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第三章
108話 トリプルデート
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俺はニコニコと笑いながら、目の前に座っている可愛系のエルマーと、美少年であるファビアンを眺めた。
目の保養になるなぁ。
超絶不機嫌顔で睨まれているが、怒っている顔も、また良い。
「何これ」
ファビアンが、不満そうに呟いた。
「何って、トリプルデートだよ。やりたかったんでしょ?」
ニッコリと笑って答えた俺に、エルマーは頬を膨らませた。
「思ってたのと違う」
「そう?ちゃんと三組いるじゃん。ここに一組で、あっちに二組」
あっち、と指差したのは、通路を挟んだ隣にある四人掛けのテーブルだ。
そこでは、アルフレートが捨てられた子犬のようにプルプル震えていた。目の前に座っている双子から、殺意のこもった視線を向けられているからである。
「フィ、フィン様っ、この席は、ちょっと…」
涙目で席替えを訴えてくるが、俺はそれを笑って却下した。
「アルフレート。お仕置きなんだから我慢して」
「ハイ」
がっくりと肩を落としたアルフレートの隣には、一人だけ楽しそうなオスカーが座っていた。
双子の視線にも怯まず、この状況を面白がっている。
さすがラインハルトの友達というか、心臓に毛が生えてそうな奴だな。オスカーにはお仕置きになっていないが、まぁいい。
俺は机に置かれたメニューを手に取り、エルマーとファビアンに声をかけた。
「ここのケーキ美味しいんだよ。僕は、このオランジェのケーキが好き。二人は何にする?甘いものは平気?」
俺の言葉に、エルマーとファビアンはお互いに視線を交わした後、チラリと双子の方を窺った。
双子は、エルマーたちから見られていることに気づいているはずなのに、反応しない。
余程腹を立てているようだ。
双子の態度に、エルマーとファビアンは揃って傷ついた顔をした。
俺が、アルフレートたちを引き連れて双子がいる場所に戻った時には、すでに四人はこんな感じになっていた。
迫ったエルマーとファビアンに、ラインハルトとゴットフリートは本気で拒絶し、雷を落としたようだ。
怒鳴り声は聞こえなかったから、怒気を含んだ低い声で、辛辣なことでも言ったのだろう。
まぁ、あくまで俺の予想だけど。
「ゴットとラインは何にする?」
「「何でもいい」」
双子は俺にも怒っていた、というか不貞腐れていた。
このトリプルデートを提案したからだ。
まぁ、せっかく二ヶ月ぶりに会えて甘々デートしてる最中だったもんな。
みんなで一緒にお茶したいって俺がお願いしたら、すっっっごく嫌そうな顔してた。
でも、最後には折れて渋々了承してくれたから、二人は俺には甘い。
けど、やっぱり悪いことしちゃったな。
後で言おうと思ってたけど、仕方ない。
俺は、エルマーとファビアンにメニューを渡し、ケーキを選ぶように言った後、席を立って双子の背後へ回った。
「フィン?」
不機嫌顔のまま、何だと双子は俺を振り返る。
俺は二人の間に立ち、まずはゴットフリートに耳打ちした。
「はっ?」
ゴットフリートは、驚いたように目を見開いた。
今度はラインハルトに耳打ちする。
「…本気で言ってるのか?」
ラインハルトも驚きつつ、俺に問いかけた。
俺は二人の間でこそっと『急には無理かな?』と問いかけた。
ゴットフリートとラインハルトはお互い一瞬目配せした後『いや、大丈夫だ』と揃って承諾してくれた。
「そっか。良かった」
俺は、ほっと息を吐き、二人の椅子の間から手を伸ばし、テーブルに放置されていたメニューを開く。
「ほら、ちゃんと食べたい物を選んで注文してよ。ねっ?」
「分かった」
「ちゃんと選ぶよ」
アルフレートとオスカーも選んでね、と言い残して、俺は自分の席に戻った。
「何にするか決まった?」
双子が急に怒りを収めた様子を呆気に取られて見ていたエルマーとファビアンは、俺を得体の知れない物のような目で見てきた。
「…今、二人に何て言ったの?」
「それは内緒」
俺の言葉に、ファビアンは再び顔を顰めた。
「二人とも選ばないの?選ばないなら、みんなが美味しいケーキを頬張る姿を、ただ見ているだけになるけど、それでもいい?」
僕は別にそれでも構わないけど、と言ったら、二人は慌ててメニューに視線を落とし、ケーキを選び始めた。
みんなの注文が決まりオーダーした後、俺はエルマーとファビアンに改めて向き直る。
「さて。じゃあ、せっかくだしお喋りしよっか」
「僕たちがあんたと?」
「何の話をするのさ」
二人ともツンツンしているが、会話をしてくれる気はあるようで安心した。
俺は、王立高等学園に通ってる生徒に会ったら、ぜひ聞いてみたいことがあったのだ。
ふっふっふっふっと笑ったら、二人に若干引かれた。
「こほん。実はね、君たちに聞いてみたいことがあったんだ」
「聞いてみたいこと?」
「ゴットフリートとラインハルトには内緒なんだけどね」
「いや、本人たちそこにいるけど?」
丸聞こえだよ、とエルマーは言った。
「大丈夫。聞いてないフリしてくれるから」
俺の言葉に、双子はこちらに向けていた顔を慌てて正面に戻した。
内緒というのは建前なので、別に聞かれて困るような話題ではない。堂々と聞くのも、ちょっとどうかと思うので、言ってみただけだ。
