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ふたたび12月 1
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学生時代からの友人たちとは不思議なもので、LINEでのやり取り――暁斗はテニス部やゼミの同期とのそれぞれのグループに参加していた――がそんなに無くても、友人の変化を察するものらしい。
クリスマスや忘年会の名目には少し早い12月の平日の夜、テニス部の同期たちが飲み会をするから来いと、いきなり前々日に暁斗を呼び出した。普段幹事を任されることが多い暁斗は、いつの間にそんな話になっていたのだろうと思いつつ、残業のせいで30分遅れて池袋駅の東口側の居酒屋に到着した。
座敷に通されると、15人の男女が既にビールを飲み始めていた。現在東京周辺に暮らすほぼ全員が揃い、久しぶりに顔を見る者もいる。
「お疲れ、よく来た!」
「はーい桂山は奥行って~」
皆暁斗をやけに歓迎して上座に座らせる。座るなりグラスになみなみとビールを注がれた。開始30分なのにテンションが高いなと思っていると、すぐに元部長の小島が立ち上がり音頭を取った。
「はい、では皆さん、暁斗が新しい人生を始めたことに乾杯!」
「はぁ⁉」
暁斗の叫びは乾杯、という声とグラスの当たるがちゃがちゃという音にかき消された。暁斗は皆から次々とグラスをぶつけられるままになり、喧騒が収まってからやっとビールを口にした。
「いやぁびっくりしたわ」
「マジで桂山がそっちだったとはなぁ」
暁斗をほぼ置いてけぼりで皆は盛り上がり始める。刺身と揚げ物がやってきて、入り口近くに席を取っている連中がもたもたしているので腰を浮かすと、桂山くんはいいから、と女子たちが押し留める。
「……俺がゲイだとバレたことを祝う宴なのか?」
暁斗はようやく状況を飲み込み始めた。
「そうだよ、まあそれにかこつけて忘年会しようって話なんだけど」
「でもこんだけ集まったの久しぶりだな、おまえ求心力あるなぁ」
口々に言われて、暁斗は小さく溜め息をつき肩を落とした。
「どこからそんな情報が……」
「桂山くん夏くらいからスタンプ使い始めたでしょ? 若い彼女ができたんじゃないかって女子では噂してたの」
「まさか若い彼氏だとは思わなかったわ」
若林と西村(今の姓は澤井だったが暁斗はつい旧姓で呼んでしまう)が口々に話す。暁斗は眉間に皺を寄せた。
「待てよ、男子と交際してることは認めるけど若いって根拠は何だよ」
「えっ、結構若い子だって聞いたのは……誰からだっけ?」
座敷の入り口に座る嶋田が俺、と挙手した。暁斗はそちらに向かって言う。
「何処から俺の個人情報を盗んでるんだよ!」
「おまえが自分で漏らしてるんだって、おまえがLINEのアイコンに使ってるのは俺の従弟が描いた絵だったりするんだわ」
嶋田の衝撃的な告白に、暁斗はえっ、と言ったまま固まった。くすくすと笑いが起こる中、グラスにビールが注がれたので、習性のようにとりあえず飲んでおく。
「従弟はうちの会社の……総務課に勤めてるってことか?」
「うん、中途採用でもうすぐ2年かな? 俺従弟が転職したことも全然知らなくてさ、先月法事で久々に会った時に会社の話をいろいろしてくれて……」
暁斗の顔から血の気が引いた。そう言えば彼は嶋田という名だった。嫌味なくよく話す感じが、従兄と似ていなくもない。
「俺は例の変な記事は知ってたけど、おまえだと全くピンと来なかったんだよ……そしたら従弟がさぁ、その記事の営業課長すげぇんだよ、全社員の前でカミングアウトするしゲイを認めない専務連中とバトるし、挙句に彼氏が会社に殴り込んで来るしって、聞いてるこっちはもう意味わかんない」
身振りを交えた嶋田の話に皆爆笑した。
「営業課長カッコいいなぁ」
「彼氏が殴り込みって何だよ、説明しろ」
暁斗は黙秘する、と手を振った。こんな季節なのに汗が吹き出してしまう。
「従弟がさ、その営業課長が自分の描いた似顔絵を気に入ってくれてめちゃ光栄だってマジ感激してて……それでその絵を見せてもらったら、えっ桂山じゃん! って俺が叫んだわ、寺の中で」
