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2つの現実の狭間で
2つの現実の狭間で ~自分だけの「もう1人」の先生~ 4
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優也の隣にいる真由美先生から微かに漂う香りは、彼にとってはまるで白日夢をみているかのような心地にさせるものでした。
触れそうな程すぐ横にいる先生に手を伸ばしたくなる誘惑を抑え、彼女がパソコンの画面を見ながら説明する言葉に、意味を理解する余裕すら無く、ただひたすら頷いていたのです。
…… これが真由美先生の香り ……
…… こんなに甘くて、心地よい香りなんだ ……
「ねえ、真壁君。先生の話しちゃんと聞いてる?」
真由美はちょっと憮然とした声で真横にいる優也に顔を向けました。優也は、息がかかりそうな程の近さで彼女と目が合った事に動揺し、慌てて視線をずらしました。
「真壁君の方からだと画面が見えにくいのかな」
彼女はパソコンの向きを少し優也の方にずらしました。
「もしかしたら、円グラフの方がわかりやすいのかもね」
真由美はパソコンを操作しながら画面の中のデータを切り替えます。優也はそのマウスに添えられた美しい指先に心を乱されました。
…… 先生はこの綺麗な手にローションを付けて、男の人の勃起したものに触れているんだ ……
…… この綺麗な指が、いろんな男の精液で白く汚されるなんて ……
優也は頭に浮かぶ真由美先生の淫らな姿をかき消そうとしましたが、彼女の甘い香りが罠のように彼を誘惑します。白濁の粘液がしたたる美しい指先への夢想が、揺れ動く若い理性を艶めかしい場面へと引き寄せようとするのです。
彼の体の変化は抑えようの無いものでした。下腹部に熱い想いが込み上げ、徐々に茎が固さを増し続けています。それに合わせるかのように息も早まり、すぐ隣りにいる真由美先生に気付かれないよう、必死に平静さを装いました。
しかし、焦れば焦るほど、堪えれば堪えるほど、強張りは先から雫を滴らせながら大きさを増してくるのです。
「真壁君の数学での弱点は応用問題かな」
真由美先生のすぐ側で、体と感情の高まりを悟られないよう、手を下腹部に添えてその変化を隠しました。
見ないようにしても、先生の髪の隙間から白い首筋が目に入ります。貴賓館のサイトにある彼女のプロフィールには、性感帯の一つに首筋がありました。
その事を知っている男性客なら皆、彼女の首に舌先を這わせ、身悶える姿を見つめながら至福に浸ることでしょう。
…… 先生の首筋に触れたい ……
…… 息がかかっちゃうほど近くに先生がいるのに、指先一つすら触れられないなんて ……
優也は真由美先生の襟元からその下にかけての胸の膨らみ、更に腰にかけてのくびれたラインを、これ程の近くから見下ろしたのは初めてでした。
スカートからのぞく美しい脚も、隣りにいる優也の脚と触れないのが不思議な程の近さにありました。何度も彼は、わざと脚を組み替えて先生の脚に触れたいとの誘惑に駆られましたが、その度に思い止まったのです。
彼女の着衣の下にある肌に触れ、その温かさや柔らかさを感じられたら、どんなに幸せだろう…… 他に何か望むものなんてあるだろうか…… 彼は、手をほんの少し伸ばせば触れることの出来る至福への誘いを必死に堪え続けたのです。
彼の脆い理性を嘲笑うように、強張った茎の張りは更に頭をもたげ、亀頭の割れ目から垂れ流れる生温い粘液が、ズボンの布地に微かに浮かび上がります。
「真壁君、成績の下降率が……」
真由美は隣の優也に顔を向けた途端、途中でその言葉を失いました。彼女が目にしたのは、顔を赤らめ、乱れる呼吸を押しころし、両手で必死に勃起を隠そうとしている生徒の姿だったのです。
…… あぁっ ……
…… 先生に知られてしまった ……
…… 1番見られたくない人に、1番恥ずかしい姿を見られた ……
…… 軽蔑されちゃう…… 嫌われちゃう ……
真由美は何も言わずに目の前のパソコンを急に閉じると、席を立ち上がって2つ隣の椅子に座りました。向かい側の壁を見つめたまま、微かに唇が動いたのです。
