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第162話 魔術師オズワルドの破滅③

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 苦痛に顔をゆがめ、オズワルドは声を失います。

「お前の残った左腕を、今ここで切り落としてもいいのよ。両腕をなくしたら、さすがに不便になるでしょうね。
 ほら、何とか言ったらどう? 命乞いでもしてみなさいな」

 子どものオズワルドは、あまりに哀れでした。
 私は二人の間に割って入ると、妖精王からのペンダントを掲げ、オズワルドに向き直りました。

「オズワルド。あなたのかけた呪いは解きました。
 このペンダントの宝石の中に、あなたが呪いのために使った、あなた自身の魂のかけらが蛇となって入っています。この蛇を割り殺せば、あなたは死ぬでしょう。自白するなら割るまではしません。真実を……」

 オズワルドは私をにらみ、馬鹿にしたように笑いました。

「それで俺を脅しているつもりか、ルチル。はは、では俺を殺してみたらどうだ?
 ただの平民だった俺を引き立て、夢を見せてくれた王への忠義が、このくらいで揺らぐと思うか? 王の狂犬と呼ばれた悪名、気に入ってる。最後までそのようにあろうじゃないか」

「お前っ!」

 エルザ妃がもう一度手にした剣を振り上げました。

「おやめください!」

 私はエルザ妃の前に跪き、オズワルドの前で両手を広げました。

「エルザ妃殿下、何卒おやめください……。
 オズワルドは何もかも失い、もう何の力もないのです。
 今あなたが手を下さなくても、リディスの法にのっとり、裁きも下るでしょう。力のないものにこれ以上の制裁を加えるのは、見ていられません……」

 エルザ妃はしばらく黙ると、呆れたように小さくため息をつきました。

「聖女さまはお優しい。……捕まえなさい」

 騎士に引き立てられる子どもの姿のオズワルドは、がっくりと肩を落とし、最後に私に問い掛けました。

「……王は生きているか?」

 私は答えました。

「ええ。ちゃんと王都を出たと聞いています」

 オズワルドは安心したように、口元を引き上げ、少しだけ息を吐きました。
 私がオズワルドと会話したのは、あとにも先にも、これが最後でした。
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