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7歳以降の僕 ♢就職編と見せかけて王宮編♢
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しおりを挟むゲームとは違う隣国の皇太子の案内や、兄様達との久しぶりの、もうレッスンとは言えない気がする夜の触れ合いと、初めての射精で疲れきってしまった僕はその日、深い深い眠りについた。
深く深く闇に潜った僕の意識は、懐かしいような、初めての様な、嬉しいような、寂しい様な、そんな何かに出会って…いや、再会、して…触れようと、した。
…その、眩しい光に…。
僕は強い光を浴びて、ハッと勢いよく目覚めた。
心臓がドキドキと大きく脈打っている。
僕は確かに、あの光に手を伸ばして…。
そこで光の刺す方に目を向けると、カーテンを遮光性の高い厚手の物から日差しを和らげる為の薄手の物へとあて替えていたルーが、驚いた様に僕を見ていた。
陽射しはいつも起きる時分よりも大分と高く強くて、僕は随分と寝過ごしてしまったらしい。
薄手のカーテンを引き終えたルーが、「起こしてしまい申し訳ありません」と、僕に丁寧に頭を垂れる。
そんなルーを見て、次いで寝ていた左右を見ると、僕の両隣は既に空だった。
恐らく兄様達は、既にいつも通り城に出仕したのだろう。
僕は先日倒れてしまったこともあり、ムーラン皇子の案内をした翌日とまたその翌日…つまり今日と明日の二日もお休みを取るようにとみんなに調整されてしまったのだけれど、兄様達は普通にお仕事のはずだから…。
少し寂しいけれど、仕方がないと内心で頭を振りつつ、ルーに頭を上げるように伝える。
「驚かせてごめんね、ルー。随分と遅くまで寝てしまったんだね。お休みとはいえさすがに寝すぎだから、そろそろ起きなきゃいけないし気にしないで。」
「いえ、皆様から…特にカディラリオ様とミスティラリ様からはレティシオ様が自らご起床される迄は、起こさぬようにと申し付けられておりましたので…。誠に申し訳ありません」
ルーは余程僕が飛び起きた事に心痛めているみたいで、それが自分のせいだと自分を責めているみたい。
変わらず周りには分からない程の変化かもしれないけど、ルーの涼やかな眉が明らかにへにょりと下がっている。
でも本当にルーのせいではないのに。
僕が飛び起きたのは、ルーのせいじゃなくて、夢の…ひかりが……?
えっと、なんだっけ、ひかり………そう、ひかりが、まぶしくて…?
陽の光ではなくて、…えーっと、なんの…?ひかりなんだったっけ…?
僕は、確かに、何かに…。
そこまで考えたけれど、だめだった。
だめになってしまった。
思い出そうとする程もう思い出せなくなってしまって、何が、何に、なのか分からなくなってしまった。
それでもいま、確かに分かってるのは…。
「…ルーのせいじゃ、本当に…ないだ…。
えっと、多分、多分ね、夢見が…そう、夢見が悪かったんだと思う。
なんの夢か思い出せないんだけどね、それで起きなくちゃ、って…。
……ごめんね、驚かせてしまって。ルーは、何も悪くないんだ…。」
ルーに説明しながら夢を忘れてしまったのだと実感した途端、なんだか小さな悲しみが湧き上がった気がしたけれど、覚えてもいないのにそんなはずはないし、きっと気の所為だろうと僕はルーが謝罪を繰り返さなくなるまで違うのだと繰り返した。
ルーはとても真面目だから、自分の仕事に誇りをもっているから、だからこんなに懸命に謝ってくれるんだと思う。
ルーの仕事ぶりはいつも完璧なのに、僕のせいで気に病ませてしまって本当に申し訳ない。
ルーがやっとルーのせいではないと何とか納得してくれた所で、
「ご起床のご用意と、レティシオ様が起床された事を、カディラリオ様とミスティラリ様に伝えに行って参ります」
と、綺麗な礼を取りながら言った僕の専属執事は、そのまま寝室を出ていった。
ご起床の用意は、洗顔用のぬるま湯の用意やモーニングティーの用意に着替えの用意だと思うけど…兄様達に伝えに?
あれ?兄様達、お仕事に行ったんじゃないの?
僕が脳内にハテナを浮かべながら寝室の出入り扉を見詰めて数分、その扉から今日も麗しいディー兄様とミー兄様が普段着のまま普通に入ってきた。
あれ?本当にお仕事は?
「レティ、起きたのか。体調はどうだ?ぼんやりとして、まだ疲れが残っているんじゃないのか?」
「レティ、おはよう。もう起きるの?まだ眠たかったら、寝ていても大丈夫だよ?」
ただ歩いて来ているだけなのに見入ってしまう程に素敵な二人は、僕がぼんやりと、何故二人がこの時間にここにいるのかと思案している様子を気遣わしげに見てくる。
入室してからさっさと僕の側まで来た2人は、ベッドに腰掛け僕を引き寄せると、やんわりと抱きしめながらいつものように髪を梳いたり頬や耳、首を撫でたり摩ったり僕を労わるように触れてきてくれる。
兄様達の手はいつでも安心するし心地いい。
「ディー兄様もミー兄様も、お仕事に行かれたのではなかったんですか?」
僕が素直に疑問を口にすると、2人はふふっと悪戯っ子のような笑みを浮かべた。
「レティのお休みに合わせて、私達も休みを取ったんだよ」
そうにっこり微笑んで僕の唇に人差し指を当て、ふにふにと感触を楽しんでいるらしいミー兄様。
「因みに明日も休みだから、休みの間はずっと一緒に居られるぞ!」
と、凛々しい顔を甘く緩めて僕の瞼に口付けを落とすディー兄様。
二人の言葉に驚いて、交互に二人の顔を見る。
ディー兄様もミー兄様も沢山の部下の人たちを抱え多くの仕事を熟している。
最近は夜間帯の出仕が少なくなってきたとはいえ、この若さで上に立っているのだから、僕には分からないところで色々と大変な事もあるだろうし、何より僕と休みが重なる事なんてほとんど無かった。
それが二人とも一緒に僕に休みを合わせてくれてるなんて!
今回の僕の休みも急ぎ調整されたものだ。
兄様達が休みの都合を付けるのはもっと大変だっただろうと思う。
きっと優しい兄様達は、それでも慣れないことに疲弊した僕を慮って、僕に合わせて休みを取ってくれたんだと思う。
じわじわと、兄様達の気遣いと優しさに喜びが胸にひろがってくる。
僕は感謝の気持ちを精一杯込めて、兄様達に順番にありがとうと嬉しい気持ちを伝え、ぎゅっと抱きついた。
兄様達はそんな僕を、嬉しそうに抱き留めてくれた。
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最ッッッ高のお話すぎて一気読みしてしまいました…。
レティかわたんすぎます!!
是非続きを可能でしたらお願いします〜!!!
凄く可愛かったです!続き期待してます!!☺️
続きが楽しみです。更新を心待にしています。