…… 最低 ……
優也には彼女がそう呟いたように思えました。
時間にすればごく僅だったかも知れませんが、彼にとっては残酷な無音の間だったのです。
「真壁君…… 向かい側に行って…… いえ、いいわ、先生が移動する」
彼女はそう言うと、パソコンを持って優也の対面に座りました。そしてテーブルの上に両ひじを乗せ、額に両手を当てて俯いたのです。
…… 先生、何か話してよ。叱られた方がまだましだよ ……
真奈美の肩が僅かに動き、下を向いたまま溜め息をつきました。表情は額に当てた両手に隠れて優也からは見えません。優也は思い切って自分から声を掛けようとしました。ですが言葉が浮かびません。
(いっそ、思い切って先生の秘密を知っている事を言ってしまおう …… 先生だって人に知られたくない恥ずかしいことしてるんだよって …… 口止めして欲しかったら、この部屋は他に誰もいないからキスさせろって …… そうすれば先生の胸や脚やにだって触れるんだ。服を脱がせることだって ……)
優也はうな垂れながらも、心の中では激しく葛藤していました。
(もう、こうなったら構わない、言ってしまえ、今しかない)
鼓動が身体中を激しく駆け巡りました。手を握りしめながら最後の勇気を振り絞ろうと、喉の奥に力を込めます。
(ダメだ…… きっと「そんな事なんかしていない、先生を脅迫するのなら証拠を見せなさい」って言われるだけだ。 あぁ、どうしよう ……)
それは彼の葛藤が限界に達する間際でした。やっと真由美先生が顔を上げたのです。
優也は思わず口の中に溜まった唾を飲み込みました。
「真壁君、ごめんね……」
その言葉は、彼にとって余りにも意外なものでした。
「私の配慮が足りなかったかもね…… 恥ずかしい思いをさせてごめんね…… 」
それは今まで彼女が優也にかけた言葉の中で、最も優しくて柔らかな言葉でした。
「真壁君はセックスに興味のある年頃だもんね。さっきの事は恥ずかしいことじゃないわよ」
真由美の口から出たその言葉に、優也は思わず顔を上げて彼女の目を見ました。成績に対する厳しさや冷徹さは無く、生徒の悩みに同じ目線で寄り添おうとする優しげなものだったのです。
「その事が頭に浮かんで勉強が手に付かない時、どうしているの? オナニーしたりはするんでしょ」
彼は顔を赤らめて返事に戸惑いながらも、無言で頷きました。
「セックスに興味を持つことも、オナニーしたりすることも、真壁君の年頃なら仕方のないことなのよ」
先生は言葉を続けます。
「だけど、物事にはバランスが大切なの。それにばかり気持ちが行って、肝心の勉強が疎かになったら本末転倒なのよ」
優也はやっと先生の言葉に頷く事が出来ました。
「射精することで気持ちが収まるなら、自分をコントロールして上手に性欲を処理しなきゃ、ね!」
気がつけば優也の眼からは涙が溢れ出ていました。嗚咽を繰り返す頬を伝わって、床に涙の雫が数滴、溢れおちます。
「あらあら…… こんな事でしょうがないわね」
真由美はそう言うと、スカートのポケットからハンカチを取り出して優也に渡しました。
「だから最初に先生が言ったでしょ。今日は進路指導じゃなくてカウンセリングだって」
優也はハンカチで涙を拭きながら、何度も頷きました。
「今日はこれまでにしようか。成績が下がった原因が分かっただけでも良しとしようね」
その言葉に思わず優也は、真由美に許しを乞うような表情で慌てて顔をあげました。
「馬鹿ねー。今日の事、面談票に書くわけ無いでしょ。先生と真壁君だけの内緒にしようね」
「は…… はい」
やっと彼はその顔に笑みを浮かべました。真由美も、自分が彼を追い詰めてしまったと思って責任を感じていたので、少し気持ちが楽になりました。
「先生は職員室に戻るから、涙が乾くまでここにいていいよ。元気出してね!」
優也はドアを締めて部屋を出ていく真由美の後ろ姿を見ながら、自分の悩みに寄り添ってくれた彼女の一面を初めて知りました。顔や姿が美しいだけでなく、本当は生徒のことを思ってくれる優しい先生なんだと気付いたのです。
