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第二章
75話 模擬戦
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正面に立ち、木剣を持つゴットフリートを見て、何故こんなことになったんだと俺は遠い目をした。
子どもたちの身内自慢が発端だったと思う。
模擬戦を眺めていた子たちが、突然言い争いを始めたのだ。
「俺の兄さんの方が強い!」
「いーや、僕の兄さまの方が強い!」
「いやいや、俺の親父の方が!」
騎士団主催なだけあって、団員の兄弟や子どもたちの参加も多く、自分の兄や父が一番強いと主張し出した。
講師をしている団員の子もいたらしく、その人は息子の言葉に嬉しそうに頭をかいている。
おい。照れてないで止めろよ。
「俺が一番強いぞ」
キリッとした顔で横にいた幼馴染まで参戦した。
ゴットフリート。張り合うんじゃない。
子どもたちからも大ブーイングを受けている。
「ゴットフリートなんかより、僕たちの兄さまの方が強い!」
「そうだよ!兄さまは誰よりも強いんだからな!」
そう新たに主張したのは、何とレオンとラルフだった。
「お前たちの兄さま?」
「って、あの細い人?」
双子で整った顔立ちの二人は注目を集めていたらしく、すぐに子どもたちの視線が俺に集中した。
途端に、どっと子どもたちが笑いだす。
「あはははは!あんなヒョロイ人が強いだって?」
「嘘つくなよ!全然、筋肉ないじゃん!」
まぁ、そうなるよな。
当たり前の反応なので、俺はあまり気にならなかった。
それよりも、俺に剣の腕前がないのは、二人とも良く知っているはずだ。
何故突然そんなことを主張し始めたのかと訝しんでいると、話が思わぬ方向に進んでいった。
「僕たちの兄さまは魔法が得意だからな!」
「すごい剣の腕前がある奴にも負けない!」
二人の言葉に、子どもたちの中で興味を持った子が現れ始めた。
「お前の兄さま魔法が得意なのか?」
「へぇ、剣と魔法ってどっちが強いんだろう?」
「そりゃ剣に決まってんじゃん!」
今度は剣と魔法のどっちが強いかで、子どもたちが騒ぎ出した。
そして、レオンが決め手の一言を放つ。
「よし!じゃあ、ゴットフリート!兄さまと勝負だ!」
指名されたゴットフリートは、面白そうに口角を上げると、隣にいる俺を見た。
「いいだろう。受けて立つ」
わっ、と子どもたちが嬉しそうに歓声を上げた。
あのー、俺は一言も喋ってないんですが。
棄権とかは、できないですよね。はい。
子どもたちの模擬戦の途中だと言ってみたが、当の子どもたちが俺たちの勝負を見たいと言うので、子ども教室は一度中断され、すんなりと場所を提供された。
騎士団長の息子と宰相の息子の戦いに、話を聞きつけた騎士団員たちも見学に集まってきていて、ちょっとした見せ物みたいになっていた。
仕方ないと俺は腹を括り、久しぶりに手にした木剣を握り直す。
「ゴット、本当に魔法使っていいの?」
「あぁ。手加減は不要だ。それより木剣でいいのか?剣に拘らず、杖でもいいんだぜ」
魔法は、基本的に杖を使用して使う場合が多い。
だが、俺は別になくてもそんなに困らない。
そういえば、双子やヴィルの前で魔法をあまり使ったことないな。
期待したように、キラキラとこちらを見る弟たちの目もあることだし、ちょっと頑張ってみますか。
「心配してくれてありがとう。でも大丈夫だよ」
俺は左手の指をパチンっと鳴らした。
その瞬間、ぶんっと俺たちがいる場所を覆うような形で、観客席ギリギリまで結界が現れる。
「すげっ、一瞬で?」
騎士団員の誰かの驚いたような声が聞こえた。
魔法を盛大に使うなら、ちゃんと被害が出ないようにしないと。
俺の意図に気づいたゴットフリートが、先程までの余裕の笑みを消した。