「従弟によろしく言っといて、まあ俺明日会おうと思えば会えるけど」
座敷は爆笑の連発になる。世の中狭過ぎる。暁斗は憮然として、刺身醤油にわさびを入れ、まぐろを箸で摘んだ。
「えーこのアイコン? 可愛い」
「上手だよね、プロに描いてもらったのかなと思ってた」
女子たちがスマートフォン片手に笑い合う。母親になった者も独身の者も、皆おばさんと呼ばれても文句が言えない年齢だが、こうして集まりはしゃいでいると、学生時代のままだ。
「ねえねえ、ゲイのカップルってタチとネコがあるんだよね、桂山くんどっちなの?」
「……俺たちあんまりそれはっきりしてないかも」
どちらかと言うと自分がネコ気味のような気がしたが、ややごまかしながら答えると、そうなの? と西村は不思議そうに言う。
「カップルそれぞれなんじゃないかな」
「でも色の白い美形なんだろ、彼氏」
横から原田に突っ込まれて、暁斗は呻いた。何処まで情報が拡散しているのか、見当がつかない。美形という言葉に女子たちが色めき立った。
「美形の彼氏に攻められてる桂山くんとか想像したら悩ましくない?」
「おいおい、男と絡む暁斗までおかずにする?」
「欲求不満かよ、だんなとしてないのか!」
アルコールも手伝い、下品な会話が盛り上がってくる。当たり前にセクハラなのだが、女性の側が気にしていなければ、そうでないという好例のようだった。
暁斗は自分をネタにされ続けるのも微妙な気分だったし、久しぶりに顔を見る連中の近況を聞きたかった。良い具合に、カセットコンロに鍋が用意され始める。順番に声をかけていくと、子どもが中学生になり落ち着いた女子、転職してやっと慣れてきた男子など、様々な話を聞くことができた。
「暁斗生き返ったよな、離婚の話が出始めた頃からくたばってたもん」
「目まぐるしくてくたばってられないんだよ、カムアウトせざるを得なくなってからほんといろいろあって」
カセットコンロの火を調整しながら、暁斗は笑った。
「桂山の幸せが男と共にあるとはねぇ」
「最近目覚めたんだよな? 野郎だけで前に飲んだ時そんな話出なかった」
「でもレスが原因で別れたって……」
そうだ、と、前回の飲み会に出席していたメンバーがざわめく。
「兆候あったんじゃん……てか暁斗に鍋の面倒見させるなよ、今日は宴会部長させないって言ってただろうが」
暁斗はちっとも構わないのに、白菜を鍋に足そうとするのを止められ、菜箸を奪われてしまった。
「ついでに言えばビール無くなるぞ」
暁斗の言葉にドリンクメニューが回ってくる。
「要するに暁斗は嫁さん、つまり女が相手だとやる気が出なかったってことか?」
皆の注目を浴びて、暁斗は仕方なく答える。女性もいるのに酷い話題だと思う。
「結果的にそうかも」
「その美形の彼氏とはやる気になれる?」
「そんなこと聞いてどうするんだよ」
暁斗の配慮を無にするように、声を上げたのは女子たちだった。
「聞きたぁい、やる気になれるの?」
「桂山くん奥さんとレスだったんだ……」
暁斗は呆れつつ、すぐそばにあるコールボタンを押した。キンコン、と間の抜けた音が響いて、店員がすぐに襖を開けた。
「はい皆さんお酒頼んで下さーい」
暁斗の声にブーイングが巻き起こり、店員はあっけに取られていた。何だかんだ言いながら、生ビールが5つ、などという声が出て飛び交う。暁斗は無条件に、学生時代の友人は良いものだと思う。個々には暁斗の性的指向に対する戸惑いもあるだろうが、皆で受け入れようという姿勢が有り難い。あまりあちらのことばかり突っ込まれるのは対応に困るが、遠慮なく訊いてくれるほうが気を遣わなくていい面もあった。会社の者たちとはまた違った意味で、楽しい酒だった。
今日幹事を引き受けてくれた松葉は、池袋に実家があり、今も池袋住まいなので、学生時代からこの辺りの店をよく知っている。2次会に参加した男子5名は、彼に連れられてワインを沢山揃える感じの良いバーに腰を落ち着けた。
「結局このメンツが残るんだよなぁ」
「仕方ないだろ、俺たち23区内に住んでて気楽な身分なんだから」
「僕は別に気楽じゃないよ、嫁が寛大なだけで」
「何今更惚気てるんだよ、暁斗に対抗してるつもりか」
「俺は別に連れ合いのこと惚気てないぞ」