それと同時に、性感エステティシャンの副業を口外しない交換条件で、彼女の体で性の欲望を満たそうとした自分が増々惨めに思えたのです。
<この章、終わり>
触れそうな程すぐ横にいる先生に手を伸ばしたくなる誘惑を抑え、彼女がパソコンの画面を見ながら説明する言葉に、意味を理解する余裕すら無く、ただひたすら頷いていたのです。
…… これが真由美先生の香り ……
…… こんなに甘くて、心地よい香りなんだ ……
「ねえ、真壁君。先生の話しちゃんと聞いてる?」
真由美はちょっと憮然とした声で真横にいる優也に顔を向けました。優也は、息がかかりそうな程の近さで彼女と目が合った事に動揺し、慌てて視線をずらしました。
「真壁君の方からだと画面が見えにくいのかな」
彼女はパソコンの向きを少し優也の方にずらしました。
「もしかしたら、円グラフの方がわかりやすいのかもね」
真由美はパソコンを操作しながら画面の中のデータを切り替えます。優也はそのマウスに添えられた美しい指先に心を乱されました。
…… 先生はこの綺麗な手にローションを付けて、男の人の勃起したものに触れているんだ ……
…… この綺麗な指が、いろんな男の精液で白く汚されるなんて ……
優也は頭に浮かぶ真由美先生の淫らな姿をかき消そうとしましたが、彼女の甘い香りが罠のように彼を誘惑します。白濁の粘液がしたたる美しい指先への夢想が、揺れ動く若い理性を艶めかしい場面へと引き寄せようとするのです。
彼の体の変化は抑えようの無いものでした。下腹部に熱い想いが込み上げ、徐々に茎が固さを増し続けています。それに合わせるかのように息も早まり、すぐ隣りにいる真由美先生に気付かれないよう、必死に平静さを装いました。
しかし、焦れば焦るほど、堪えれば堪えるほど、強張りは先から雫を滴らせながら大きさを増してくるのです。
「真壁君の数学での弱点は応用問題かな」
真由美先生のすぐ側で、体と感情の高まりを悟られないよう、手を下腹部に添えてその変化を隠しました。
見ないようにしても、先生の髪の隙間から白い首筋が目に入ります。貴賓館のサイトにある彼女のプロフィールには、性感帯の一つに首筋がありました。
その事を知っている男性客なら皆、彼女の首に舌先を這わせ、身悶える姿を見つめながら至福に浸ることでしょう。
…… 先生の首筋に触れたい ……
…… 息がかかっちゃうほど近くに先生がいるのに、指先一つすら触れられないなんて ……
優也は真由美先生の襟元からその下にかけての胸の膨らみ、更に腰にかけてのくびれたラインを、これ程の近くから見下ろしたのは初めてでした。
スカートからのぞく美しい脚も、隣りにいる優也の脚と触れないのが不思議な程の近さにありました。何度も彼は、わざと脚を組み替えて先生の脚に触れたいとの誘惑に駆られましたが、その度に思い止まったのです。
彼女の着衣の下にある肌に触れ、その温かさや柔らかさを感じられたら、どんなに幸せだろう…… 他に何か望むものなんてあるだろうか…… 彼は、手をほんの少し伸ばせば触れることの出来る至福への誘いを必死に堪え続けたのです。
彼の脆い理性を嘲笑うように、強張った茎の張りは更に頭をもたげ、亀頭の割れ目から垂れ流れる生温い粘液が、ズボンの布地に微かに浮かび上がります。
「真壁君、成績の下降率が……」
真由美は隣の優也に顔を向けた途端、途中でその言葉を失いました。彼女が目にしたのは、顔を赤らめ、乱れる呼吸を押しころし、両手で必死に勃起を隠そうとしている生徒の姿だったのです。
…… あぁっ ……
…… 先生に知られてしまった ……
…… 1番見られたくない人に、1番恥ずかしい姿を見られた ……
…… 軽蔑されちゃう…… 嫌われちゃう ……
真由美は何も言わずに目の前のパソコンを急に閉じると、席を立ち上がって2つ隣の椅子に座りました。向かい側の壁を見つめたまま、微かに唇が動いたのです。
…… 最低 ……
優也には彼女がそう呟いたように思えました。
時間にすればごく僅だったかも知れませんが、彼にとっては残酷な無音の間だったのです。
「真壁君…… 向かい側に行って…… いえ、いいわ、先生が移動する」
