戦国の子供たち

くしき 妙

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 武田の一武将に穴山梅雪という人がいた。信長によって武田勝頼が滅ぼされ穴山梅雪は信長に随従することになった。
 仕える人が変わってもこの時代不思議ではない。禄をもらったわけではないが、何かあった時、盟約した信長に合力するということである。15代将軍の足利義昭をすえて、信長の勢力は大きく成っていった。岐阜に居城を築き、安土城とした。安土城から見渡せる城下は繁栄も著しく信長の行くところ人々が集まってくるようであった。
 将軍義昭は収まるところに収まると、じっと信長の言うことを聞いているような人物ではない。実権を持たぬ将軍であるが、一人で偉くなったようにおごりがある。信長が京にある時はおとなしくしているが、安土に帰ると瞬く間に謀略に走る。信長も安土に席を温める間もなく大軍をもって京に出てきて、義昭を牽制するといった具合であった。信長とて、この将軍を相手にはしておらず、いわゆる傀儡将軍であったから、天下を取るための道具としか見ていなかった。
 信長は京にあり、本能寺を宿所に朝廷に金銀を献上、公家諸侯を招いて招いて茶会を催し、名器を披露したりして、権威を誇示していた。

 ここまでこれたのも同盟者である家康の力も馬鹿にできぬ、いい折りだ。家康の京見物に案内せよということになった。家康もそれに応じた。家康はわずかの供を連れ京にやってきた。信長の供応をを受け宿所に入ったその夜、本能寺の変が突発的に起きたのである。
 徳川家の京の御用商人茶屋四郎次郎が、早朝に事件を急報したことにより、家康は信長の死を知った。敵は明智と聞いた時、明智の手配りがいかに迅速か家康は察知した。
 うろたえる家来に、「猶予はならぬここを引き払うぞ」下知していた。決断したら早い。茶屋も、「私もご案内仕りまする」と先頭に立った。
「殿はどうなさるのだ」と家来の胸は高鳴っても、口を挟む気も起きないほどに緊張している。「今は何も申すべきではない」と思うばかりだ。

 京の町中を疾風の如く離れて、山中を家康主従は道をとっている。戦の起きた時、土民が落ち武者たちを襲い金品を強奪する、これが一番の難関であった。そんな折、京にいた穴山梅雪も危急を察して逃げ延びる最中であった.

 このような道中に家康は、「浜松へ戻るぞ」初めて本心を明かした。他領を越えていくのだから危険は大きい。いつのまにか野武士の一団が現れた。茶屋もその頭と話し合いをしている。談合が整ったとみえて服部半蔵というものにてお屋形様を無事お送りすると述べておりまする」がと茶屋は家康に報告した。「その者をこれへ」と家康は服部半蔵が静かに家康の前に片膝を折って頭を垂れた。

「そちが我らを送ってくれると申す者か」
「はーっ」
「頼むぞよ、無事本国に戻れば褒美をとらす」と約した。

 家康と服部半蔵の出会いである。
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