「何言ってんだ、おまえ史上最高にエロい空気感出してるくせに」
店主お勧めの赤ワインの栓が抜かれて、チーズの盛り合わせがやって来る。
1次会に出席した16名のうち、11名は既婚者で、5名の独身者のうち、暁斗ともう1人が離別していた。同期の結婚式に出席するのも、ピークを過ぎた。子どもを持つ連中は、良くも悪くも所帯染みて、暁斗の目には微笑ましく映る。
「桂山の彼氏の写真見たいよ」
「無い」
暁斗は即答したが、嘘だった。先月末鎌倉へ行った時、鶴岡八幡宮で通りがかった人に頼み、ツーショットを1枚と、奏人が手水を使う横顔を1枚撮った。初めての写真に暁斗はしばらく有頂天になっていた。
「何処で知り合ったんだよ、さっきごまかされたけど今の彼氏で目覚めたんだよな?」
総務課2年目の嶋田は、奏人がデリヘルで副業をしていて、暁斗がその客であることを知っている筈なのに、従兄にはそこを話していないようだった。
「あー、まあそっち専門の水商売してるんだ、それで……」
「何だ、そんな言いにくそうにするなよ」
そう応じる田辺の妻は、銀座の高級クラブの元ナンバーツーである。クラブの女性を口説き落としたというのもセンセーショナルだったが、白無垢を纏った彼女は非常に美しく、しばらくテニス部のOBの間で語り草だった。子どもは居ないが夫婦仲は円満だ。
「売れっ子?」
「えーっと……実質ナンバーワン」
何それ、と皆に突っ込まれて、売り上げは1番ではないが、指名のリピート率と顧客満足度が高いらしいと暁斗は説明する。
「リピ率と満足度って何か風俗っぽいな、ゲイバーじゃなくてもっと際どいやつなの?」
暁斗は松葉の突っ込みにワインを吹きそうになった。それを見ておいおい、と声が上がる。
「風俗だろ! 正直に言え!」
「女子いないから遠慮すんなよ」
暁斗は泣きそうになる。また酔って口を滑らせてしまった。皆の攻撃は止みそうになく、収拾がつかなくなった。
「すみません、そっち専門のデリヘルです」
暁斗の自白に場が一瞬静まり、次の瞬間大爆笑が起きた。他のテーブルの客たちが驚いてこちらを見ている。
「すごい、本当にそんなのあるんだ」
「そりゃ嫌でも目覚めるわ」
「口説き落としたのか?」
暁斗はもうどうでも良くなってしまい、泣き落とした、と答えた。皆が手を叩いて喜ぶ。
「すごいなぁ……俺たちが学生時代に見てたおまえは偽物だったのか」
「偽物じゃなくて仮の姿だったんじゃない? でも暁斗は基本一生懸命やる奴だからさ、それが人に向いたらこんな感じなんだよ」
泣き落としって、と笑い混じりの声が出て、くすくす笑いが起きる。暁斗はワインをあおり、グラスをテーブルに置く。
「だって売れっ子だからなかなか2度目の指名ができなかったんだよ、俺も忙しいし……やっと顔が見られたら嬉しくて涙じゃあじゃあ出て」
皆は一斉に吹き出した。
「それって最初っからおまえが真剣だったってこと?」
「わからないよ、あんなこと初めてだったから」
「えーっ中学生か? ああでも、それで目覚めたのなら初恋になるのか」
初恋という言葉に暁斗は目を瞬いた。それを見て一同がまた一斉に笑う。ああそうか、初恋なのか。妙に納得する。みんな笑うが、暁斗は本当に知らなかったのだ。男同士好き合うこと以前に、自分以外の人を好きになるということの意味や、その行為が持つ力を。
「ヤバい、桂山が面白過ぎて腸捻転起こしそう」
「彼氏に会いたい、呼び出して」
仕事中だと暁斗が真面目に答えると、デリヘル続けさせるのかと突っ込まれた。
「今月末で退職して留学の準備に入るんだ、客にちゃんと挨拶してから辞めたいって言うから……」
「そうだぞ、ああいう仕事でてっぺん取る女は……暁斗の連れは男だな、義理堅いんだ……でもやきもきするよなぁ、俺もそうだったからわかるぞ、うんうん」
元ナンバーツーを妻に持つ田辺に頭を撫でられて、暁斗は頷いた。
「留学って、何勉強しに行くんだ?」
「哲学……修士を取るんだって」
えっ、と皆が目を丸くした。
「インテリ?」
「なあ桂山、おまえの彼氏がいるデリヘルって……すごい高級な会員制クラブか?」
皆が発言した原田を見る。
「俺は興味無いぞ、会社の人にゲイバーに連れて行って貰った時にそんな話を聞いた」