審判の騎士団員が開始の合図を送る。
「よし!始め!」
開始の合図と同時に、俺は土魔法を使い地面を底上げして、ゴットフリートを空中に放り出してやった。
「なっ!」
俺も自分の真下の土を伸び上がらせ飛び上がり、ゴットフリートを上から木剣で叩く。
カンッと音が鳴り、体勢を捻ったゴットフリートが何なくそれを受け止めた。
「やるね」
「そっちこそ」
このままでは落下して地面に叩きつけられるというのに、ゴットフリートは楽しそうにニヤリと笑った。
俺も笑って、ぐっとゴットフリートを弾く反動で離れると、風魔法でくるんっと優雅に地上に舞い降りた。
ゴットフリートも、俺がデコボコにした地面を器用に蹴りながら、無事着地する。
それと同時に、俺は片手に木剣を持ったまま両腕をバッと左右に広げ、氷柱を空中に複数作り出した。
その数は百。
俺が木剣を斜めに振り抜いたと同時に、その氷柱が一斉にゴットフリートに襲いかかる。
ゴットフリートは色んな角度から飛んで来る氷柱を次々に木剣で弾き、避けては見事に全て回避した。
氷柱に気を取られて油断してくれるかと思ったが、背後に回り込んだ俺の攻撃も受け止められてしまう。
カンッ!
「ありゃ、残念」
「はっ、余裕だな」
ゴットフリートが隙あり!と俺の脇腹を木剣で叩こうとし、俺は手で受け止める振りをして、風魔法でその衝撃を相殺し、どんっと二人の間に強い風を挟んで、お互いを弾き飛ばした。
ゴットフリートが体勢を立て直す前に、今度は火の玉で攻撃をする。
これは、木剣で受け止めると燃えると思っているのか、すべて避けて回避された。
器用に避けるなぁと感心する。
「じゃあ、これはどうかな?」
俺は木剣に風魔法を纏いつかせた。
土魔法を使った際にできた土柱に向けて、ブンッと振り、試してみる。
風の刃が現れ、スパッと土柱が切れてドォン!と地面に落ちた。
「これは必ず避けないと、真っ二つになっちゃうから、気をつけてね?」
「いやいやいや!それはちょっと、やり過ぎじゃ」
「行くよ!」
ゴットフリートの言葉を無視して、避けれるギリギリを狙って、間隔を開け、三発放った。
ゴットフリートが無事避けた風の刃は、近くにある土柱に当たり、次々と土の塊が上から落ちて来る。
砂埃が舞い、それに紛れて俺は間合いを詰めて攻撃したが、再び受け止められてしまった。
カンッ!
逃すか!と今度はゴットフリートが続けて攻撃を仕掛けて来たので、打ち合いが続き、俺の木剣は呆気なく弾かれ、手から離れてしまった。
「あっ!あ~、負けちゃった」
「はぁ、はぁ、よく、言うぜ」
勝った気がしねぇ、とゴットフリートが荒い息を吐きながら愚痴る。
俺はその言葉に笑って、ふぅーと深く息を吐いた後、再びパチンっと指を鳴らし結界を解除した。
俺が振り返ると、呆気に取られて見ていた審判の人が、はっとして腕を上げる。
「しょ、勝負あり!ゴットフリートの勝ち!」
食い入るように見ていた観客席から歓声が上がった。
「「兄さま!」」
すぐにレオンとラルフが駆け寄ってくる。
二人を抱きとめて、俺は謝った。
「ごめんね、二人とも。負けちゃった」
悲しんでるかなと思ったが、二人は頬を紅潮させ、興奮したように捲し立てた。
「ううん!兄さま凄かったよ!」
「そうだよ!兄さまの魔法はやっぱり凄い!僕、見ててドキドキしちゃった!」
全然負けてない、と弟たちは絶賛してくれる。
良かった。兄の面子は守れたらしい。
「いや、本当に見事だったよ」
拍手をしながら近づいて来たのは、ゴットフリートの父親である騎士団長だった。
いつの間にか見ていたらしい。
父親の出現に、ゴットフリートが嫌そうに顔を歪める。
「ゴットフリート。お前は明日からいつもの鍛錬メニュー三倍な」
「げぇ」
父親の言葉に、ゴットフリートはガックリと肩を落とした。