準備は整ったと、俺はずいっと体を前のめりにして、二人に小声で問いかけた。
「聞いてみたいこと、それはね」
目の保養になるなぁ。
超絶不機嫌顔で睨まれているが、怒っている顔も、また良い。
「何これ」
ファビアンが、不満そうに呟いた。
「何って、トリプルデートだよ。やりたかったんでしょ?」
ニッコリと笑って答えた俺に、エルマーは頬を膨らませた。
「思ってたのと違う」
「そう?ちゃんと三組いるじゃん。ここに一組で、あっちに二組」
あっち、と指差したのは、通路を挟んだ隣にある四人掛けのテーブルだ。
そこでは、アルフレートが捨てられた子犬のようにプルプル震えていた。目の前に座っている双子から、殺意のこもった視線を向けられているからである。
「フィ、フィン様っ、この席は、ちょっと…」
涙目で席替えを訴えてくるが、俺はそれを笑って却下した。
「アルフレート。お仕置きなんだから我慢して」
「ハイ」
がっくりと肩を落としたアルフレートの隣には、一人だけ楽しそうなオスカーが座っていた。
双子の視線にも怯まず、この状況を面白がっている。
さすがラインハルトの友達というか、心臓に毛が生えてそうな奴だな。オスカーにはお仕置きになっていないが、まぁいい。
俺は机に置かれたメニューを手に取り、エルマーとファビアンに声をかけた。
「ここのケーキ美味しいんだよ。僕は、このオランジェのケーキが好き。二人は何にする?甘いものは平気?」
俺の言葉に、エルマーとファビアンはお互いに視線を交わした後、チラリと双子の方を窺った。
双子は、エルマーたちから見られていることに気づいているはずなのに、反応しない。
余程腹を立てているようだ。
双子の態度に、エルマーとファビアンは揃って傷ついた顔をした。
俺が、アルフレートたちを引き連れて双子がいる場所に戻った時には、すでに四人はこんな感じになっていた。
迫ったエルマーとファビアンに、ラインハルトとゴットフリートは本気で拒絶し、雷を落としたようだ。
怒鳴り声は聞こえなかったから、怒気を含んだ低い声で、辛辣なことでも言ったのだろう。
まぁ、あくまで俺の予想だけど。
「ゴットとラインは何にする?」
「「何でもいい」」
双子は俺にも怒っていた、というか不貞腐れていた。
このトリプルデートを提案したからだ。
まぁ、せっかく二ヶ月ぶりに会えて甘々デートしてる最中だったもんな。
みんなで一緒にお茶したいって俺がお願いしたら、すっっっごく嫌そうな顔してた。
でも、最後には折れて渋々了承してくれたから、二人は俺には甘い。
けど、やっぱり悪いことしちゃったな。
後で言おうと思ってたけど、仕方ない。
俺は、エルマーとファビアンにメニューを渡し、ケーキを選ぶように言った後、席を立って双子の背後へ回った。
「フィン?」
不機嫌顔のまま、何だと双子は俺を振り返る。
俺は二人の間に立ち、まずはゴットフリートに耳打ちした。
「はっ?」
ゴットフリートは、驚いたように目を見開いた。
今度はラインハルトに耳打ちする。
「…本気で言ってるのか?」
ラインハルトも驚きつつ、俺に問いかけた。
俺は二人の間でこそっと『急には無理かな?』と問いかけた。
ゴットフリートとラインハルトはお互い一瞬目配せした後『いや、大丈夫だ』と揃って承諾してくれた。
「そっか。良かった」
俺は、ほっと息を吐き、二人の椅子の間から手を伸ばし、テーブルに放置されていたメニューを開く。
「ほら、ちゃんと食べたい物を選んで注文してよ。ねっ?」
「分かった」
「ちゃんと選ぶよ」
アルフレートとオスカーも選んでね、と言い残して、俺は自分の席に戻った。
「何にするか決まった?」
双子が急に怒りを収めた様子を呆気に取られて見ていたエルマーとファビアンは、俺を得体の知れない物のような目で見てきた。
「…今、二人に何て言ったの?」
「それは内緒」
俺の言葉に、ファビアンは再び顔を顰めた。
「二人とも選ばないの?選ばないなら、みんなが美味しいケーキを頬張る姿を、ただ見ているだけになるけど、それでもいい?」
僕は別にそれでも構わないけど、と言ったら、二人は慌ててメニューに視線を落とし、ケーキを選び始めた。
みんなの注文が決まりオーダーした後、俺はエルマーとファビアンに改めて向き直る。
「さて。じゃあ、せっかくだしお喋りしよっか」
「僕たちがあんたと?」
「何の話をするのさ」
二人ともツンツンしているが、会話をしてくれる気はあるようで安心した。
俺は、王立高等学園に通ってる生徒に会ったら、ぜひ聞いてみたいことがあったのだ。
ふっふっふっふっと笑ったら、二人に若干引かれた。
「こほん。実はね、君たちに聞いてみたいことがあったんだ」
「聞いてみたいこと?」
「ゴットフリートとラインハルトには内緒なんだけどね」
「いや、本人たちそこにいるけど?」
丸聞こえだよ、とエルマーは言った。
「大丈夫。聞いてないフリしてくれるから」
俺の言葉に、双子はこちらに向けていた顔を慌てて正面に戻した。
内緒というのは建前なので、別に聞かれて困るような話題ではない。堂々と聞くのも、ちょっとどうかと思うので、言ってみただけだ。
準備は整ったと、俺はずいっと体を前のめりにして、二人に小声で問いかけた。
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