暁斗は彼の会社の人が何故ゲイバーに行きつけているのかが気になったが、皆そのクラブに興味津々である。
「一見さんお断りのセレブ相手のゲイ専デリヘルで……高学歴で可愛い男の子ばかり派遣してくるって、何か都市伝説チックな」
皆は次に暁斗のほうを見た。
「すごい高級でもないけど……そのクラブだと思う」
おおっ、と感嘆の声が上がる。暁斗は皆のグラスにワインを注ぎ、空になったのでウェイターに向けて手を上げた。
「同じものになさいますか?」
「いや、白かロゼでお勧めをお願いします」
カルパッチョを一緒に頼んだ暁斗を見て、嶋田が呟いた。
「……さすがセレブはオーダーがスマートだな」
「何言ってんだ、普通だろ」
暁斗は失笑した。確かに、とじんわり笑いが広がる。
「それで桂山、そのクラブの会員なのか、マジで」
「ああ、デリヘルの相場って俺はよく知らないけど、手が出ない金額ではないよ」
「最早デリヘルとは呼ばないのでは」
「大げさだなぁ、別に奏……俺の連れ合いも、まあ平凡とは言えないけど、優しい普通の子だし」
友人の前で奏人を連れ合いなどと呼んで、暁斗は自己満足で腹一杯である。羨ましくなってきた、と誰かが言うと、何故か同意の声が上がった。淡いピンク色のワインがやってきて、意味も無く盛り上がる。グラスに注がれたワインは、奏人が頬を染めた時の色に少し似ていた。
「留学に行くんだったらいきなり遠恋じゃないか」
訊かれて暁斗は、ちょっと笑い答える。
「我慢するよ、帰って来たら一緒に暮らそうと思ってるから」
「暁斗は健気だなぁ」
誰も笑わなかった。暁斗のほうが驚いた。
「祝うから結婚式やれよ……男同士女同士で挙げさせてくれる式場があるって聞くぞ」
「あれ使わないのか、パートナーシップ制度とかいうやつ」
意外な言葉が同期の口から出て、暁斗はさらに驚いた。結婚式など考えたことも無かったし、同性パートナーシップ制度は取り入れている自治体が限られているので、やはり考慮したことがない。しかし奏人の会社のような、同性カップルに祝金を出すといった動きは、パートナーシップ制度の広がりを想定しているとも考えられた。
「僕の嫁の保険屋が、同性のパートナーを受取人に指定できる保険の準備をしてるらしいよ、桂山の話をしたらまだ内緒だけどとか言いながら教えてくれた」
皆が自分のためにいろんな提案をしてくれることに、暁斗の胸がじんわりと暖かくなった。
「だってさ、5年前……もう6年か、何で暁斗みたいないい奴がさ、げっそりした顔で離婚するって報告しなきゃいけないんだと思わなかったか? 俺は暁斗に幸せになって欲しいよ、ほんとに」
小島は言うと、自分の言葉に感動したのか、いきなりぼろぼろと涙をこぼし始めた。
「あー泣いたよ、そんなに飲んだか?」
「このかたは飲まなくても泣くからね」
彼は泣き上戸なので、昔から馴染みの光景ではあるが、今夜は暁斗もほろりとさせられてしまう。
「でもそうだな、桂山はうちの回生のコネクターだから、幸せオーラ振り撒いて飲み会を仕切ってもらわないと……」
皆が同意するので、暁斗はそうなの? と言う。ロゼのワインは爽やかな口当たりだった。
「おまえが離婚して闇落ちしてる間、ほんっと集まらなかったんだぜ……俺たち仲良し学年って認識されてるから、先輩達に何かあったのかってガチで心配された」
闇落ちという言葉に暁斗は苦笑した。
「確かに飲みに行く気にもなれない時期があったけど、俺抜きで集まればよかったじゃないか」
いやぁ、と何人かが首を傾げる。
「桂山がいないと面白くないかな、ボケだしネタ豊富だし」
「それに暁斗が来ると女子が参加しやすいらしい、それははっきり言われた……桂山くん以外誰も気を遣ってくれないもん、だって」
若林の口調を松葉が真似て言うので、笑いが起きる。
「とにかく暁斗の前途を祝して乾杯だ、暁斗は次回必ず彼氏を連れて来ること、いいな」
目を真っ赤にしたまま、小島がグラスを掲げた。皆のグラスが当たり軽やかな音を立てる中、暁斗は密かに涙を堪えていた。優しい奴ばっかりだ。きっとみんなが俺のことを心配してくれていたほど、俺はみんなのことをあの頃気に留めていなかった。……そう考えると、申し訳なかった。お返しにできることは何だろうと暁斗は考えたが、あまり良い案は出てこない。離婚した時そんなに心配をかけたのなら、奏人とは末永く仲良くしようと、アルコールに侵された頭で一人誓った。