「お久しぶりです。騎士団長様。ゴットフリートは今回勝ちましたよ?」
「手加減されて、だろう?これが戦場で本気で殺しに来られたら、数分でやられてしまうさ」
言葉を返すようだが、俺もゴットフリートには手加減されていた。
そもそも、ゴットフリートが本気を出せば、打ち合いなどならずに、一撃で俺の木剣は弾かれていたはずだ。
魔法を警戒していた可能性もあるが、俺が怪我をしないように、力を加減してくれていたことは明らかだった。
お互い様なんだけどな。
しかし、ゴットフリートはそうは思ってないようだった。
「父上の言う通りだ。明日から三倍頑張って、今度は必ず勝つ!」
すぐに立ち直ったかと思うと、ゴットフリートは拳を握り締め、高らかと俺に宣言した。
いや、だからゴットフリートが勝ったんだってば。
まぁ、やる気になってるみたいだから、そのままにしておくか。
俺は荒らした鍛錬場を元に戻し、再び始まった子どもたちの模擬戦を見学した。
「はぁー、疲れちゃった」
そう言って、ポテンっと隣に座っていたゴットフリートに寄りかかる。
「俺の方が疲れたっつーの。お前いつからあんなに強くなってたんだ?赤子以下の魔力量はどうした」
「いつの話をしてるのさ。あれから結構頑張って増やしたに決まってるじゃない」
俺は、ふわぁと欠伸をした。
魔力を使い過ぎてしまったらしく、眠くなってきた。
大きな技をたくさん使ったしな。
あ、やば。瞼が落ちてきた。
「そんな簡単に魔力量って増えるものなのか?」
「そんな簡単に、ふえるわけ」
ないでしょ、と言い切れたかどうか分からない。
フィン、寝たのか?とゴットフリートの声が聞こえた後、そっと抱き寄せられる。
額に何か柔らかいものが触れたような気がしたが、睡魔に襲われて眠りに落ちた俺には、それが何だったのか分からなかった。
子どもたちの身内自慢が発端だったと思う。
模擬戦を眺めていた子たちが、突然言い争いを始めたのだ。
「俺の兄さんの方が強い!」
「いーや、僕の兄さまの方が強い!」
「いやいや、俺の親父の方が!」
騎士団主催なだけあって、団員の兄弟や子どもたちの参加も多く、自分の兄や父が一番強いと主張し出した。
講師をしている団員の子もいたらしく、その人は息子の言葉に嬉しそうに頭をかいている。
おい。照れてないで止めろよ。
「俺が一番強いぞ」
キリッとした顔で横にいた幼馴染まで参戦した。
ゴットフリート。張り合うんじゃない。
子どもたちからも大ブーイングを受けている。
「ゴットフリートなんかより、僕たちの兄さまの方が強い!」
「そうだよ!兄さまは誰よりも強いんだからな!」
そう新たに主張したのは、何とレオンとラルフだった。
「お前たちの兄さま?」
「って、あの細い人?」
双子で整った顔立ちの二人は注目を集めていたらしく、すぐに子どもたちの視線が俺に集中した。
途端に、どっと子どもたちが笑いだす。
「あはははは!あんなヒョロイ人が強いだって?」
「嘘つくなよ!全然、筋肉ないじゃん!」
まぁ、そうなるよな。
当たり前の反応なので、俺はあまり気にならなかった。
それよりも、俺に剣の腕前がないのは、二人とも良く知っているはずだ。
何故突然そんなことを主張し始めたのかと訝しんでいると、話が思わぬ方向に進んでいった。
「僕たちの兄さまは魔法が得意だからな!」
「すごい剣の腕前がある奴にも負けない!」
二人の言葉に、子どもたちの中で興味を持った子が現れ始めた。
「お前の兄さま魔法が得意なのか?」
「へぇ、剣と魔法ってどっちが強いんだろう?」
「そりゃ剣に決まってんじゃん!」
今度は剣と魔法のどっちが強いかで、子どもたちが騒ぎ出した。
そして、レオンが決め手の一言を放つ。
「よし!じゃあ、ゴットフリート!兄さまと勝負だ!」
指名されたゴットフリートは、面白そうに口角を上げると、隣にいる俺を見た。
