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先の見えない入り口

先の見えない入り口 ~願望を叶えるために~ 4

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「お客様、当店のことを何でご存知になりましたか」

 電話の向こうから性感エステ受付の北川が問いかけます。優しく丁寧で上品な口調が、かえって優也を緊張させました。

「スマホでそちらのサイトを見つけたんですが……」

「ありがとうございます。サイトにも載せておりますが、当店では3つのコースとオプションを用意してございます。その中から御予算と御希望に合わせてお選びください」

 受付の女性の説明では、シルバー、ゴールド、プラチナの3コースがあるそうです。初めての客はまず最初に入会金を払う必要があるとのことでした。

「あ、なるほど、そうなんですね」

 優也は遊び慣れたふりを演じましたが、実は緊張して殆どが上の空でした。相手が性のサービスをする店の女性ということもあり、汗ばんだ声でしどろもどろになりながら聞きたいことも聞けずにいたのです。

「お客様……  私共のような性感エステ店は初めてですか?」

「…… あ、は、はい……  実はそうなんです。初めての客はお断りだったりしますか? 」 

 優也は正直に告白しました。

「そんなことございません。初めてでも大丈夫ですよ。ご安心下さい。あ、申し遅れました。私、案内担当の北川と申します」

(北川さんて名前か…… 優しい人で良かった)

 女性の返事にほっとしました。少しクスッと笑った口調でしたが、むしろ、それでいて丁寧で親切な応対が店の高い敷居を下げてくれたのです。

「どちらのコースも特製のローションを使った施術になります。お客様の脚や胸に塗り広げるセラピストの指先で、特別な癒やしをお楽しみください」

 優也は北川からの説明を聞き漏らさないように、はい、はいと頷きながら聞いていました。

「当店ではお客様の下腹部に特別な施術をさせて頂いております。男性自身の勃起力と精力を高める効果があるんですよ」

 電話の向こうで北川がさらりと口にした「勃起」という言葉に、優也は思わず生唾を飲み込みました。今まで女性がその言葉を自分に向けて口にしたことなどありません。
 17才の高校生にとって、その柔らかで包み込んでくれるような優しい口調での猥褻な言葉は、甘美な響きを漂わせ想像を掻き立てるものでした。

「セラピストがアロマオイルとハーブをブレンドしたローションをたっぷり手に付けて、お客様様の最も敏感な部分に施術をほどこします。ご自身で勃起力の高まりをお感じ下さい」


 優也は返事をすることすら忘れて、電話の向こうから聞こえる北川の甘い芳香の言葉と、真由美先生が男性客に施術をほどこす姿を重ね合わせました。

 気がつくと股間の茎は頭をもだけ、疼くような火照りと痛い程の張りを帯びていたのです。

 優也は電話の向こうにいる北川に悟られないよう、スマホを持ちながら、もう一方の手でパンツの上から茎を握り締めました。すでに強張りの先でパンツを突き上げている部分が薄っすらと濡れて染みになっています。

 早まる鼓動と震える息遣いを隠し、小さく頷きながら案内係の北川の声に聞き入っていました。

「当店のセラピストは30代の人妻さんが多いので、柔らかで美しい指先の這いずりをお楽しみください」

「はい」と短い声を出すのが精一杯でした。

 ベッドに仰向けになってパンツを脱ぎ、弾けるように真上を向く茎を指先でゆっくりとなぞりました。
 優也は頭の中で、真由美先生が手からローションの雫を垂らしながら、慈しむように自分の茎に濡れ光る指を絡める光景を想い描いていたのです。

(あぁ…… 真由美先生……  気持ちいいよ)

 優也は心の中で喘ぎの声を漏らしました。

「あら……  お客様……  どうかなさいましたか?」

 その北川の声は、気配を察していながら、わざと弄ぶような薄ら笑みを浮かべた声でした。優也はハッとして手の動きを止め、込み上げる吐息を呑み込んで平静を装いました。

「シルバーコースはセラピストが制服を着ての施術になります。ローションを付けた手での癒やしの他にも、口や舌での施術もございますので、ご堪能下さい。コースのお時間は90分となります」

 優也は北川に自分の息遣いの異変を気付かれないように説明を聞いていました。 亀頭から欲望の雫を垂らしながら、張り詰めた茎に添えた手の動きを止め続けるのは、17才の高校生にとっては残酷なことでした。

「ゴールドコースは手や舌だけでなく、セラピストが全裸になってお客様と肌を重ね合わせながらの施術となります。コースのお時間は少し長めの120分となります」

「ふーん……  そうなんですか…… 」

 彼は口の中に溢れる唾液を堪え、必死に平静を装い続けます。

「人妻さんの柔らかい肌を全身で感じながら射精なさってくださいね」

 北川がささやくように口にした「射精」という言葉が優也の胸を押し潰します。触れることすら出来なかった真由美先生への妄想が、思いがけない現実味を伴って手を伸ばせば届くところに近づいてきたのです。
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