クリスマスや忘年会の名目には少し早い12月の平日の夜、テニス部の同期たちが飲み会をするから来いと、いきなり前々日に暁斗を呼び出した。普段幹事を任されることが多い暁斗は、いつの間にそんな話になっていたのだろうと思いつつ、残業のせいで30分遅れて池袋駅の東口側の居酒屋に到着した。
座敷に通されると、15人の男女が既にビールを飲み始めていた。現在東京周辺に暮らすほぼ全員が揃い、久しぶりに顔を見る者もいる。
「お疲れ、よく来た!」
「はーい桂山は奥行って~」
皆暁斗をやけに歓迎して上座に座らせる。座るなりグラスになみなみとビールを注がれた。開始30分なのにテンションが高いなと思っていると、すぐに元部長の小島が立ち上がり音頭を取った。
「はい、では皆さん、暁斗が新しい人生を始めたことに乾杯!」
「はぁ⁉」
暁斗の叫びは乾杯、という声とグラスの当たるがちゃがちゃという音にかき消された。暁斗は皆から次々とグラスをぶつけられるままになり、喧騒が収まってからやっとビールを口にした。
「いやぁびっくりしたわ」
「マジで桂山がそっちだったとはなぁ」
暁斗をほぼ置いてけぼりで皆は盛り上がり始める。刺身と揚げ物がやってきて、入り口近くに席を取っている連中がもたもたしているので腰を浮かすと、桂山くんはいいから、と女子たちが押し留める。
「……俺がゲイだとバレたことを祝う宴なのか?」
暁斗はようやく状況を飲み込み始めた。
「そうだよ、まあそれにかこつけて忘年会しようって話なんだけど」
「でもこんだけ集まったの久しぶりだな、おまえ求心力あるなぁ」
口々に言われて、暁斗は小さく溜め息をつき肩を落とした。
「どこからそんな情報が……」
「桂山くん夏くらいからスタンプ使い始めたでしょ? 若い彼女ができたんじゃないかって女子では噂してたの」
「まさか若い彼氏だとは思わなかったわ」
若林と西村(今の姓は澤井だったが暁斗はつい旧姓で呼んでしまう)が口々に話す。暁斗は眉間に皺を寄せた。
「待てよ、男子と交際してることは認めるけど若いって根拠は何だよ」
「えっ、結構若い子だって聞いたのは……誰からだっけ?」
座敷の入り口に座る嶋田が俺、と挙手した。暁斗はそちらに向かって言う。
「何処から俺の個人情報を盗んでるんだよ!」
「おまえが自分で漏らしてるんだって、おまえがLINEのアイコンに使ってるのは俺の従弟が描いた絵だったりするんだわ」
嶋田の衝撃的な告白に、暁斗はえっ、と言ったまま固まった。くすくすと笑いが起こる中、グラスにビールが注がれたので、習性のようにとりあえず飲んでおく。
「従弟はうちの会社の……総務課に勤めてるってことか?」
「うん、中途採用でもうすぐ2年かな? 俺従弟が転職したことも全然知らなくてさ、先月法事で久々に会った時に会社の話をいろいろしてくれて……」
暁斗の顔から血の気が引いた。そう言えば彼は嶋田という名だった。嫌味なくよく話す感じが、従兄と似ていなくもない。
「俺は例の変な記事は知ってたけど、おまえだと全くピンと来なかったんだよ……そしたら従弟がさぁ、その記事の営業課長すげぇんだよ、全社員の前でカミングアウトするしゲイを認めない専務連中とバトるし、挙句に彼氏が会社に殴り込んで来るしって、聞いてるこっちはもう意味わかんない」
身振りを交えた嶋田の話に皆爆笑した。
「営業課長カッコいいなぁ」
「彼氏が殴り込みって何だよ、説明しろ」
暁斗は黙秘する、と手を振った。こんな季節なのに汗が吹き出してしまう。
「従弟がさ、その営業課長が自分の描いた似顔絵を気に入ってくれてめちゃ光栄だってマジ感激してて……それでその絵を見せてもらったら、えっ桂山じゃん! って俺が叫んだわ、寺の中で」
「従弟によろしく言っといて、まあ俺明日会おうと思えば会えるけど」
座敷は爆笑の連発になる。世の中狭過ぎる。暁斗は憮然として、刺身醤油にわさびを入れ、まぐろを箸で摘んだ。
「えーこのアイコン? 可愛い」
「上手だよね、プロに描いてもらったのかなと思ってた」