「いいだろう。受けて立つ」
わっ、と子どもたちが嬉しそうに歓声を上げた。
あのー、俺は一言も喋ってないんですが。
棄権とかは、できないですよね。はい。
子どもたちの模擬戦の途中だと言ってみたが、当の子どもたちが俺たちの勝負を見たいと言うので、子ども教室は一度中断され、すんなりと場所を提供された。
騎士団長の息子と宰相の息子の戦いに、話を聞きつけた騎士団員たちも見学に集まってきていて、ちょっとした見せ物みたいになっていた。
仕方ないと俺は腹を括り、久しぶりに手にした木剣を握り直す。
「ゴット、本当に魔法使っていいの?」
「あぁ。手加減は不要だ。それより木剣でいいのか?剣に拘らず、杖でもいいんだぜ」
魔法は、基本的に杖を使用して使う場合が多い。
だが、俺は別になくてもそんなに困らない。
そういえば、双子やヴィルの前で魔法をあまり使ったことないな。
期待したように、キラキラとこちらを見る弟たちの目もあることだし、ちょっと頑張ってみますか。
「心配してくれてありがとう。でも大丈夫だよ」
俺は左手の指をパチンっと鳴らした。
その瞬間、ぶんっと俺たちがいる場所を覆うような形で、観客席ギリギリまで結界が現れる。
「すげっ、一瞬で?」
騎士団員の誰かの驚いたような声が聞こえた。
魔法を盛大に使うなら、ちゃんと被害が出ないようにしないと。
俺の意図に気づいたゴットフリートが、先程までの余裕の笑みを消した。
審判の騎士団員が開始の合図を送る。
「よし!始め!」
開始の合図と同時に、俺は土魔法を使い地面を底上げして、ゴットフリートを空中に放り出してやった。
「なっ!」
俺も自分の真下の土を伸び上がらせ飛び上がり、ゴットフリートを上から木剣で叩く。
カンッと音が鳴り、体勢を捻ったゴットフリートが何なくそれを受け止めた。
「やるね」
「そっちこそ」
このままでは落下して地面に叩きつけられるというのに、ゴットフリートは楽しそうにニヤリと笑った。
俺も笑って、ぐっとゴットフリートを弾く反動で離れると、風魔法でくるんっと優雅に地上に舞い降りた。
ゴットフリートも、俺がデコボコにした地面を器用に蹴りながら、無事着地する。
それと同時に、俺は片手に木剣を持ったまま両腕をバッと左右に広げ、氷柱を空中に複数作り出した。
その数は百。
俺が木剣を斜めに振り抜いたと同時に、その氷柱が一斉にゴットフリートに襲いかかる。
ゴットフリートは色んな角度から飛んで来る氷柱を次々に木剣で弾き、避けては見事に全て回避した。
氷柱に気を取られて油断してくれるかと思ったが、背後に回り込んだ俺の攻撃も受け止められてしまう。
カンッ!
「ありゃ、残念」
「はっ、余裕だな」
ゴットフリートが隙あり!と俺の脇腹を木剣で叩こうとし、俺は手で受け止める振りをして、風魔法でその衝撃を相殺し、どんっと二人の間に強い風を挟んで、お互いを弾き飛ばした。
ゴットフリートが体勢を立て直す前に、今度は火の玉で攻撃をする。
これは、木剣で受け止めると燃えると思っているのか、すべて避けて回避された。
器用に避けるなぁと感心する。
「じゃあ、これはどうかな?」
俺は木剣に風魔法を纏いつかせた。
土魔法を使った際にできた土柱に向けて、ブンッと振り、試してみる。
風の刃が現れ、スパッと土柱が切れてドォン!と地面に落ちた。
「これは必ず避けないと、真っ二つになっちゃうから、気をつけてね?」
「いやいやいや!それはちょっと、やり過ぎじゃ」
「行くよ!」
ゴットフリートの言葉を無視して、避けれるギリギリを狙って、間隔を開け、三発放った。
ゴットフリートが無事避けた風の刃は、近くにある土柱に当たり、次々と土の塊が上から落ちて来る。
砂埃が舞い、それに紛れて俺は間合いを詰めて攻撃したが、再び受け止められてしまった。
カンッ!
