。
「先生が通っていた教会の神父さんの文章が面白くて、先生方が驚いてて……当たり前なのにね、カトリックの神父って神学院とかでめちゃ勉強してるし、説教だけでなくしょっちゅう文章を求められるのに」
「そうなんだ」
「そうだよ、中世から聖職者は知的存在の頂上にいるんだよ……お母様風に言えば、それによって民衆を洗脳するのが彼らの仕事だからね」
乃里子の発した洗脳という表現を、奏人は気に入っている様子だった。
「僕が出発するまでに校正が終わりそうだから、安心して行ける」
奏人は穏やかに言うが、本の完成に最後まで携われないし、自分の誕生日の前日に行われるであろう、西澤の逝去1周年のミサにも出られない。やむを得ないことなのだろうが、奏人にしては非情な決断をしたのだなという思いが、暁斗にはあった。
「暁斗さんの相談室のニューズレターも送って」
「2月号からデータ化しようと決まったんだ、メールに添付できるよ」
「うん、ありがとう」
奏人はふわりと笑う。出会った頃から、暁斗の好きな表情である。2人のビールが空くと、暁斗は柿の種と新しい缶を出すべく、ダイニングに向かった。奏人は西澤の追悼本に何を書いたのだろう? 暁斗の胸に、やや複雑な色合いの興味が湧く。
奏人は3本目のビールが空く頃に、本を閉じてあくびを噛み殺した。暁斗はその表情が可愛らしくて、つい笑う。
「あくびくらい思い切りしたらいい」
「……退屈なんじゃないよ、寛ぎ過ぎちゃって」
「わかってる、もう少ししたらお風呂を溜めよう」
暁斗はすぐ傍に奏人がいることを確認したくて、その細い肩に手を置いた。奏人はきれいな形の眉のすそを下げ、申し訳なさそうな顔になった。これまでならこの時間は、客と別れて自宅に戻り、夕食を済ませたくらいなのだろうが、今夜は夕飯も飲み始めたのも早かった。大晦日だからと言って夜更かししなくてはならない訳ではない。奏人は3日間勉強から離れると言ったが、毎日睡眠時間を削っているに違いなかった。立川に行けばそれなりに気を遣って疲れるだろうから、今夜と明日一日は奏人をのんびりさせてやりたかった。
奏人が湯を使う間にベッドを整えて、飲み食いしたものを片づけた。暁斗は自分も風呂の用意をしながら、何となくそわそわする自分を可笑しく思う。自分のスマートフォンにも、会社のものにもメールが来ていないことを確認すると、奏人がドライヤーを使う音がしてきた。髪を乾かしたままにした彼は、服を抱えて洗面室から出てきて、お先でしたと折り目正しく暁斗に言う。
「洗濯物はかごに入れておいて、明日も天気がいいみたいだから洗濯機回すよ」
はい、と奏人は丁寧に答える。彼が泊まりに来て、こうして先に湯を使って出てくるのを見るのは初めてではないのに、何となく暁斗はどぎまぎする。
「眠いだろ、先に休んで」
「ありがとう」
歯を磨いた暁斗が浴室に入ってすぐに気づいたのは、奏人が夜の仕事の日に纏ってくる甘い香りだった。暁斗は髪を洗いながら、奏人と出逢って1年になるのかと改めて思う。平均して月に1度だけ会い、一緒に暮らそうと決めるなんて、早過ぎるのではないのか。今更暁斗は考えていた。後悔したり、不安に思ったりはしていない。ただ、不思議で仕方がなかった。
暁斗はどちらかと言うと、仕事で追い込まれた時は別だが、何でもすぐには決められない。蓉子との交際も長かったし、お互いを十分に理解してから結婚して良かったと思っていた。奏人は一緒に暮らそうと言った時に喜んでくれたが、戸惑いを口にする辺り、彼にも似た思いがあるのかも知れない。