女子たちがスマートフォン片手に笑い合う。母親になった者も独身の者も、皆おばさんと呼ばれても文句が言えない年齢だが、こうして集まりはしゃいでいると、学生時代のままだ。
「ねえねえ、ゲイのカップルってタチとネコがあるんだよね、桂山くんどっちなの?」
「……俺たちあんまりそれはっきりしてないかも」
どちらかと言うと自分がネコ気味のような気がしたが、ややごまかしながら答えると、そうなの? と西村は不思議そうに言う。
「カップルそれぞれなんじゃないかな」
「でも色の白い美形なんだろ、彼氏」
横から原田に突っ込まれて、暁斗は呻いた。何処まで情報が拡散しているのか、見当がつかない。美形という言葉に女子たちが色めき立った。
「美形の彼氏に攻められてる桂山くんとか想像したら悩ましくない?」
「おいおい、男と絡む暁斗までおかずにする?」
「欲求不満かよ、だんなとしてないのか!」
アルコールも手伝い、下品な会話が盛り上がってくる。当たり前にセクハラなのだが、女性の側が気にしていなければ、そうでないという好例のようだった。
暁斗は自分をネタにされ続けるのも微妙な気分だったし、久しぶりに顔を見る連中の近況を聞きたかった。良い具合に、カセットコンロに鍋が用意され始める。順番に声をかけていくと、子どもが中学生になり落ち着いた女子、転職してやっと慣れてきた男子など、様々な話を聞くことができた。
「暁斗生き返ったよな、離婚の話が出始めた頃からくたばってたもん」
「目まぐるしくてくたばってられないんだよ、カムアウトせざるを得なくなってからほんといろいろあって」
カセットコンロの火を調整しながら、暁斗は笑った。
「桂山の幸せが男と共にあるとはねぇ」
「最近目覚めたんだよな? 野郎だけで前に飲んだ時そんな話出なかった」
「でもレスが原因で別れたって……」
そうだ、と、前回の飲み会に出席していたメンバーがざわめく。
「兆候あったんじゃん……てか暁斗に鍋の面倒見させるなよ、今日は宴会部長させないって言ってただろうが」
暁斗はちっとも構わないのに、白菜を鍋に足そうとするのを止められ、菜箸を奪われてしまった。
「ついでに言えばビール無くなるぞ」
暁斗の言葉にドリンクメニューが回ってくる。
「要するに暁斗は嫁さん、つまり女が相手だとやる気が出なかったってことか?」
皆の注目を浴びて、暁斗は仕方なく答える。女性もいるのに酷い話題だと思う。
「結果的にそうかも」
「その美形の彼氏とはやる気になれる?」
「そんなこと聞いてどうするんだよ」
暁斗の配慮を無にするように、声を上げたのは女子たちだった。
「聞きたぁい、やる気になれるの?」
「桂山くん奥さんとレスだったんだ……」
暁斗は呆れつつ、すぐそばにあるコールボタンを押した。キンコン、と間の抜けた音が響いて、店員がすぐに襖を開けた。
「はい皆さんお酒頼んで下さーい」
暁斗の声にブーイングが巻き起こり、店員はあっけに取られていた。何だかんだ言いながら、生ビールが5つ、などという声が出て飛び交う。暁斗は無条件に、学生時代の友人は良いものだと思う。個々には暁斗の性的指向に対する戸惑いもあるだろうが、皆で受け入れようという姿勢が有り難い。あまりあちらのことばかり突っ込まれるのは対応に困るが、遠慮なく訊いてくれるほうが気を遣わなくていい面もあった。会社の者たちとはまた違った意味で、楽しい酒だった。
今日幹事を引き受けてくれた松葉は、池袋に実家があり、今も池袋住まいなので、学生時代からこの辺りの店をよく知っている。2次会に参加した男子5名は、彼に連れられてワインを沢山揃える感じの良いバーに腰を落ち着けた。
「結局このメンツが残るんだよなぁ」
「仕方ないだろ、俺たち23区内に住んでて気楽な身分なんだから」
「僕は別に気楽じゃないよ、嫁が寛大なだけで」
「何今更惚気てるんだよ、暁斗に対抗してるつもりか」
「俺は別に連れ合いのこと惚気てないぞ」
「何言ってんだ、おまえ史上最高にエロい空気感出してるくせに」
店主お勧めの赤ワインの栓が抜かれて、チーズの盛り合わせがやって来る。
1次会に出席した16名のうち、11名は既婚者で、5名の独身者のうち、暁斗ともう1人が離別していた。同期の結婚式に出席するのも、ピークを過ぎた。子どもを持つ連中は、良くも悪くも所帯染みて、暁斗の目には微笑ましく映る。