彼女はそう言うと、パソコンを持って優也の対面に座りました。そしてテーブルの上に両ひじを乗せ、額に両手を当てて俯いたのです。
…… 先生、何か話してよ。叱られた方がまだましだよ ……
真奈美の肩が僅かに動き、下を向いたまま溜め息をつきました。表情は額に当てた両手に隠れて優也からは見えません。優也は思い切って自分から声を掛けようとしました。ですが言葉が浮かびません。
(いっそ、思い切って先生の秘密を知っている事を言ってしまおう …… 先生だって人に知られたくない恥ずかしいことしてるんだよって …… 口止めして欲しかったら、この部屋は他に誰もいないからキスさせろって …… そうすれば先生の胸や脚やにだって触れるんだ。服を脱がせることだって ……)
優也はうな垂れながらも、心の中では激しく葛藤していました。
(もう、こうなったら構わない、言ってしまえ、今しかない)
鼓動が身体中を激しく駆け巡りました。手を握りしめながら最後の勇気を振り絞ろうと、喉の奥に力を込めます。
(ダメだ…… きっと「そんな事なんかしていない、先生を脅迫するのなら証拠を見せなさい」って言われるだけだ。 あぁ、どうしよう ……)
それは彼の葛藤が限界に達する間際でした。やっと真由美先生が顔を上げたのです。
優也は思わず口の中に溜まった唾を飲み込みました。
「真壁君、ごめんね……」
その言葉は、彼にとって余りにも意外なものでした。
「私の配慮が足りなかったかもね…… 恥ずかしい思いをさせてごめんね…… 」
それは今まで彼女が優也にかけた言葉の中で、最も優しくて柔らかな言葉でした。
「真壁君はセックスに興味のある年頃だもんね。さっきの事は恥ずかしいことじゃないわよ」
真由美の口から出たその言葉に、優也は思わず顔を上げて彼女の目を見ました。成績に対する厳しさや冷徹さは無く、生徒の悩みに同じ目線で寄り添おうとする優しげなものだったのです。
「その事が頭に浮かんで勉強が手に付かない時、どうしているの? オナニーしたりはするんでしょ」
彼は顔を赤らめて返事に戸惑いながらも、無言で頷きました。
「セックスに興味を持つことも、オナニーしたりすることも、真壁君の年頃なら仕方のないことなのよ」
先生は言葉を続けます。
「だけど、物事にはバランスが大切なの。それにばかり気持ちが行って、肝心の勉強が疎かになったら本末転倒なのよ」
優也はやっと先生の言葉に頷く事が出来ました。
「射精することで気持ちが収まるなら、自分をコントロールして上手に性欲を処理しなきゃ、ね!」
気がつけば優也の眼からは涙が溢れ出ていました。嗚咽を繰り返す頬を伝わって、床に涙の雫が数滴、溢れおちます。
「あらあら…… こんな事でしょうがないわね」
真由美はそう言うと、スカートのポケットからハンカチを取り出して優也に渡しました。
「だから最初に先生が言ったでしょ。今日は進路指導じゃなくてカウンセリングだって」
優也はハンカチで涙を拭きながら、何度も頷きました。
「今日はこれまでにしようか。成績が下がった原因が分かっただけでも良しとしようね」
その言葉に思わず優也は、真由美に許しを乞うような表情で慌てて顔をあげました。
「馬鹿ねー。今日の事、面談票に書くわけ無いでしょ。先生と真壁君だけの内緒にしようね」
「は…… はい」
やっと彼はその顔に笑みを浮かべました。真由美も、自分が彼を追い詰めてしまったと思って責任を感じていたので、少し気持ちが楽になりました。
「先生は職員室に戻るから、涙が乾くまでここにいていいよ。元気出してね!」
優也はドアを締めて部屋を出ていく真由美の後ろ姿を見ながら、自分の悩みに寄り添ってくれた彼女の一面を初めて知りました。顔や姿が美しいだけでなく、本当は生徒のことを思ってくれる優しい先生なんだと気付いたのです。
それと同時に、性感エステティシャンの副業を口外しない交換条件で、彼女の体で性の欲望を満たそうとした自分が増々惨めに思えたのです。
<この章、終わり>
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