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単語をたんまり覚えたな~!
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ついに! 聡美は、ウハウハしていた。おやすみを一回するごとに、英単語100個覚えることができる!
昔、睡眠学習器なるものが大流行りしたことがある。寝る前に機械に覚えたいことを吹き込んでおいて眠っている間にそれを聞いて覚えるというのだが、眉唾だと思っていた。そんなんで英語が攻略できるもんかとは思っていた。
しかしである! アメリカの大学の研究によれば、ノンレム睡眠時に単語を聞いていれば、覚えられるんだそうだ。
ノンレム睡眠時にシータ波が出てくることがカギらしい。シータ波を意図的に出すには短時間睡眠や、瞑想などもいいそうだ。
じゃあ、今日から、実行あるのみだ! 聡美は、短時間睡眠をする前に単語を100個ぶつぶつとボイスレコーダーに録音しておく。そして、おやすみ!と呟き、寝る。2時間後のノンレム睡眠がやってくるタイミングでセットしておいたレコーダーが鳴り出すようにしておく。
そして、1時間ほど聴いたら、けたたましく目覚まし時計がなる。起きる、そして、英単語を覚えているかチェックする。覚えているのだ。凄い! 聡美は夢中になった。
シータ波だ! それがカギだと思った聡美は、とにかく眠った。眠っては、レコーダーから流れる英単語をノンレム睡眠時にはずっと聞いた。自身は、聴いている自覚はないが、聴いている。
そうやって、3か月が経った頃、聡美は、使いこなせる単語という意味のアクティブボキャブラリーが2000語ほどしかなかったのに、一気に飛躍し、1万語をアクティブボキャブラリーに持つまでになった。
素晴らしい! ノンレム睡眠万歳だ! お休み! お休みと、繰り返すたびに、私の語彙は増えていくと、聡美はとにかくウハウハだった。
聡美は、だんだん、単語を覚えることにのめり込んでいった。そして、ノンレム睡眠を起こすためならなんでもするようになった。
シータ波が出ている状態がノンレム睡眠と逆説的に仮定した聡美は、シータ波は4Hzから8Hzと聞くと、その波長を出す装置をつくった。伊達に機械工学科を出ていないのだ。
シータ波を浴び続けて、聡美は、絶え間なくノンレム睡眠状態に陥るようになった。もはや、一日中、一年中お休み状態になったのである。
どこまでやれば気が済むのかと、夫の孝之があきれ顔だった。
「なあ、聡美、もう起きろ」
「むにゃむにゃ……」
「なあ、もういいだろ!いいか、ネィティブ並みのボキャブラリーって言ったら、2万語で十分だ。それくらいもう覚えただろう!」
「むにゃむにゃ……」
「もう、勝手にしろ!」
そうやって、聡美は、シータ波を浴び続け、半お休み状態を続けた。そして、ついに!5万語を覚えているはずの時間が経過した。
けたたましくアラームがなる。もう目を覚ましてもいい。聡美はちゃんと、その時間には、装置からベータ波が出るように仕掛けをつくっておいたのだ。
完全覚醒した聡美。夫があきれ顔で見ている。
「おい、聡美、起きたか? おはようさん!」
「Good Morning! Darling!」
「な~にが、グッドモーニング、ダーリンだよ」
「What?」
「なにが、なに~だ!」
「……」
「おい、聡美!どうした? まさか、お前……日本語忘れたのか?」
「……」
長い沈黙が流れた後、夫の孝之は、おもむろに聡美をベッドに戻し、聡美がつくったシータ波発生装置をオンにした。
そして、絵本を開き、聡美に向かって読み聞かせ始めた。
「むかしむかし、あるところに……」
終
昔、睡眠学習器なるものが大流行りしたことがある。寝る前に機械に覚えたいことを吹き込んでおいて眠っている間にそれを聞いて覚えるというのだが、眉唾だと思っていた。そんなんで英語が攻略できるもんかとは思っていた。
しかしである! アメリカの大学の研究によれば、ノンレム睡眠時に単語を聞いていれば、覚えられるんだそうだ。
ノンレム睡眠時にシータ波が出てくることがカギらしい。シータ波を意図的に出すには短時間睡眠や、瞑想などもいいそうだ。
じゃあ、今日から、実行あるのみだ! 聡美は、短時間睡眠をする前に単語を100個ぶつぶつとボイスレコーダーに録音しておく。そして、おやすみ!と呟き、寝る。2時間後のノンレム睡眠がやってくるタイミングでセットしておいたレコーダーが鳴り出すようにしておく。
そして、1時間ほど聴いたら、けたたましく目覚まし時計がなる。起きる、そして、英単語を覚えているかチェックする。覚えているのだ。凄い! 聡美は夢中になった。
シータ波だ! それがカギだと思った聡美は、とにかく眠った。眠っては、レコーダーから流れる英単語をノンレム睡眠時にはずっと聞いた。自身は、聴いている自覚はないが、聴いている。
そうやって、3か月が経った頃、聡美は、使いこなせる単語という意味のアクティブボキャブラリーが2000語ほどしかなかったのに、一気に飛躍し、1万語をアクティブボキャブラリーに持つまでになった。
素晴らしい! ノンレム睡眠万歳だ! お休み! お休みと、繰り返すたびに、私の語彙は増えていくと、聡美はとにかくウハウハだった。
聡美は、だんだん、単語を覚えることにのめり込んでいった。そして、ノンレム睡眠を起こすためならなんでもするようになった。
シータ波が出ている状態がノンレム睡眠と逆説的に仮定した聡美は、シータ波は4Hzから8Hzと聞くと、その波長を出す装置をつくった。伊達に機械工学科を出ていないのだ。
シータ波を浴び続けて、聡美は、絶え間なくノンレム睡眠状態に陥るようになった。もはや、一日中、一年中お休み状態になったのである。
どこまでやれば気が済むのかと、夫の孝之があきれ顔だった。
「なあ、聡美、もう起きろ」
「むにゃむにゃ……」
「なあ、もういいだろ!いいか、ネィティブ並みのボキャブラリーって言ったら、2万語で十分だ。それくらいもう覚えただろう!」
「むにゃむにゃ……」
「もう、勝手にしろ!」
そうやって、聡美は、シータ波を浴び続け、半お休み状態を続けた。そして、ついに!5万語を覚えているはずの時間が経過した。
けたたましくアラームがなる。もう目を覚ましてもいい。聡美はちゃんと、その時間には、装置からベータ波が出るように仕掛けをつくっておいたのだ。
完全覚醒した聡美。夫があきれ顔で見ている。
「おい、聡美、起きたか? おはようさん!」
「Good Morning! Darling!」
「な~にが、グッドモーニング、ダーリンだよ」
「What?」
「なにが、なに~だ!」
「……」
「おい、聡美!どうした? まさか、お前……日本語忘れたのか?」
「……」
長い沈黙が流れた後、夫の孝之は、おもむろに聡美をベッドに戻し、聡美がつくったシータ波発生装置をオンにした。
そして、絵本を開き、聡美に向かって読み聞かせ始めた。
「むかしむかし、あるところに……」
終
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