「桂山の彼氏の写真見たいよ」
「無い」
暁斗は即答したが、嘘だった。先月末鎌倉へ行った時、鶴岡八幡宮で通りがかった人に頼み、ツーショットを1枚と、奏人が手水を使う横顔を1枚撮った。初めての写真に暁斗はしばらく有頂天になっていた。
「何処で知り合ったんだよ、さっきごまかされたけど今の彼氏で目覚めたんだよな?」
総務課2年目の嶋田は、奏人がデリヘルで副業をしていて、暁斗がその客であることを知っている筈なのに、従兄にはそこを話していないようだった。
「あー、まあそっち専門の水商売してるんだ、それで……」
「何だ、そんな言いにくそうにするなよ」
そう応じる田辺の妻は、銀座の高級クラブの元ナンバーツーである。クラブの女性を口説き落としたというのもセンセーショナルだったが、白無垢を纏った彼女は非常に美しく、しばらくテニス部のOBの間で語り草だった。子どもは居ないが夫婦仲は円満だ。
「売れっ子?」
「えーっと……実質ナンバーワン」
何それ、と皆に突っ込まれて、売り上げは1番ではないが、指名のリピート率と顧客満足度が高いらしいと暁斗は説明する。
「リピ率と満足度って何か風俗っぽいな、ゲイバーじゃなくてもっと際どいやつなの?」
暁斗は松葉の突っ込みにワインを吹きそうになった。それを見ておいおい、と声が上がる。
「風俗だろ! 正直に言え!」
「女子いないから遠慮すんなよ」
暁斗は泣きそうになる。また酔って口を滑らせてしまった。皆の攻撃は止みそうになく、収拾がつかなくなった。
「すみません、そっち専門のデリヘルです」
暁斗の自白に場が一瞬静まり、次の瞬間大爆笑が起きた。他のテーブルの客たちが驚いてこちらを見ている。
「すごい、本当にそんなのあるんだ」
「そりゃ嫌でも目覚めるわ」
「口説き落としたのか?」
暁斗はもうどうでも良くなってしまい、泣き落とした、と答えた。皆が手を叩いて喜ぶ。
「すごいなぁ……俺たちが学生時代に見てたおまえは偽物だったのか」
「偽物じゃなくて仮の姿だったんじゃない? でも暁斗は基本一生懸命やる奴だからさ、それが人に向いたらこんな感じなんだよ」
泣き落としって、と笑い混じりの声が出て、くすくす笑いが起きる。暁斗はワインをあおり、グラスをテーブルに置く。
「だって売れっ子だからなかなか2度目の指名ができなかったんだよ、俺も忙しいし……やっと顔が見られたら嬉しくて涙じゃあじゃあ出て」
皆は一斉に吹き出した。
「それって最初っからおまえが真剣だったってこと?」
「わからないよ、あんなこと初めてだったから」
「えーっ中学生か? ああでも、それで目覚めたのなら初恋になるのか」
初恋という言葉に暁斗は目を瞬いた。それを見て一同がまた一斉に笑う。ああそうか、初恋なのか。妙に納得する。みんな笑うが、暁斗は本当に知らなかったのだ。男同士好き合うこと以前に、自分以外の人を好きになるということの意味や、その行為が持つ力を。
「ヤバい、桂山が面白過ぎて腸捻転起こしそう」
「彼氏に会いたい、呼び出して」
仕事中だと暁斗が真面目に答えると、デリヘル続けさせるのかと突っ込まれた。
「今月末で退職して留学の準備に入るんだ、客にちゃんと挨拶してから辞めたいって言うから……」
「そうだぞ、ああいう仕事でてっぺん取る女は……暁斗の連れは男だな、義理堅いんだ……でもやきもきするよなぁ、俺もそうだったからわかるぞ、うんうん」
元ナンバーツーを妻に持つ田辺に頭を撫でられて、暁斗は頷いた。
「留学って、何勉強しに行くんだ?」
「哲学……修士を取るんだって」
えっ、と皆が目を丸くした。
「インテリ?」
「なあ桂山、おまえの彼氏がいるデリヘルって……すごい高級な会員制クラブか?」
皆が発言した原田を見る。
「俺は興味無いぞ、会社の人にゲイバーに連れて行って貰った時にそんな話を聞いた」
暁斗は彼の会社の人が何故ゲイバーに行きつけているのかが気になったが、皆そのクラブに興味津々である。
「一見さんお断りのセレブ相手のゲイ専デリヘルで……高学歴で可愛い男の子ばかり派遣してくるって、何か都市伝説チックな」
皆は次に暁斗のほうを見た。