逃すか!と今度はゴットフリートが続けて攻撃を仕掛けて来たので、打ち合いが続き、俺の木剣は呆気なく弾かれ、手から離れてしまった。
「あっ!あ~、負けちゃった」
「はぁ、はぁ、よく、言うぜ」
勝った気がしねぇ、とゴットフリートが荒い息を吐きながら愚痴る。
俺はその言葉に笑って、ふぅーと深く息を吐いた後、再びパチンっと指を鳴らし結界を解除した。
俺が振り返ると、呆気に取られて見ていた審判の人が、はっとして腕を上げる。
「しょ、勝負あり!ゴットフリートの勝ち!」
食い入るように見ていた観客席から歓声が上がった。
「「兄さま!」」
すぐにレオンとラルフが駆け寄ってくる。
二人を抱きとめて、俺は謝った。
「ごめんね、二人とも。負けちゃった」
悲しんでるかなと思ったが、二人は頬を紅潮させ、興奮したように捲し立てた。
「ううん!兄さま凄かったよ!」
「そうだよ!兄さまの魔法はやっぱり凄い!僕、見ててドキドキしちゃった!」
全然負けてない、と弟たちは絶賛してくれる。
良かった。兄の面子は守れたらしい。
「いや、本当に見事だったよ」
拍手をしながら近づいて来たのは、ゴットフリートの父親である騎士団長だった。
いつの間にか見ていたらしい。
父親の出現に、ゴットフリートが嫌そうに顔を歪める。
「ゴットフリート。お前は明日からいつもの鍛錬メニュー三倍な」
「げぇ」
父親の言葉に、ゴットフリートはガックリと肩を落とした。
「お久しぶりです。騎士団長様。ゴットフリートは今回勝ちましたよ?」
「手加減されて、だろう?これが戦場で本気で殺しに来られたら、数分でやられてしまうさ」
言葉を返すようだが、俺もゴットフリートには手加減されていた。
そもそも、ゴットフリートが本気を出せば、打ち合いなどならずに、一撃で俺の木剣は弾かれていたはずだ。
魔法を警戒していた可能性もあるが、俺が怪我をしないように、力を加減してくれていたことは明らかだった。
お互い様なんだけどな。
しかし、ゴットフリートはそうは思ってないようだった。
「父上の言う通りだ。明日から三倍頑張って、今度は必ず勝つ!」
すぐに立ち直ったかと思うと、ゴットフリートは拳を握り締め、高らかと俺に宣言した。
いや、だからゴットフリートが勝ったんだってば。
まぁ、やる気になってるみたいだから、そのままにしておくか。
俺は荒らした鍛錬場を元に戻し、再び始まった子どもたちの模擬戦を見学した。
「はぁー、疲れちゃった」
そう言って、ポテンっと隣に座っていたゴットフリートに寄りかかる。
「俺の方が疲れたっつーの。お前いつからあんなに強くなってたんだ?赤子以下の魔力量はどうした」
「いつの話をしてるのさ。あれから結構頑張って増やしたに決まってるじゃない」
俺は、ふわぁと欠伸をした。
魔力を使い過ぎてしまったらしく、眠くなってきた。
大きな技をたくさん使ったしな。
あ、やば。瞼が落ちてきた。
「そんな簡単に魔力量って増えるものなのか?」
「そんな簡単に、ふえるわけ」
ないでしょ、と言い切れたかどうか分からない。
フィン、寝たのか?とゴットフリートの声が聞こえた後、そっと抱き寄せられる。
額に何か柔らかいものが触れたような気がしたが、睡魔に襲われて眠りに落ちた俺には、それが何だったのか分からなかった。
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