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PART1
中学時代に振った優良物件を惜しむ来月32歳
しおりを挟む「あーー」
これほどまでに萎える事があるだろうか。この男根型バイブと本物の男根のどちらが優秀かどうか、そんな下らない事を考えてる瞬間に逝くって……。
今月最大の賢者タイムを迎えながら私はいそいそと洗面台に向かう。
歯ブラシに歯磨き粉を乗せて、まじまじと鏡の中の自分の顔を見る。
フェイスラインが想定以上に弛んできた。肌ツヤと顔色は日頃のオナニーと、バカ高い美容液と美顔器のお陰ですこぶる良好。
ただ見せかけの表皮は誤魔化せても、肌の奥深くの細胞まではそうはいかない。
信じられないことに私は来月で32歳を迎える。
年齢に関しては30を超えた辺りから真面目に自分の歳いくつだっけ?と、年齢を勘定する時だけIQがだだ下がりして数も数えれなくなった。
将来、歯槽膿漏にならない事を祈りながら奥歯の裏側まで丹念に磨いて、自分の肉低年齢に戦慄していた。
信じられる?来月32歳を迎えるのに独身で、彼氏も居なくて、朝から上司をオカズにバイブでフィニッシュしようかと思ったけど、下らない事を考えながら逝っちゃって、賢者タイムのさ中、無理矢理体を起こして、将来歯槽膿漏にならないように丁寧に歯を磨いてるなんて……!
なんてこったい私の人生。
舌の舌苔まで丁寧にブラッシングしながら自分の人生を振り返っていた。
まもなく32歳の私、今こんな感じよ!ってのを10年前の自分に聞かせられない。きっと生きる希望を失うか卒倒すると思う。22の頃は、絶対25位で結婚すると本気で信じ込んでいたもの。
「ガラゴロガラゴロ……」
口内の朝一のクソ汚いばい菌を殲滅させる勢いで何度もうがいをする。
朝一起きたての臭い口でキスできる恋人同士が、心底羨ましい。
起きたての口臭が年々キツくなってきた事を懸念するこんな私でも、これまでの人生、異性からモテてきたつもりではある。
中学の頃、将来老けたくない一心で日焼け止めを念入りにした時から美意識に目覚めて、色付きリップや透明マスカラをし始めて、色気付いてきた辺りから異性に人気が出てきた。
元々、繊細で引っ込み思案だった性格故、人への気遣いとかさりげない笑いを取ったりだとか、人の顔色を伺う習慣が染み付いていた。誰からも嫌われないように誰の陰口も言わず、とにかく顔に笑顔を貼り付けて明るく振る舞っていたら、気付けば年間5人の男子から告白されるようになっていた。
そんな私、異性にはモテたし気を許せる同性の友達も2人位はいたけれど、ある女子グループのリーダー格の子が片想いをしていた男子が、私を好きになってしまい、私は彼女の嫉妬の対象となり、その女子グループから粘着質なイジメを受ける事になったのだ。
上履きの中に画鋲と残飯、スカートの中を盗撮されてクラス中に画像を一斉送信され、体操服を隠され、ぶつかったふりして制服に3人分の牛乳をいっぺんにぶっかけられたり、エトセトラエトセトラ。
そんな分かりやすいイジメのレパートリーを見兼ねた優しい先生に心配された事もあった。
でも私の逞しいところと言えば、相談してね?と言ってきてくれた先生にも、
『大丈夫です!私気にしてませんから!』とめげずに明るく言い放つところだった。
人から見ると放っておけないタイプに見えるらしいし、受け身で引っ込み思案ではあるんだけど、そもそも自分自身がモテる事が原因だった事を妙に誇っていた節があり、それがイジメに屈しない精神力に繋がっていたのでは?と今になって分析できた。
そのイジメの原因でもある、主犯格の女子が片想いしてやまなかった人気者の桜庭くん。
背がすらっと高くて、顔がすこぶる整ってて、その辺の女子より顔が小さくて、目が大きくて、笑うと可愛くて、成績はいつも学年トップで、運動神経も良くて、明るくて、いつもみんなの中心にいたような男子だった。良い所を列挙するだけでも1時間は掛かるくらいの優良物件な彼。
中3の学園祭の日、『里帆、ちょっといい?』と、私は桜庭くんに人気のない体育館の用具室に呼び出された。
忘れもしない。
『俺、里帆のこと、好きだよ。良ければ俺と付き合ってほしい……』って、
こんなストレートで絵に描いたようなシチュエーションの告白シーンがありますか?
思春期を迎え、この頃から既に性欲に目覚めて夜な夜なオナニーしていた私。
正直なところ、桜庭くんの事はオカズに使うくらいには好きだったし、告白された時も股の間ビショビショだったと思うけど、なんと、私は彼を振ったのだ。
それ以来、桜庭くんは一気に人当たりが悪くなり、クラスの女子は寄り付かなくなった。
でも、私が振ってしまった事が人付き合いが悪くなった原因だと決め付けるのはおこがましく、受験勉強のストレスもあったのかもしれない。
ただ、学園祭が終わったと同時に私へのイジメもピタリと止んで、無事、激動の中学時代は幕を閉じたのだ。
頭が良かった彼は他県の偏差値の高い進学校に合格し、私含めた地元の高校に進学した他の同級生とは疎遠になった。
それ以来、大人になってから何人かの同級生とは飲み会で会ったりした事もあったけど、中学卒業以来、桜庭くんには私だけではなく他の皆も会ったことがないらしい。
今や幻のハイスペイケメン桜庭くん。
大人になった今、彼はどんな素敵な男性になっているのでしょう。
作り置きのネギ入り卵焼きを電子レンジでチンしながら、タコさんにカットした安いウインナーをフライパンで炒めて、ぼんやりと妄想していた。
きっとこんな風に節約弁当作って生活費切り詰めて美容代につぎ込んでる独り身の私と違って、美人の奥さんが作った手の込んだ映えるオシャレな曲げわっぱの丸いお弁当を持って、大企業の会社に出社してバリバリ稼いでらっしゃるんだろうなー。あ、バリバリ稼いでいるのなら、お弁当ではなく高いランチでも食べてるのかな?
あーあ、大人になって色気増して良い体になってるであろう桜庭くんと、一夜限りでいいからセックスしてー!
そんな事をぼーっと考えていたらタコさんウインナーを焦がしそうになった。
ありもしない世界線を思いながら、私は桜庭くんを振ってしまった事を今になって大後悔している。
当時、多感な時期だった15歳の私。
桜庭くんを振るにはそれなりの理由があった。
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