「すごい高級でもないけど……そのクラブだと思う」
おおっ、と感嘆の声が上がる。暁斗は皆のグラスにワインを注ぎ、空になったのでウェイターに向けて手を上げた。
「同じものになさいますか?」
「いや、白かロゼでお勧めをお願いします」
カルパッチョを一緒に頼んだ暁斗を見て、嶋田が呟いた。
「……さすがセレブはオーダーがスマートだな」
「何言ってんだ、普通だろ」
暁斗は失笑した。確かに、とじんわり笑いが広がる。
「それで桂山、そのクラブの会員なのか、マジで」
「ああ、デリヘルの相場って俺はよく知らないけど、手が出ない金額ではないよ」
「最早デリヘルとは呼ばないのでは」
「大げさだなぁ、別に奏……俺の連れ合いも、まあ平凡とは言えないけど、優しい普通の子だし」
友人の前で奏人を連れ合いなどと呼んで、暁斗は自己満足で腹一杯である。羨ましくなってきた、と誰かが言うと、何故か同意の声が上がった。淡いピンク色のワインがやってきて、意味も無く盛り上がる。グラスに注がれたワインは、奏人が頬を染めた時の色に少し似ていた。
「留学に行くんだったらいきなり遠恋じゃないか」
訊かれて暁斗は、ちょっと笑い答える。
「我慢するよ、帰って来たら一緒に暮らそうと思ってるから」
「暁斗は健気だなぁ」
誰も笑わなかった。暁斗のほうが驚いた。
「祝うから結婚式やれよ……男同士女同士で挙げさせてくれる式場があるって聞くぞ」
「あれ使わないのか、パートナーシップ制度とかいうやつ」
意外な言葉が同期の口から出て、暁斗はさらに驚いた。結婚式など考えたことも無かったし、同性パートナーシップ制度は取り入れている自治体が限られているので、やはり考慮したことがない。しかし奏人の会社のような、同性カップルに祝金を出すといった動きは、パートナーシップ制度の広がりを想定しているとも考えられた。
「僕の嫁の保険屋が、同性のパートナーを受取人に指定できる保険の準備をしてるらしいよ、桂山の話をしたらまだ内緒だけどとか言いながら教えてくれた」
皆が自分のためにいろんな提案をしてくれることに、暁斗の胸がじんわりと暖かくなった。
「だってさ、5年前……もう6年か、何で暁斗みたいないい奴がさ、げっそりした顔で離婚するって報告しなきゃいけないんだと思わなかったか? 俺は暁斗に幸せになって欲しいよ、ほんとに」
小島は言うと、自分の言葉に感動したのか、いきなりぼろぼろと涙をこぼし始めた。
「あー泣いたよ、そんなに飲んだか?」
「このかたは飲まなくても泣くからね」
彼は泣き上戸なので、昔から馴染みの光景ではあるが、今夜は暁斗もほろりとさせられてしまう。
「でもそうだな、桂山はうちの回生のコネクターだから、幸せオーラ振り撒いて飲み会を仕切ってもらわないと……」
皆が同意するので、暁斗はそうなの? と言う。ロゼのワインは爽やかな口当たりだった。
「おまえが離婚して闇落ちしてる間、ほんっと集まらなかったんだぜ……俺たち仲良し学年って認識されてるから、先輩達に何かあったのかってガチで心配された」
闇落ちという言葉に暁斗は苦笑した。
「確かに飲みに行く気にもなれない時期があったけど、俺抜きで集まればよかったじゃないか」
いやぁ、と何人かが首を傾げる。
「桂山がいないと面白くないかな、ボケだしネタ豊富だし」
「それに暁斗が来ると女子が参加しやすいらしい、それははっきり言われた……桂山くん以外誰も気を遣ってくれないもん、だって」
若林の口調を松葉が真似て言うので、笑いが起きる。
「とにかく暁斗の前途を祝して乾杯だ、暁斗は次回必ず彼氏を連れて来ること、いいな」
目を真っ赤にしたまま、小島がグラスを掲げた。皆のグラスが当たり軽やかな音を立てる中、暁斗は密かに涙を堪えていた。優しい奴ばっかりだ。きっとみんなが俺のことを心配してくれていたほど、俺はみんなのことをあの頃気に留めていなかった。……そう考えると、申し訳なかった。お返しにできることは何だろうと暁斗は考えたが、あまり良い案は出てこない。離婚した時そんなに心配をかけたのなら、奏人とは末永く仲良くしようと、アルコールに侵された頭で一人誓った。
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