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普通の人っぽいGW
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話が何となく途切れたが、答えが今はっきり出ないことが不愉快な訳でもなく、不思議と穏やかな空気が流れた。
「子どもの頃のようにはいかなくても、気持ちはいつでも飛べるようにしておきたいよね」
千種の言葉に亜希は小さく頷いた。デッキで見守る人間たちの気持ちをよそに、飛行機は次々と青い空の中に飛び立っていく。
「ああ、ももちゃん撮らなきゃ」
亜希は我に返り、膝の上のトートバッグの口を開いた。この場にいる人は皆、飛行機の姿に注目しているので、ぬいぐるみをテーブルの上に出しても誰も気づかない。そう信じて、ももちゃんを座らせてみる。亜希が今日はやけに大胆なせいか、千種が小さく笑った。
サーモンオレンジのワンピースはももちゃんによく似合っていて、フォロワーにも好評だ。晴れた屋外で見ると、きれいになったももちゃんは白くて可愛らしく、ワンピースの色もよく映える。亜希は目線を合わせるために、椅子から立ち上がってももちゃんの後ろに回り込んだ。
ちょうど一機、飛行機が高度を上げながら空に向かっていた。亜希はスマートフォンを構えて、画面の左下にももちゃんの上半身、右上に飛行機が入るように構図を取る。飛行機が画面の外に出てしまう寸前に、シャッターを切った。
楽しげに亜希のカメラマンぶりを見学していた千種は、どう? と亜希に訊いてきた。亜希は写真のフォルダを開き、空の青さとももちゃんの肌の白さのコントラストだけで、満足してしまう。
「色がとにかくきれい」
画面を千種に向けてやると、彼はああ、と感心したように声を立てた。ももちゃんが飛行機を見送る後ろ姿には、もう薄汚れや縫い目のほころびは無い。ワンピースのオレンジがアクセントになっているのも、良い感じだった。
隣のテーブルに座る、妻らしき女性を連れた中年男性が、こちらをやや驚いたように見ていたことに気づいた。あ、やば、と亜希は焦る。ももちゃんを片づけたくなる羞恥心と、もっと撮りたいという欲望が、胸の中でせめぎ合う。
「手摺りまで行って、もっと近いとこで撮ろうよ」
千種が言いながら立ち上がり、亜希は戸惑いつつもももちゃんを腕に抱いた。コーヒーは空になっていたので、鞄を肩に掛けてテーブルを離れる。
「俺ももちゃん持っとくよ、ポーズ指示して」
千種があっさり言うので、亜希のほうが困惑してしまう。しかし、人目も気になることだし、と腹を括ってももちゃんの手を手摺りにかけてみた。
「あのね、身を乗り出してる感じにしたいの」
「なるほど、脚を持って支えたらいいのかな」
「子どもの頃のようにはいかなくても、気持ちはいつでも飛べるようにしておきたいよね」
千種の言葉に亜希は小さく頷いた。デッキで見守る人間たちの気持ちをよそに、飛行機は次々と青い空の中に飛び立っていく。
「ああ、ももちゃん撮らなきゃ」
亜希は我に返り、膝の上のトートバッグの口を開いた。この場にいる人は皆、飛行機の姿に注目しているので、ぬいぐるみをテーブルの上に出しても誰も気づかない。そう信じて、ももちゃんを座らせてみる。亜希が今日はやけに大胆なせいか、千種が小さく笑った。
サーモンオレンジのワンピースはももちゃんによく似合っていて、フォロワーにも好評だ。晴れた屋外で見ると、きれいになったももちゃんは白くて可愛らしく、ワンピースの色もよく映える。亜希は目線を合わせるために、椅子から立ち上がってももちゃんの後ろに回り込んだ。
ちょうど一機、飛行機が高度を上げながら空に向かっていた。亜希はスマートフォンを構えて、画面の左下にももちゃんの上半身、右上に飛行機が入るように構図を取る。飛行機が画面の外に出てしまう寸前に、シャッターを切った。
楽しげに亜希のカメラマンぶりを見学していた千種は、どう? と亜希に訊いてきた。亜希は写真のフォルダを開き、空の青さとももちゃんの肌の白さのコントラストだけで、満足してしまう。
「色がとにかくきれい」
画面を千種に向けてやると、彼はああ、と感心したように声を立てた。ももちゃんが飛行機を見送る後ろ姿には、もう薄汚れや縫い目のほころびは無い。ワンピースのオレンジがアクセントになっているのも、良い感じだった。
隣のテーブルに座る、妻らしき女性を連れた中年男性が、こちらをやや驚いたように見ていたことに気づいた。あ、やば、と亜希は焦る。ももちゃんを片づけたくなる羞恥心と、もっと撮りたいという欲望が、胸の中でせめぎ合う。
「手摺りまで行って、もっと近いとこで撮ろうよ」
千種が言いながら立ち上がり、亜希は戸惑いつつもももちゃんを腕に抱いた。コーヒーは空になっていたので、鞄を肩に掛けてテーブルを離れる。
「俺ももちゃん持っとくよ、ポーズ指示して」
千種があっさり言うので、亜希のほうが困惑してしまう。しかし、人目も気になることだし、と腹を括ってももちゃんの手を手摺りにかけてみた。
「あのね、身を乗り出してる感じにしたいの」
「なるほど、脚を持って支えたらいいのかな」
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