長めに湯に浸かり浴室から出ると、寝室に入ったらしく、奏人の姿は無かった。テレビをつけると、紅白歌合戦がちょうど終わろうとしていて、出演者が蛍の光を合唱していた。リビングの明かりとエアコンを消し、寝室を覗くと、明かりをつけたまま奏人がベッドに横になっている。枕元の棚のコンセントには、奏人もスマートフォンを充電できるように二股ソケットをつけたが、その片方からコードが伸びていた。それを見て一緒に暮らしている気になる自分が可笑しい。
「あ、暁斗さん……」
「いいよ、寝ていて」
奏人は暁斗がベッドに上がると、目を覚ました。スマートフォンを充電し、部屋の明かりを落とす。毛布と布団を持ち上げると、奏人の温もりが伝わってきて、甘い匂いが暁斗の鼻腔をくすぐる。それに埋もれるべく、布団に潜り込んだ。
「寒くない?」
「大丈夫……」
奏人は身体を暁斗に寄せた。柔らかくて良い香りのする髪を持つ、不思議な生き物。暁斗はその腕に触れる。
「……ほんとに2人だね」
奏人に言われて、暁斗はうん、と応じた。
「暁斗さんと出会って……1年と4日」
「たったの1年なんだね」
「うん、いろいろあったから……もっと長く付き合ってる感じがする」
暁斗は奏人の頬に唇を寄せた。今そうするのが当たり前のように思えた。柔らかく、温かい。奏人は少し肩を竦めてじっとしていたが、すぐに唇を重ねてきた。優しい口づけだった。
「……1年どうもありがとう」
奏人は小さく言った。愛おしさが暁斗の胸に溢れる。奏人は少し間を置いて、あ、と顔を上げた。
「鐘の音が聴こえる」
「え?」
暁斗も耳を済ませた。すると、微かに低い音が、余韻をたなびかせながら耳に届いた。
「お寺があるんだね」
「ごめん、今までほんとに知らなかった」
「この辺りならあってもおかしくないかな」
鐘の音は、規則正しく間隔を置いて聴こえてくる。二人してその音に聴き入った。奏人はそっと暁斗の脇の下に腕を入れ、背中に手を回してきた。暁斗も華奢な背中を優しく抱き、肌の温もりを楽しんだ。互いに何も言わずに、ただ鐘の音に耳を済ませる。
「……終わった?」
音が止まったようだった。奏人を見ると、その長い睫毛から覗く瞳に笑いが浮かんだのが、薄暗い中でもわかった。
「あけましておめでとう」
奏人は小さく、しかしはっきり言った。暁斗も頬が緩むのを自覚しながら、あけましておめでとう、と返した。次の瞬間、唇がそっと塞がれた。暁斗はすぐに夢見心地になり、奏人の唇の感触を堪能する。暖かいもので、胸がいっぱいになった。
「今年も……これからもよろしくお願いします」
唇が離れると、奏人は囁いた。暁斗は腕に力をこめて、細い身体を抱きしめる。奏人への愛情が熱く込み上げ、思いが上手く言葉に出来なかった。
「こちらこそ……ずっと、長いこと、よろしく」
うん、ずっとだよ、大好き。奏人のくぐもった、しかし喜びに溢れた静かな声がした。天使の約束の声だった。
一年前、暁斗はこれから自分がどうなってしまうのか、不安で仕方なかった。今は違う。きっとこれから奏人と歩く日々は、予想もしないことが次々に起こるのだろうが、むしろ楽しみなくらいだ。
奏人と過ごす時間は、もうすぐ一度途切れてしまう。でも彼は自分の許に戻ってきてくれるのだから、嘆くことはないのだ。
見つけたのだから。決めたのだから。一番大切なものを、能う限り守り支えて生きて行くと。――暁斗の新しい毎日が、今から始まる。愛するひとの姿が傍にあることを、五感の全てで感じる日々が。
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