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第71話 私に触れると

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 私は目をつぶり、もう一度、ルカの手を両手でぎゅっと握りました。
 そして、渾身の力で、私は解呪の祝詞を唱えました。

 さっきよりもまばゆい光が、二人を包み、膨らみ、最後に雪のようにルカの中に溶けていきました。
 しばらくで最後の光のまたたきが消え、目の前のルカが、口を開きました。

「……君の手を、このまま借りていていいか?」

「え? はい」

「ありがとう」

 言うなり、ルカが私の手をそっと握ったまま、軽く自分の頬につけ、目を閉じました。

「へ? ル、ルカ?」

 思わぬスキンシップに私が固まっているうちに、ルカの髪から狼の耳がふぁさ、と姿を現しました。

「ルカ、耳が……」

「君に触れると、やはりこうなるな」

 ルカは目を開けると、困ったように微笑みました。

「私の……私の力が足りないから……
 私、今日から、もっともっとスターシアを食べて、ルカの解呪を、」

 思わず泣いてしまいそうで、私は声がかすかに震えるのをなんとかおさえました。
 一番困ってるのは、ルカなのに。私がこんなじゃ、ダメですね。

「いや、多分これは……俺をどうにかしても解けないんだ。
 ルチルの力が、どんなに強かったとしても……解呪は難しいんじゃないかと思う」

「解けないって、どういう」

「これは、特殊な呪術だと……昔呪いを解こうとした魔術師がいっていた」

「特殊?」

「この呪いは、俺に直接かけられているわけではなさそうだと。
 誰かにかけられた呪いが、俺に作用していんじゃないかと言っていた。
 だから、俺をどうこうしても、呪いは解けないだろうと」

「誰かに、かけられた呪いが作用する? そんなことってあるんですか?」

「古い魔術だ。
 複雑な……もう失われた古い魔法。
 間接呪詛かんせつじゅそ、と言ったかな。
 例えば、親に呪いをかけて、その子どもが病気になるみたいなものがこれだ。
 本人でない者に、呪いの効果を及ぼすもの」

「そんな……」

 私は、夢渡りの彼女が言っていたことを思い出していました。

『このままだとルカは死ぬかも』

 気が付けば、私はぎゅっとルカの手を、握っていて。
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